私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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森羅天征えぇぇぇぇ!!

・・・ふぅ、まだ出なかったか(;・ω・)

かめはめ波も駄目、波動拳も駄目、ラディカルグッドスピードも衝撃のファーストブリットも駄目。

いつになったら必殺技を使えるようになるのか。
誰か、チャクラの練りかたから教えてくれ。



旅行の日に限って寝坊するタイプな私。努力が実ったのか、やっと起きれたよ!まだ出発まで三十分もある。ふふ、これは自慢せねば。あ、もしもし早起きできた・・・え、旅行は明日?の巻き

予報通りの雲一つない晴天の日。

見上げれば夏特有の陽射しが眩しい。

朝のニュースだと今日は30度を越える真夏日だとかなんとか。海に行くにはいい感じの熱さだ。

 

「おい、双虎。あんまはしゃぐな、餓鬼じゃねぇんだ」

 

私のキャリーバッグを引いたかっちゃんはのそのそと歩きながら文句を言ってきた。私はプチオコである。何を言うか、かっちゃんよ。郷には入れば・・・なんとかって言うじゃないか!こういうはしゃぎ時にはしゃがなくて、いつはしゃぐとというのか!!

 

私は一旦かっちゃんの元まで戻り、ポケットに突っ込まれた手を引いて目的地へと急いだ。

 

「お、おい馬鹿!引っ張るんじゃねぇ!あぶねぇだろが!つか、てめぇの荷物矢鱈と重ぇんだよ!何入れてんだ!!」

「レディーの荷物を重いとかいうなぁ!軽いだろ、羽のように!てか、それおニューなんだから、傷つけたらパンチするからね!」

「だったら引っ張るんじゃねぇよ!」

 

かっちゃんと騒ぎながら駅までの道のりを行く。

いつも長く感じる道のりが、今日はやけに短く感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

電車を乗り継ぎ30分。

待ち合わせ場所へと辿り着いた。

予定時間より早くついたのに殆どのメンバーが集合している。楽しそうにお喋りしてる女子ーずが目についた私は早速交ざりに行った。

 

「はよー!いい天気になったねぇ、ふぅーー!」

「あ、ニコ!おっはよーふぅーー!」

「ふぅーー!!」

 

「止めな馬鹿スリー。・・・つか、人前でよくそれができんな、あんたらは」

 

あしどん達とよく分からない挨拶をしたら耳郎ちゃんから冷たい言葉を頂いた。傷ついた。心ない言葉に傷ついた。

 

「酷い!耳郎ちゃん!私達は二日ぶりの再会に喜んだだけなのに!」

「そうだよ、ニコの言うとおりだよ!響香は酷いよ!喜びを言葉にしただけなのに、そんな否定しなくても良いのに!」

 

葉隠の言葉を待っていると、葉隠はヤレヤレというポーズをとってきた。

 

「いやぁ、響香ちゃんの言うとおり、恥ずかしい奴等だよ。ニコやんと三奈ちゃんは」

 

「「まさかの裏切り葉隠ぇ!!」

「いつも味方になると思ったら、大間違いだよ!!ふははは!!ねぇ!響香ちゃん」

 

そう言って葉隠は耳郎ちゃんを見たけど、耳郎ちゃんは目を逸らしてきた。

なので葉隠はそっと私たちの肩を掴み頷く。

 

「「「ふぅーー!!」」」

 

「つまらんコントすんな馬鹿スリー」

 

耳郎ちゃんから冷たい眼差しとツッコミを頂いた所で、「緑谷ー」という聞き慣れた声が耳に届いた。視線を向けると尾白が手を振ってきた。

 

「おはよう。相変わらず朝から元気だな」

「ったぼうよ!遊ぶと分かってて元気の出ない程インドアっ子ではないのよ!」

「ごめん、緑谷からはインドアさは欠片も見えないから。根っからのアウトドア派だろ」

「そうとも言う!」

 

尾白と話してると最近側にいる事が多かった瀬呂がいないのが気になった。

 

「瀬呂はどしたの?」

「うん、ああ。瀬呂ね。遅れてくるって・・・あ、話を噂すればだ」

 

尾白の見た方向に視線をやると、阿修羅さんに担がれた瀬呂が見えた。なんで阿修羅さんがとも思ったけど、阿修羅さんなら大丈夫なので気にしない事にする。

尾白はそんな阿修羅さん達の元へと向かう。ついでなので私もついてく。

 

「おはよう、障子。今日は悪かったね」

 

尾白がそう言うと阿修羅さんは首を横に振った。

 

「気にするな、尾白。もののついでだ」

「はなせぇぇぇ!障子ぃぃぃぃ!俺は行かないぃぃぃ!」

 

めちゃ抵抗してるやん。

 

「尾白、瀬呂行くの?」

「うん?行くよ?だからここにいるんだろ」

 

何故だか尾白の目が笑ってない。

それ以上聞くのもなんだかなぁと思って、私は尾白達と離れかっちゃんの所に戻った。かっちゃんは切島と何か真剣に話してるようだったんだけど、私が行くと話すのを止めてしまう。

