私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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あげないと、今日こそあげないと、思っていたか!

俺はちょっと無理かなって、思ってた!

なんか、間に合ったけども( *・ω・)ノ


大人数で出掛けると決まって喧嘩する人がいるけど、あれはどうにか出来ないもんかね?空気をさ、考えようよ。空気をさ楽しく━━━ってこら!!おまっ、それは私の食前オヤツだこの野郎!の巻き

「ニコちゃーーん!おはよ!」

 

期末試験明けのお休み日。

かっちゃんをお供に木椰区の駅を訪れると、待ち合わせ場所で元気に手を振るお茶子を見つけた。お茶子の側にはあしどん達女子ーずやA組の童貞共の姿もある。

 

「はよ、お茶子。皆」

「おはよ!今日もニコちゃんはニコちゃんやな、シンプルなのに可愛いわ。私ももうちょっと頑張れば良かったなぁ」

 

お茶子の格好を見ると確かに手抜きだった。

Tシャツにショーパン。

タイツもいつも穿いてるやつだ。

 

「うん、そだね。手抜きファッションだ」

「す、少しはオブラートに包んでよ!ニコちゃん!」

 

お茶子からジト目を向けられてしまった。

本当の事とはいえ、もう少しフォローしとくべきだったか。

 

「超、似合ってる」

「手抜きファッションやって言うてんのに!?もうーー!私も分かっとるから、そんな意地悪言わんといてよ~!!」

 

ぽかぽかしてくる可愛いお茶子を撫で撫でしてると、あしどんと葉隠がこっちにきた。面白い物を見つけたみたいな顔してる。

 

「はぁい!そこのカップル!アオハル吹かせまくってるねぇ!!見せつけてくれるじゃないの!ひゅーひゅー」

「おでーと気分なのかなぁ~?随分と洒落てるじゃぁないのぉ?オシャレ番長なミナミナがオシャレチェックしちゃうよー!」

 

葉隠に絡まれたかっちゃんは不機嫌に顔を歪ませる。

分かりやすい事この上なしだな、かっちゃん。

てか、カップルは止めろ。

まじで。

 

私の方にきたあしどんはというと、オシャレ番長としてオシャレチェックの為にジロジロ服を見てきた。

 

「ふむふむ。今日はシンプルに攻めてきたね。デニムシャツに白のショーパン。靴は白と黒ツートンのスニーカー。インナーは・・・また凶悪な」

「ふつーのタンクトップだけど?」

「これ、このままなら大丈夫だけど、屈んだら100パー谷間見えるでしょ。ニコ、アウトー」

 

 

 

「谷まァ━━━ぃたぁっん!!?」

 

何処からともなく━━━という訳でもなく童貞共の方から、誰かの悲鳴とパァンという何かを叩く音が聞こえてきた。

 

視線を向けると阿修羅さんの複腕に捕らえられる、頬を腫らしたブドウの姿が見えた。その姿に欠片も同情出来なかったのは、奴の日頃の行いの悪さ故だろう。

・・・あ、梅雨ちゃん。おつかれーっす。

 

「相変わらずだね、あいつは」

「ねぇー、見境ない無さすぎ。私らもさっき絡まれた。ちょー見られたもん。まっ、その時も、梅雨ちゃんの舌ビンタが炸裂した訳だけどね」

 

「・・・私は何も言われてないけど」

 

私とあしどんの会話に、いつの間にか側にきていた耳郎ちゃんが交ざってきた。しかも、死んだ魚の目でこちらをガン見してくる。

 

「私は何も言われてないけど」

 

そう淡々と話す耳郎ちゃん。

私は口を閉じてあしどんにアイコンタクトする。

首を横に振られた。やりたくないと。

寧ろ私にやれと視線を返してくる。

 

ふざけるなよ、私だって嫌だわ。

 

褒め褒め大作戦は以前やったから駄目。

寧ろその時のあれこれで写真撮ったり耳たぶ触ったりしたせいで警戒されている。

 

私には手に負えないと、周りを見ると上鳴のアホ面が目についた。

 

「へい、上鳴!へい、上鳴!」

「お、おう?どうした、緑谷?」

 

ヘラヘラ近づいてくる上鳴の肩に手を回し、耳郎ちゃんに見えないよう背中を向ける。

 

