私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
書き終わった時、純粋にそう思った。
疲れてんな、わし(´・ω・`)
アイドルよりもアイドルな美しく気高い私は、雄英高校最高の美貌の持ち主、緑谷双虎15歳。高嶺の花と呼ばれ慣れた言わずと知れたスーパーアイドルだ。勿論処女である。聖なる存在だ。魔とか祓える。
彼氏いない歴=年齢な清く正しい私は今日も今日とてかっちゃんと学校に登校した━━━━━までは良かったんだけど、それからがよろしく無かった。学校につくなり包帯先生に捕まり昨日の事についてこってり絞られた。あ、勿論かっちゃんもだ。二人でそれはもう、こってりと。もう絞れないんじゃないかなぁっと思うくらい絞られた。もうあれだ、だしとか取れそう。
ツカッチーとガチムチから言われたような事に加えて、作戦の不備や問題点についてもネチネチネチネチネチネチ祭り。止めて、私のライフはもうゼロよ!仕方ないじゃん!私だってそこら辺は分かってたよ!でも、時間とかも無かったし、見失うといけない中で頑張ってやったんだよぉ!褒めてよぉ!包帯先生のばかぁ!
・・・なんて、言ったら説教がエクセレントなレベルに達しそうなので甘んじて受ける。大人しく聞いてるのが一番の近道。しかし長いな、いつもの三倍は長いな。あれ、おかしいな。ちょっと涙が出てきた。包帯先生、今日はいつにもまして説教がエグいっす。私、ガチで泣いちゃうっす。
よくかっちゃん平気だなや。
メンタル化物か。
最終的に涙目でごめんなさいすると、「もうするな」と溜息を吐いた包帯先生は説教を止めてくれた。
後、教室への帰り際一口サイズのチョコ貰えた。
一人一個ずつ。しかも割と高級なやつだ。
多分同僚の先生に貰ったやつで、食べきれなくてくれたとか、そんなだとは思う。包帯先生はあんまりこういうの食べてる姿みないから、自分で買ったとは思えないし。本命としては心の友ミッドナイト先生かな?
しかし、こんなんで私の機嫌が直ると思ったら大間違いだぞと言いたい。まったく。
━━━えへへ、んまい。
かっちゃんはチョコとかあんまり好きじゃない。そうなると当然かっちゃんが貰った分はいらないやつだ。つまりは私の物。
かっちゃんが貰った分のチョコも食べながらホクホクした気分で教室に帰ると、昨日警察さんのお城にいった事について皆に聞かれた。聞かれた事と処分について大した事ではなかった事を知ると、皆の興味は警察署の内部に向けられた。
当然取り調べ室の話も出てくる。
皆ドラマのイメージで鏡の事とか格子が嵌められた窓とか、顔を照らす電気スタンドとか、話してる途中に出てくるお茶とか、カツ丼とかに興味深々である。
分かった、分かったから押さないの。教えるから。ね?え?迎え?取り調べ室は?後でいいの?そう?迎えはかっちゃんパパの車に乗ってきた母様が━━━え?かっちゃんいたよ?帰りは隣。何か言われなかった?全然。あ、でも肩は貸してくれたよ?・・・ちょ、なんでそんなに楽しそうなの?あしどん?スクープってなに?そんなんスクープになんの?朝とか大体肩貸して貰って・・・え?詳しく?う、うん?良いけど・・・?
