私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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大体原作と一緒なシリアスかいだぉ。

こいつら死ぬほど扱いづれぇ(;・ω・)


今日もてきとうーに閑話サブタイを決めていくコーナー「Shadow Walkers」の閑話の巻き

「死柄木弔。丁度手が空いてますが・・・何かお入れしますか?」

 

そう声を掛けたのは、カウンターで一人グラスを拭き終えた黒霧という先生が俺につけた男だ。有能な個性を持っている奴ではあるが何かと隙の多い奴でもあり、代わりさえいれば常々殺してやりたいと思っている奴でもある。こうしていらない世話を焼こうとする所など、尚も鬱陶しい。

 

「いらない。そういう気分じゃぁない」

「そうですか。それならば構いませんが」

 

黒霧はそう言うと、カウンターに置いてある酒の在庫を確認し始めた。並んでいるのは殆んどがダミーだが、極一部は黒霧の趣味で本物も置いてある。特に左奥、ダミーの陰に置いてあるウィスキーはお気に入りで、暇があればボトルを磨いている様子を見かける。

 

暇なら恐らくそれを手にとる筈だが、今日の黒霧にその様子はない。━━━となると、この後何かあるのだろう。先生はこいつとだけは連絡を取ってる節があるから、それに類する何かだ。

 

ここ一ヶ月近く、先生からのコンタクトが極端に減った。たまに会話する機会はあっても、忙しいからと話せるのは数分。何か始めてるのは分かるが、その内容についていまだ語られていない。

先の二度の失敗で信用を失った可能性もあるが・・・どうも見捨てられたとは思えない。

 

俺には先生が試している気がしてならない。

 

「・・・癪に障るなぁ、くそが」

 

幾ら先生とはいえ腹が立つ。

俺がそういうのが嫌いな事を知っているだろうに、何故こんな真似をするのか。

 

ムカつく。

 

ムカつく。

 

ムカつく。

 

がりっ、と掻いた首から痛みが走り、温い物が指に触れた。

その指を目の前に翳せば赤い血が付着してた。

 

何となく舐めとってみれば、濃い鉄の味がした。

あの時と同じ、鉄の味が・・・。

 

俺は先生から渡された一枚の写真をポケットから取り出した。そこに写るのはUSJで俺を邪魔した糞餓鬼。体育祭の時に撮られたそれは、ドヤ顔でこちらにピースをしてる間抜けな絵面だった。

 

こんな奴が・・・。

 

「ちっ」

 

その時を思い出してイラついた。

少なくともあいつの邪魔さえなければ、イレイザーヘッドは殺せてた。今後の襲撃時、あの厄介な存在に気を使う事がなかったのかと思うと、それを邪魔したあの糞餓鬼は殺しても殺し足りないほどに憎い。

 

思えば、あの役立たずのヒーロー殺しを止めたのもこいつらだ。

 

怪我まで負って味方に引き入れたと言うのに、偉そうな事をほざいてたくせに、呆気なくその日に奴は捕まりやがった。

おまけに俺達が放った脳無達は、その間抜けなヒーロー殺しのついで扱い。あの糞ったれな先輩様の矜持を滅茶苦茶にしてやるつもりだったというのに、結果は事件を盛りたてただけ。

 

むかつく。

 

どうして、こうも上手くいかない。

どうして、こんな糞餓鬼程度に邪魔される。

どうして、俺があいつより軽く見られる。

 

むかつく。

 

むかつく。

 

むかつく。

 

俺と先生と、何が違う。

 

「死柄木弔。あまり首を掻きすぎぬ方が良いですよ」

「うるさい、黙れ。殺すぞ」

「程々に、と。先生からも言伝を預かっています」

 

黒霧の口から出た言葉に、思わず殺気が漏れる。

 

「その先生は、なにしてんだよ・・・。どうして、何も俺に言わない・・・!」

「詳しくは私も伺っておりません。私は貴方の補佐をと頼まれているだけで・・・」

 

