私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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シリアス(*´ω`*)

はくびしん「全然帰る気ねぇな」
ギャグ「めちゃ居座る気だな」

シリアス退去予定、いまだ未定。


こんな所までシリアスが『開戦ヲ告ゲル』の閑話の巻き

胆試しが始まっておよそ10分程。

俺と爆豪は何人かの脅かし役と遭遇しつつも、特に大きなリアクションをする事なくルートを進んでいた。

爆豪は胆試しが始まってから頗る機嫌が悪く、時折脅かし役に当たろうとするので抑えるのが大変だった。

 

「くそっが!んだって、てめぇと歩かにゃなんねんだ、死ね!!」

「くじなんだから仕方ねぇだろ」

 

最初は何に怒ってるか分からなかったが、たまに吐き捨てる言葉を聞いて爆豪が何に苛ついてるのかは察しがついた。━━━というより、こいつが心を乱してる時は大体緑谷関連なので分かりやすいだけなんだが。

そう考えると、今回の爆豪の行動には少し違和感を覚えた。

 

「・・・爆豪」

「んだ、クソ紅白!!ぶっ殺すぞ!!喋るんじゃねぇ!!」

「お前、今回は何も言わないんだな」

 

俺の言葉に爆豪が顔をしかめた。

言葉の意味が分かったのだろう。

 

俺は緑谷が洸太という子供を気に掛けているのが気になっていた。俺の時と比べても、それはかなり積極的な姿勢で、その元々の関係性の希薄さも相俟っていやに目についていた。そういう奴だと言われればそうなんだが・・・何故だか必要以上に距離をつめている気がしたのだ。

だからあいつに忠告しようと声を掛けたし、もし何か不都合がおきた時は助けを求めるように伝えた。後は本人次第ではあるが、少なくとも手はうった。

 

これまでの爆豪なら何かしら言葉を掛けてもいいと思ったのだが、その事に関して爆豪は未だ何も言っていない。

 

忌々しそうに俺を睨んだ爆豪は前へと向いた。

 

「っせぇ。余計なお世話だ、クソ紅白。どうせ言っても聞かねぇんだ。言っても仕方ねぇだろぉがよ」

「そうかもしんねぇけどな・・・」

「そもそも、あいつが距離測り違えるかよ。馬鹿だけどな、考えなしで動くやつじゃねぇ。なら、あいつが泣きついてくるまで放っときゃ良いんだよ、ボケ」

 

相変わらず口は悪かったがその言葉が信頼からくる物なのが分かり・・・正直少しだけ驚いた。仲が良かったのは知っているし、二人の距離については入学してから何となしに見てきたから知っている。だからこそ、余計に。

 

「変わったな、お前」

「あぁ?んだ、いきなり」

 

不思議そうな表情を浮かべる爆豪の顔を見て、もしかしたらこいつ自身分かってはいないのかも知れないと思った。指摘した所で認める事もないだろうし、伝えた所で何か変わることもないので何も言わないでおくが。

 

「・・・ん?」

 

不意に少し前の爆豪の姿が頭を過った。

体育祭の時、職場体験の時、緑谷に突っ掛かっていくその姿を。

そしてその姿に自分が重なるような気がした。

 

「・・・ああ、そういう事か」

「あ?何がだ、クソ紅白」

「いや、少しな。お前の気持ちが分かっただけだ」

「てめぇなんぞに分かられて堪るか、死ね」

 

前に分かったつもりだったんだが・・・成る程これは、ああして強い言葉を言いたくなるのも頷ける。

 

「・・・お前も苦労してんだな。あの時は、悪かったな」

「何を謝ってんだてめぇは。分かったような事言ってんじゃねぇ、本気でぶっ飛ばすぞ━━━━おい、クソ紅白」

 

緊張の隠った張りつめた声。

俺は足を止めた。

爆豪の顔を見れば怪訝そうな顔をしている。

 

「どうした?」

「妙な臭いがしやがる。焦げくせぇ」

 

言われて周囲の臭いを気にすれば何処か焦げ臭さが漂っている事に気づいた。どこから漂ってきているかは分からないが、空を覆う木々の隙間に目を凝らしてみれば、黒煙が立ち上っているのが視界に入る。

 

「爆豪、山火事かもしんねぇ。煙が━━━」

「口元押さえろクソ紅白!!火事じゃねぇ!!」

 