「お、おふ!?な、何だよ緑谷!おまえにはバクゴーというものが、て、ちょ、駄目!本当、無理!おれ、そういうの、駄目ぇ!いきなりとか駄目だから!ムードとか、いる人だから!」

「訳分かんない事言ってると、ぶら下がってるの取るよ」

「ひいっ!!?取るの!?」

 

股間を両手で押さえて震える上鳴に、親指で耳郎ちゃんを指差して見せる。上鳴は指先を視線でおって耳郎ちゃんを見て、またこっちを見てきた。

 

「え?耳郎がなに?」

「可愛いでしょ?」

「ん?まぁ、普通に」

 

きょとんとする上鳴の口から出たのは意外にも褒め言葉。ふむ、中々見る目がありおるわ。こやつめ。

 

「なら、褒めてこい。ブドウの馬鹿のせいでショボくれてるから、死ぬほど褒めてこい」

「被害に遭わないならそれに越したことねぇーじゃねぇーか。ああ、いや、女心は難しいからなぁ。てか、緑谷がやれば良いじゃんか」

「私は前科があるから警戒されるの」

「何したんだよ・・・はぁ、しゃーねぇーなー。後でなんか奢れよ」

 

文句を言いながらも上鳴は耳郎の元に向かった。

ブドウと近しいものがある上鳴だけど、基本アホでナンパ野郎なだけで悪い奴ではないし、口も回るから上手くやるだろう。ヘタレだから何か変な事する心配もないし。

━━で、かっちゃん。後で上鳴になんか奢ってやって。え?良いじゃん別に。ほら、うめい棒でも良いからさ。やなの?さっき貰ったティッシュとかでも良いよ。それじゃ。

 

耳郎ちゃんが上鳴の褒め殺しでニヤつきが押さえられなくなり、ファッション番長にかっちゃんが絡まれだした頃、轟と切島が合流し全員が揃った。

皆ににこやかに挨拶していた切島だったが、私を見つけると小さく驚きの声をあげてきた。

 

「緑谷が可愛く見える!」

 

ビンタしてやった。

腰の入ったビンタをしてやった。

 

「・・・冗談だっての」

「冗談でも許さぬ。お詫びに甘味を所望する」

「そういうのは爆豪にせがめよなぁ・・・」

 

涙目で頬をおさえる切島を見ていると、その隣で相変わらずぬぼーっとしてる轟と目があった。軽く手をあげて挨拶すれば、無表情のままだったけど返事は返してくれた。

 

「はよ、轟。昨日学校の帰りにレーちゃんとこ寄ったんでしょ?元気そうだった?メール無かったから気になってたんだよね」

「ああ、昨日メールしなくて悪かった。色々あって返せなかった。お母さんは大丈夫だ。お前によろしく言っといてくれって、伝言預かってる」

「そかそか」

 

轟は毎週休みの日はレーちゃんの所に行ってる。

体育祭以降は職場体験や期末試験前以外ではほぼ行ってる超絶マザコン、それが轟なのだ。

だから葉隠が皆でお買い物と言った時、正直轟はこないのだと思っていた。そういう騒がしいのは好きそうじゃないし、なによりレーちゃんを優先すると思ったから。

 

うん?何が言いたいかって?

なんか、違和感凄いなって話だよ。

 

そんな事を考えてると、ふと轟の視線が気になった。

 

「どした?」

「いや、今日も可愛いなと思ってな」

 

前にも言われた気がするな、それ。

 

「轟さ、それ言えばいいと思ってるでしょ?」

「?そんな事ないけどな。そう思ったから言っただけだ」

「ほほう、なら何処が可愛いかゆーてみぃー!」

 

私がそう言うと轟は顎に手をあて考え始めた。

勿論軽い気持ちで言った。冗談みたいなものだ。なのにそれを受けた轟の目は真剣な物に、雰囲気も真面目な物になってしまった。周りも轟が漂わせるその空気を感じて静まり返り始める。

 

「轟?紅白饅頭?轟焦凍さん?あのさ、そこまで考えなくていいから・・・」

「少し言葉をまとめる。待っててくれ。ちゃんと言う」

 

私の言葉に、轟はそれはそれは真剣な顔で返してきた。

 

ちゃんとは言うなぁ!そこはふわっとしとけぇ!

