私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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夏休みへん、なげぇ。
ま、でも、本編はいったら、シリアスなげぇし。

今のうち楽しんでおくで(*ゝ`ω・)


海岸沿いで花火をやる不届き者につぐ、後片付けをしなさい。じゃないと、私みたいな善良な市民がゴミを踏んで怪我します。てか、しました。なので、こんど見掛けたら尻の穴にロケット花火突っ込むんで宜しく。の巻き

初日の海を程ほどに遊んだ、その日の夜。

お屋敷で八百万家専属シェフにより振る舞われたご馳走をこれでもかと堪能した私達は、浜辺に打ち立てられた十字架のモニュメントの前で花火の準備をいそいそと行っていた。

 

海ときたらやっぱり花火。

あしどんと私の希望で始まった小さな花火大会。

準備する皆の顔は楽しそうだ。

 

「うわぁぁぁん!解放してくれよぉぉぉ!!もう何もしねぇぇぇよぉぉぉぉ━━━━━タブン━━━━━オイラも花火したいよぉぉぉ!!女子と花火したいよぉぉぉ!!」

 

泣きわめくモニュメントを前に誰一人そちらに顔を向けず、本当に楽しそうに準備してる。

 

「緑谷ちゃんが買い出しにいったのよね?爆豪ちゃん達と。これって何なの?」

 

買ってきた花火を地面に広げる梅雨ちゃんが、黒い円筒形の塊を手にして不思議そうに首を傾げる。

 

「ヘビ玉」

「けろっ?ヘビ玉?」

「火を点けると、こう、にょきにょきーって黒い奴が出てくるの」

「?」

 

私の説明では分からなかったのか、梅雨ちゃんの頭の上に疑問符が浮かぶ。まぁでも、これ以上の説明とか私も無理だし。つい懐かしくて買ったけど、私もヘビ玉が何なのか、何のためにあるものなのか、ぶっちゃけ分からないから仕方ないよね。

 

小学生の頃やった悪戯を思い出すなぁ。

 

昔の思い出に浸ってると肩を叩かれた。

振り向けば眉を下げた上鳴、その後ろに似たような顔した男子ーずがいた。

 

「どしたの?」

「いや、こんな事言うのはあれなんだけさ、いや、峰田の奴が悪いんだけどさ、そろそろ降ろしてやってくんね?」

 

上鳴の後ろにいた男子ーずの一人、切島が申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「この通りだぜ、緑谷。確かによ、峰田はあれだったけどよ、そろそろ勘弁してやってくれ。飯もなしでずっとこのままなんだ、反省したって。ほら、俺達もちゃんと見張るからよ」

 

切島がそう言うと尾白と阿修羅さん、常闇も頷く。

けれど眼鏡や紅白饅頭は賛成していないみたいだ。かっちゃんは相変わらずブドウの処遇に無関心だし。

━━━あ、それとあいつも。

 

「良いんじゃねぇか、もう少し反省させとけばよ」

 

そんな声があがったのは男子ーずと反対側、女子ーずに混ざり花火を準備するその男から。

女子に囲まれ楽しそうに頬を弛める、ドンマイこと瀬呂である。

 

「なっ!瀬呂!お前なっ!」

「切島くーん、そうは言ってもさぁ、峰田が女子達にセクハラ紛いの━━━いや、セクハラしたのは事実じゃないか。彼女達が安心して過ごす為にも、紳士である俺は賛成出来ないなぁ」

「だからそれは俺らが━━━」

「抑えられなかったから、こうなってるのだけど?寧ろ、この処置は女子達からの優しさだよ?通報されてもおかしくないんだから。寧ろ感謝しないとな?」

 

瀬呂の言うとおり、ブドウの行動は目に余るものだった。

見つかってしまったものは仕方ないと一緒に遊ぶことになったのだが、ブドウは予想以上にブドウでどスケベ過ぎたのだ。

ビーチバレーをやれば躊躇いもなくおっぱいガン見。水の掛け合いが始まれば厭らしい目付きで変な所ばかりに水を掛けてくる。スイカ割りすれば目隠ししたのを良いことに、分からない体を装って女子に突撃。海に入れば潜って近寄ってくるし、浜辺で横になればサンオイル片手に鼻息MAXで迫ってくる。

 

他にもあげたらキリがない。

予想以上にブドウはクソだった。

 

だからこそ、比較的穏和な梅雨ちゃんやこういう事に反対する事の多い百が、今のブドウの処遇に対して意見するどころか目も合わせないのだから。

相当オコである事が分かる。

 

