私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
反省はしてる(´・ω・`)
後悔はしてない(*ゝ`ω・)!
クラスメイトに惨劇が起きたその日の放課後。
私を含めた女子ーずは百の号令の下、カラオケ店へとやって来ていた。
そう第三回、雄英高校一年A組女子会の開幕である。
「はい!それじゃ今回はヤオモモ幹事で女子会始めるよーー!!皆ーグラスは持ったかー!」
「「「いえぇーーーい!!」」」
あしどんの掛け声に私と葉隠、ニューウェーブお茶子の元気な声が個室に木霊する。最初こそ恥ずかしがってたけど、今やすっかりお茶子は私らの仲間だ。これからはカルテットと呼んで貰おう。
百と耳郎ちゃんは相変わらず。
梅雨ちゃんは交ざろうとしてるけど、ちょっと恥ずかしそう。ナニアレ可愛い。
軽く乾杯した後、あしどんは早速歌おうとしたのだが百に止められた。
「歌う前に、お話があります━━━というより、ちょっとお話があると言っただけで、何故こんな場所に・・・皆さんお時間がなかろうと、少し話したら直ぐに解散する筈でしたのに」
頭が痛いのか、百は額に押さえて溜息をついた。
私は早速歌いたいものを決めたのでマイクを手に取ったのだが、梅雨ちゃんは早めに帰ると言っていたのを思い出した。
「━━━あ、そだ。梅雨ちゃんから歌おうか。一番時間ないし」
「緑谷さん、マイクを置いてくださいと言っているのです!」
百のシャウトに私はマイクを取り敢えず置いた。
代わりにリモコンは持ったけど・・・えっ、ちょ、リモコンくらい良いでしょぉ。あ、マイクまで!マイクは置いとけばいいでしょ!?もぅ、けちぃー。
私からマイクとリモコンを奪った百だったが、急に音楽が鳴り始めて肩をビクつかせた。マイク片手に慌てる百はモニター画面を見て更にオロオロした。ごりっごりのラブソングだった。皆は百が歌うと完全に勘違いをしているみたいで『やっちゃえ百!』と言わんばかりにやんややんやと言い始めた。
まぁ、私は葉隠がそっとマイクを置く姿をみたので、犯人があいつなの知ってるんだけど。てか、私が怒られたのにしれっと歌う気だったのが凄い・・・。
「わ、私、こんなの入れて、その使い方も分かりませんし・・・!」
「ヤオモモーー!!」
「ひゅーひゅー」
あしどんは兎も角、葉隠は鬼だな。
ひゅーひゅーではないからね。
まぁ、私も口笛風にひゅーひゅーしといた。
百は皆の歓声に応えるように、流れるメロディーにそって頑張って歌い始めた。最初は拙かったけど、直ぐに歌のテンポを理解して聞ける物になり、最終的には普通に上手かった。前々から百はハイスペックだとは思ってたけど、まさかここまでとは。歌も上手いとか。
採点モードではなかったので得点はでなかったけど、きっと90点くらいは行った事だろう。皆の拍手がその証拠だ。
「二曲目誰いくー?」
「葉隠さん!誰いくーではありませんわ!お話をさせて下さいませー!!!」
結局二曲目はお預けにして百のお話が始まった。
なんでも百パパのお仕事の関係でI・エキスポからプレオープンから参加出来る招待状が贈られてきたらしく、そのチケットが二枚余っているので一緒に来ないか?というお話だった。
なんでも近々I・アイランドとかいう人工の移動島が日本にやってきて、なんか祭りをするらしい。
「どうでしょうか。ご興味は━━━」
百が言い終わる前にあしどんと葉隠が勢いよく手をあげた。行く気満々の顔してる。顔の見えない葉隠はその動きから分かる。
「いくいくー!私いくー!!」
「ヤオモモーー!!私をエキスポに連れてってー!」
ノリノリな二人を見て他の女子達も興味からか、おずおずと手をあげ始めた。お茶子は勿論、梅雨ちゃんと耳郎ちゃんもだ。
「━━━やはりそうなりますわね。でしたら・・・あの、緑谷さんは?」
「え?私?私はいいや」
「えぇ!?いいんですか?!」
断ると百は意外な物を見る目で見てきた。
私が百にどう思われているのかよく分かった。
「あのね、お祭りならなんでも行く訳じゃないからね?」
「そ、そうなんですの?」
「音フェスとか夏祭りとはいくけど、そういうのはちょっとねぇ。なんか頭使いそう」
「まぁ、個性やヒーローアイテムの研究成果を展示した博覧会ではありますけど、そう頭を使ったりするものではありませんわよ?アトラクションもありますし」
「って言われてもなぁ・・・」
研究とか言われると行く気なくなる。
「無理にとは言いませんが・・・」
