私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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7つの玉を集めると出てくる緑のニョロニョロに夏休みくれとお願いする夢を見たよ。

夢があんのかねぇのか
分からん夢だったにゃぁ(;・∀・)




予想外の事が起こるとフリーズする人がいるけど、それはいけない。直ぐに早く次の手を考え行動に移すのだ。さもないと、私みたいに捕まるぞ・・・勘弁して先生。いや、まじで、無理っす。補習とか。の巻き

「━━━━ニコちゃん、ニコちゃん」

 

鼓膜を揺らす心地良い音に瞼を開けると、いつものかっちゃんの顔ではなく、眠たそうなお茶子の顔がそこにあった。

 

「・・・」

「あ、起きた。ニコちゃん・・・ふぁぁ~~はふ。ニコちゃん朝や。着替えて玄関前集合やって・・・聞いとる?」

「・・・ぐぅ」

 

ぺちん、と頬っぺたを叩かれた。

 

「ぐぅ・・・やないよ。私かて眠いんやから、さっさと起きー」

「返事ガナイ、タダノ屍ノヨウダ」

「・・・ほう、意地でも寝る気か。ニコちゃん」

 

お茶子の冷めた声を聞きながら、私は再び目を閉じた。

 

 

 

 

次に謎の浮遊感で目を覚ますと、いつの間にか着替えさせられ、宿舎の廊下を風船の如くお茶子に引っ張られていた。寝起きでテンションが上がらない私とはいえ、これは恥ずかしく思う・・・いや、なんじゃろ悪くにゃいな。このフワフワ感、嫌いじゃない。

 

「んー風船の気持ちってこんなか」

「あ、起きた」

「おはよー」

 

お茶子は個性を解除しようとしたんだけど、もう少しフワフワ感を味わいたかったので目的地までお願いしておく。

お茶子は微妙な顔したけど、今回だけは連れていってくれるみたいだ。

 

途中童貞共と合流し目的地である宿舎前へ。

玄関を抜けると包帯先生の姿が見えた。

包帯先生はぞろぞろと集まった私らを見て「お早う、諸君」と一声呟く。皆寝起きでボーッとしてるのか、まともに返事を返す人がいない。私はそんな皆に代わり「おはざーす」と元気に返しておいた。なんか微妙な顔されたけど。

 

「━━━はぁ、麗日」

「あ、はい。解除」

 

浮遊感が失われ私の体は地面に落ちる。

引き寄せる個性で上手い具合にバランスをとった私は華麗にその場へ着地。きっと新体操選手もびっくりなナイスな着地であろう。十点!

 

「次、その気の抜けた状態で集合するような事があれば、お前も補習させるからな。緑谷」

 

な、なんだと・・・!赤点じゃないのにぃ!!

 

「さて、馬鹿の事は取り敢えずおいておくぞ。本日から本格的に強化合宿を始める。今合宿の目的は全員の強化及びそれによる"仮免"の取得」

 

皆が息を飲む。

私はあくびを飲みこんだ。

今あくびしたら絶対怒られるから、頑張って飲みこんだ。絶対怒られるもん。

 

「具体的になりつつある敵意。立ち向かう為の準備だ、心して臨むように━━━━という訳で爆豪。こいつを投げてみろ」

 

そういうと包帯先生は個性テストの時に使った玉をかっちゃんへ放った。それをなんなくキャッチしたかっちゃんは顔を眉間にしわを寄せる。

 

「試そうってのか、ああ?」

「前回の・・・入学式直後の記録は705,2m。どれだけ伸びているか・・・やってみろ」

 

包帯先生にそう言われたかっちゃんは腕を回し始めた。

その姿に皆から期待の声が掛かる。一キロとかいくのでは?なんて声も聞こえる。

 

かっちゃんはただ前を向いて構えた。

 

「くたばれ!!!」

 

爆発と共に空に放られた玉。

ぐんぐんと飛んで直ぐに見えなくなった。

それから少しして包帯先生の手元にある機械が鳴る。

私の記憶が間違ってなければ、テストの時と同じ距離を測る機械だった筈だ。

 

手元のそれを確認した包帯先生は目を見開いた。

悩んだ素振りを見せたが溜息をついて見せてくる。

 

「・・・802,1m」

 

「おお!!すげぇ爆豪!100mも伸びてんじゃんか!」

 

自分の事のように喜ぶ切島に、かっちゃんは照れ隠しからか顔をそっぽに向ける。

私はそんなかっちゃんより、包帯先生の顰めっ面が気になるんだけど。あれ、思ってたんとちゃうって顔なんだけど。

あれかなぁ、「ほら、そんなに伸びてないよ。お前ら。頑張らなきゃ駄目だよ?」ってやりたかったんだろうか・・・となると、今回の合宿って個性を伸ばす感じか?

 

「常闇。前回みたいに個性使って投げてみろ」

 

あ、やっぱり。

ここで肉体能力に依存するお菓子とかを選ばないのがいい証拠だ。絶対そうだ。

 

案の定、テストの時と変わらない記録を出した常闇。

包帯先生は安堵の息を吐き話始めた。

 

「ま、そういう訳だ。爆豪は、まぁ、あれだが、ここにいる大半の者が個性的に成長していない。約三ヶ月、様々な経験を経て確かに君らは成長したが、それはあくまで精神面や技術面。あとは多少の体力的な成長がメイン」

 

人差し指を立てた包帯はニッと悪人面で笑う。

 

「今日から君らの"個性"を伸ばす。死ぬほどキツいが、くれぐれも・・・死なないように━━━━」

 

決まった!って感じなので、拍手しといた。

途中かっちゃんがやらかしてしまったけど、概ね包帯先生の希望通り。無事に終わった事を良かったねぇと思う。

 

すると包帯先生からジロリと見られた。

 

「緑谷、お前は個性に関してかなり優秀な部類に入る。三ヶ月前と比べ出力もかなりあがっているようだしな。だから━━━━お前には特別キツい訓練をしてやろう。地獄を見せてやるから、覚悟しておけ」

 

ひぃぃぃ!!

