私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
はくびしん「・・・いない?もういった?」
ギャグ「いないっぽい?」
シリアス「よかったね?」シレッ
はくびしん「(°Д°)」
ギャグ「(°Д°)」
襲来だお。
マンダレイから許可をとって少し。
私は洸太きゅんを失禁レベルの胆試しに誘う為、崖上にある例のひみつきち目指して一人森を歩いていた。
マンダレイからは簡単にOKを貰ったものの、まだ帰って来ていない洸太きゅんと一緒に行くのは物理的に無理。まずは会場にきて貰わないと話にならない。
それでこうしてお迎えに向かっているという訳なのである。
マンダレイにはテレパスないし持たせてあるスマホで伝えておこうかと言われたけど、それは断っておいた。下手に私の動きを知って逃げられてもアレだからだ。
何となく逃げる気がするのだ、なんかね。
まずはハントしなきゃ。
しっかし、マンダレイがひみつきちの場所知らずとか、マジかー。保護者としてどーなのか。
・・・いや、まあ、私も小さい頃、ひみつきちの一つや二つや三つはあったし、母様達にばれる度に新拠点作ってたからな。ああいうのはバレたら駄目な物だ。基本的に。・・・そうなると、やっぱり仕事のある大人には把握しきれんか。仕方ないか、うんうん。
まぁあ!ひみつきちマスターたる私なら、いとも簡単に見つけられるけどね!小細工など私には通じない!!ふはは!
昨日、獣太郎が通った獣道を進み、ちょっと見上げればひみつきちが見える位置まで辿り着いた。このまま普通に道を通っていけばひみつきちにつけるが、入り口には小癪にも鳴子的な物が置かれてる。作りがちゃっちいから少し気を張れば見つけられるし、簡単にかわせるのだけど・・・わざわざ避けるというのもひみつきちマスターとしての矜持が刺激されるというもの。
なので、通常ルートガン無視で崖を上る事にした。
引き寄せる個性で体を引っこ抜く。
私の体は大した負担もなく宙へと飛んだ。
こうして改めて使うと出力が上がってるのを実感する。
入学する前では、正直ここまで簡単に出来なかった。
実際中学の時はドロドロな犯罪者からかっちゃん一人引っこ抜くのですらヒイコラしてたのだ。なのに今なら一息で引っこ抜く自信がある程。
切り立った崖を引き寄せる個性で伝うよう一気に崖上へ登る。
そうして崖上へ上がると、風景でも眺めていたらしい膝を抱えた洸太きゅんと視線があった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
死ぬほど驚いた洸太きゅんは一気に後退り。
そして勢い余って壁に追突する。
見た感じ頭をぶつけたみたい。
「大丈夫?」
「っっうう、だ、大丈夫に見えんのかよ!?ていうか、どっから来てんだよ!!いきなりは止めろ、びっくりするだろ!!」
洸太きゅんは頭を擦りながら、かっちゃんばりに怒鳴ってきた。こういう所はかっちゃんっぽいんだけどね?
