私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
毎日投稿はそろそろ限界かもしらん。
おとしたら、すまんやで( *・ω・)ノ
バスで揺られて少し。私達A組一同は木椰区ショッピングモールへと辿り着いた。
流石にテレビとかで取り上げられる巨大ショッピングモールだけあって、お客さんは馬鹿みたいにいた。
日曜だからって来すぎだ。半分帰れ。
「緑谷、さっきのだけどな・・・」
「しつこいわ!もういいっての!かっちゃんバリア!」
駅前での話を蒸し返そうとする紅白饅頭にかっちゃんを押し付ける。効果はあったようで、紅白饅頭が口を閉じた。
「・・・見てんじゃねぇぞ、クソ紅白」
「・・・俺も別に、お前のこと見たかった訳じゃねぇ」
そう言って微妙な雰囲気で見つめ合う二人をそのまま放っておき、ぱーてぃぴーぽーに「うぇーい」と絡まれるお茶子の所へいった。鬱陶しいぱーてぃぴーぽーを『あぁん!?』と指ポキで追い払う。舐めるんじゃないんだよ?ん?
散っていったぱーてぃぴーぽーを横目にお茶子に親指を立てて見せれば何故だか溜息をつかれた。
「ニコちゃん貫禄ありすぎや」
「いやぁ、えへへ。それほどでも」
「どっちかと言えば褒めてへんよ」
褒められてなかった。
にゃんだとぉ。
「━━━ま、別にいいけど。それでさ、お茶子は何買い物すんの?一緒に水着いく?見せっこする?」
「全然へこたれへんな、ニコちゃんは。・・・んーー水着は去年のまだ着れると思うからええかな?」
「ええぇぇぇ・・・・見せっこしようよぉ」
「うーん・・・」
お茶子のプニプニのほっぺたをつつきながらお願いしてみたけど、あまり良い顔はしてくれない。
「・・・見せっこはええけど、爆豪くんも来るんやろ?」
「まぁ、かっちゃんに選んで貰うつもりだからね。それは来るさ」
「こんな言うのは違うかも知れんけど、彼氏でもない人に水着選んで貰うんは抵抗ないん?」
「?」
抵抗?かっちゃんに?
そんな事は考えた事はなかった私は考えてみた。
今まで服を買いにいく時はかなりの頻度で連れ回してる。かっちゃんは結構多才で服のセンスも抜群なのだ。だからアドバイス貰ったり選んで貰うのが割と当たり前で、事実ずっとそうしてきた。流石に下着を買うときは一緒には行かないけど、服買うときは大体かっちゃんがいた。荷物持ちとしても有能だし、連れていかないなんて勿体ない。
だから一緒にいかないという選択は、なんかピンとこない。ないな。
「・・・ないかなぁ?」
「ほんまか」
お茶子が信じられない物を見る目で見てきた。
なんだか、心に突き刺さる視線だ。
「彼氏とか出来たらどうするん?爆豪くんに彼女出来たりとか・・・」
「それは、まぁ・・・ううん。駄目だよね?」
「まぁ、普通は嫌やろ」
そう言われると少しあれな気もする。
「その時は止める・・・と思う。あ、二人きりじゃなければOKくない?」
「・・・爆豪くんはニコちゃん甘やかし過ぎや。まったく」
お茶子のジト目がかっちゃんに向けられた。
紅白饅頭とガン飛ばし合うかっちゃんだったけど、何かに気づいたのか肩を震わせこっちを見てきた。
「━━━んだ、丸顔」
「責任とらな、ぐぅで殴ったる」
「いきなり、っんの話だこら!!」
一緒にショッピングモールに来たA組一同だったけど、その買い物の目的は全員バラバラ。当然行き先もバラバラなので、それぞれ自分の買うものを求めて解散する事になった。
私とかっちゃん、それとお茶子と轟は水着を求めて。
百と耳郎ちゃん、それと梅雨ちゃんはキャリーバッグを求めて。
上鳴と眼鏡、それとあしどんと葉隠は靴を求めて。
怪しい発言をしていたブドウは阿修羅さんに連行されていった。常闇と喋らない奴も。