お前っ、皆めっちゃ見てるからね!?さしもの私も恥ずかしいわ!私も羞恥心とかあるんだからね!?可愛い自覚はあるけど、こんな公衆の面前でガチで褒められたくないんだよ!!ほら、葉隠とかスマホのマイクこっち向けて━━━あ、あしどんまできた!こっちはカメラ回してきてるし!終わった!私、終わったぁー!

 

轟の天然力にガクブルしてると肩を掴まれた。

力強くごつい、よく知ってる掌。

振り返ってみればやっぱりかっちゃんがいた。

 

「かっちゃん助けてぇぇ!!轟が全力で辱しめてくるぅ!!怖いよぉぉ!!その純粋さが怖いよぉぉ!!」

「っせぇわ!!馬鹿が!!退けや!!」

 

乱暴な口調だったけど、さっと私を後ろに隠してくれた。流石かっちゃん。やる時はやってくれるぜ!

 

「━━━ん、爆豪?緑谷はどうした」

「どうしたじゃねぇ!!どんだけ真剣に考えてんだ、馬鹿か!!天然拗らせんのも大概にしやがれ!!空気ちった読めや!!」

「空気、読む?何言ってんだ、爆豪」

「なんでそこで引っ掛かんだよ!!そこじゃねぇだろぉが!!」

 

 

 

 

 

「びっくりするほど、爆豪くんにブーメランする言葉や」

「けろっ、本当ね。普段の爆豪ちゃんに今の言葉聞かせてあげたいわ」

「そう言うだろうと思って録音してるよー」

「録画もねー」

 

「轟さんも爆豪さんも、社交性が足りませんわね」

「ヤオモモ。それもそこそこブーメランしてる」

「!?え、ええ!?私もですか!?あんな感じに皆さんの目に映ってらっしゃるんですか!?ちょっ、耳郎さん、目を合わせて━━━━」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

爆豪と轟がわちゃわちゃする事暫く。

なんとか騒ぎを終息させる事が出来た俺達A組一同は、目的地である木椰区ショッピングモールに向かう無料バスに乗った。

 

流石に休みの日。無料という事もあってバスは酷く混んでいて、座るなんて考えられない状態だった。その中でも運よく座れた奴もいるんだけど・・・・。

 

そっとそこへと視線をやると、椅子に座る緑谷とそれを囲むように立つ爆豪と轟の姿が見えた。異様なオーラを出す二人の間には隙間が存在してしまってる。このくそ混んでる時、本当それを止めて欲しい。

 

バスが止まった勢いで人混みが揺れる。

どん、と俺の背中にも人がぶつかってきた。

なんか感触が柔らかい。もしかして、女子?

 

期待を込めてチラっと振り返ると、さっき死ぬほど褒めておいた耳郎の顔があった。

 

「すいません━━━って、上鳴か。謝って損した」

「損したとか言うな!そこは普通に謝ったり、感謝とかしろよ」

 

俺の言葉に耳郎は鼻で笑ってきた。

この野郎、という思いが心の奥底から沸き上がってくる。

 

「いやだってね。あれだけ情熱的に褒めた女の子がぶつかってきたなら、ご褒美も良いところでしょ?」

「あれは緑谷が━━━━あ」

 

うっかり溢した言葉に背筋が氷る。

やっちまったという思いが、頭の中を駆け巡った。

これはバラしたらいけないタイプの話だ。

 

冷や汗を流しながら耳郎の顔を見ると、呆れた顔していたけど怒っている様子は見てとれない。

 

「やっぱりね。はぁ、緑谷め。やってくれたな」

「ええと、知ってた?」

「あのさ、普通に考えて普段特に褒めてこないやつがさ、急に近づいてきて褒め倒してきたら不審に思うでしょ。何企んでるのかと思ったら・・・まったく。というか、なんか相談してんの丸見えだから」

 

それはそうか。

 

「あんたも災難だったね。おつかれ」

「はぁ、緊張して損した。本当はそんなに気にしてなかったりする?」

「全然。私にはそういうの合わないし。あれはからかっただけ。昨日散々ダル絡みしてきた芦戸と、私を売った緑谷に対するふくしゅー」

「おいおい、仲良くしろよ。女の子同士って難しいって聞くけど、同じヒーロー目指す仲間なんだからさ」

 