その物言いに腹が立ち、ぶっ殺してやろうと手を伸ばしたが、霧に隠された首に触れる寸前でワープを使ってかわされた。

黒霧が小さく溜息をついてくる。

 

「癇癪も程々に。よく考えて下さい、死柄木弔。私にはまだ利用価値があるでしょう。殺すのは考え直して下さいませんか?」

「正論言えば納得するとでも思ってんのか・・・?ぶっ殺す。ワープとけよ」

「落ち着いて下さい、死柄木弔。貴方がすべきなのは、オールマイトを殺す事ではありませんか?少なくとも、私ではない━━━」

 

 

 

「━━━━黙れよ。次喋ったら、本当に殺す・・・」

 

 

 

そう言って睨めば、口を告ぐんだ黒霧はワープを解いた。あまりに素直な行動に毒気を抜かれた気分になる。

殺すにしても興が削がれた。

 

「殺らないので?」

「うるさい。もういい。気分じゃない」

 

椅子に座り直し、もう一度写真を見た。

 

そして一つ思い出した。

俺にこれを渡した時の先生の態度。

愉快そうな先生の、その言葉を。

 

『面白い子さ。きっと君も気に入るよ』

 

 

 

「こんな奴の何が、先生に目をつけさせた」

 

どうして、これを俺に渡した。

何故、こいつだ。

あの時の先生の言葉にどんな意味がある。

俺は何を知らないでいる。

 

 

先生から全て教わった。

この社会の歪さも。

救いようのなさも。

 

先生から全て貰った。

戦う力も。

駒も居場所も。

 

俺は今、先生に及ばずとも多くの権限を持っている。

それは使いようによっては、都市の一つくらい焼け野原に出来る力だ。

 

けれど、現実的にそれは出来ないだろう。

先生なら兎も角、俺では使いこなせない。

使い方は知っているのに、それでも出来ない。

俺と先生とでは、あまりに違う結果になる筈だ。

 

つまりそれは、教わった事以外。

俺と先生の間に何かがあるということ。

 

「何が、足りない。先生・・・」

 

 

 

 

 

 

「死柄木さん」

 

不意に掛けられた男の声に視線を移す。

バーの入り口の所に、煙草をくわえた中年の男がいた。

見覚えのある顔。以前、チンピラを集めた時に何人か引っ張ってきた奴だ。

 

中年は俺の視線に気づくと、くわえてた煙草を手に持ち替え口元をひきつらせるようにして笑う。

 

「こっちじゃ連日あんたらの話で持ちきりだぜ。何かでけぇ事が始まるんじゃねぇかってさ。出来るなら、一枚噛ませて貰いたいもんなんだがねぇ」

 

目敏いそいつに見つかる前に、手元の写真を塵に変える。先生がこいつの事について何か語ったのは俺だけ。なら、他の連中にその情報を漏らす気はない。

 

「で、そいつらは?」

 

中年の後ろに二人の人影が見える。

俺の言葉に反応して、人影だったそいつらは歩き出す。

部屋に入ってきたのは若い男女。

 

「生で見ると・・・気色悪ィなァ」

 

そう言ったのは火傷の痕が目立つ長身の男。

もう一人はあの糞餓鬼と同い年程の女で、女は俺を見るなり興奮したように腕を振った。

 

「うわぁ手の人!ステ様の仲間だよね!?ねぇ!?」

 

女はニカッと笑うとあっけらかんに言った。

 

「私も入れてよ!ヴィラン連合!」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

前もって連絡を受けていた時間。

以前より協力関係を築いていたブローカーが私達の前に訪れた。その時間に狂いはない。やはり、その道のプロという事だろう。普段の飄々とした態度からは考えられない真面目な仕事ぶりだ。

 

私は手にしていたファイルをしまい、死柄木へと視線を送った。死柄木は何も言うことなく、その二人の様子を窺っている。

 