余った他の童貞共、切島、尾白、ドンマイ、お菓子くれる人、外国人は一緒に適当に回るらしい。
無料で配られてる地図を片手に歩くこと少し。
早速一件目の水着屋を見つけた。
ショーウィンドーに並ぶ物を見れば、悪くない感じがする。
「ここは?いくない?」
そうかっちゃんに聞けば顰めっ面してきた。
「メンズだぞ、そこ」
「そだよ?轟の買うの、ね?」
かっちゃんの隣にいる僕らの紅白饅頭の顔を見れば、コクりと頷き返してきた。
「わりぃな。俺のからで」
かっちゃんは私の水着を選ぶ為に、お茶子は見せっこする為に。じゃぁ紅白饅頭は?というと、この男は普通に水着を買いについてきたのである。
何でもスクール水着しか持ってないらしく、今回のしおりに書いてあった水着がスクール水着以外の物を着た方がよい事を知ったので、思いきって買うことにしたのだと。
因みに何処でそれを知ったかというと、しおりを見たお姉さんとお母さんに言われたそうだ。マザコンにしてシスコンとは。業が深いぜ。
そんな訳で早速見つけたメンズの水着屋に入ることにした。中に入るとお茶子は興味深そうに辺りを見渡す。まぁ、私もこういう所に来たことないからめちゃ見渡したけども。
「男子ってこういう所で買うんやね」
「ねぇー。初めて来た」
「爆豪くんと来たことないん?」
「ないない。かっちゃん、いつも私が試着してる間にさっさと自分の分買っちゃうんだもん」
「そうなんか」
お茶子と一緒になって適当に並ぶ水着を見ていくと、かっちゃんに似合いそうな水着を見つけた。赤色の生地に黒い炎の模様。格好いい。かっちゃんはシンプルな物を好むけど、これくらいの模様だったら嫌がらない気がする。
「何見てるん?・・・爆豪くんに?」
「うん。どうかな?かっくいくない?」
「まぁ、似合いそうではあるかなぁ。でも爆豪くんは水着買わないやろ?どうせなら轟くんの選んでやったらええのに」
それは、そうなんだけども。
そっと紅白饅頭を見れば、変な柄のパンツを手にしていた。あ、かっちゃんが我慢出来なくて戻させた。しかも選んであげてる。━━━あ、断った。そんなにその変な柄が良いの?
「爆豪くんが、轟くんの選んどる・・・!?」
「珍しい・・・」
「天変地異レベルや!!そんな、ようしらっとしてられんね!?」
かっちゃんって皆にそういう風に思われてんのか。
日頃の行いの悪さが招いてる事ではあるけど、ちょっとだけ可哀想になってきたな。ちょっとフォローしてあげよかな?
「天変地異レベルではないよ。流石に」
「そ、そう?」
「口は悪いし、態度悪いし、面倒臭いほどひねくれてるけど、結構面倒見いいよ?」
「それはニコちゃん限定やと思っとった・・・」
昔からそうなんだけど、言葉や態度とは裏腹にかっちゃんは世話焼きな所がある。基本自分にも人にも厳しいスタンスを取ってるから簡単に手を貸したりしないけど、本当にどうにもならない時は手を貸してくれたりする。最近で言えば切島に勉強を教えようとしてたし━━まぁ、つまり切島は勉強に関してどうにもならないと思われてたって事なんだけど。ま、それはいいか。
大抵の人がその口の悪さが原因で逃げていっちゃうけど、少しだけ見方をかえれば悪いだけの人じゃないのだ。
「まぁ、実際のとこ外面最悪だから、そう思われるのは自業自得ではあるんだけどさ。・・・だから、珍しいんだよね。ああやってかっちゃんと真正面から向き合える人って」
かっちゃんと面と向かって話せる人は少ない。
切島とかは大丈夫だけど、私が知ってる限りだと片手程度しかいないのが現実。最近はお茶子も耐性が出来てきたみたいに見えるけど・・・。
そんな事を考えてると、お茶子が顔を覗き込んできた。
訝しむような視線。なんじゃろ?