困惑しながらもいつもの登校について話してると、あっという間に朝のフリータイムが終了。包帯先生が召喚される時間になった。
殆ど予鈴と同時に現れた包帯先生はいつも通り出席をとり昨日の事件についての話になった。私が怒られた事は抜きにして、クラス全員が怒られた。ネチネチ祭りレベルではなかったけど、みんなションボリンである。
こんなんで凹んでたら、包帯先生のガチ説教耐えられないぞ。みんな。
「・・・とまぁ、こんな事があった以上、こちらも以前通りに林間合宿をやる訳にはいかないって話でな。・・・例年使わせて頂いてる合宿先を急遽キャンセル。行き先は当日まで明かさない運びとなった」
クラスの皆から非難が飛び交う。
私的には中止が妥当だとは思っているので、あれを見ても皆はまだまだ平和ボケしてるんだなぁと少し心配に思う。こんなことで大丈夫か、皆よ。
ここにいる人の中で何人があの場で戦うつもりがあったのか。かっちゃんは手マンが戦う事を選ぶようなら間違いなく交戦したと思う。完全にやる気で体を構えていたから間違いない。それに紅白饅頭もそうだ。最初作戦に反対した眼鏡、お茶子も大丈夫だったと思う。
でも他は、少し意識が違ってたように思うのだ。
もしあの場で、手マンが誰かを本気で殺しに掛かったとき、何人が対抗出来たのか。考えるだけで背筋が寒くなる。勿論そこも考慮して配置はしたんだけども。
先生の話も終わり朝のホームルームは終了。
皆次の授業の準備を始めた。
大体寝て終るとは思うんだけど、一応私も準備する。見かけだけでもね?うん。
そうすると肩を叩かれた。
何だろうと振り返ると、息の荒いブドウの顔があった。
「み、緑谷ぁ・・・約束したよなぁ」
「は?」
「おっぱい揉ませるってよぉ」
そんな約束はしてないな。
記憶にない。
なに言ってんだこいつ。
「してない。脳に蛆でも湧いてんの?」
「湧いてねぇよ!あの手のヴィラン個性で足止めした時言ったろ!」
そう言われて思い返すと、そんな事勝手にほざいてた気がする。
「勝手にほざいてただけでしょ?それにしょっぴかれてもいないじゃん。私はある意味でしょっぴかれたけど」
「厳重注意は受けたんだよぉ!!頑張ったんだから報酬の一つも寄越せぇ!」
私達の話してる内容が聞こえたのか皆が集まってきた。
特に女子ーずが眉間に皺を寄せてる。かっちゃんは今トイレにいっていないけど、いたら眉間に皺寄せーずが結成された事だろう。ナニソレ見てみたい。
「峰田ちゃん、あれは皆で決めた事でしょ?そんな事言っちゃ駄目よ」
「そうだよ峰田ーさいっていだよ」
梅雨ちゃんとあしどんの言葉に、集まった皆が頷く。
「うっせぇーーー!!オイラはあの手のヴィランに顔まじまじ見られたんだぞ!どんだけこえーか!分かる奴から文句言えーー!頑張った報酬求めて何が悪い!!」
まぁ、頑張ったのは頑張ったか。
ビビりの癖に葉隠の次に前に出てたもんな。
「━━━はぁ、仕方ないな。今回だけだよ?」
「まじかよ、緑谷ぁぁぁ!!」
「ちょっ!?ニコちゃん!?」
「緑谷くん!?」
焦った声をあげたお茶子に肩を掴まれた。眼鏡も寄ってきた。他の女子ーずにも安売りしてはいけないと言われ迫られる。
私はそんな皆に大丈夫であると言って、ブドウに視線を戻した。
「その代わり条件三つをつけるよ。それでいいなら━━━」
「おうよ!その条件守るぜ!」
「聞く前にOKしない方が良いでしょ。ま、あんたが良いなら良いけどさ?」
それから時間は経ち、お昼。
ついにその時は訪れた。
お昼になると皆教室から出ていって、残るのなんて何時もは数える程しかいないけど今日は満員御礼。全員が固唾を飲んで見守っている。
特に女子ーずは何かあれば介入する気満々といった様子だ。
「うぇっへへへ、ヨダレがとまんねぇぜ」
そう言ってマジでヨダレを垂らすブドウは犯罪者にしか見えなかった。物凄く優し目で見ても、どこをどうきっても犯罪者だった。
「大丈夫なん?ニコちゃん」
「大丈夫、大丈夫」