「いいよ、私は。皆で決めて」
私がそう言うと百が眉を下げた。
もしかしたら皆でワイワイやりたかったのかも知れない。だったらごめんねぇ。
そうして私抜きで始まった二枚のチケットを巡る話し合い。どうするか話し合う皆は真剣そのものだった。
とてもじゃないけど、歌うような雰囲気でなかった。
なので私は隣の部屋に行った。
「漢のォォォォオブザシップ!!てめぇがアレをぉ取ったれぇ━━━」
「入るぜ、童貞共!!音痴響かせてっかー!」
「━━いやぁぁぁ!?み、緑谷ぁぁぁぁ!?」
部屋に入ると切島が熱唱してた。
演歌とか知らないから正直上手いか分からないけど、気持ちよく歌ってるのだけは分かった。
いいね、お前ら。
「次は私に歌わせろーー!」
「いきなりなんだよ!?女子会やってんじゃねぇのか!?」
「女子会はある意味続行してるけど、チケット争奪戦が始まっちゃったからさ。かっちゃん、デュエしよ!」
端っこで暇そうにしてるかっちゃんにそう言うと、「ちっ」と一つ舌打ちした後リモコンを指差してきた。付き合ってくれるみたいだ。
歌うのかよっ、という上鳴の驚く声が聞こえるから、今日は歌うつもりなかったのかも知れない。
リモコンを手に取ってなんとなしに部屋の中を見渡すと何人かの姿が見えない。ブドウとか阿修羅さんとか・・・瀬呂と尾白もいない。
「また皆で来てんのかと思ったのに」
「いや、途中までは来てたんだけどよ。・・・峰田は傷を癒すとかでエロ本拾いにいった。川原に」
「爆発すればいいのに」
「やめろ、お前の保護者が本当に爆破しちゃうだろ」
・・・いやだって、ねぇ。女の敵じゃん。
「それで阿修羅さんとか尾白とかは。あと目覚めたかもしれない瀬呂は?」
「瀬呂の名誉の為に言っとくぞ。目覚めてねぇから。まぁ、あんな事あった後だから流石に瀬呂は体調・・・つーか心がな。だから尾白と帰った。男怖いとかいって震えてたんだけど、なんか尾白の事は大丈夫みたいだからさ」
目覚めてんじゃないの、それ。
大丈夫?尾白の尾白、瀬呂にinされない?
「阿修羅さんは?」
「障子の事だよな?歌知らないからって普通に帰った。つーか、青山のことナチュラルに忘れてんだろ。青山も帰ったぞ。まぁ、あいつは群れるの好きそうじゃないからなぁ」
阿修羅さん、特に理由がなかった。
てか、外国人の事はすっかり忘れてたよ。
「ふぅん、てか、歌わなくていいの?」
「はっ、しまった!つい緑谷に乗せられ━━━━って終わってんじゃねぇーか!」
歌いきれなかった切島をよそに、次の曲が流れ始めた。
どこかで聞いた事のある洋楽系の奴だ。
誰が歌うのかと思えば、常闇がマイクを手にしていた。
「緑谷。歌詞が見えない。横に」
「ほいほい」
流れ出した曲と共に、妙に発音のいい常闇の歌唱タイムが始まった。英語は割と得意そうだとは思ってたけど、まさか歌えるレベルだとは思わなかった。
努力出来る中2だったか、常闇。
あれ、さっきもこんな事思ったような・・・。
常闇の歌を聞きながらリモコンを手にする。
かっちゃんが乗り気なのでバラード系は避けてテンション高めの奴にしておいた。
曲を決め終えた頃、何となく視線を感じて顔をあげるとぼーと見つめてくる紅白饅頭と視線があった。
「なに?」
「爆豪と歌うのか?」
「うん?まぁ」
爆豪家と一緒に行くと一回は歌う。
割といつもの事だ。
そんな私の話を聞いた紅白饅頭は顎に手をあて、何かを考え始めた。
「轟も一緒に歌う?」
「いや、歌とか分からないからいい」
「そっ?それなら、いいけど・・・」
「ただ、な・・・」
何かを言い掛けて、紅白饅頭は口を噤んだ。
言葉を待っていると常闇の曲が終わり、私の入れた曲が流れ始めた。子供の頃に流行り、散々かっちゃんから鼻唄を聞かされたコンビのプロヒーローが歌ってるやつである。
なので取り敢えず話は後にして、私はマイクを手に取った。
「かっちゃん、今日はどっち歌う?」
「どっちでも好きにしろ。みっともねぇから音外すなよ」
「はいはーい、了解でーす」
思ったよりノリノリみたいだったので、目立つ方をかっちゃんに譲ってあげる。この曲自体はデュオ曲なので、どっちでも問題ないので基本的にその時の気分で交換こしてる。
まぁ、仮にデュエットだとしても交換こしたと思うけど。
「━━あ、かっちゃん!採点!」
「っせぇ、入れたっつんだよ」
「流石かっちゃん!」
中学の頃に叩き出した96点、今回こそ越えるぅ。
燃えろぉ、私の魂ぃぃぃぃぃぃ!!