ういうい、頭撫でちゃろか。
「なんだよ、何しに来たんだよ・・・」
「ん?ああ、ちょっとね。胆試しのお誘い。行こ、ね?」
「胆試し・・・?ああ、マンダレイが言ってたお前らがやるやつか。ふん!んな子供騙しなやつに参加なんかするかよ!勝手にやってろ!」
私は洸太きゅんの脇に手を突っ込み持ち上げる。
すると洸太きゅんが嫌な顔をした。
「なんだよ・・・」
「行こ、ね?」
「パー子、最初からおれの話聞く気ねぇな」
私は笑顔で返事をしとく。
「━━強制かよ!!おまっ、子供相手にどんだけ大人気ないんだよ!!普通、自分より小さい子供が、その、こういうの嫌がったら、なんかあるだろ!諦めるとか!」
「あ、れ、おかしいな・・・声が、遅れて、聞こえてくるよ?」
「それ耳の異常を知らせるやつじゃねーから!!せめて聞こえないフリしろよ!」
そう言われればそんな気もする。
だから洸太きゅんの言うとおりお口をチャック。
聞こえないフリしながら連行を開始。
なのに洸太きゅんから「本当に聞こえないフリすんな!!」と怒鳴られた。理不尽。
「おまっ!・・・・く、分かった!分かったから無言で運ぶな!!一回下ろせ!」
「・・・逃げない?」
「逃げたってどうせ捕まえてくんだろ。もういい、お前にまともな事言っても駄目なのは分かった。行く準備するから離せ」
目を見れば嘘をついてる様子はない。
一緒にきてくれるならと下ろせば、ポテポテ歩きながらひみつきちの洞穴へと入っていく。
そう時間も掛からず洸太きゅんはネコのキャラクターが描かれたリュックサックを背に戻ってきた。
「なにそれ?可愛い」
「うるさい・・・。別に、好きで使ってる訳じゃない。マンダレイが持たせてきて。弁当とか、水筒とか、その入れるのに使っただけで」
そう言うと洸太きゅんは俯いた。
暗がりで見えずらかったけど、少し顔が赤くなってた気がする。
「お、おれのは!もっとカッコイイのあるし!だから、これは違うっていうか・・・」
その姿を見てると何だかちっちゃい頃のかっちゃんを思い出してきた。
幼稚園の頃、遠足だったか何だかの時だったか。
遠足の中で三大楽しみの一つ、ワクワクのお昼時間。
皆が期待と共にバッグからお弁当を取り出す中、可愛いお弁当を片手に固まるかっちゃんを私は発見した。それはそれは、めちゃ可愛いお弁当箱だったのを覚えてる。
あの時かっちゃんが私に凄い言い訳してきて、最終的に「俺のじゃねーし!」とか言ってぶん投げたから、勿体ないと思って私が食べておいてやったんだっけか。
あれは旨い弁当だった。アスパラの肉巻きとか、超旨かった。
洸太きゅんの様子を見てると、あのかっちゃんが被る。
可愛い物ってそんなにアレなのかな。
背伸びしたいお年頃?
「似合ってるけど?」
「似合ってねぇ!!」
折角褒めたのにぃ。
つれないなぁ洸太きゅんは。
「それにしても、一日中ここに居たんだって?何してたの?」
「な、なんだって良いだろ!?おれの、勝手だ。ていうか、今更聞くなよ・・・・・・まぁ、いいや。パー子はパーだもんな」
「誰の何がパーだって?ん?てーかね、パー子パー子って呼ぶけど、私には双虎って死ぬほどぷりちーな名前があるんだからね?」
「ふた、こ・・・?ふぅん、変な名前」
このがきゃぁ。
大人の私は勿論これを見逃さない。
なので悪いお口を引っ張ってお仕置きしてあげる。
これは優しさだ。大人になって苦労しないようにという、先達者としての教育なのである。かっちゃんみたいになったらいかんよ。
「━━━━ん?」
不意に嫌な臭いが鼻をついた。
視線をそこへと向ければ、森の中に煙が立ち上っているのが見えた。木々の隙間から青白い炎も。
よくよく目を凝らしてみれば、色違いの煙も見える。
方角と距離から胆試しの場所と近い事は直ぐに分かったので、洸太きゅんから手を離し、代わりにスマホを取り出して包帯先生にコールする。
ツーコールの後、スマホ越しから包帯先生の疲れた声が聞こえた。
『どうした、緑谷。つまらない━━━』
「超山火事起きてます」
その一声で電話越しでも包帯先生の雰囲気が変わったのを感じる。切り替えが早くて助かるね。
『場所は?』