「嬉しそうな顔して・・・はぁ、もう、勝ち目ないんとちゃうかな、これは。轟くんは泣くしかないかなぁ」
「泣く?ほわい?」
「あーーーニコちゃんは気にせんでええから」
気になるぅ。
その言い方気になるぅ。
「だからぁ!それは止めろって言ってんだろ!!馬鹿!!脳みそ沸いてんのか!?てめぇはよ!!」
「・・・唐草、良いだろ?」
「せめて和式の唐草は止めろや!!こっちの洋式系にしろ馬鹿!!てめぇ見てぇなクソダサが近くいると、こっちまで馬鹿だと思われんだろぉが!!」
「・・・それは、ないな」
「良いから、頷いとけや!!!」
数十分にも及ぶ水着合戦。
最終的に私の鶴の一声でかっちゃんが選んだやつを買うことになり、この戦争は終戦を迎えた。
時間を掛けすぎたお詫びとして、紅白饅頭がクレープを奢ってくれたのでお茶子と食べ歩きした。ちょっと下品ではあるけど、これもこういう所の醍醐味だと思うので、そこら辺は目をつぶって貰う事にしよう。見るなよ。どっかの誰かさん共。
クレープを食べ終わった後は何件か水着屋を回り、可愛い水着が置いてある店を見つけたので突撃した。
何着か適当に選び鏡の前で合わせていると、ポケットに手を突っ込んだかっちゃんが見にきた。
「・・・決まったかよ」
「まだー、てか、これとかどう?」
「っ!?馬鹿っ、お前、いきなり見せんな!!」
いや、水着選びに着てるんだからさ。
そのまま待ってるとかっちゃんが眉間の皺を深くさせた。
「・・・そこに掛けてある奴にしとけ」
そう指差した所にあったのはホルターネックタイプのビキニだった。かっちゃんぽい、装飾の少ない白い水着だ。
「かっちゃんモノトーン好きだよねぇ」
「っせぇわ。気にいんねぇなら別のにしろや」
悪態をつくとかっちゃんは店を出ていってしまった。女性水着の専門店は流石にかっちゃんも居づらかったか。
私はかっちゃんに選んで貰った物を鏡の前で合わせてみた。似合うとは思う。思うけど、ちょっと大人っぽ過ぎる気がしないでもない。
でも、私も高校生だ。こういうのも良いかもしれない。
「どう?決まったニコちゃ━━━━おおぅ。えちぃ」
色々持ってきたお茶子が私の手にした水着を見て唸った。
「似合わないかなぁ?」
「似合うだろうけど・・・これ、何人落ちるんやろ。兵器やん、もう」
「私をなんだと思ってるのか。そこんとこはっきりさせようか?うん?」
失礼なお茶子のほっぺをビヨンビヨンしてると、紅白饅頭が水着を手にしてきた。持ってきたそれは、パレオ系の奴とワンピース系のやつだった。二つとも可愛い系だ。
「それ、轟が選んだの?」
「いや、麗日に持たされた」
意外に思って聞いたらお茶子センスだった。
そうだよね、さっき唐草模様のパンツに固執してた奴にしては良いセンスだと思ったよ。
轟は近くにそれを置いて「決まったら呼んでくれ」と店を出ていった。理由はかっちゃん同様なんだと思う。
「色々持ってきたけど、やっぱりニコちゃんはビキニタイプのがええと思うよ?おっぱいあるし」
「だよねぇ。フリルとかないほうが良いかな?」
「私は欲しいところだけどねぇ」
お茶子もそこそこあるんだから、どんどん見せていけば良いのに。勿体ない。
「お茶子こっちのパンツにフリルついてる奴着よっか」
「やっぱり私も着るのか」
「見せっこする約束!」
「もう、分かっとるってば━━━」
◇◇◇
緑谷が水着を買い終えるの待つ為に店内から出ると、不良みたいに座る爆豪を見つけた。せっかくここまで一緒に来たのだ。バラバラに待つこともないかと思い、爆豪の隣で待つ事にする。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
何となく間違ったのは分かった。
何故ならさっきから、離れろと言わんばかりの嫌悪的な気配を感じる。空気を読むという事が、今なんとなく分かった。