「これで付き合ってねぇってんだから、世の中分からねぇよな?上鳴よ」
「マジか。あ、いや、切島の事疑ってる訳じゃねぇーけどな。まだ付き合ってなかったのか・・・って思ってよ」
魂の97点を叩き出し概ね満足した私は、上鳴の微妙な歌を聞いてから女子会やってる部屋に帰った。するとこちらも、熱唱祭りになってた。
「あ、おかえりニコちゃん。隣からでも聞こえとったよ。上手やった~。こっちでも歌ってよー」
「それほどでもぉ?ふふん━━━━で、なにこれ。チケットはどうなったの?」
お茶子に事情を聞くと何でも折角カラオケ店にいるのだからと、歌の得点で勝負を決する事になったみたい。
因みに残り二人の状況でお茶子は一位。葉隠は二位。梅雨ちゃんは三位だそうだ。ずばり、梅雨ちゃんの敗因は恥ずかしがった所である。
そして今現在歌ってるあしどんだが・・・・。
「いぇーーーい!」
間奏部分でノリノリなダンスをかましてる。
楽しくなっちゃったのか、サビが始まっても歌そっちのけで踊りつくしてる。
これは勝てそうにないな。
あしどんは無事最下位得点で終わり、おおとりの耳郎ちゃんが出てきた。
何を歌うのかなぁと思ってると、聞き慣れた曲が流れてくる。
「あ、これ聞いた事ある。私の母ちゃんが歌っとったなぁ」
「お茶子んとこも?私の母様も」
私達の話を聞いて他の女子ーずも集まってきた。
「うちのお父さん、この曲のレコード持ってるよ」
「三奈ちゃん本当ー?言ってもそこまで古くないでしょ?」
「よく分かんないけど、記念かなんかで出たんだって。レコード聞く機械なんて持ってないのにさ、態々この機械まで買ってきたんだよ。すっごい自慢された」
「けろっ。私も聞いた事あるわ」
「私もありますわ」
割とメジャーな曲だったらしく、皆との会話は弾んだ。それと同時に、耳郎ちゃんにしては意外なチョイスだなぁとも思った。
私の視線に気づくと耳郎ちゃんは照れたように笑う。
「いや、まぁね?ちょっと古い曲だし、流行り系の曲なんだけどさ・・・なんかさ、好きなんだよね。気持ちっていうのかな、拙いんだけどその歌詞一つ一つにさ気持ちが籠ってるっていうか、なんかそんな感じがするんだよね」
へぇーとしか言えないのでいつもの三人で「へぇー」と言っといたら、「あんたらに話した私が馬鹿だった」と呆れた顔された。
でもそれもほんの少しだけ。
直ぐに楽しそうに笑って耳郎ちゃんは歌い始めた。
歌詞の気持ちをなぞるように丁寧に、それでいて耳郎ちゃん自身の気持ちを込めるように力強く。
皆そんな耳郎ちゃんの歌に聞き入っていた。
歌いきった耳郎ちゃんは点数を見て「あちゃー」と呟く。画面に出てた「81点」は葉隠より下だったからだ。
「気持ち込めすぎた。たはは、音程外しまくり」
少し照れながらそう言った耳郎ちゃん。
私は皆に相談してから、その言葉を告げた。
「チケット争奪戦、優勝耳郎ちゃん!!」
「はぁ?何言ってんの緑谷」
ポカンとする耳郎ちゃんは不思議そうに私を見た後、同意を求めようと皆の顔を見渡し、そして肩をびくつかせた。
不覚にも泣かされた私達の目には、涙が浮かんでいたから。あ、葉隠は分からないけど。ハンカチで目元を拭ってるけど、果てしなく胡散臭い。
「な、なんで皆して!?え、なに!?」
「良い歌だったよぉ、録音しとけば良かったぁ」
「やめろ、芦戸!まじで!」
ここに誰よりも感動してる様子のあしどんの発言に、耳郎ちゃんは本気で焦り駆け寄った。録音されるのは嫌らしい。
そんなあしどんと耳郎ちゃんに葉隠がスマホ片手に近づく。
「大丈夫、三奈ちゃん。途中からだけど、録っといた。後で送るね!」
「葉隠!消せぇぇぇ!!」
「うわぁっ!?」
耳郎にスマホを取られそうになった葉隠は速攻で部屋からトンズラ。追い掛けるように耳郎ちゃんも飛び出していく。
そんな耳郎ちゃん達を見送ったお茶子は私に呟くように言ってくる。
「アレを差し置いて優勝は出来んって。そこまで図太くないもん」
「まぁ、そうだろうね。私ですらちょっと躊躇う」
「ちょっとしか躊躇わない所が、ニコちゃんらしいわ」
こうしてチケット争奪戦は耳郎ちゃん優勝、二位はお茶子となり、I・エキスポ行きの二人が決定。誰も異論なしとの事。
その後は採点なんて気にせず皆で色々歌って楽しく過ごし、適当な所で解散したのだった。
◇◇◇
━━━後に、このI・エキスポの舞台となるI・アイランドで起きたとある出来事に、私も深く関わる事になるのだが・・・それはまたの機会に。
それは彼女と出会って、彼女と共に戦った。
まだ語れない、私達の物語。