焦りが混じった声に、咄嗟に口元を押さえる。

爆豪の視線の先へと視線を移せば、何か燃えて起きる煙とは違う妙な色をした煙が立ち込めていた。

 

そしてその視線の先に倒れたB組の生徒も。

 

「爆豪警戒頼む」

「さっさと行けや。あの妙なもん吸うな」

 

出来るだけ呼吸を押さえながら近づき、倒れた奴の脈と呼吸を確認。外傷が見当たらず、明らかに呼吸に異変が起きているようなので背中に背負い爆豪の元へと戻った。本来なら倒れた人間を無闇矢鱈に動かすものではないが、ガスが原因なら置いておく方が不味い事になる可能性が高い。

 

《━━━━皆!!!》

 

爆豪と森の出口に向かって歩き始めた頃。

頭の中に声が響いてきた。プッシーキャッツのマンダレイの声だ。

 

《ヴィラン二名襲来!!他にもいる可能性アリ!動ける者は直ちに施設へ!!会敵しても決して交戦せず、撤退を!!》

 

マンダレイの言葉を聞いた爆豪が顔を歪める。

恐らく俺も同じような顔をしてるだろう。

だが、今はまず、自分達の身を守るのが先だ。

 

「━━━このガスもヴィランの仕業か。他の奴らも心配だが仕方ねぇ。ゴール地点避けて施設に向かうぞ。ここは中間地点にいたラグドールに任せよう」

「指図してんじゃねぇ・・・!?」

 

歩いていた爆豪の足が止まった。

爆豪の視線を追えば地面に膝をつく人影がある。

合宿期間中、ただの一度も見た事もない、それが。

 

「おい、俺らの前、誰だった・・・!?」

 

その焦った声に、恐らく俺と同じ物に気づいた事を察する。

その人影の前に腕が見えたのだ。

血の滴る、切り落とされた人間の腕が。

 

 

 

「きれいだ、きれいだよ」

 

 

 

「ダメだ、仕事だ」

 

 

 

「見とれてた、ああ、いけない」

 

 

 

弱々しい呟くような声。

けれど、その声には異様さが宿っていた。

俺はその声を聞きながら、爆豪の疑問に口を開く。

 

「常闇と・・・障子・・・!!」

 

人影が立ち上がる。

ゆらりと。

 

その後ろ姿に力は感じない━━━なのに、身の毛がよだつような悪寒が背中を這いずり回って仕方ない。

 

 

「きれいな肉面」

 

 

「ああ、もう、誘惑するなよ」

 

 

「仕事しなきゃ」

 

 

振り返った奴の姿はまた異様。

口だけを露出させた変わったマスク、体は拘束具で縛りあげられ腕も碌に動かせないような状態。

どう好意的に見ても、味方には見えない。

 

一言で言うなら異常者が相応しいような奴だ。

 

「交戦すんなだぁ・・・!?」

 

爆豪が眉間のしわを深くさせ、両手を構えた。

それは戦闘態勢をとった時の爆豪の構え。

 

「何処に目ぇーつけてんだ、あのクソプロ共!!なぶり殺されろってか、ああ!?」

 

マスクの人物から刃が伸びてきた。

口から飛び出したそれは枝分かれするように増えていき、数十本の刃となり爆豪に迫る。

爆豪はそれを後ろに飛び退いてかわし、ヴィランを一瞥した。

 

「クソ紅白手貸せや!!速攻でぶっ殺すぞ!!」

「交戦すんなって言われたろ!」

「っせぇ!!見たらわかんだろうが!!んな甘いこと通じる奴かよ!!何をするにしても、隙つくんねぇとどうにもなんねぇだろうが!!」

 

それは確かにそうなんだがな。

はぁ、仕方ねぇ。

 

「ぶっ殺すのはなしだぞ。━━━というか、爆豪、お前ならわかってるよな?」

「ああん!?いちいちうっせぇわ!ならぶっ潰しゃいいんだろうが!!」

「・・・そういう事じゃねぇ。まぁ、お前なら大丈夫か。余計な事言ったな、わりぃ」

 

 

短いやり取りを交わした俺と爆豪は、そのヴィランを前に構えた━━━━━。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

ヴィラン連合"開闢行動隊"、作戦開始時間から暫く。

ぼんやりとソレを眺めていると、全員を送り出してきた黒霧がドアを開き戻ってきた。

 

