私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

112 / 282
今日も今日とて投稿ー投稿ー(*´ω`*)

明日もきっと投稿ー投稿ー(*´ω`*)

明後日も━━━明後日は分からないよぉ(*ゝ`ω・)?駄目かもしれぃじゃない?ねぇ?


授業とかでもそうなんだけど難しい話系はどうして眠たくなるんだろうか。不思議だよね?気がついたらころっと寝てるもんね。つまり先生、何が言いたいかと言いますとね、これは仕方なかったんです。許して。の巻き

雄英高校での長い1学期もいよいよ残り2日を迎えた今日この頃。今期最後のヒーロー基礎学を終えた私の元にガチムチが現れた。

 

真剣な顔で話があると言ってきたガチムチに、かっちゃんは分かりやすく顰めっ面。話の内容はなんとなく察したので変な話を聞くのはお断りしたい所だけど・・・流石にもう目を瞑れる段階でない事も察しているので大人しくついていく事にした。

 

いつもの仮眠室。

かっちゃんと私は備え付けのソファに座り、テーブルを挟んだ対面には一人用のソファにガチムチが腰掛ける。

前パイプ椅子だった気がするのに、いつの間に用意したのか。いよいよ、ガチムチの私室みたいになってきたな。ここ。

 

これまた当たり前の様に冷蔵庫から取り出された麦茶を飲みながら、ガチムチの話を待った。

 

「そうだな・・・君にはずっと黙っていた事だから、何処から話そうか・・・」

 

小さく呟かれたガチムチの言葉。

隣に座るかっちゃんが身を固くしたのが分かった。

だから聞こえるように言ってあげる。

 

「大丈夫」

 

かっちゃんは私の目を見た後、何も言わずにガチムチに視線を戻した。それにどんな意味があったのか、きっとこの先も分からないと思う。かっちゃんはそういう事は教えてくれない人だから。

 

でも、教えられなくもそれで良い。

守ろうとしてくれた事。

守ってくれていた事。

 

それだけは、もう分かってるから。

 

私もかっちゃんと同じようにガチムチに視線を戻す。

するとガチムチが困ったように笑った。

 

「君達には敵わないな・・・。緑谷少女、それと爆豪少年にも改めて聞いて欲しい。私と奴の話を━━━━」

 

 

 

 

そうしてガチムチの話は始まった。

それはとても長い話だった。真剣に聞こうと思っていた私が思わずウトウトする程、長くて退屈なお話でもあった。難しい所は大体聞いてなかったのだけど、概要は何となく分かった。

 

なんか『おーるふぉーわん』とか言うヤバイやつに目を付けられてるらしい。・・・私が。

 

「取り敢えず言いたい━━━何してくれてんのぉ!!」

 

そう言って残念な子を見るようにガチムチに視線を向けると、ガチムチは申し訳無さそうに頭を下げた。

 

「いや、本当にすまない。私がちゃんと奴を捕まえてさえいれば・・・というか、なんか軽いね?ちゃんと話分かったかな?大体船を漕いでたけど」

「しっつれいな!それは確かに!話の合間合間、ちょっとウトウトしたけど!それだけですぅぅ!聞いてましたぁぁぁ!」

「それは・・・大丈夫かなぁ?なんか先生凄く不安だよ」

 

溜息をついたガチムチは麦茶を飲んだ。

 

「まぁ、聞いていたなら良いか。君は要領の良い子だ。しつこく言わなくても分かるだろうからね。先にも言ったように、君に報せない代わりとして、事情を知ってる爆豪少年にボディーガードを頼んでいたんだ。何かあった時、私に連絡をいれる事を条件にね」

 

違和感はあったのだ。

確かにかっちゃんは何かと私に構ってはくれるけど、朝迎えにきたり送ってくれたりと、そういう事をするやつじゃなかった。実際中学の時だって、基本的にバラバラに登下校してた。いや、まぁ、たまにはそういう日もあったけども。

 

しかし、何かあるとは思ってはいたけど、こういう事だとは思わなかったなぁ。てっきり、それまでの己の所業を悔い改めて、あんな事してんのかとばっかり・・・。

 

かっちゃんに視線を送ると顔を背けられた。

黙っていた事にちょっと罪悪感とか感じてるのかも知れない。

 

「さて、どうして今更になってこんな話をしたかというとね・・・捜査の結果から、奴が暗躍してる可能性がいよいよ現実味を帯びてきたからなんだ。先日の死柄木の件で私が懸念したのは、死柄木本人よりその背後にいると思われるオール・フォー・ワンの存在だった」

 

どうりで変に焦ってると思った。

手マンは厄介なヴィランだけど、ガチムチが慌てるような相手じゃないからおかしいとは思っていたのだ。

 

「君に報せずに終わりにしようと思っていた。けれどそうも言っていられない状況だ。いまだ奴は姿を現さず、その痕跡も不確かなまま。情けない話だが、今の状況ではUSJ同様に後手に回る可能性が大きい。だからね、君自身にも気を付けて欲しいんだ」

