私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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(*´ー`*)あれだけだと、今日はあれだけだと、思ったか・・・!?

残念!あれは、あれは・・・あれもあれだ!!


はい、仰向けに寝っころがりましょう。そしたら両手を大きく広げてグルグルー、足はばた足ー。大きく息を吸って━━━母様ぁ!!買って買って買って!!買ってくんなきゃ、帰んなっ━━置いてった、だと?!の巻き

無事に海イベを消化し終えた数日後。

私は次のイベの為、母様と光己さんと一緒に隣街のデパートへと買い物に来ていた。

 

目的の一つであるバーゲンセールを制した二人に続き、次の目的地へと向かう。

勝ち取った大量の戦利品を背負って。

 

私は日頃から鍛えてるのでなんて事ないけど、母様と光己さんは少しだけ辛そうに見える。安いからと張り切って買いすぎた感が否めない所だけど、二人の顔にそういった意味での後悔は欠片もないので余計な事は言わない。

 

「━━━ぉっもーい!!やっぱり勝己のやつも連れてくるべきだったかしら?・・・ってそんな訳にはいかないわよねぇ」

 

荷物を両肩に乗せた光己さんが溜息混じりに呟いた。

そしてチラリと私を見るとにやりと笑う。

 

「双虎ちゃんにしては珍しいわよねぇ~。あの子に買い物を知られたくないなんて」

「えへへ、まぁ」

 

今日私は今度の夏祭りの為、浴衣を買いに来たのである。中学の頃の奴もまだ着れるんだけど、高校生になったし、それにあの件もあったから新調しにきたのだ。

 

私は忘れない、あの水着への素っ気ないくそ反応を!!完璧スーパー美少女たる私の水着姿を間近で見ながら、あの反応は許せない!!もうあんな素っ気ない反応させてなるものか!私の可愛さにひれ伏せさせてやるのだ!!褒めさせてくれるぅぅぅ!!

 

心の中で闘志を燃やしてると母様に頭を叩かれた。

地味に痛いでござる。

頭を擦りながら母様を見れば、追加で叩く気満々のなのかまだ拳が上がってる。

 

「なんで叩くのぅ?母様のおこんりぼ」

「邪心が見えたのよ」

 

邪心がってマジか。

ただでさえ母様は強いのに、いつからそんな特殊能力まで使えるようになったの?万能なの?万能超人なの?怖いよ、うちの母様は何処まで成長していくの?・・・てか、その内、私の学校での所業、ばれたりすんじゃね?透視されんじゃね?━━━━怖いよぉ!

 

母様に怯えてたら光己さんが取り成してくれた。

下げられた母様の拳に、心の底からホッとする。

 

感謝の気持ちから「私、光己さんの子供になる!」って言ってみたら二人に微妙な顔された。特に母様は何とも言えない顔になった。

なに、その顔?

 

 

 

 

 

 

荷物の重さにえっちらして少し、次の目的地である喫茶店へと辿り着いた。当所は来る予定では無かったのだが、光己さんが是非というので来る事になった場所だ。

光己さんが勧めるだけあってお客さんはそこそこいて、座るまで少し待つ事になった。

 

待っている間メニューを渡されたので三人で目を通す。

そこには光己さんがお勧めしてたパンケーキの写真が載っていた。俗にスフレパンケーキと呼ばれるフワッフワのやつだ。

 

「これが噂の・・・」

 

私の隣のアザラシが喉を鳴らした。

痩せない理由をあれこれ言ってるが、母様がポヨポヨなのはそこら辺が原因だと思う。ま、言ったら殴られるから、言わないけども。

 

「最近取り扱うお店増えたけど、ここのは美味しいのよー。ちょっとお値段高いけど、食べたら絶対納得するわよ。ふわふわしっとりな生地、卵のコクとメイプルシロップの上質な甘さが口の中でほどけていくの。堪らないわよ」

 

光己さんの言葉にポヨポヨがまた喉を鳴らした。

きっと母様は当分痩せないだろう。

 

「確かトッピングも出来るって言ってたわね?あ、ほら、下の所に書いてある。一律100円なのねぇ。前は何もつけなかったけど・・・ホイップは流石に甘いわよね?果物系足してみようかしら」

 

隣のポヨポヨアザラシの喉の音が煩い。

全部反応してるよ、この人。全部乗せる気だよ。

ここに来る前、「今ダイエットしてるからぁ~、双虎のちょっとだけ味見させて貰うだけにするわ」とか遠慮していた人とは思えないよ。

 

その後私達の順番がやってきて、案内された席に座るやいなや、いの一番にメニューを読み上げたのはやっぱり母様だった。

ダイエットは明日からするそうだ。

 

 

 

 

 

パンケーキを楽しんでから暫く。

母様達と若者向けの店舗が並ぶエリアにやってくると、夏祭りフェアの看板と共に浴衣を着たマネキン達が視界に入ってきた。

 

「まーた色々あるわねぇ」

 

光己さんは感心したような声をあげ、マネキンが着てる浴衣に触れた。

 

「前に買いに来た時は、フリル付いたのが流行ってましたっけ?あれはあれで可愛いかったですけど、私はこーいう普通のが良いと思うんだけど・・・どうです引子さんこれなんて?」

「良いですねぇ。私もやっぱりこういうシンプルな物の方が・・・」

 

私の買い物なんですけど?