ごめん、ごめんなさい!!

自分、調子に乗ってました!いい気になってました!まじですんませんしたぁぁぁ!!

 

そう全力で謝ったけど包帯先生から告げられたのは「覚悟しておけ」とのお言葉のみ。私は「終わったな」と空を仰ぎ見た。

その空はやけに青く見えた。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

強化訓練が始まって30分程。

阿鼻叫喚につつまれたそこへ、B組生徒を連れたブラドが顔を見せた。

 

「よぅ、やってるなイレイザー。てか、本当に30分繰り上げしてんだな。ははは、生徒達も大変だ」

「まぁな」

 

そう話してる間に、B組生徒が訓練の様子を眺め顔を青くさせていく。「かわいがり」なんて声も聞こえてくるが、間違ってはいないだろう。

 

ブラドは俺から生徒達に向き直り状況の説明を始めた。

 

「許容上限のある発動型は上限の底上げ。異形型・その他複合型は"個性"に由来する器官・部位の更なる鍛練。通常であれば肉体の成長に合わせて行うが・・・」

「まぁ、時間がないんでな。B組も早くしろ」

 

いい淀むブラドに代わり生徒達に伝えておく。

ブラドから感謝をつげるような視線を向けられたが、大した事でもなく手を払っておいた。

 

そうしてる間に生徒達の中に疑問を口にする者が現れた。40人という人数、それに伴う多種多様な個性。それをたった6名で管理出来るのかと。

当然の疑問だ。本来なら難しい。

 

今回に限り、その心配はないが。

なにせあの四人がいる。

 

「そうなの!あちきら四位一体!」

 

その声に生徒達の視線が集まる。

今回の合宿のキーマンであるネコを思わせるコスチュームを着た四人へと。

 

「煌めく眼でロックオン!!」

 

「猫の手手助けやって来る!!」

 

「どこからともなく、やって来る・・・」

 

「キュートにキャットにスティンガー!!」

 

それぞれポーズをとる四人は息を合わせ、それを口にした。昨日顔を見せなかった黄色のコスチュームをきたラグドール、茶色のコスチュームをきた虎も合わせた完全バージョンの登場文句を。

 

「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!!」

 

相変わらず子供受けしそうなポーズ。

ヒーローとしてある意味間違ってはいないのだが、俺には一生出来ないなとその姿勢に少しだけ尊敬する。合理的ではないが。

 

その姿にB組生徒は遠い目。

いい大人の全力のポーズに言葉が出ないらしい。

 

それから程なくしてB組生徒はプッシーキャッツの面々から訓練について説明を受け始めた。頃合いを見計らうようにブラドが俺の元にやってくる。

 

「さて、後はあいつら次第だ。━━━にしても、朝から飛ばすなイレイザー。もう何人かグロッキーじゃないか」

 

ブラドの言葉に俺は改めて訓練に勤しむ生徒達を見る。これだけ全力かつ持続的に個性発動する事は早々ないだろう。故に溜まる疲労やそれに伴う苦痛は普段とは違うもの。案の定、顔色が悪い者が多い。特に持続力の低い麗日、青山、切島、上鳴辺りはブラドの言葉通り。

 

まぁ、そうでもない者もいるが。

「くっそがぁぁぁぁぁ!!!」

 

湯から手を上げた爆豪が空に爆撃を放つ。

その爆発の威力は視覚的な面から言えば訓練始め頃と比べ衰えてを見せていない。どころか段々とその威力を上げているように見える。

 

そしてもう一人。

他の奴等から離れた所で訓練する、飛び交う石の群の中で炎をはき続ける緑谷。あいつも訓練始め頃から疲れを見せない。

 

俺の視線を追ったのか、ブラドが不思議に唸る

 

「ん?おい、イレイザー、あれ何やってんだ?」

「引き寄せる個性及び火を吹く個性の強化だ」

「そりゃ分かるが、そうじゃなくてな」

「面倒だな・・・」

 

緑谷が始めた訓練は至ってシンプル。

火を吹く個性は見たままなので、引き寄せる個性の強化法についてのみ語る事にした。やっている事は単純。空中に浮かせた石を更に引き寄せる個性で宙に跳ばし、落ちないようにそれを繰り返す。それだけだ。尤も一つでは物足りないと、今では五つの石を体の回りで跳ねさせている訳だが。

 

「訳だがって・・・お前簡単に言うな。あんなもん、同じ個性持ってたって真似出来る類いのもんじゃないぞ。高い空間把握能力、石の軌道を予測する物理演算力の高さ、加えて他の個性まで使ってるなら思考力もそれ相応に必要だ。とても脳みそ一個で足りるような動きじゃないぞ。どうなってる」

「そうだな」

 

元より優れているとは思っていた。

だが、ここまでとは予想していなかった。

校長のハイスペック程ではないにしろ、かなり高い水準の脳力を持っているといえる。

 

暫くブラドは黙って眺めていたが、ふいに口を開いた。

 

「なぁ、イレイザー」

「なんだ」

「あいつ、頭良いんじゃないか」

「そうだな」

「なら、なんであんな馬鹿なんだ」

 

俺は空を仰ぎ見た。

やけに高い青い、その空を。

羽ばたく鳥が見える。

たゆたう雲も。

 

 

 

 

 

「・・・頭の働く、馬鹿なんだろ」

「諦めんなよ」

 

 


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