私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
包帯先生が来たことでフリータイムが終了し、皆飼い慣らされた犬のように自らの席に座っていく。
私は自由を信条とする為、壁に背を預けて自由を謳歌していたのだが、普通にチョップされた後、無理矢理席につかされた。
基本的人権のアレを発動してやるぅ!!と言ったら、「やってみろ」と冷静に返されてしまった。言われてやれたら苦労しないんだよ!プンスコぉぉぉぉ!!
まぁ、これ以上騒いでオコされるのも面倒なので大人しく席についた。何事も素直が一番。
包帯先生は私が席についた事を確認すると、プリントの束を教卓の上において話始めた。
「昨日の戦闘訓練、お疲れ。Vと成績は見させて貰った。最初ならあんなもんだ。これからも気を抜かないで取り組む事だ。一部の者は授業を受けられなかったようだが━━━ま、それに関してはこちらにも色々あってな。後で補習する。」
「補習、嫌です!」
「一時間の補習のつもりだったが、お前は二時間だ緑谷」
「うわぁぁぁぁぁ!!」
余計な事言うんじゃなかった!あまりに嫌だからつい反射的に言ってしまった!!
ええぃ、こうなったら━━━━━
「爆豪君が隠れてエロ本読んでます!!」
「━━がっ!?てめぇ!?」
「爆豪も二時間補習だ」
「はぁぁぁぁ!?」
かっちゃんは必死に抗議したが、包帯先生から「緑谷が二時間の時点でお前も同じに決まってるだろ。考えろ」とか言われて相手にもされなかった。
ざまぁ。
「けろっ、間違いなく面倒見係ね」
「双虎ちゃん自由やなぁ」
「私語を慎め」
「けろっ」
「はわっ」
ザワザワした空気が引き締まった所で包帯先生がさっきの話の続きをし始める。
「さて、HRの本題だ・・・。急で悪いが今日は君らに・・・」
空気に緊張が走る。
背中をつつかれたかっちゃんの額にも青筋が走る。
「学級委員長をきめてもらう」
「「「「「学校っぽいの来たーーーー!!!」」」」」
大声をあげたクラスメートの皆は元気よく手をあげる。
私が私がと、学級委員長の地位大人気だ。
因みにかっちゃんも手をあげてる。
なので、絶好のからかい時を見逃さない私は、迷わず脇を擽ってやった。凄い顔で睨まれた。
「静粛にしたまえ!!」
またザワザワしていた空気が引き締まった。
かっちゃんの脇も締まり、私の手は拘束された。
「多をけん引する責任重大な仕事だぞ・・・!『やりたい者』が、やれるモノではないだろう!!」
そんな事を言い出したのはダッシュ眼鏡。
変態の口から出てるとは思えない真面目な言葉だ。
あと、かっちゃん、そろそろ腕を解放してよ。汗臭くなっちゃうから。私の白魚のような手が。
「周囲からの信頼あってこそ務まる聖務・・・!民主主義に則り、真のリーダーを皆で決めるというのなら・・・」
ずぉぉっと聳え立つ眼鏡の手。
空を突かんとばかりに伸ばされたその手。
皆その手を眺めながら、眼鏡の次の言葉を待つ。
「これは投票で、決めるべき議案!!!」
「そびえ立ってんじゃねーか!!何故発案した!!!」
それから暫くワイのワイのやって、結局投票する事になった。その間もかっちゃんは私の手を拘束したままだった。私の白魚の手は汚されてしまった。
え?投票結果?百が二票の、かっちゃん二票で他一票で終わったよ。
同票だったから最後にじゃんけんして、勝ったかっちゃんがめでたく委員長に就任しました。ひゅーひゅーぱちぱちー!
・・・おう、だからそろそろ手を解放しろや!!おまんに入れたったろがい!!この爆発頭ぁ!!
