私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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グサッ

シリアス「・・・え?うそ、なんで」バッタリ

はくびしん「いつから、おれが殺られたと、錯覚していた」

ギャグ「はい、そういう訳で、我が世の春が戻ってきました」


茶番ごめんやで。



ぜんたーい、止まれ!良いか、我々はここに試合をしに来たのではない!勝利しにきたのだ!勝利とはなんだ!勝利とは敵を打ち倒す事以外何物でもない!目につく全てを打ち倒せ!よし!皆枕を投げるんだよぉ!の巻き

泣きつかれて寝てしまった洸太きゅんをマンダレイの所へ運んで少し。風呂を終えた私は一人女子部屋に向かい歩いていた。

 

洸太きゅんといちゃこらしてたら入浴指定時間を余裕でぶち抜いてしまい、今夜は汗臭いまま寝る覚悟を決めてたんだけど・・・洸太きゅんの事もあってマンダレイから特別に入浴許可が下りた。それじゃぁお構い無くーとただっ広いお風呂独り占めした私は一人風呂をすっかり堪能。元気もちょっと回復。

 

帰り際、女子風呂を出て少しいった所にゴミのように捨て置かれたブドウの成れの果てが気になったけど・・・『まぁ、ブドウだからなぁ』と考えると割とどうでも良いので放っておいた。どうせ覗きをしたとか、そんなだと思うし。

 

部屋に向かってる途中。

ちょうど玄関前ロビーの所に辿り着くと切島の姿を見掛けた。時刻を見れば補習時間中の筈、切島が出歩いてるわけない時間。

 

「補習組、なにしてんの?」

「おわっ、緑谷!お前こそ、どこ行ってたんだよ!片付けもしねぇで!相澤先生すげー怒ってたぞ」

「色々ー、てか包帯先生怒ってたってマジ?」

「マジだっての」

 

今晩は会わないようにしないと・・・。

 

「それはそうと、何してんの?補習は?」

「ああ、ちっとな。ほら、さっきマンダレイからよ、明日晩飯さ肉じゃがって言われたろ?それで豚肉にすっか牛肉にすっかって話あったじゃん」

「うん?あったっけ?」

「本当、緑谷は興味ねぇことガン無視な。あったんだよ」

 

切島の話を簡単に纏めると、明日の肉じゃがの肉の種類を決めるために男達が血肉沸き踊る戦いを繰り広げているらしい。

 

「・・・あのさ、どっちでも良くない?肉貰えないってんなら話は変わるけど」

「ああ、ま、そうなんだけどよ・・・」

「肉は肉じゃん?」

「そう言われたらなんも言えねぇーじゃねーか」

 

その様子を見るに切島もそこまで拘りがある訳でもないようだ。多分周りのノリに合わせた結果だろうと思う。つまらん事してんな、男子は。女子部屋に突撃するチャレンジャーくらいいないもんかね。ブドウを除く。

 

「てか、急がなくて良いの?補習」

「あ、やべ、ま、そういう事だ!じゃぁな!」

 

そう走り去っていく切島を見送った後、それを追いかけるように物真似野郎が同じように走ってきた。何処か上機嫌な物真似野郎。私を見て緊急停止する。

 

━━━━いや、踵を返して全力で逃走を図ってきた。

 

別に何もする気はなかったけど、そこまで反応されたら気になる。だからそこらの手すりに掴まり、全力で引っこ抜いてやった。宙を浮いた物真似野郎。成すすべもなく、私の前に転がる。

 

「ひぃぃぃ!!な、なんだよぉ!?僕が何したっていうんだよ!!」

「それは私の台詞なんだけど。人の顔見て逃げるとか、捕まって然るべきでしょ?何したの、白状せい」

 

私がそう言うと物真似野郎は目を逸らした。

これは何かあるな、と私の乙女的な勘が働く。

なので物真似野郎をそのまま女子部屋に拉致して、ゆっくり話を聞くことにした。

 

私から逃げようともがく物真似野郎の手足をバスタオルでささっと固定し連行。まるで散歩を嫌がる犬のように抵抗する物真似野郎。抵抗されるのが予想以上にめんどーだったので、時折引き寄せる個性で壁に打ち付け怯ませながら女子部屋までの道をいく。