ヒーロー殺しの件が失敗に終わったが、あの方は死柄木を叱責する事はなかった。

あの方が死柄木に与えたのは軽い慰めと時間だけ。接触を限りなく減らし、授業にとる時間はおろか助言する事もなかった。後で確認をとれば、死柄木には己で考える時間が必要なのだと言っていた。それは言葉で伝えられるような事ではなく、己で導きださなければいけないもので、私も助言する事を禁じられている。

考えろとだけ伝えるのも、何とも歯痒いものがある。

 

あの方のお言葉を疑う訳ではないが、素行や考え方に幼稚な部分が目立つこの男が、本当にあの方に成り代わる存在なのか、私はまだ確証を持てないでいる。

 

・・・だが、そうだ。

最近の彼は多少見られたものになってきたように思う。

まだまだ危なっかしいが、ヒーロー殺しの一件以来、一人で考える時間が増えて以来、何処と無くあの方と同じものを感じる時があるのだ。

 

先程の心臓を鷲掴みにされるような冷えた声。

あれなど、まさにあの方と同質のもの。

思わず見とれてしまった。

 

何かが変わりつつある。

死柄木弔という男の何かが。

 

「・・・・・黒霧、こいつらトバせ。俺の大嫌いなもんがセットで来やがった。餓鬼と礼儀知らず。目障りだ」

 

ようやく口を開いた死柄木の言葉は拒絶。

どうやらお眼鏡には適わなかったようだ。

 

死柄木の言葉を受けた二人の様子は微妙なもの。

女性は不思議そうに首を傾げ、男は死柄木を品定めするように見ている。

 

ブローカーに視線をやれば肩を竦めた。

その態度から、実力に問題がある訳ではないようだ。

もしそうならトバす事も考えたが━━━これは死柄木に考え直して貰う必要がある。

 

「まぁまぁ・・・せっかくご足労いただいたのですから、話だけでも伺いましょう。死柄木弔」

 

そう言えば見るからに不機嫌そうな視線が死柄木から向けられた。

 

「それに、あの大物ブローカーである彼からの紹介。戦力的には間違いはないハズです」

 

確認するように視線を飛ばすとブローカーはくわえてた煙草を手に持ち替え「手数料だけは頼むよ」と念を押してくる。

 

「━━━━んまぁ、紹介だけでも聞いときなよ。死柄木さん。割と面白い二人だからさ」

 

ブローカーは女性を指差し説明を始めた。

 

「まず、こちらの可愛い女子高生。名も顔もしっかりメディアが守ってくれちゃってるが、連続失血死事件の容疑者として追われてる」

 

ニュースは毎日確認している。

確かに最近、そういった事件があったのも覚えがあった。

ブローカーに紹介された女性は笑顔を浮かべて話始める。

 

「トガです。トガヒミコ。生きにくいです!生きやすい世の中になってほしいものです!ステ様になりたいです!ステ様を殺したい!だから入れてよ弔くん!」

 

その可愛い口から出たのは、いい感じに頭の中身が沸騰した発言だった。そっと死柄木を見ると、案の定不機嫌そうに首を掻いている。

気に入らなかったようですね。

 

「意味が分からん。破綻者かよ」

 

そう言った点では、貴方もそう変わりませんが。

まぁ、それを言ったら最後、それこそ殺されかねませんから言いませんが。

 

「会話は一応成り立つ。きっと役に立つよ。で、次。こちらの彼は目立った罪は犯してないが、ヒーロー殺しの思想にえらく固執してる」

 

ヒーロー殺しという言葉に、死柄木弔の肩が揺れた。

 

そんな死柄木をよそに紹介された男はブローカーに対して不満を口にした。女性の仕上がり具合に不信感を抱いたのだろう。確かに、ヒーロー殺しの思想とはかけ離れた存在ではある。

そんな男の様子に死柄木が呆れたような声をあげた。

 

「おいおい。その破綻JKすら出来ることがおまえは出来てない。まず名乗れ。大人だろ」

 

