私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
うわぁぁぁぁぁ、逃れられないシリアスがぁ!
書いてると気分の重くなる、シリアスがぁぁぁ!!
やるけどもね。
やだぁぁぁ!!イチャイチャさせたいぃ!(本音)
アオハルだけさせたぃぃぃ!(本望)
暑いと泣き言をいった所で涼しくならない。けど、エラ・イヒトは言った。心頭を滅却すれば火もまた涼しいと。かぁぁぁつ!!・・・・いや、やっぱり無理だわ。誰かキンキンに冷えたアイス頂戴。の巻き
日差しが眩しい夏真っ盛りのその日。
最近ちこっとした面倒事を片付けたりなんだりしてお疲れ気味な私は、重い荷物を背負って雄英高校を訪れていた。
世間の学生達は全力で休みを謳歌してる最中だというのに、だ。
何が悲しくて夏休みの真っ只中学校に来なければならないのか・・・まだ答えは出ない。
私はギラギラに輝く太陽を見上げながら、その答えを青い空に探した。
「帰りたい」
「馬鹿な事ぼやいてねぇではよ来いや」
そう言ってかっちゃんはノシノシと先を進む。
「荷物持とうかとか、聞いても良いよ?」
「もう持ってんだろがっ!!俺の!背中にあんのは!てめぇの荷物だろうが!!提出課題ぐらいてめぇで持てや!!」
その提出課題が地味に重いんだもん。
紙の束って量あると重いよね?なんかね?
それにくそ暑いしで、荷物持つやる気も出ませんよぉ。
「アイスぅーー」
「んなもんあるか!!だぁってあるけや!!」
かっちゃんに叱られながら歩いていくと、バス乗り場に二台の大型バスが止まっていた。百の用意したバスと違って全体的にショボい。きっと最後尾に謎の扉とかないのだろうな。
集合場所には既にA組の面々が揃っていて、B組の物真似野郎がちょうど絡んでいる所だった。
「あははは!!聞いたよ!!A組、補習いるんだって!?つまり赤点取った人がいるってことだよね!?ええ!?おかしくない!?おかしくない!?A組はB組よりずっと優秀はハズなのにぃ!?あれれれれれれぇ!?」
相変わらず楽しそうな奴だな。
あいつの目には世界がどう映ってるんだろ。
面白そうなので様子を窺っていたら、調子にのって更に続けた。
「ねぇねぇ!!もしかしてその赤点って、あの暴力の権化な緑の人も入ってるのかな!?あははは!!頭馬鹿で体力馬鹿とか、もうゴリラの仲間なんじゃないかな?あれれれぇ!?もしかしてピッタリなんじゃない?!話も通じな━━━━っぶひぃ!!?」
「「「物間ぁぁぁぁ!?」」」
思いっきりボディにかましてやった。
母様直伝の捩じ込むようなリバーブローを。
幾ら私が寛容な人間とはいえ、ゴリラは許さん。
断固として。
地に伏した物真似野郎を何度か足蹴した後、B組男子に向けて投げ飛ばしておいた。毛むくじゃらの人が上手いことキャッチしてくれる。
「ちょ、いや、確かに物間氏にも問題はありましたが、あんまりではありませんか?!」
「はぁ???」
「い、いえ!なんでもありませんぞ!しかと、物間氏に注意を促しておきますぞ!!」
ちょっとお話しあいをする為に視線を送ると、ビシッと了解を示してくれた毛むくじゃら。なので毛むくじゃらにそのまま馬鹿を任せる。
すると、困った顔したサイドテが手を振りながら駆け寄ってきた。
「ごめんな!うちの物間が迷惑みたいで!」
「ん?いいよ、別に。もう制裁したし」
「その手間かけさせてごめんって話。いつも悪いね」
そうサイドテが笑うとその後ろにいたB組女子ーずが顔を覗かせた。その中にはこの間校長の話を聞いていた時に心配してくれたお化けっ子もいて、申し訳なさげに軽く頭を下げてくる。
「うっす、A組。体育祭じゃなんやかんやあったけど、まぁ、よろしくね」
「ん」
サイドテとお化けっ子に続くようにB組女子ーずが声を掛けてきた。一応チアやった時に喋ったけど、それ以来なので不思議な感じがする。