「場所は合宿玄関を出て10時方向。正確な距離は分からないんですけど、胆試しルートに近い可能性があります。あと、その近くで妙な煙が立ち上ってます。暗がりで色は分かりませんけど、紫っぽい?ような気が━━━━」
《━━━━皆!!!》
頭の中に突然声が響いてきた。
マンダレイの個性テレパスの言葉が頭に過る。
《ヴィラン二名襲来!!他にもいる可能性アリ!動ける者は直ちに施設へ!!会敵しても決して交戦せず、撤退を!!》
マンダレイの声が途切れたのを見計らい、包帯先生が怒鳴るように声をあげた。
『聞いたな、緑谷。何処にいるか知らんが直ぐに宿舎に戻れ。近くに誰かいるなら先導してやれ』
「洸太きゅんしかいないんですけど。他は良いんですか?」
『洸太くんが?なんでまた・・・はぁ、まぁ良い。洸太くんを連れて宿舎に急げ。間違っても余計な真似はするな』
そこでスマホはぶっつり切れた。
きっと補習組の世話を焼き始めたのだろうと思う。
「洸太、聞いた?そういう訳だから━━━━」
「見晴らしの良いとこを探して来てみれば━━━おいおい、いきなりビンゴか?ああ?ボーナスか、ええおい」
洸太きゅんに声を掛けようと振り返ると、頭まですっぽりフードを被った、見るからに不審者なでかい黒マントがいた。
フードの下にクソダサイ仮面が見える。
「そっちのガキは資料にねぇなぁ。俺の仮面と違って帽子のセンスは中々イカスが、まぁ用はねぇ。それよりおまえだ、おまえ」
私の側にいた洸太きゅんを一瞥した不審者は、今度は私に人指し指を向けてきた。
視線が向けられた瞬間から背筋がゾクゾクする。
間違いなく特級にヤバイやつだ。
包帯先生には余計な真似はするなと言われたけど━━━。
「━━━なに?私が美少女なのは分かるけど、手を出すのは駄目でしょ。犯罪だよ、犯罪。許されざる罪だよ。━━━てか、人に指差すなってお母さんに教わんなかった?ダサマスク」
「はっ!ダサマスクか!奇遇だな、俺もそう思ってた。・・・はぁ、いいねぇ。そういう威勢のイイヤツとノリのイイヤツは好きだぜ、俺はよ」
そう言うとダサマスクはその仮面を外す。
顔面左側に深い傷痕を残した男の顔が露になった。
その目がその表情が、私の全身を粟立たせる。
楽しげに笑顔を浮かべたその男は続けた。
「確認させてくれよ、なぁ。おまえ、名前はなんつーんだ?」
言葉の端々から男の興味が私に集中してるのが分かる。しかもそれは趣味や趣向の話ではなく、何か意図を感じるもの。
その理由や背景は見えないけど、もし目の前の男がマンダレイの言っていた襲撃者の一人だとすれば、今回の襲撃もまた明確な目的があって行われてる可能性が高い。
そしてそれは幸いな事に、洸太きゅんには関係がないらしい。
なら、やることは決まってる。
私は側にいた洸太きゅんを引き寄せ、目の前のダサマスクに聞かれないようにそっと伝えとく。
施設へ逃げるようにと。
「やめ━━━━」
何か言いかけた洸太きゅんを引き寄せる個性で崖下へと飛ばす。そのまま落としたら死んじゃうから、勿論適度にこちらへ引き寄せ、落下速度を殺してあげるサービスも忘れない。
その私の様子を見ていたダサマスクが口笛を吹いた。
「ひゅー、流石にヒーローの卵ってか?気がきくなぁ、 おい。俺にもサービスしてくれよ」
「うっさいわ。さっきの質問答えてやる義務もないんだけど、私は体の半分が優しさと思いやりで出来てるから教えてあげる━━━━━━」
「━━━━━━━━なんて言うと思ったか!!バアァァァァァァァァカ!!ダサマスクに答える名前はぬぅあい!!!スーツと花束持って出直してこぉぉーーい!!」
私の言葉を聞いたダサマスクが大声で笑う。
本当に楽しそうに、その狂気に満ちた顔を歪ませて。
「はっはっ!!聞いてた通り、特大の馬鹿じゃねぇか!!良いぜ!!そういうの、嫌いじゃねぇぇぇぇ!!俺ァ、巷じゃ"血狂い"マスキュラーなんて呼ばれてる、しがねぇただの雇われヴィランだ!!なぁに、安心しな!!骨の十本や二十本へし折るかもしんねぇけど、殺しゃしねぇからよ!!短い間かもしんねーけど、宜しくなぁ!"緑谷双虎"ちゃんよぉ!!!」
男の腕が膨れ上がった。
歪に、異様に、吐き気がするような殺気と共に。