死柄木弔の言葉に、男の鋭い視線が返す。

 

「・・・今は『荼毘』で通してる」

「通すな、本名だ」

「出すべき時になったら出すさ。とにかく━━━ヒーロー殺しの意志は俺が全うする」

 

今度こそ、死柄木から殺気が溢れた。

私に向けた物など鼻で笑える程の、圧倒的圧力を持った殺気が。

 

「聞いてないことは言わないでいいんだ」

 

立ち上がるその姿に、あのお方の姿が重なる。

 

「どいつもこいつも、ステイン、ステインと・・・」

「いけない、死柄木━━━」

 

咄嗟に声をかけたが、もう聞いていなかった。

その目に宿った明確な殺意。

私は直ぐ様個性を発動する。

 

「駄目だ、おまえら」

 

死柄木の手が伸びる。

荼毘と名乗った男とトガヒミコと名乗った少女も、殺意に応えるように動く。ブローカーが見つけてきただけの事はある。いい反応だ。

 

今は感心してる時間ではないが━━。

 

死柄木達の前にワープゲートを作った。

それぞれの殺意を込めた腕がワープゲートを潜り、明後日の方向へと伸びる。

 

「落ち着いて下さい。死柄木弔」

 

助言は禁じられていたが、流石にこれは放っておけない。ブローカーとの今後の関係を考えれば、紹介された二人を傷つけるのは不味い。

 

「あなたが望むままを行うのなら、組織の拡大は必須。━━━違いますか?」

 

手を伸ばしたまま、死柄木は二人を見つめたまま動かない。

 

「奇しくも、注目されている今がその拡大チャンス。排斥ではなく、受容を。死柄木弔」

 

納得のいかなそうな死柄木に近づき、そっと耳元で囁く。彼らに聞かれる訳にはいかない、その言葉を。

 

「利用しなければ、全てを・・・・。彼の残した"思想"も全て・・・」

 

私がそう言うと「うるさい」と一言を残し、死柄木は部屋を出ていった。その背中には迷いと苛立ちが見えた。先程感じた、あの方の姿は見えない。

 

死柄木が去った後、ブローカーが首を掻いた。

 

「取引先にとやかく言いたくはないが・・・若いね。若すぎるよ。おたくのボスくん。きょーいく行き届いてないんじゃないの黒霧さん?うちも信用があるからさ。言わんでも分かると思うけど、せっかく紹介した人間殺されちゃたまらないのよ。関係考えちゃうなぁ~」

「申し訳ありません」

「チンピラのクズ達とはいえ、以前紹介したあいつら使い潰してくれちゃったの・・・・忘れてないからね。今回はちと色つけてくれよ」

「勿論です。今後ともよろしくお願いいたします」

 

そう頭を下げるとブローカーはカウンターに資料をおいた。

 

「何人かピックアップしといた。希望があれば連絡はつけておくよ」

「ご丁寧にどうも」

「目を通したらそのまま焼いてくれ。お持ち帰りやコピーは厳禁だよ」

 

私達の会話に紹介された二人が視線を向けてきた。

言葉にせずとも伝わる、何が言いたいのかは。

その懐疑的な目を見れば聞くまでもない。

 

「・・・返答は後日でもよろしいでしょうか?彼も自分がどうすべきか分かっているハズだ」

 

私に答えられる事はない。

結局は彼が決める。

そうあの方が決めたのだから。

 

そこに異論などある訳もない。

 

「分かっているからこそ、何も言わずに出ていったのです。オールマイト、ヒーロー殺し・・・もう二度鼻を折られた」

 

彼は変わる。

 

「必ず導き出すでしょう。あなた方も、自分自身も納得するお返事を・・・」

 

立ち去った死柄木の背中を思いながら、私は手元の資料に目を落とした。

これから始まるであろう嵐に耐えうる存在を、味方に引き入れる為に。

 

 

 

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