折角の機会なのでB組女子と取り敢えずメアド交換しておいた。何があるか分からないからね、うん。後で遊ぼうね。合同女子会とかしようね。ねー。
無事にメアド交換を終え戻ってくると、うちの不穏分子であるブドウが涎を垂らして待っていた━━━ので、包帯先生に告げ口しておく。性犯罪者になりかけのちっさいアホがいますと。
その後ブドウがどうなったか知らない。
分かる事と言えば、バスに乗った時ブドウの席が包帯先生の隣だったことくらいである。
南無、安らかに眠れ。
ブドウ以外のバスの席は割とテキトーだ。
いや当初は眼鏡が仕切ろうとしてたところを、私がモロに無視して座ったら皆自由席になっただけなんだけども。
私は一番後ろをお茶子と梅雨ちゃんとで占拠。
すぐ前の席にかっちゃんと常闇、紅白饅頭と眼鏡が座る。他の女子ーずは二人組で前の方にバラけた。
バスが動き出すと誰ともしらず曲を流そうと言い始めた。
包帯先生が許す筈ないと思ったけど、呆れた顔して見てるだけで何も言わない。
それじゃぁ歌っても良いのかな?と思ったけど、マイクを要求したら凄い恐い顔で睨まれた。それはNGだそうだ。ずるい、私だけに怒るとか。大人はずるい。差別YO。
あんまりにも暇だったので、前の席のかっちゃんにちょっかいを掛ける事にした。
「かっちゃん、かっちゃん」
反応がない、無視されたようだ。
今度はかっちゃんの椅子を殴りながら声を掛ける。
やはり駄目だ、断固として無視する気だ。
朝から随分と眠たそうにしてたから、睡眠を優先したいのだろうがそうはさせない。何故なら、逆に私の目が冴えちゃったからだ。
呑気に一人だけで眠ろうなんて、そうは問屋が卸さないぜぇ!
「どるるるるーどるるるるー!!風の夜にぃ!馬を駆りぃぃ!駆けぃぃりゆくぅぅ者ぉありぃぃぃ!腕ぇにぃ童帯びぃゆるをぉ!しっかぁぁぁとばかりぃ抱きぃけぇりぃ!!」
歌いながら椅子の上から覗いてみると、かっちゃんは顔にハンドタオルを置いて知らないフリをしてた。
「ぼんばーぼうやぁ!なぜ、顔を隠すか?!」
そっとハンドタオルを取れば、青筋を立てたまま目を瞑るかっちゃんの顔があった。
隣の常闇は何故か私にちょっとソワソワしてる。
じっと目を見ると嘴的な口を開いた。
「ズィィースト ファーターァ ドゥゥー デン エァルケーニヒ ニヒトォ。デン エルレンケーニヒッィ ミット クローン ウント シュヴァイフッ!」
何だと!?
こいつ、まさか━━━━同士だというのか!
中学の頃、音楽の授業で聞いたこの変な歌が妙に気に入り、思わず覚えてしまった族の一人だと言うのか!
生憎私は日本語訳でしか歌えないが・・・常闇の目はそれでいいと言っている。
ならば、遠慮などせんよ!
「坊やぁぁ!それはぁ、狭霧じゃぁぁ!!」
私と常闇はアイコンタクトする。
そこから私達に言葉はいらなかった。
魔王部分をダークシャドウに任せて、更に歌い続けた。
そして私達は一番盛り上げるそこでたどり着く。
「おとうーさん!おとうーさん!!」
「マイン ファータァー!!マイン ファータァー!!」
「なんで魔王大合唱してやがんだ!!っせぇ!!」
かっちゃんに常闇共々メチャ怒られた。
怒られてる最中ちらっと常闇を見たら、グッと立った親指が向けられていた。良い歌だったと、褒めてくれたのだろう。
入学したての頃、ワシャワシャしようとして逃げられていらい常闇とは上手くいってなかったが、これを機に仲良くなれたらな、と思う。そしてワシャワシャさせてくれたら良いなとも。
そんな打算も込めてお前のも良かったぜと、私も親指を立て返したら━━その親指をかっちゃんに見つかり、反省不十分と判断されたのかギリギリと握り締め上げられた。
たたたたたたた!! いたいっ!いたいよ!かっちゃん!それ、いたい!!馬鹿力!!馬鹿っ!おっおおお!?やめてっ!やめてってば!!