 

何話してたのか。

超気になるんですけども。

 

かっちゃん達と喋りながら少し待つと、「おはよー」という可愛い声と共にお茶子がやってきた。轟と眼鏡の男二人を引き連れて。

お茶子がハーレムを築いてる事に若干驚きながらも、私達女子ーずはいたって普通の挨拶を返す。

 

「はよ、お茶子ー!どっちが本命?ちゅーしたー?」

「初でーとはいつ?麗日ー」

「アオハルしてるねぇーふぅーー!」

「まじか、麗日」

 

「なんっ━━━━でやねん!!」

 

渾身のツッコミが返ってきた。

やねんが駅前に木霊する。

 

「時間的に被るから一緒にきただけや!そんなんちゃうから!それに━━━いや、これはあかんか━━━てか、どうせ爆豪くんと一緒に来てるニコちゃんにだけは言われたないわ!!」

 

なんでやねん。

 

「ほほぅ、その様子。麗日氏、何か面白い情報をお持ちですな?どうですかな、葉隠氏」

「まことその通りですな、三奈氏。これは詳しくお話して頂きませんと、いけませんな」

 

眼鏡をかけ直す仕草をしたあしどんと葉隠が荒ぶるお茶子を囲む。私も交ざろうとしたのだが、眼鏡に声を掛けられた事でタイミングを逃す。

 

まぁ、お茶子には後で聞けばいいので、そのまま眼鏡達の方へと意識を向ける事にした。

 

「はよ、眼鏡」

「ああ、おはよう緑谷くん。今日は晴れて良かったな」

「ねぇー。折角の海だし、晴れてくんないとね?━━━んで、轟もはよ!」

 

優しさが天元突破してる私は、何故か眼鏡の後ろに隠れるようにいた紅白饅頭にも挨拶してあげる。あまりの己の女神っぷり、私は私に惚れそうである━━━なんて思ったのもつかの間。何も返してこない轟の反応に、私は首を傾げた。

 

「どしたの?」

 

顔を覗き込むと、轟が身を固めた。

まるで蛇に睨まれたカエルのようである。

カエルは梅雨ちゃんのアイデンティティーだから、出来れば控えて貰いたい。

 

「と、轟くん!挨拶だ」

「あ、ああ。大丈夫だ・・・分かってる」

 

戸惑うような眼鏡の声に、紅白饅頭は深呼吸を何度かした後よろよろと動き出した。

 

「お、おは、━━━━おう」

「おはようと言うだけだぞ!?本気かい、轟くん!?」

「わりぃ」

 

よく分からないけど、紅白饅頭は調子が悪いらしい。

 

「無理してこなくても良かったのに。帰っても大丈夫だよ?かっちゃんもいるし。何故だか知らないけど、阿修羅さんもいるし 」

「いや!!それには及ばないとも!緑谷くん!!轟くんはそう、寝起きで、多分、きっと、寝ぼけているんだと思う!そうだろ、轟くん!?」

 

「・・・?いや、寝ぼけてはい━━━━」

 

何か言おうとした紅白饅頭の口を眼鏡は押さえた。

 

「轟くーーんんんん!顔を洗いにいこう!そうすれば目も冴えるさ!それがいい!では、緑谷くん!僕たちは少しトイレに行かせて貰うよ!!何かあったらスマホに電話してくれたまえ!!」

 

そう言って紅白饅頭を引き摺るように連れていった眼鏡は必死そのもので、何かを隠している事は嫌でも分かった。聞き出してみたい所だけど、話の内容によって面倒な事になるかも知れない。なので、取り敢えずは放っておく事にする。触らぬが仏?だっけ?ともいうし?ん、違うか?知らぬ仏に祟りなしだっけか?ん?

 

更に待つこと十分程。

 

待ち合わせ場所に一台の大型バスが止まった。

観光用とは違い何処と無く高級感が漂うそれに、集合していた私達は嫌な予感を覚える。

 

「・・・なぁ、これってさ」

 

切島が何かを口にしようとした時、不意にバスの窓が開かれた。そしてそこには、やっぱり見慣れた人物の顔があった。

 

「お早う御座います、皆さん!お迎えに上がりましたわ!」

 

とても元気そうで、とても嬉しそうに笑う、私達のヤオモモが。

 

 

 

 

 

 

 

百に促されて中に入ると思った以上にブルジョアだった。対面式に並べられた椅子は高級感たっぷりで手で押してみるとフッカフカだった。肌触りの良さから、本革の可能性あり。その中心に置かれた重厚感溢れる黒の長テーブルなんて誰が見ても分かる高いやつだった。テーブルの各所に盛り込まれた金細工が怖い。天井に提げられたシャンデリアがキラキラと光を乱反射させ、物凄く落ち着かない空気を出してくださる。BGMなのかほんのりと流れるクラシック的な音楽もあって、更に落ち着かない感じだ。

 

そしてその中でポツンと座る、高級感に怯える梅雨ちゃんの可哀想なこと可哀想なこと。

 

私は怯える梅雨を抱き締めにいく。

ぎゅっとすると「こ、怖かったわ」と半泣きだった。

安心して、もう一人にしない!