「ただいま帰りました、死柄木弔」

 

その言葉に俺は軽く手をあげ返事を返しておく。

小さい事だが、この小さなアクション一つで今後の黒霧の行動が変わるなら気にかける必要がある。

判断に悩んだ時、俺の利益の為、迷う事なく首を括るようになって貰わなければならない。

 

先生のように人を操るには恐怖だけでは駄目だ。

押し付けるだけでは、人は動かない。

 

救いを与え利益を与え、理解と共感を示し、それ相応の親愛を得なくてはならない。虫酸の走る話ではあるが、それこそが人を動かす鍵。なら、多少の不快感は我慢し、得るべきを得られるよう動くのが理というもの。

 

目的をただの目標で終わらせない為にも。

 

「・・・本当に彼らのみで大丈夫でしょうか?」

 

掛けられた言葉の意味は分かる。

黒霧が何を懸念しているのかも。

けれどそれは、問題にすらならない事だ。

 

「うん、問題ない。荼毘あたりが上手く纏めるだろ・・・それに、俺の出る幕じゃない」

「荼毘ですか・・・彼も謎の多い方ですが、信用出来ますか?」

「あのヒーロー殺し様のシンパだ。それも随分と熱心な。━━━なら、素性は兎も角として、一度決まった事を反故にするタイプの輩じゃない。それに納得した上で参加したんだ。ベストを尽くすだろうさ」

 

俺の言葉を聞いた黒霧が「ほぉ」と感嘆するような声を漏らした。それがどういう意味の元出された物なのか分からないが、悪い物でない事だけは分かる。

 

「━━━以前、貴方はオールマイト殺しをゲームだと仰った」

「そうだな・・・」

「ならば、この作戦もまた、そうなのですか?」

 

黒霧の言葉に俺を試すような意図が含まれている事は直ぐ察した。以前の俺ならぶち殺している所だろうが、今は不思議とそういう気持ちは起きない。

 

「・・・そうだな、けど今は少し違う」

「違う、とは?」

「ゲームで言うなら、今まではRPGだったんだ。装備だけ万端で・・・レベル1のままラスボスに挑んでた。でもな、やるべきはそうじゃなかった。SLGこそやるべきだったんだよ」

 

個人で勝つ必要はない。

どうであれ、最後に俺が勝てばいい。

 

「俺はプレイヤーであるべきで、使えるコマ使って格上を切り崩していく・・・それで良かったんだ。切り崩し方は自由。直接的もしくは間接的にでも邪魔者を排除していくのも良いし、搦め手を使って身動きを封じても良い。話し合って味方に引き入れても良いし、なんなら無視したって良い━━━━━得るべきは過程じゃぁない。結果さ」

 

倒す敵は多い。

一つ一つしらみ潰しにするにはあまりに多すぎる。

だから、自称善良な方々にお力添えして頂く。

 

その為にも、あいつらには精々活躍して貰わねばならない。

 

「開闢行動隊。奴等は成功しても、失敗してもいい。大事なのは、そこに来たって事だ。その事実がヒーローを脅かす。最初の楔だ」

「捨て駒ですか・・・?」

「バカ言え。俺がそんな薄情者に見えるか?奴らの強さは本物だよ。向いてる方向はバラバラだが、頼れる仲間さ」

 

そう言うと、黒霧が押し殺すように笑った。

 

「それは申し訳御座いません。その様には見えなかったので」

 

こいつは良くも悪くも俺をよく分かっている。

先生の真似事をしているのは察しているのだろう。

こちらも初めからそう簡単に落ちる奴だとは思っていない。こいつはまだ先生側の人間。先生の言葉一つでいつでも敵になる、そういう奴だというのは分かりきっている。

 

━━━とはいえ、面白くないものは面白くないが。

 

「━━━十分か、黒霧」

 

そう黒霧の笑い声を遮ると、黒霧は大きく頷いた。

 

「ええ、これ以上なく。私のつまらない質問にお答え頂きありがとう御座います。さて、時間もあります。何か淹れますか?」

「てきとーになんか作れ」

「かしこまりました、死柄木弔」

 

いそいそと準備を始めた黒霧から視線を外し、再び手元のソレを眺めた。

 

 

 

今回招待する、ゲストが写った写真を。

 

 

 

「今度はゆっくり話をしよう。そう、言ったよなぁ。なぁ、緑谷双虎」

 

 


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