反省してますってば!あっ、たった!ご、ごめんなさぃいいいーーー!!
かっちゃんに怒られてから暫く。
皆の喧騒を聞きながらボーッと外を眺めてると、不意にスマホがブルブルっとする。なんじゃろかと見てみれば、あの子からメールが来ていた。
最近とある事件に関わった時に出来た新しい友人。
メリッサ・シールドから。
メールをタッチして開封する。
どうやら私が話していた事を覚えていたらしく、夏合宿頑張れとのメッセージが書いてあった。
それと、皆によろしくとも。
なので隣のお茶子に声を掛けた。
「?どないしたん?」
「メリッサからメール。合宿頑張れってさ」
私が教えるとお茶子がスマホを覗き込んできた。
そして嬉しそうに笑う。
「元気そうで良かった。あんな事あったし、どうなったか気になっとったから・・・あっ」
うっかり溢した自分の言葉にお茶子は冷や汗を流す。
一応あの件は口外を禁止されている為、話すわけにはいないのだ。そんな焦るお茶子に、梅雨ちゃんは首を横に振った。
「安心してお茶子ちゃん。余計な詮索はしないわ。あの日何かあった事くらい、何となく分かるもの。メリッサさんって、緑谷ちゃんやお茶子ちゃんを見送りにきてくれた人よね?」
「そ、そう。メリッサさん。色々あって、本当に大変で・・・ごめん。その内容はいえへんねんけど」
「気にしないでお茶子ちゃん。それより、メリッサさん元気そうで良かったわね?」
「うん、ほんまに良かった」
二人の会話を聞きながら、私は返信のメールを送る。
元気でやっている事、お茶子が口を滑らせかけた事、かっちゃんと相変わらずな事。
長くなった文を見て━━ふと、ある事が頭に浮かんだ。
だからメールの最後にある一文を加える。
そして━━━━━。
「かっちゃん!」
「あぁ?」
振り向いたかっちゃんの顔に自分の顔も寄せて、パシャりと写真を一枚撮った。
いきなり近くに寄られてびっくりしたのか、かっちゃんが私を押し退けてくる。その押された勢いのまま椅子にもたれ込み、送信ボタンをタッチした。
「いきなり何すんだ!?こら!!」
「青いな・・・」
「っせぇぞ!!カラス頭!!」
「爆豪くん!幾らなんでもカラス頭は酷いぞ!」
荒らげたかっちゃんの声に反応して、眼鏡も声をあげる。そんな眼鏡の言葉に前の席の方からも「そうだー爆豪はもっとちゃんと名前覚えろー!」とあしどんの声が聞こえてきた。飛び火したみたい。
かっちゃんのあだ名の付け方に文句ある組VSかっちゃんというハンデありまくりな戦いが勃発するのを横目に見ながら、私は送信完了の文字を確認する。
元気に賑わうクラスの喧騒を聞きながら、メリッサがいるであろう東を見てみた。見えたのは立ち上る雲と青い空。緑が増え住居が減った辺鄙な大地。
海のずっと先。
今日もそこで頑張る、彼女を思った。
友達の彼女を。
「またいつか、ね。メリッサ」
◇◇◇
不意に鳴った電子音。
ポケットからソレを取り出して見れば、日本の友人から返信が返ってきていた。
タッチして中身に目を通せば、近況の報告と合宿への愚痴が綴られていた。
あれからそう経ってもいないのに、友人の毎日はよほど色んな事があるらしい。近況の報告が随分と長い。
「ふふふ、楽しそう」
メールを最後まで見ていくと、その一文が目に止まった。
『またいつか、ヒーロー』
その言葉に過るのは、友人に言ったその言葉。
覚えていてくれたのかという嬉しい気持ちと、なんだか気恥ずかしい気持ちが胸に溢れる。
「ヒーローか。・・・私にはまだ、早いよ。ニコ」
スクロールしていった先、写真が添付されていた。
バスの中で楽しそうに彼と笑う友人の写真が。
そっと窓から外を眺めた。
ここよりずっと西、海を越えた向こう。
日本という島国にいる、友人を思いながら。
「またね、ヒーロー」