 

梅雨ちゃんは割と百ん家と近かったので、先に合流してこちらに来る手筈だったのだ。それがまさか、こんな悲劇を生むとは思わなかった。ごめん、梅雨ちゃん!一人でこんな高級品に囲ませて!!・・・まあ、帰りにまた一人になるとは思うんだけど。

 

そんな私達の様子を見て百はとても不思議そう。

百に説明してあげたい所だけど、分かり合えないような気がする。だからなんでもないと誤魔化しておいた。

 

皆戸惑いながらも適当に席に座る。

私はそのまま梅雨ちゃんの隣に座り、梅雨ちゃんを挟んだ反対側にはお茶子が座った。高級感から梅雨ちゃんを守るディフェンスフォーメーションだ。

 

あ、私のもう一つの隣はかっちゃんが腰掛けた。

流れから女子が座ると思ってけど、まぁ、なんでも良いけどね?うん。

 

全員が座るのを確認するとバスがゆっくりと走り出し、それと同時にバス後部にあった謎の扉が開き、そこから執事っぽい人が現れた。

 

「お早う御座います、お嬢様のご友人の方々。私、八百万家の執事を務めさせて頂いております内村と申します。芦戸様、耳郎様、尾白様、瀬呂様につきましては先日ぶりでこざいますね」

 

どんな関係だろうかと思ったが、よくよくメンバーの考えてみると百先生による勉強会に参加した面々である事に気づいた。案の定、挨拶された面々は頭を下げてる。

 

「本日はお嬢様にお付き合い頂き、誠にありがとう御座います。昔からお嬢様は人と上手く関われず、ご友人もあまりいらっしゃいませんでした。それがこのように沢山のご学友と共にお出掛けになる日がこようとは。私、皆様に深き感謝を━━━━」

「じいや!恥ずかしいからお止めなさい!もう!それよりも皆さんにお飲み物の用意を」

「━━━と、そうですな。色々とご用意させて頂きました。こちらメニューとなっております。どうぞ」

 

執事さんから配られた高級感溢れる革張りのメニュー。

中身より、外装の値段から気になる。

しかも態々人数分用意されてる。

 

ここまで幾ら掛かってるのか知りたい。

 

梅雨ちゃんの隣に座るお茶子がメニューを手に停止した。

梅雨ちゃんは何とかメニューを開いたけど、その中身を見て完全に固まった。

何が書いてあんのこれ。呪いの言葉?ねぇ?

 

開くと呪われそうなので見ないで執事さんにコーラを頼んでおく。私の注文に快く頷く執事さんの様子を見て、かっちゃんと眼鏡、それと轟以外全員がコーラをチョイス。私の後に続くんじゃないよ、こら。

 

そんな中かっちゃんはコーヒー。轟はお茶。眼鏡はオレンジジュースを選んだ。

眼鏡はそろそろ血液がオレンジになるじゃないだろうか。

 

全員の手に飲み物が渡った頃、あしどんはコップを掲げて声をあげた。あしどんの順応性たるや、もうなれたのか生き生きとした表情である。

 

「これから海に着くまで二時間!楽しくいこー!!カンパーイ!!」

 

疎らに上がったコップが打ち合わされる。

私を含めこの乗りにのっかれたのは一部だけ。

けど、空気はさっきより明るくなった。

 

「ヤオモモ!カラオケしよ!!あるよね!?」

「か、カラオケですか?どうでしょう、じいや?」

 

執事のウッチーが百の質問に肯定するように頷く。

 

「勿論あります。こんな事もあろうかと、準備しておきました。最新型を」

「まぁ、それは良かった!芦戸さん!あるそうですわ!」

 

あしどんは一瞬微妙な顔をしたけど直ぐに持ち直し、「いいね!」と元気な声をだして私の方を見てきた。ほほう、協力要請ですね?盛り上げ隊ですね?分かります。

 

「やったろじゃないの!!マイクプリーズ!」

「よし!それでこそニコだ!」

 

執事さんからマイクを貰い、クルクルと掌で回す。

 

「へい!ボーイズアンドガール!耳の穴かっぽじってよく聞くがよい!妖精と謳われし我等の美声を!」

「OKニコー!御機嫌ないつものやったげて!」

「イェー!聞きたいか私の武勇伝!」

 

「それは歌ちゃう━━━で、古いわ!」

 

 

 

 

お茶子のツッコミと共に始まったカラオケ大会。

二時間後、漫才トリオ馬鹿スリーWithお茶子のお笑いライブで締められる事を、ここいる誰もが欠片も予想していなかった。

 

「葉隠!いつものやったげて!」

「いぇー!聞きたいか私の武勇伝!!」

 

「ニコちゃん!ボケ増やさんといて!!」

 


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