私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
まだ、まだか・・・(*´ー`*)
あ、今回シリアスさんが訪問してきます。
すっかり買うものも買って暇になった私達は、集合時間になるまで適当に時間潰しをしていた。まぁ、基本うぃんどーショッピングである。
お茶子もいたので洋服店を色々見て回り、気に入ったものがあれば着てみたり着せてみたり。お金に余裕がなかったので買うことはなかったけど、お茶子と楽しい時間を過ごせた。かっちゃん達もなんやかんやと言ってたけど、二人で色々見てるようだった。また友達が増えたのか、良かったねぇかっちゃん。
他にも小物店でアクセとかインテリア見たり、スポーツ店でトレーニングウェアとかウェイトリスト見たり、ヒーローのファンショップで関連グッズ見たり色々した。ファンショップにてお茶子が着込み卿のグッズを買うか10分以上頭を抱えて悩んでいたのは、見なかった事にしたけど・・・。
さらに時間は進み、そろそろ集合場所に向かわなければならない時間になったのだが、私達はショッピングモールに存在する『そこ』で熱くたぎっていた。
「熱くなれよぉぉぉぉぉ!!!」
乙女力全開で気合いをいれて叫ぶ。
私の目の前で頼りない腕に支えられた目付きの悪いにゃんこがフラフラと揺れる。出口まで後少し、というところで腕からにゃんこが滑り落ち、出口付近にある壁にバウンドして元ある場所へと帰っていった。
空の腕が出口の上で開閉する。
まるで私を嘲笑うかのように。
ユーフォーキャッチャーの分際でっ!!
私は静かに拳を握り締め、構えた。
機械に舐められて、生きていけるものか。
「ニコちゃん108の必殺技っ!!極楽浄土直行拳━━━った!?」
必殺技を放とうとしたら頭をスパンと叩かれた。
凄く痛かった。知能指数が3は減った。
痛い所を擦りながら振り返ると、こちらを睨むかっちゃんの姿が視界に入る。
「馬鹿が!!機械に当たんな!!」
「だってこいつが~!!」
指差した方へ視線を送ると、私を馬鹿にするように『残念、また来てね』と電子的な声で言われた。ムカついた。その機器はクレーンに電光掲示板が貼ってあって絵文字みたいな顔が浮かんでいるのだが、その顔がまたむかつくポイントだった。
お金を入れるまえはニコニコしていて、動かし始めるといかにも頑張るぞって顔をする。そこまでは良い。このクレーン野郎、物を落とした時驚くような顔をするのだが、それがメチャクチャ腹立つ顔してるのだ。(´°c_,°`)って顔だ、(´°c_,°`)って顔してくるのだ。お前が落としたんじゃろがい!!なんだ、その顔は!!
「あ、まだやっとる」
声に気づいて視線を向けると、お茶子と紅白饅頭が戻ってきた所だった。
「はい、ニコちゃんミルクティー」
「ありがと」
「飲みながらやったらあかんよ」
そのまま飲みながら続けようと思ってたら叱られてしまった。先に釘を刺されるようになるとは。やりおるわ、お茶子め。
怒られるのは嫌なので、大人しく近くにあった備え付けのベンチに座り気力と英気を養う。
私の隣にお茶子が座り買ってきたお茶に口をつけた。
「━━はぁ。やっぱりお茶やね。日本人の心が入っとる」
「そうなの?じゃ紅茶は?」
「・・・イギリス人の心が入っとるやないの?知らんけど」
「烏龍茶は?」
「そら、中国人の心や」
なるほど。
「その理論でいくとアメリカ人とかどうすんの?」
「コーラやな!」
お茶繋がり消し飛ばしおったか。
でもしっくりくるな。分かる。
「何馬鹿な会話してんだてめぇらは。恥ずかしいから止めろや」
お茶子と楽しく話してたらかっちゃんが割って入ってきた。相変わらずのツンデレ。仲間に入りたいなら入りたいって言えば良いのに。
「まぁ、いいや。ほら、かっちゃんも何時までも立ってないで座りなよ。ほらほら」
ポンポンと隣を叩くとかっちゃんはそっぽ向いた。
「っせぇ。それ飲んだら行くからな。さっさと飲めや」
「はいはい」
買ってきて貰ったそれを飲んでいると、ふと紅白饅頭がいない事に気づいた。さっきまでお茶子と一緒にいたのに、その姿が何処にもない。かっちゃんの手に同じように飲み物があるから持ってきたのは持ってきたのだろうけど・・・何処行った?
「お茶子、轟何処行ったか知ってる?」
「轟くん?あれ、さっきまで一緒におったのに・・・あ、おったよ。ほら」
お茶子に教えられてそこを見れば、私がやっていたユーフォーキャッチャーの前に佇む轟の姿があった。
まさか、やるきか?
じーとお茶子と様子を窺って見る。
動かない。全然動かない。
やろうとしてるのは何となく伝わってくるんだけど、動きが一切ない・・・そもそも生きてるよね?
「やらんのかな?」
「やるんじゃないの?」
「でもピクリともせんよ」
「せやな」
通り掛かる人達がユーフォーキャッチャーの前で動かない紅白饅頭を不審そうに見てくる。フォローしようもない程おかしいので仕方ないけど、あんまり見ないであげて欲しい。
あ、動いた。
財布を手にして・・・千円を━━━入らないよ!