それとは反対に瀬呂は女子ーずにチヤホヤされた筆頭だった。例の一件で落ち込むその姿に同情したのか、女子ーずは何かと瀬呂の世話を焼いたのだ。あしどんにサンオイル塗って貰ったり、疲れて休んでいれば百が飲み物もってったり・・・他にも色々。

 

女子ーずに砂で埋められながら、幸せそうに笑う瀬呂の姿はまだ記憶に新しい。

 

「峰田くん、これは自業自得なのだよ。大人しく罪を償いなさい」

「瀬呂、この野郎!!試験誰のお陰でクリア出来たのか忘れた訳じゃないよな!!?」

「あははっ!それこそ関係ないな!なんたって俺は赤点だったからさー!」

「はっ!?そうだった、お前だけ赤点になったんだった!!」

 

楽しそうに峰田を弄り始めた瀬呂を放っておき、私達女子ーず一同は準備を進めた。

 

 

それから少しして、モニュメントはモニュメントのまま花火大会が始まった。開会式と称してあしどんが打ち上げ花火の導火線に火を点ける。

 

パシュッという音共に光が打ち上がり、空に小さな花を咲かせる。

 

「ショボッ」

 

思わず溢れた私の言葉。

誰とも知れずに笑い声があがる。

 

「それじゃ後は、好きにやっちゃおー!」

 

あしどんの掛け声と共に皆がそれぞれの花火を手に火を点ける。火薬の焼ける臭いと共に光の粒が溢れ出し、薄暗い海岸を照らしていく。

 

私も禁じ手とされた二刀流の封印を解き、闇夜を切り裂く花火マスターとしての技を披露する。

秘技、二刀流回転花火舞!!

 

「っぶねぇ!!緑谷!!こっち火花飛んできたぞ!」

 

切島に普通に怒られた。

それならばと龍虎の構えから始まる二刀流奥義を披露しようとしたが、かっちゃんに一本取られてしまったので不発に終わる。

 

「返してよぉ、奥義がぁー」

「返すか。あぶねぇだろ、振り回すな。前みてぇに残しておいた花火一斉引火させてぇのか馬鹿」

「うぅぅぅ」

 

一斉発火って、かっちゃんはいつの事言ってるのか。

あんなの小学生の時、一回こっきりだけだ。早々ミスする分けないじゃないか。

いや、まぁ、あの時は大変な騒ぎになったけども。

 

「大人しくやんねぇと、やらせねぇぞ」

「うぅぅぅぅ・・・クソかっちゃん」

「んだと、こら」

 

思いっきり睨まれてしまった。

おお、怖い怖い。

 

手持ち花火の火が消えたので燃えかすを水バケツに突っ込み、次の物を手にする。

さっき梅雨ちゃんが眺めてたヘビ玉だ。

 

私はそれに火を点け、さっと男連中の所にアンダースローしておく。丁度良く男連中の真ん前に落ちたヘビ玉から黒いにょきにょきが現れる。突然の事に男連中は驚きの声をあげた。

 

私はすかさずネズミ花火も投げつける。

シュパパパと地面をグルグル回る花火に、男子連中は更に混乱の渦に叩き込まれる。

 

私の悪戯花火がその勢いをなくしていくと、落ち着いた男子連中は私を見てきた。まるで犯人である事を決めつけるような、そんな目つきだ。ちゃんと見てない癖になんて失礼なんでしょう!ま、やったの私だけど。

 

「緑谷ぁ~~!」

「違ウヨ、ボクジャナーイ」

「なんで片言!?幾らなんでも胡散臭過ぎるだろ!?」

 

疑いの眼差しから逃げる為、かっちゃんの後ろに隠れた。かっちゃんが凄く不服そう。

 

「爆豪ぉぉ、お前、ちゃんと面倒みろよ。さっきからよぉ」

「っせぇぞ、クソ髪。てめぇらに隙があっからだろぉが」

「なんか凄い目茶苦茶な事言ってきた!?」

 

良い感じに二人が話し始め隙が出来たので、切島達をかっちゃんに任せて女子ーずの所に向かう。

あしどんや葉隠は私と似たようなもんだったけど、百や耳郎ちゃんは派手に花火を振ってたりしなかった。楽しそうである事は変わらないけど、楽しみ方は全然違うみたい。

 

私は梅雨ちゃんとのんびり花火をしてるお茶子の元に向かった。

 

「やほ!」

「あ、ニコちゃん。こっちで振り回したりせんといてよ」

「あれ、見られてた?」

「そら目立つもん。見ようとしなくても見てまうよ」

 

そう苦笑いしたお茶子は火の点いてない一本の花火を差し出してくる。差し出されたそれを手にすると、お茶子が自分の持っていた花火で火を点けてくれた。

 