このまま黙って隣にいるのはあれかと思い「爆豪」と声を掛けたら睨まれた。まぁ、それはいつもの事なので気にせず話し掛ける。
「さっきはありがとな」
「感謝される筋合いはねぇ」
「俺はセンスがないらしくてな。姉さんにも一人で服買いにいくなって言われてた」
「勝手にベラベラ喋んな、ボケ。ぶっ飛ばすぞ」
ぶっきら棒な言葉。
俺の事が嫌いなのが犇々伝わってくる。
俺はこいつの事そんなに嫌いじゃないんだが・・・。
掛ける言葉を探してるとさっきの二人の様子が思い浮かんだ。楽しそうに水着を選び合う、二人の姿が。
「いつもああなのか?」
「・・・ああ?」
少し不思議そうな顔をしたが、俺の言葉の意味に気づいたのか、爆豪の視線が一瞬緑谷がいる店を見た。
分かったのならと、俺は話を続ける。
「もっと早く、お前らと会いたかった」
「ふざけんな」
「そうしたら、俺もあいつの選んでやれたかもしんねぇからな」
爆豪と同じように緑谷と仲良く出来たらいい、とそういう意味でいったのだが、爆豪は見るからに怒り狂っていた。最初俺の言葉を聞いたら爆豪がきょとんとしていたので変な事を言ったのは自覚したが、ここまで怒らせる物だとは思わなかった。
「ふざけんなってめぇ!!誰が選ばせるか!!調子のんじゃねーぞ!!ごら!!!」
「?調子には乗ってないぞ。選んでねぇ。分からねぇからな」
「ズレてんだよ!!馬鹿!!普通━━━━」
「普通?」
爆豪から出たその言葉が気になった。
俺は自分がズレているのは何となく分かっている。それが緑谷と大きくズレている事も。
だから爆豪が語る普通に興味があったのだが、爆豪は顔を強くしかめた後その言葉を濁してしまった。
暫くお互い何も言わずにぼぅーとしてると、爆豪のスマホが鳴った。爆豪はスマホを見て、画面をタッチする。
すると聞き慣れた元気な声が響いてきた。
『着替えた!きてきて!』
「アホみてぇな事言ってんじゃねぇー」
爆豪は直ぐに切れたスマホをポケットに滑り込ませ店に戻る。口では文句を言っても、こういう所があるからこいつは面白い。
男女の買い物というものをいまいち分かってない俺はそういうものかと爆豪に付いて店内に戻った。そうしたらじろっと見られた。入った後になんだが、付いていったら駄目だったのかもしれない。
試着室のある場所を見れば、締め切られたカーテンから顔を出す緑谷を見つけた。
なにやら楽しそうに手招きしてる。
試着室の側までいくと緑谷は顔を引っ込ませ、自分でドラムロールしている。隣の試着室からも小さいドラムロールが聞こえる。麗日が緑谷に付き合わされてるのは分かった。なんか楽しそうだ。
「じゃじゃーん!どうだー!」
ばっと開けられた先に爆豪が選んでいた水着を着こなした緑谷がいた。どう言ったら良いか分からなかったけど、ただただ目が離せなかった。
緑谷と爆豪が何か会話してるのがうっすらと聞こえてくるがよく聞き取れない。緑谷の姿が目について、正直それどころじゃなかった。
どれくらい眺めていたのか。
気がついたら緑谷との間に割り込むように爆豪の顔が入ってきた。直ぐに分かった、怒っているのは。
「・・・どうした?」
「普段ボケてる癖に、こういう時だけマトモになってんじゃねぇぞ!!!てめぇ!!」
「・・・?」
「なんで分かんねぇって面してやがんだ!!喧嘩売ってんのか!!」
よく分からないまま爆豪に襟首を掴まれ揺らされる。
首がガクガクして痛い。クラクラもする。
けれど鬼の形相の爆豪を前にしながらも、俺の頭はさっきの事で一杯だった。変な感覚だ。こういうのは感じた事がない。ふわふわした感じだ。
「爆豪・・・」
「ああ!?んだ、ボケ!!」
「・・・この気持ちは、なんだろうな?」
「知るか!!死ね!!」
爆豪に揺らされながら、長いようで短い15年の記憶の中から、俺はそれに似合う言葉を探していた。
「━━━いや、私も見よう!!着替え損やないか!」
「お茶子、超可愛い!」
「ありがとうニコちゃん!愛してる!ニコちゃんも可愛いよ!」