そんなの入れる所ないから!
紅白饅頭は不思議そうに首を傾げ、千円の入れ口を探し始めた。その機器は電子マネーでも出来るタイプ。外付けされた機器に対して千円をどうにか入れようとしてる。考えてっ、入らないよ。そこには。
「近くに両替機あるのに・・・気づかんもんやろか」
「事実気づかないからね」
少しして千円が使えない事に気づいた様子の紅白饅頭。次にその機器を見つめ始めた。そして財布からカードを取り出す。
お茶子とおおっ!と感嘆の声を出したのだが、直ぐに落胆の声に変わった。
取り出したのはクレジットカードだった。
財布からチラリと見える電子マネーカードが泣いているような気がする。
勿論対応してないカードに反応する訳もなく、機器に読み込まれないその様子に紅白饅頭は首を傾げる。遂にはカードを使うのを諦めて財布に戻した。またチラリと見えた電子マネーカードが泣いてるような気がする。
「どうして気づかんの?あれって使えるマネーカードのマークとか描いてあるやろ?」
「なんでだろね」
そんな紅白饅頭の悲しい背中を眺めてると、かっちゃんが近づいていってるのが見えた。
何をするのかと思えばぶっきら棒な動きだったけど両替機を指差したり、コイン入れる所だったりボタンを指差したりしてる。終いには自分でやってみせた。
「・・・なんやろ、不思議な光景や。さっきの水着の件が無かったら、驚いたんやろけど」
「ね?面倒見良いでしょ?」
「表情が鬼みたいやなかったら、素直に頷けんのになぁ。私は嫌や。あの顔でガツガツ教えられるの」
まぁ、この楽しげな雰囲気の中で、ピッタンピッタン教え込まれるのはアレかも知れないけど・・・。
「しっかし、またどういう風の吹き回しなんだろね?轟がユーフォーキャッチャーとか・・・プッ。似合わないなぁ、あはは」
「まぁ、轟くんも色々あるんやろ」
スマホを開いて時間を確認すると、集合場所に行く時間が迫っていた。
「さってと、ちょっとお花摘みにいってきまーす」
「あ、それなら私もいくわ」
それならとかっちゃん達に荷物を預け、お茶子と一緒にトイレへと向かった。
思ったより混んでなくてそう並ばずに入れた。
色々スッキリさせて外でお茶子を待った。
私より遅く入ったからもうちょっと掛かりそう。
のんびり外の風景を眺め時間を潰してると、それが目に入った。
「━━━━━あ」
視界に入ったそれに目がいった。
人混みの中に紛れるように進む、それが。
私はスマホを開きながらそこへと向かった。
ここに相応しくない、その背中を追って。
◇◇◇
『信念なき殺意に、何の意義がある』
ヒーロー殺しの言葉を思い出しながら、俺はそこを進んだ。ヒーロー殺しの信念なんて欠片もない、バカ面を下げたくだらない人間の群れの中を。
御大層な事並べていた。
社会の為だと、正しさの為だと。
信念ゆえに殺すのだと。
で、その結果がこれか?
見てみろよヒーロー殺し。
大多数の人間は対岸の火事と━━いや、そうとすら思っちゃいないぞ。どこで誰が、どういう思いで人を殺そうがこいつらはヘラヘラ笑ってる。
誰もお前の事なんざ、知ったこっちゃないってよ。
笑えるよ、本当に。
「うっわ、これ良いのかよ・・・!」
「ヒーロー殺しだ!ぜってー問題になるっしょコレ」
間の抜けた声に視線を向ければ、ヒーロー殺しのコスチュームを模した商品を手に取る餓鬼共の姿が目に入った。マスクを被り写真を撮っている。
あの日から、こういう物が目につくようになった。
ヒーロー殺しの信念も欠片もないそこで、あいつの名前が、姿が残り続けてる。俺達ではなくて、あいつだけが。
訪ねてきたあいつらもそうだ。
どちらも口にしたのはヒーロー殺し。
俺達なんざ、だしでしかない。
なんでだ。
なんでお前にはシンパが生まれる。
何なんだ?
俺だって壊した。
壊しまくってやった。
先生に教えられて、壊しまくってやった。
お前より、俺の方がずっと経験を積んでる。
なのに、どうして俺じゃない。
同じだろう。
俺も、お前も。
結局、気に入らないものを壊していただけだろう?
「先生ぇ、俺には何が足らない」
何が。
「違う━━━」
ピタッ、と背中に冷たい物が当たった。
その硬さから金属である事が分かる。
誰に襲われているのか分からないが恨みを買う事はしてる。その内の誰かなのだろうということは直ぐに察しがついた。
「━━━━はぁ、何処の誰だか」
「何処の誰だかなんて連れないなぁ。私とあんたの仲じゃん━━━━顔面のアクセ忘れてるんじゃない?」
その話し方、声で。
俺はそこにいるのが誰か察した。
「ヒーロー目指してんじゃないの、お前。そんな物騒な物持ってて良いわけ?緑谷双虎」
近くの店のガラスを見れば、反射する風景の中にUSJで見た、体育祭で見た、先生に与えられた写真で見た、そいつの姿があった。
「ハロハロ?覚えてくれてたんだ。超迷惑。忘れてくんない?」
そう言って笑うそいつの目は、俺ですら背筋が寒くなる程に欠片も笑っていなかった。