「皆楽しそうやねぇ、来て良かった」

 

お茶子の言葉に梅雨ちゃんが「そうね」と呟く。

 

「ねぇー。私は何故か怒られたけど、来て良かったとは思うよ。うんうん」

 

「怒られたのは自業自得やんか」

「けろっ、本当ね」

 

はしゃぐあしどんや葉隠達をぼやーっと眺めていると、気がつけば手元の光が消えた。

花火の火薬が尽きたみたい。

 

新しい花火を取りに行く事もなく、少し暗くなったそこで暗い海を眺めた。

潮風にお茶子の髪が揺れてる。

 

「━━━入学する前はさ、私こんな所まで来て、こんな風に友達と海眺めるとは思わなかった」

 

そっと呟かれたお茶子の言葉。

私も梅雨ちゃんも何も言わないまま耳を傾ける。

 

「雄英が厳しいのは知っとったし、それに一人暮らしせないかんしで、不安のが大きかった。でもヒーローになるなら、ここだってそう思っとったから、勉強も生活も頑張らなって・・・」

 

「・・・それやのに、ふふ、おかしいんだよね。今は毎日が楽しい。いつの間にかずっとこうしていられたらなぁって思うようになっとった」

 

「これからきっと、もっと大変になる。沢山やらなならん事が増えて挫ける人がいるかも知れん。事情があって何処かにいかなならん人が出るかも知れん。皆が皆残って卒業して、皆ヒーローなんて、そんなに上手く行くわけない・・・」

 

「━━━でもね、思うねん。また来年も、こうやって皆と海に来れたらなぁって」

 

 

 

 

 

 

 

「けろっ、口田ちゃん、砂藤ちゃん、青山ちゃん抜きで?」

「それは私も言うて気づいた。言わんといて、恥ずかしい」

 

私は完全に忘れてた。

お願い誰も気づかないで、恥ずかしい。

 

 

 

 

 

それから暫く、モニュメントからブドウが解放された頃。私達は花火の締めである線香花火を手にしていた。

そして始まる誰が一番最後まで残るか勝負。

特に賭けてる物はないが、皆ムキになって参加。

 

勿論私もガチで勝ちにいってる。

 

始まった戦い。

最初に手を打ってきたのは葉隠だった。

 

「私、今、ノーブラ」

 

静かな告白。

尾白とブドウが火の玉を落とした。

 

「くっそぅ!!やられたぁ!!よく考えたら、葉隠なんて裸がデフォみたいなもんなのにぃぃ!!全然なにも、得ねぇのにぃ!」

「・・・・く、こんな手に不覚をとるなんて」

 

「あっははは!!どうだ!私のさく━━━━」

 

ポトリと、葉隠の線香花火から火の玉が落ちる。

 

「うわぁぁぁぁ!!私のどっ可愛いべいびー!!」

「ぶっ!?ちょっ、透ちゃんずるいわ!!」

 

お茶子の線香花火から火の玉が落ちていった。

葉隠の猛威に一挙に四人脱落である。

本人も含めて。

 

葉隠が黙り込むと、パチパチという音だけが残る。

誰も何も言わない。波の音がやけに耳に響く。

 

ポトリと、瀬呂の線香花火から火の玉が落ちた。

なんの笑い所もない、ただの脱落。

 

「ドンマイ」

「やめろぉ緑谷!!いまのドンマイは駄目だろ!傷つくだろ!!」

 

パチパチという音だけの空間。

次に仕掛けてきたのは意外にも梅雨ちゃんだった。

私に視線を送ってきた梅雨ちゃんはそっと口を開く。

 

「ゲコッ」

 

切島の手が大きく揺れた。

突然の口癖のチェンジに、何人かツボに入ったようでプルプルしてる。

 

私は平気だ。

この程度、私にとって児戯に等しい。

 

「・・・カエルぴょこぴょこ、みぴょこぴょこ。合わせてぴょこぴょこ━━みぴょこぴょこ」

 

「むぴょこだろうが!!ばかぁ!!上鳴か!」

 

切島の線香花火から火の玉が落ちた。

ついでに上鳴、耳郎ちゃんも脱落。

 

この静かな空気と、静かにしなきゃならないという雰囲気が、変な流れを生み出しているのは明白。普段ならこんな下らないことで笑うのは有り得ない。

それは脱落した三人にも言える事だし、私にも言える事。

 

え?うん。

むぴょこが馬鹿みたいに効いた。

腹捩れるかと思った。

 