心配するお茶子に親指を立てて、私はいよいよその準備に取り掛かった。
私が提示した条件は宣言通り三つ。
一つは触るのは胸ではなくお尻であること、もう一つは恥ずかしいから目隠ししてやること、最後の一つはジャージの上から触るものとすることの三つだ。
ジャージと胸でない事に峰田は食い下がったけど、お尻ならお昼の間撫で放題と言うと簡単に了承した。目隠しについては寧ろ興奮すると息を荒くしてる。こいつは終わってるな。
お昼の間はずっとというエロの権化のブドウに、阿修羅さんの手によって黒いアイマスクが付けられる。
阿修羅さんが「止めるなら、ここだぞ峰田」と優しくアドバイスしてる。ま、全然きくつもりはなさそうだけど。
「じゃ、手前に伸ばして。こっちから触らせるから、変に動かさないでよ。他の所触ったらその時点で終わりだから」
「分かってるっての!はよ!!はよぉぉぉぉ!!」
興奮して騒ぐブドウを横目に、私は奴を呼び出した。
体育祭の時、私に借りを作った憐れな小羊を。
とぼとぼと私の方にくる小羊は、私と同じ様にジャージ姿である。
小羊は涙目で私を見てきた。
「・・・なぁ、マジか緑谷」
蚊の鳴くような声に、私は笑顔を返しておいた。
「やれ、瀬呂」
私は一言も、私のを触らせるとは言ってない。
皆で食堂でご飯して教室に帰って来ると、まだブドウは瀬呂の尻を撫で回していた。
「ふぉぉぉぉぉぉぉ!!やべぇ!!なんか、やべぇよ!!なんか興奮が治まらないぜぇ!!背徳感が!うぉぉぉぉ!」
私はそっと瀬呂に近づき購買で買ってきたパンを食べさせた。瀬呂は泣きながらクリームパンを貪る。あんまりにも可哀想だったので、このパンは奢ってあげようと思う。ま、元々かっちゃんが買った奴だし。懐痛まないし。
「なんだよ!泣いてんのか!?緑谷も女の子なんだなぁ!」
「え?まぁ、女の子ですけど?」
「うおっ、いきなり喋んなよ!びっくりすんだろ」
「ああ、ごめんごめん。そのままどうぞ」
教室の片隅にいる二人を置いて、私は自分の席に座った。ゾロゾロと皆が集まってくる。
珍しい事に常闇まできた。
「緑谷。混沌招きし悪夢も終演の時だ。罪は購われた。二人の地獄を終わらせてやれ」
地獄って、瀬呂は兎も角としてブドウは楽しそうじゃんね?ねぇーみんなぁー?
同意を求めるように周囲に視線を飛ばすと、阿修羅さんが首を横に振った。
「流石にあれは憐れだ」
阿修羅さんの隣でお口チャックも涙ながらに頷いてきた。
「緑谷。瀬呂は、友達なんだ。助けてやってくれ」
真剣な尾白に頭を下げられ、眼鏡も「気の毒だ」と賛成を示してくる。女子ーずはもう十分だと、許すべきだと言ってきた。まぁ、お茶子は微妙な顔してた。
「かっちゃんはどう思う?」
「放っとけ。一生やらせてろ」
かっちゃんに慈悲はなかった。
「轟は━━━」
「?良いんじゃねぇか?同意してんなら」
それで良いのか、紅白饅頭。
私が言うのもなんだけど、瀬呂はそういう意味では同意してないと思う。
そんな事言ってる間にも時間は過ぎていく。
いよいよ休み時間も終るその頃、私はアイマスクをとって全てを終わらせる事にした。
引き寄せる個性でブドウのアイマスクを引っ張りとる。
急に視界が明るくなったブドウは軽く悲鳴をあげた後、光に慣れた目で自らの手元を見て固まった。
悲鳴を聞いた瀬呂は、涙に濡れた目でブドウを見つめる。
「へ、へへへ・・・。峰田、いい夢見れたかよ」
◇◇◇
その日、謎の奇声を聞いたという雄英生が多数現れた。
声を聞いた職員がかけつけるも異常はなく、声の発生源となったと思われるA組教室内にいた生徒達も分からないの一点張りで事件は迷宮入りとなる。
その後、雄英高校七不思議に新たな一説が加わった。
まっ昼間。
お昼時が終わろうとするその時、どこからともなく奇声が聞こえるのだと。そしてそれを聞いたものは、見るも無惨な姿へと変わってしまうのだと。
かつて唯一の被害者になってしまったある生徒のように。白目を剥き、泡をふき、生死の境をさ迷うのだという。
救われる方法はただ一つ。
謙虚に生きよと。