肘打ちが脇腹に刺さった。

 

「分かってるっての。余計なお世話。てかね、これでも結構仲良くやってる方だと思うよ?」

「ってぇなもう・・・そうなのか?」

「そうだよ。もっと陰険だよー。女ってのはさ」

 

そう言って耳郎は溜息をついた。

 

「前の学校では結構そういうのがあってさ。私もちょっと標的になった事あるし」

 

耳郎の言葉に耳を疑った。

イメージだと全然そんな感じになるやつじゃないから。

なんて言ったら良いか分からないまま耳郎を見てると、苦笑いが返ってきた。

そしてどこか遠くを見ながら続けた。

 

「ほら、私さ、趣味が音楽系じゃん?それもさポップスとかよりロックとか。割とマイナーな方が好きだしさ。アイドル系とか、流行ってる曲とか別に好きじゃないし、なんつーかさ普通の女子とは気が合わなかったんだよね。でさ、そういうの詳しかったり興味あるのはどっちかって言ったら男子じゃん?だからね話す相手とか男子が多くてさ。そういうのって目立つんだ。女の中だとさ・・・で、気がついたらハブられてた」

 

笑うよねぇと呟いた耳郎の横顔に笑顔はなかった。

それがなんか悲しくて思わず「大丈夫か?」と聞いてしまっていた。

声に反応した耳郎がこちらを見て、俺の顔を見てギョっとした。

 

「なんで、馬鹿っ!男の癖に泣くな!拭きな、ほら!」

 

意味も分からずハンカチを受けとり、目元に当ててみると湿っていた。まじで泣いてた。

 

「~~~あのね!別にね、友達がいなかった訳じゃないからね!どんなの想像してるか知らないけど、ちゃんと分かってくれるやつはいたし、結局それだってほんの少しだけで終わったの!」

「そうなのかぁ、良かったなぁ」

「なに、その保護者みたいな面。むかつく」

 

憤慨する耳郎からボディを小突かれまくる。

あんまり痛くないけど、地味にダメージが溜まってる気がする。あ、いや、痛くなってきた。

 

『ご乗車ありがとう御座いました。次は終点、木椰区ショッピングモール前~、木椰区ショッピングモール前~』

 

放送が流れると耳郎の攻撃も止まった。

恐る恐る視線を向ければ、どこか不満そうな顔をしてる。

 

「━━━はぁ、いいやもう。だからさ、仲良くやってるから大丈夫って話。分かった?」

「はい、それはもう。てかさ、それじゃやっぱり緑谷くらい目立つとさ、そういうのもあんのかなぁ?」

「・・・まぁ、あるんじゃないの?うちのクラスだと無さげだけど・・・。それにあの能天気な姿見てるとなぁ・・・・」

 

耳郎と俺は何となしに緑谷を見た。

さっきより混沌とするそこで、緑谷は楽しそうにお菓子をくわえてる。それがどこか子供っぽくて、バスの中で食べるんじゃありません!と保護者みたいに注意したくなった。

 

「あれは、ねぇ・・・」

「なぁ」

 

それから少ししてバスが止まり、人混みがぞろぞろと出口に向かって動き出した。通路にいた俺達もそれに続く。そしてそんな時なのに、俺は少し前に思ったそれを思い出した。

 

「あのさ、耳郎」

「は?なに?降りてから━━━」

「緑谷に唆されたのは本当だけどよ、可愛いって言ったのは嘘じゃないからな?」

 

耳郎の首が折れるんじゃないくらいに傾げられた。

しかも見たことの無いものを見るような、そんな目で見てくる。

 

「そういうのはもう良いんだけど・・・」

「いや、マジだって。俺そういう嘘つけねーから。そんな器用に嘘つけねえーよ。緑谷みたいに。俺自分が馬鹿なの知ってるし」

「いや、あんたが馬鹿なのは知ってるけど━━━って、は?それって、じゃあの時の・・・」

 

 

 

バスを降りてから何故か顔真っ赤の耳郎にイヤホンで攻撃された。

理由は分からないけど、怒らせたのは理解した。

 

女の子って難しい。

いつになったら俺にも可愛い彼女が出来るのか。

教えてドブ川の奇跡、爆豪さん。

 

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