「切島ぁ!どういう意味だ!!さっきの上鳴かって、どういう意味だぁ!」

「いや、悪かったって。でもお前この間普通に足し算間違えてたから、つい」

「言うなぁ!!」

 

「ぷっ、上鳴!あんた、足し算も出来ないの!?くくっ」

 

「やめろぉ!耳郎!あれはケアレスミスだ!そんな毎回間違えるみたいな━━━━」

「こないだの数学、少なくとも三ヶ所足し算ミスしてたろ。サービス問題のとこで」

「それを言うなといってるんだ、切島くぅぅん!!」

 

「くふふ、はっ、ちょ、止めて、死ぬ」

 

「んで、どんだけ笑ってるのかなぁ!?耳郎さぁぁん!?」

 

三人のコントに常闇とあしどんが線香花火の火を落とす。

 

「あっ」

 

空気が少しずつ落ち着き始めた時、眼鏡の火の玉が落ちる。それにならうように百のも落ちた。

 

そろそろ落ちやすい時間帯。

ここからは僅かな揺れも禁物となる。

全員が黙る中、そっと阿修羅さんの複製腕から口が延びてきた。

 

「東京特許ときゃきょきゅっ━━!!」

 

突然の早口言葉。

梅雨ちゃんの真似をしたのかは分からないが、全員くすりともしない。脱落組は口を抑えて震えていたけど。

 

「━━━ぐっ」

 

阿修羅さんがその状況に膝をついた。

柄にもなく仕掛けた事もそうだけど、その上更に滑ったという感覚が精神力を削ったのだろう。

勿論、握られた線香花火から火の玉が落ちる。

 

「け、けろっ」

 

その姿に梅雨ちゃんが震えた。

そして落ちる火の玉。

 

残ったのはかっちゃんと轟。

そして私。

 

私は改めて二人の手元のソレを見る。

私のと比べると大分小さい火の玉。

簡単には落ちなさそう。

 

このまま持久戦に持ち込んでしまえば、大きく育った火の玉を抱える私が不利。つまり、勝つためにはなんらか仕掛けなければいけない。

 

しかし、どうすれば二人の動揺を誘えるのか分からない。並大抵の事では揺らがない強い精神力をもつ二人だ。うむむ。

 

ここは二人がというより、誰もが驚く物が良いだろう。

誰もが、誰もが?なんだろ?

 

あ、それでいこう。

 

「かっちゃん、轟」

 

私の声に二人の視線が集まった。

二人の聞く準備が整った所を確認したので、それを口に出してみる。

 

 

 

 

 

 

「あのね、できちゃった」

 

 

 

 

 

ほぼ二人同時に火の玉を落とした。

 

「よっしゃぁ━━━━っわ!?」

 

「体、大丈夫か緑谷?!爆豪っ、お前━━━!!」

「違うわ!!んな目で見てくんじゃねぇ!!おい馬鹿女!!誰だ!!相手は誰だこらぁぁぁぁ!!」

 

勝ちの余韻に浸る間もなく二人に詰め寄られた。

私の勝利の証が地面に落ちる。

この野郎!

 

「はぁ?何━━━」

 

「俺の知ってる奴か!?ああん!?呼べ!!ぶっ飛ばしてやる!!呼べこらぁ!!」

「落ち着け、爆豪。お前がそんなだと、緑谷が何も言えねぇだろ。━━━━緑谷、大丈夫だから━━タブン━━何もしないから相手の名前を教えてくれ。・・・それより病院が先か」

 

おおぅ?

 

おう?

 

おおぅ!?

 

もしかして、マジだと思われてる!?

 

「ないない!!あれはそういう奴じゃないから!!いないから相手とか!勝つための方便というか、ね!ごめん忘れてぇ!!」

 

「相手がいないだぁ!?どういう事だこらぁ!!まさか━━━━くそ、ヴィランかぁ!!」

「爆豪、落ち着け。緑谷、相手の人相を出来るだけ正確に教えてくれ。少し話し合いしてくる」

 

「ちょ、ヘルプ!ヘルプみー!!お茶子ー!!」

 

 

 

 

 

「ニコちゃんにはええ薬やな。放っとこ」

「けろっ、一瞬ヒヤッとしたわ」

「アホだね、ニコは」

「私は二人の内どっちなんだろってなったよ」

 

「あんなんで騙される方も騙される方━━━━」

 

「じぃや!!大変なんです!!友達が!!妊娠してるみたいでっ、病院を!良い病院を!!」

「ストップ!ヤオモモ落ち着けぇ!!スマホをおいてウチの顔を見ろぉ!」

 

 

 

 

 

その後、皆にメチャメチャ怒られた。

 

by ふたこ

 

 


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