それでも流石はヒーロー科の生徒。部屋まで後少しの所で上手いこと逃げられてしまう。

 

まぁ、正直言うと運ぶのが面倒になって逃がしたんだけど。

 

「ただいまー」

 

そう我がA組女子部屋に帰ると、何故だかサイドテ達の姿があった。B組女子ーずが三人も?はて?不思議に思ってるとお茶子が笑顔で出迎えてくれる。

 

「おかえりー。一人風呂どうやった?」

「良かったよ。泳いでやった」

「あはは、ニコちゃんらしいなぁーまったくもう」

 

サイドテの事が気になってお茶子に尋ねてみると、どうやらブドウ注意報が役にたったのでそのお礼をしにきたらしい。それで流れで女子会をする事になって今に至ると。成る程、成る程、把握。さっきの成れの果ての意味も分かった。いや、最初から分かってはいたけど。

 

勿論暇だったので私も女子会に参加。

お菓子を中心に輪になってるそこへ適当に割り込み話に交ざる。

 

どうやら恋バナしようと皆であれこれ言ってたらしいんだけど、どいつもこいつもそういった経験が乏しく、悲しい事に妄想の話をしているようだった。

マジか、君ら・・・。

 

「揃いも揃って・・・うわぁ」

 

思わずそう溢すとあしどんと葉隠が合わせたように抗議の態勢をとってきた。

 

「何その顔!?むきー!じゃニコなんか話してよ!!恋バナー!!」

「そうだよ!ニコやんもなんか話してよ!エッチなのも可!!」

 

エッチという言葉にB組の頭に棘生えた奴と百が激しく反応した。

 

「い、いけませんわ!!婚前交渉なんて!!破廉恥ですわ!!そういう事はきちんと結婚してからでないと・・・ですがまぁ━━━」

「結婚以外には男性と女性が一緒になることは、神の呪いなしにはすまされない罪深き事。あってはいけない事です・・・ですけれど━━━」

 

「「━━━取り敢えずお話を聞いてから」」

 

興味深々か。

いや、まぁ、今時の子が全然興味示さなかったら、それはそれなんだけども。

 

しかしいきなりエッチな話と言われてもピンとこない。そもそも男子と付き合った事ないし。

それに言っても私自身処女。清らかこの上ない神聖な存在。中学の友達は変態という名の淑女、真性のオナニーマスターだったけど私的にはそういう話はない。

ま、あいつの話で良いかな。

 

「大した話じゃないけど、・・・てか、恋バナと言っていいか怪しい話ではあるんだけど、それでもいい?」

 

そう尋ねると皆不思議そうにしていたが頷いた。

なので中学の友達である某U・Kさんの体験談を話す事にした。

 

U・Kさんは趣味で写真をよくとる。

というか個性が"写真"とかいうこれまた変わった物だったので、あっちでパシャパシャこっちでパシャパシャと矢鱈と撮りまくる写真にとりつかれた変態だった。そんな個性があるのに「画質が!」「味がない!」とか言って昔ながらのフィルム式の一眼レフを買う程の、変態の中でもやばい猛者だった。

 

「緑谷、いきなり恋じゃなくて、濃い奴が出てきたんだけど・・・なんの話」

「いや、まだ話し始めた所だから、耳郎ちゃん。聞いて聞いて」

 

そんなU・Kさんにも恋が訪れた。

相手は一つ上のサッカー部の先輩。取り立ててイケメンではなかったけど、サッカーが上手くて人当たりのいい所がマニアな女子には人気の人だった。

 

「おお!定番!!」

 

あしどんの目がキラキラする。

葉隠は顔は見えないけど、多分似たような顔してると思う。他の皆も興味ありそう。

 

需要があるならと私は続けた。

U・Kの話を。

 

運動する人物をうまく写真に撮るために練習していた時、サッカーする先輩に一目惚れしたのが切っ掛けである事。

中々声を掛けられなくて写真だけをおさめる毎日を過ごした事。

溜まる写真を前に溜息ばかりついていた事。

写真でオナニーした事。

 