「私も戦う覚悟をって話ですか?」

「違うよ。それはあくまで私の仕事だ。君は自分の事だけ━━━いや、そうだな。君と君の大切な者の事だけ考えなさい」

 

ガチムチは真剣な顔で言ってきた。

 

「オール・フォー・ワン。超常黎明期、社会がまだ変化に対応しきれてない頃より裏社会に君臨する、正真正銘の化け物だ。個性を他者から奪い、他者に与えることの出来る非常に稀有な個性を持つ奴は、人々から多くの個性を奪い、同時にその圧倒的な力をもって多くの人々を傷つけた。君が対峙した脳無など、やつが生み出した悲劇の一つだ」

 

脳裏に脳みそ丸見えなアホ面が甦る。

 

「・・・平和を願う人々の長きに渡る戦いの果て、私の師を含め多くの犠牲があった。その上で漸く私が倒した━━━のだと思っていた。けれど、それは違った。私は奴を倒す機会があったにも関わらず、奴を逃していた。これは私の落ち度。君達が背負う物ではない・・・奴は必ず私が倒す」

 

ガチムチの目が私を見つめた。

力強い決意の火が灯った、その目で。

じっとそれを見てるとガチムチが苦笑いを浮かべた。柔らかい、いつものガチムチらしい笑いだ。

 

「だからね、覚えておいて欲しかった。この先何があろうと安心していて欲しいと。どんな事になろうと、必ず私が君達を守ると。何があっても助け出すと」

 

ガチムチの言葉は本気だろう。

そこは疑うつもりはない。

けど、必ず守るというのであれば、話は別だ。

 

「駄目だったらどうします?」

 

そう尋ねるとガチムチが眉を顰めた。

 

「いや、絶対に━━━」

「いや、そういう気持ちとかはどうでも良いんで。現実的に駄目だった時の話をしましょうよ。いつも近くにいる訳じゃないんだから、間に合わないパターンもあるじゃないですか?怪我とかしたら守ったとは言えませんよね?」

「厳しいな、君は・・・」

 

申し訳無さそうにするガチムチ。

私は駄目だった時の事を考える。

 

「取り敢えず・・・そうですねぇ。1回1焼き肉で手を打ちます」

「うん、分かった。1回1焼き肉で・・・・1焼き肉ってなに?」

「失敗したごとに、高級焼き肉店で食べ放題を奢って貰います」

 

そう伝えるとガチムチは可笑しそうに笑った。

 

「ははは、それは、私が助ける事前提なんだね?信用してくれるのかい、君は」

「そう言ったんじゃないんですか?そもそも守るのと助けるのは別ですよね?守れなかったから、助けがいるんじゃないですか?てか、助けて貰わないと私も困りますし?まぁ、安心して下さいよ。ガチムチが来るまで意地でも生き残っておきますから」

「━━それは心強いな。しかし、自分で言ってて気づかなかった。言われてみればそうだね?それじゃ約束しよう。私が守り切れず君が傷ついたりした時は、焼き肉を奢ろう。まぁ、その時のお財布事情もあるから、直ぐにとはいかないかも知れないけどね」

 

私は近くにある備品のメモ帳を手にし、さらっとそれを書き込んでガチムチの前に出した。

きょとんとするガチムチは紙に書かれた一文を見て、そしてまた笑った。

 

「ふふ、まさか、君に本当にサインさせられる日が来るとは思わなかったな」

「借金の保証人のがいいですか?」

「まさか。さ、書いたよ」

 

差し出されたそれに、オールマイトの名前が書き込まれた。小癪にも有名人風のサインだ。

 

「最新版さ」

「本名にしてくださいよ」

「手厳しいなぁ・・・ファンでなくても、大抵喜んでくれるのに」

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

緑谷少女と爆豪少年が部屋を出た後、私は椅子に持たれ掛かった。もっと辛辣な言葉を掛けられると思っていただけに、緑谷少女のあっけらかんとしたその態度を受け、張り詰めていた力がすっかり抜けてしまった。

 

「・・・信じてくれるか」

 

彼女は誰よりも守る事の難しさを知っている。

そうしたくて力を身に付けてきたのだから、人一倍その事を考えてきたのだろう。

 

「守るというのは・・・そうだな、難しい」

 

彼女の言うとおりだ。

守るにも色々とあるが物理的に守る為には、特別な力でもない限り大前提として側にいなければならない。

そしてそれが出来ない以上、その言葉はあまりに無責任と言えよう。

 

「塚内くん、私は彼女に何かを伝えられてるのだろうか・・・?」

 

考えれば考える程、私は彼女に教えられてるような気がする。先生としてどれだけ彼女の力になれているのか甚だ疑問だ。今日もまた、こうして教えられている。

 

情けない限りだ。

けれど━━━。

 

 

『約束ですよ?』

 

 

帰り際、彼女はそう言った。

いつもの屈託ない笑顔で。

 

「・・・少しはマシになれたでしょうか、お師匠」

 

私の呟きに答える人はいない。

けれど、何となく『まだまだだな』と笑うお師匠の顔が頭に浮かんだ。

緑谷少女と同じ様に、よく晴れた日の太陽の如く眩しくて暖かだったあの人の笑顔が。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。