手が解放されてから真面目に授業を受ける事数時間。
目を覚ましたらお昼時だった。
ご飯食べなきゃ。
という訳で昨日と同じようにかっちゃんの背中を押しながら食堂に向かった。かっちゃんは頻りに「今日は奢らねぇ!!」と言っていたが、所詮ツンデレなので普通に奢って貰おうと思う。
何にしようか、二日連チャンでお寿司は流石に頼まない。牛、豚、カレー、らーめん、カツ、そうだ、カツ丼にしよう。昨日切島のをつまんだけど、旨かったもんね。うん、そうしよう。
無事にカツ丼を奢って貰った私はかっちゃんと席を探す。すると、お茶子と眼鏡が座ってる姿が見えた。隣の席が空いてるようなのでお邪魔する事に。
はろはろー。
「━━━ん?緑谷くん。」
「あ、双虎ちゃん!って、爆豪くんも一緒なんやね」
「あぁぁ?いちゃワリィってか?」
「あわわ、そういうんちゃうけど!」
お茶子を怖がらせるかっちゃんの頭を叩き、私はお茶子の隣に座った。かっちゃんは眼鏡の隣、私の向かいの所だ。
「お茶子何食べてんの、味見させてー」
「味見するほどのもんちゃうよ?味噌カツ定食です、どーん」
「私はカツどーん」
「あはは」
「あっはは」
「箸が転がっても笑う年頃とはよく言ったものだ。なぁ爆豪くん、君なら━━━」
「うるせぇ、黙って食えクソ眼鏡」
「本当に口が悪いな君は」
お茶子と話しながら食べていると眼鏡が本当は変態じゃなくてホモだった事が発覚した。だからお茶子は安心して一緒にご飯出来たらしい。
おいおい、そしたら今度はかっちゃんがピンチじゃねーか。隣にしちゃったよ。いや、でもまぁ、かっちゃんなら大丈夫か。なんとかするでしょ、自分で。
「それにしても爆豪くん、委員長おめでとう!でもぶっちゃけると私、飯田くんがなるもんだと思ってたよ!!」
笑顔のお茶子にそう言われ、かっちゃんが嫌悪感丸出しで睨み付けた。私のお茶子に何すんだと、かっちゃんの定食から生姜焼きを頂く。凄い睨まれた。
「━━━ちっ!なんだぁ、丸顔。俺じゃ力不足だってのか?」
「ちゃうよ!ただ、ほら、飯田くんやりたがってたし、眼鏡だし!!」
まぁ、眼鏡だしなぁ。
「あの時ホモだと知ってて、かっちゃんに捕まってなかったら、私も入れたかもなぁ。眼鏡だし」
「最初に訂正しておくホモじゃないぞ、俺は。それにしても君たちは、眼鏡をなんだと思っているんだ」
はぁ、と溜息をついたホモ眼鏡はオレンジジュースを口にした。美味しそうだったので、かっちゃんに奢ってアピールしたが、未開封の紙パックのお茶を渡された。今日はこの気分じゃないのに。ま、良いけど。
「やりたいと、相応しいか否かは別の話だ。勿論、眼鏡である事も別だ。投票という公平な手段で決まった以上、例えそれがたった一票差だとしても、僕はそれこそが正しい結果だったと思うよ」
なんだこの偉そうな眼鏡。
なんかしゃくだからレンズを触ってやった。
すると「やめろぉ僕の眼鏡に指紋をつけるなぁ」と抵抗してくる。弄りがいがあるなぁ。
「そういえば、飯田くんってちょいちょい僕って言うよね?もしかして坊ちゃん?」
お茶子の言葉に眼鏡が困った顔をした。
「そう言われるのが嫌で一人称を変えていたんだが・・・・はぁ。ああ、俺の家は代々ヒーロー一家なんだ。俺はその次男なんだ」
「つまり跡継ぎを気にしなくていいから、男に走ったと」
「だからホモではないと・・・言うだけ無駄だろうな。なんて澄んだ目で疑ってくるんだ、君は」
話を聞いていくと眼鏡はターボヒーローとかいうのの弟らしい。お茶子に聞くと結構有名なんだとか。
その事を眼鏡に聞いたら「それが、俺の兄さ!」とあからさまな態度を見せてくる。
ホモでブラコンだった。
きちぃーーぜぇ。
かっちゃんの貞操を気にしだしたその時、突然けたたましい音が鳴り響いた。
それは普段聞くことがないであろう、何かの危機を報せる警報だった。
がたっと立ち上がったかっちゃんは怖い顔をして私を見た。
「ちっ、おい!」
「私じゃないよ!!」
「疑ってねぇっつんだよ!!」
だったら驚かせるなぁ!そんな目で見られたら、小学校の時、あのボタン押した時の事を思い出しちゃうだろうがぁぁ!!