話を進めるにつれてみんなが興奮から鼻息を荒くしていく。百とか棘子とかそわそわしまくってる。

だが、そんな中、サイドテだけは顔を青くさせていた。

ほほう、気づいたか。

 

「ねぇ、緑谷。それさ・・・」

 

言い掛けたサイドテにストップをかけ、私は話を続けた。

 

ついに告白しようとラブレター片手に下駄箱にいった事。

恥ずかしくてラブレターを置けず、取り敢えずと靴を写真におさめた事。

いっそ直接告白してしまえと部室に乗り込んだ事。

そして、その先輩のタオルを見つけて、被写体として家に持ち帰った事。

 

写真に囲まれながらタオルでめっちゃオナニーした事。

 

「ストーカーの話じゃないの!!」

 

サイドテのツッコミに全員がハッとする。

 

「恋じゃないわ!それは変だわ!」

「上手いこと言うね、サイドテ。そいつも言ってた、恋と変は似てるって」

「似てないわ!!似ててたまるか!!」

 

まぁ、そこまで話したら最後まで話さないと━━そう思って私は最後まで話した。先輩のロッカーを物色した事、先輩の家を突き止めた事、誕生日にケーキを送りつけた事・・・etc。

もう途中から分かるぐらい皆怯えていた。時折オナニーの話もぶちこんだけど、効果は薄かったみたいで震えてる。最初、この話を聞いたとき私も震えたから気持ちは分かるけど。

 

「それでね、最後は告白してね。でも駄目だった・・・」

「普通に告白してないだろ、それ」

 

サイドテは勘がいいな。

 

「これまで撮ってきた写真を持参して、これだけ好きですって」

「もうホラーでしょ、それは!!」

「中には数枚自撮りのオナニー写真が交じってて超焦ったとかなんとか」

「そいつはただのヤバイ奴でしょーが!!」

 

ヤバイ奴ちゃぁ、ヤバイ奴だった。

その後は私が改心させて、トップギアに入ってた変態指数を二段階くらい下げてやったんだったけか。

いやぁ懐かしい。

 

話し終えると何人かは震えたまま。

サイドテからは「なにを聞かせてくれてんのよ」とお叱りの言葉を貰った。だってね、恋とエッチな事が混じった話なんてあいつくらいしかないし。

 

「そいつの初体験の話する?」

「続きがあんのかよ。やめやめ、どうせ碌でもないんでしょ」

「相手も写真が趣味の変態で、撮り合いながら愛し合ったとか、そんなだよ?」

「碌でも無さすぎるから・・・てか、変態増えてるし」

 

変態達の話をし終えると、お茶子からかっちゃんの話を聞かれた。恋バナしてる最中だというのにだ。不思議には思ったけど皆興味深々みたいなので、つまらない話なんだけどなぁと話す事に。

 

といっても取り立てて話す事もない。

バレンタインデーの話とか、遊園地いった話とか、修学旅行いった話とか、誕生日のお祝いした話とか。そんなのばかりだ。

 

話してる最中誕生日に貰ったアレを思い出して、バッグにしまってあるそれを取り出して見せてみる。

すると、皆今日一のキラキラした目をしてきた。

 

「うわぁぁぁぁ、さっきの話なんやったんや。ほんま」

「ニコの体験が想像以上に恋バナなんですけど」

「ニコやん、アオハル過ぎるよ」

「最初からそっち話せよ」

「けろっ、さっきの話はただただ怖かったわ」

「ですわね」

 

A組女子ーずから辛辣な言葉を頂いてる間、私のブレスレットを手にしたサイドテが感嘆の声をあげる。

 

「うわぁ、すご、名前入ってる」

「これはなんと・・・見事な刻印で。清いお心を感じます」

「ん」

 

それからも適当にかっちゃんの話をしてるとドタドタする足音が聞こえてきた。方向からいって男子部屋の方からだ。

 

「なんだろ」

「せやね」

 

一瞬不思議に思ったけど、そう言えば明日の肉の件で男子達が戦っている事を思い出した。皆にその事を伝えると呆れた顔をする。特にサイドテが「補習のくせになにしてんだか」と重い溜息をついた。

