私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
蛇足ともいう!
皆にメチャメチャ怒られた翌日。
浜辺で遊ぶ皆をパラソルの下からぼやっと眺めていると、紅白饅頭がラムネ二本を片手に現れた。昨日は大体おかしな奴だった紅白饅頭も、今は普通の紅白饅頭に戻ってるようで安心する。後ろに立たれた時は一瞬ひやっとしたけど。
「隣良いか?」
「別に良いけど・・・遊んでこないの?」
「元からこういうのは苦手だからな。もう十分だ」
それだけ言うと轟は隣に腰掛けた。
微妙に離れて座ったせいでパラソルからはみ出してしまってる。休みにきたなら陰に入れば良かろうに。
「もうちょっとこっち来れば?」
「いや、ここで良い」
「頭めちゃ照らされるけど・・・暑くないの?」
「大丈夫だ。個性で冷やせる」
そういう問題じゃないと思うけど。
まぁ、本人が良いと言うなら煩く言うつもりはない。
紅白饅頭から然り気無く渡されたラムネを口にしながら、またぼんやり海を眺める事にした。
「・・・緑谷はいかないのか?」
「いくけど、ちょっときゅーけーちゅう。後二時間も遊んだら帰りでしょ?らすイチに全てを懸ける為に温存してんの」
「緑谷の全力か・・・嫌な予感しかしねぇな」
この野郎、最近言うようになったじゃないか。
どの口がほざきやがるのかなぁん?と生意気な事を言った野郎へ視線を送れば、随分と優しい顔で皆を見つめる轟の横顔があった。
学校で初めてこいつを見掛けた時と比べると、また随分変わったぁと改めて思う。
「━━━轟さ、今楽しい?」
何となくそう聞くと、紅白饅頭は一瞬きょとんとした後、柔らかい笑みを浮かべて笑った。
「ああ、たぶんな」
「そっか」
それから暫く紅白饅頭とぼんやり海を眺め、休みにきた眼鏡と入れ替わるように私は皆の元に戻った。最後の一時間を遊び尽くす為に。
◇◇◇
緑谷と替わるように俺の隣へ座った飯田は、額にかいた汗を拭き溜息を吐いた。
「爆豪くんを抑えるのは大変だったよ」
遠目から見てもその大変さは見てとれた。
酷な事を頼んでしまったと、少しだけ申し訳なくなる。
「そうか、悪かったな。飯田」
謝罪の言葉に飯田が眉を下げた。
「いや、愚痴ったつもりではなくてだな・・・それより上手く話せたかい?」
「上手くかは分からねぇ・・・。昔からそういうのは得意じゃねぇから。けど、ちゃんと話せたと思う」
そう言うと飯田は安堵の息を吐く。
心配してくれていたのが伝わる。
「ありがとな」
自然と溢れた言葉に飯田は首を横に振った。
「大した事はしていない、構わないとも・・・・それにしても、彼女は元気だな」
飯田の視線の先には砂浜を駆ける緑谷の姿があった。
先程の一時間に懸けるという言葉は嘘ではなかったのだろう。全力さが垣間見える。
「恋愛の事は分からない。だが、彼女が相手だと苦労すると思うぞ、轟くん」
「苦労か・・・別に構わねぇな。そこん所は」
自分が苦労するくらいなら幾らでも耐えられる。
でも、それが逆なら、あいつが苦しむなら、俺はその原因を許せそうにない。
それが俺自身だとしたら、尚更。
お母さんの姿がふと思い浮かんだ。
一人で抱え込んで、苦しそうに辛そうに泣く、お母さんの姿が。
「あいつが笑ってられるなら、それで良い」
そう言うと飯田が苦笑いを浮かべた。
「恋愛は難しいんだな。俺には分からん」
「その内わかんだろ。俺でも、そうなったんだからな」
「ははっ、それを自分で言うのかい?」
飯田の笑い声、それと少し遠くから聞こえる緑谷の楽しそうな声。
俺はその声を聞きながら、疲れた体を癒すために目を瞑った。