私の意見も聞いてよぉ!

 

いや、まぁ、母様が出すんだけども!

 

「双虎━━━━」

「はいはい!私はねぇー」

「荷物持ってて頂戴」

 

母様めぇぇぇぇぇぇぇ!!

 

文句を言いたい所だけど、ここはグッと我慢しとく。

スポンサーである母様のヘソを曲げたら浴衣を買って貰えない。買って貰えないと、かっちゃんを驚かせられない。膝まづかせられない。私の計画丸潰れ。

 

くぅぅ、頑張れ私ぃ!

 

大人しく二人の荷物を背負い、楽しげに浴衣を選ぶ二人の後に続いた。次々と候補を手にしていく二人の様子を窺いながら、私も私なりに良いものがないか探しておく。

 

キョロキョロしながら二人についていくと、帽子から白い髪を覗かせる女性と目があった。何処かで見たことあるな?と思ってたら、その女性がハッとした表情をした後早足でこちらに向かってくる。

誰だっけかと思い出してる内に手を握られた。

 

「こんにちは双虎さん!奇遇ね、こんな所で。浴衣買いに来たのかな?あ、この間は焦凍がお世話になったみたいで、本当にありがとう。あの子ったら帰って来たら双虎さんの話ばかりしてて━━━━あ!もしかして、私の事分からない?」

 

女性は帽子を取り私に顔を見せてきた。

帽子の下は赤いメッシュが目立つ白い髪、優しい目と掛けられた眼鏡を見て思い出す。

 

「轟姉さん!」

「うぅん、名前を覚えてなかったかぁ」

 

轟姉さんの声を聞いて先に進んでた二人が戻ってきた。

そしてその轟姉さんを見ると「まぁまぁ」と声をあげる。

 

「奇遇ね、冬美ちゃん!」

「本当、奇遇。今日はどうしたの冬美さん。やっぱり浴衣かしら?」

 

「御無沙汰してます。私は、まぁ、その、買う気は無いんですけど・・・」

 

モジモジする轟姉さんの反応に二人の目が光った気がする。あれは、獲物を見つけた時の目だ。

 

「あらあら、もしかして?」

「もしかするのかしら?」

 

「はっ!ち、違いますよ!デートするとか、そういうのじゃないですから!ただ高校の頃の友達とですね、久し振りに夏祭りにいこうかーなんて話になって、その、だからですね、浴衣を・・・」

 

話を聞いて二人が目の輝きを弱める。

興味が薄れたみたいだけど、それでも完全に獲物から除外されないらしい。南無。

 

それから案の定捕まった轟姉さんも合流して浴衣選びが再開した。最初轟姉さんは浴衣を買うのを止めようとしていた事を伝えていたけど、「勿体ない」「若いんだから大丈夫」などといった言葉で捲し立てられ、私同様着せ替え人形になった。

 

「これなんて良いんじゃないのかしら?」の一言でお着替え。「やっぱりこっちが良いわね」と言われればその前に着たものに着替えさせられる。そしてまた新しい浴衣を持ってきて、あーでもないこーでもないと揉めるのだ。

 

私はこういう空気を昔から味わってるから平気だけど、轟姉さんにはキツかったらしく目が死んだ魚みたいになってた。

楽しげに浴衣を選ぶ二人を眺めながら、轟姉さんが疲れた顔で口を開いた。

 

「世のお母さんって、皆こんな風にパワフルなのかな・・・」

「どうなんですかね?でも、バーゲンセールに参加してたオバチャン達は皆あんな感じでしたけど」

 

あれは正に戦場だった。

女の関ヶ原だった。

 

「だとしたら、私はお母さんになる自信はないかなぁ」

「私もそー思います」

「だよねぇ~あはは」

「あはは」

 

乾いた笑い声をあげた轟姉さんにそのまま笑い返すと、優しい笑顔が返ってきた。

 

「双虎ちゃーん、冬美ちゃーん、次はこれ着てみて!ほら、これこれ!」

 

声の方向を見ればまた色々と持ってきた二人の姿が見える。それを見た轟姉さんが私に助けを求めるような視線を向けてきたけど、それはスルーしておいた。

私も自分の戦場で戦わねばならない。

 

さらばだ、戦友。

武運を祈る。

 

とか何とか言って、私の浴衣はその後母様が持ってきた浴衣に即決定した。白い下地に淡い緑の撫子が描かれたやつだ。流石母様、分かってるね!

 

その後、私が母様達に交ざって轟姉さんを着せ替え人形にしたのは言うまでもない。

ナニコレ、超楽しい。

 

「双虎さん、私、やっぱり浴衣いらないから、引子さん達にこと━━━」

「断る!」

「えっ、ちょ、断らないでっぇ・・・!」

 

それから数時間。

轟姉は弄ばれ続け、最終的は一着の浴衣を購入して帰っていった。

その夜、轟姉さんの事が気になって轟にメールで聞いてみたら、「お母さんは凄い」と謎の伝言を残し眠ったそうだ。

 

南無。


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