 

「サイドテさ、明日の肉どっちが良い?」

「いや、どっちでも良いから」

「だよねぇ」

 

他のB組女子ーずも特に拘りはないようで、そこら辺は男子が勝手に話を進めているらしい。

因みに、物真似野郎はB組でたった一人しかいない補習組だとか。本当、何してんだあいつ。

 

男子達の方へと耳を傾けると大分騒いでるのが聞こえてくる。それなりの戦いをしてるらしい。

放っておいてもいいのだが・・・。

 

「ねぇ、サイドテ」

「ん?」

「先生らに見つかる前にさ、両成敗しにいかない?肉は女子総取りで」

 

私の提案にサイドテは考え━━━そして親指を立てた。

 

「賛成。っても、今あいつらが何してるか知らないけどさ。割り込める奴なら良いけど」

「こんだけ騒いでんだから、あれでしょ」

「あれ?」

 

私は枕を手にとった。

 

「定番だもんね」

「ああ、成る程ね」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「死ねやこらぁぁぁぁ!!」

 

「ははは!相変わらず乱暴だなぁA組生徒は!」

 

 

目の前で悪化していく枕投げに、僕は頭を抱えたくなった。最初は枕を投げ合っていただけなのに、もう個性使い放題の無法戦闘に成り果てている。

 

なんとか止めようとしたが、どちらもヒートアップしていて歯止めが利かない。

 

よりにもよって、こんな時冷静なタイプだと思っていた轟くんまですっかりこの場の空気に溶け込むとは思わなかった。それも誤算だった。

 

「というか、皆、お肉の事、すっかり忘れてやしないだろうか・・・」

 

腕相撲大会をしてる時に決着がつけばと今更ながら思う。

どうすべきか、と悩んでいると不意に背後の襖が開いた。何事かと振り返れば、それはそれは楽しそうに笑う長い髪を艶めかせる綺麗な女性が━━━━と思ったら髪を縛ってない緑谷くんだった。そしてその背後には、同じく笑顔を浮かべた女子達の姿が。

 

「総員構え!!男共を殲滅せよ!!!」

 

その言葉を皮切りに女子達が枕を投げ始めた。

突然の女子達の出現にA・B組共に瞬く間に討ち取られていく。

 

「あっ、物間!!あんたなんでまたここにいんの!!補習はどうしたっ!!!」

「うわぁ!!?拳藤!!へぶっ!!」

 

「拳藤!?ぬぅお!なんで拳藤が!!」

「鉄哲!!あんたは止めないと駄目でしょーが!!」

「おふっ!!」

 

拳藤くんのミサイルのような枕に二人が瞬殺。

他のB組男子も小大くんと塩崎くんにやられていく。

 

そしてそれはA組男子も同じく。

 

「喰らえ!!ニコちゃん108の必殺技!ニコちゃん枕バリスタ!!」

「はぁ!?双虎!!てめぇなん━━━ふぺ!!」

 

「緑谷・・・!」

「枕を相手の顔面にシュー!!超エキサイティーーング!!」

「おうっ」

 

爆豪くんも轟くんも緑谷くんに弱すぎるぞ!!

さっきまでその程度の速度の枕避けていただろう!

特に轟くん、見とれすぎだ!!ガン見じゃないか!

 

他の男子達も軒並瞬殺され、戦場は静寂に包まれた。

残るのは虚しさと寂しさだけ。

 

男子達を殲滅させた女子達は吐き捨てるように「肉は女子の総取りとする、以上!」と告げ去っていった。補習組の物間くんも拳藤くんが持ち帰っていく。

 

嵐が過ぎ去った跡地。

残ったのは散らかった布団と枕。

それと敗北者。

 

ここに勝者はいない。

 

 

「戦いとはかくも、虚しいものだな。皆・・・」

 

 

同意の言葉はあがらなかったが、皆いそいそと片付けを始めた。まるでそれが、敗北者の役割だとでも言うように。

 

 

それから少しして、ブラド先生と相澤先生が鬼の形相で部屋にきた事は言うまでもない。

全員等しく怒られた━━━いや、勿論男子だけだが。

 


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