私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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シリアスさんがくるぞー!シリアスさんがすげぇー勢いで来てるぞー!くそっ、ヒロアカ、地味にシリアスがすげぇ生息しておる!かてへん!ナニコレ!


シリアスのみの閑話なんて誰も求めていないんだよ!馬鹿!だから書かないと宣言しながらも書くシリアス閑話の巻き

無機質な音が鳴り響く暗く淀んだ部屋の一室。

僕はお気に入りのレコードを聞きながら、椅子にもたれ掛かっていた。

 

点滴の刺さっている腕が疼く。

煩わしく思ったが、今のこの体ではそれを外す訳にもいかない。それすらも叶わない、脆弱な体なのだ。

彼に敗北した己れの不甲斐なさの結果であるこの姿。もう受け入れてはいるが、彼の事を思い出すとやはり気分の良いことではない。

 

カチャ。

 

そういう金属音と共に部屋に気配が一つ入ってきた。

感知した反応通りの人物であれば、彼だ。

 

「やぁ、ドクター。どうかな、調子は」

 

僕の言葉にドクターは眉をしかめた。

 

「それは皮肉かな、先生」

「とんでもない。僕はただドクターの体調を心配しただけさ。他意はないよ」

「だと良いんだがな。調子は相変わらずだ。まだ、先生の体を治すめどは立たんよ」

「なら、あれはどうしたかな?上手くいったかい?」

「ああ、あれか。混ざる前に死んだよ。前例があるとはいえ、無茶な話だ」

 

ドクターは近くにあった椅子に身を沈めた。

 

「個性を複数持たせる事は可能。が、そこからが上手くいかん。個性を混ぜ合わせる。言葉では簡単だが、これが中々どうにもな」

「だが、僕の弟は上手くやった」

「それが特別だった、と思いたいがな」

 

カルテを読んでいたドクターは溜息を落とす。

酷く疲れているように感じる。

 

「なら、諦めるかい?」

「馬鹿を言うな、先生。こんな面白い事、止められるものか。何より、この技術が確立出来れば私は━━━いや、この話は止めておくか。取らぬ狸のなんとやらというからなぁ」

「それは良かった。ドクターほどの協力者がいなくなると、僕も困ってしまうからね」

「言い寄るわ。怪我さえなければ、そうも思うまいよ」

 

乾いた笑い声をあげたドクターは何かを思い出したように表情を固めた。

 

「そういえば、アレは届けておいたぞ」

「ああ、忘れてたよ。無事に彼女の元に?」

「雄英も大した事はない。所詮はただの教育機関の一つだ。贈り物の一つも止められないのだからな」

「あそこに期待し過ぎてはいけないよ、ドクター。いやぁ、いまや何処もかしこも同じかな?酷く温く、酷く臭い。つまらない時代になった。」

「あんたが勝ってれば違ったか、先生?」

 

面白い事をいう。そんな事、当然だろう。

けれど現実はこの様。

もはやそれを口にする資格は僕にはない。

 

「例え話は嫌いなんだ。それは次代の彼に任せるよ。」

「その彼は上手くやれるのか?」

「やれるとも」

 

その為に育てた。

それだけの為に育てたのだから。

 

「彼は僕になる大切な大切な、僕の生徒だよ。必ず、僕になってくれるさ」

 

そして、オールマイトの作ったくだらない時代を終わらせてくれる。僕の全てを奪った彼から、今度は僕が全てを奪いさる。

 

「ふふふ、楽しみだなぁ」

 

僕は音楽を嗜んだ。

無惨に血の池に沈む彼の姿を想像しながら、苦悩に歪む彼の顔を想像しながら、みすぼらしく死んでいく彼の姿を想像しながら。

 

僕は音楽を嗜んだ。

彼を思って。

彼に選ばれた少女を思って。

 

 

 

 

 

「━━━プレゼント、喜んでくれたかなぁ。ねぇ、緑谷双虎ちゃん」

 

 


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