私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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あっぶねぇぇぇぇぇぇ!!せぇぇぇぇふ!!




お説教はすればいいと言うものではないと思います!先生!何事もタイミングというか、ね!そういう物があるから!何も私だけが悪い訳じゃ━━━あ、はい、すいませんでした。反省はしてます。の巻き

ダサマスクをボッコボコにし髪の毛を全部焼き払った後、洸太きゅんを背負った私は宿舎に向かって走っていた。正直体はボロボロ。今すぐにでも寝転びたい気持ちで一杯だけど、流石に今はそうも言ってられない。

頑張れ、頑張れ、頑張れよぉ!私ぃ!君なら出来るってぇ!!━━━いや、無理かなぁ!!

 

ちょっと挫けそうになってると、背中にグリグリと洸太きゅんが頭を押し付けてきた。

 

「ごめんっ、ごめんなさい!僕が、ちゃんと、ひっぐっ、にげっ、逃げなかったから・・・!」

 

おおう、また泣き出したのお坊ちゃん。

止めてよね、背中でしくしくするの。

ああああああ、背中がぁぁぁ、ぐしぐししないでぇぇぇぇぇ・・・まったくもう!

 

「ああ、泣かない泣かない!さっきも言ったでしょ!大丈夫だから!ね!」

「で、でもっ、けが、が・・・!!」

「怪我なんてしょっちゅーしてんの!最近はしてないけど、割とかっちゃん・・・頭ボハァってなってて目付き悪い奴いたでしょ?あれとガチンコの殴りあいの喧嘩してんだから!ぐぅだから、ぐぅ!」

 

そう言ってあげると、洸太きゅんは泣くのを止めた。

ひっくひっく言ってるから、まだ完全に泣き止んだ訳じゃないみたいだけど。

 

「・・・殴り、あい?」

「そう、ガチンコよ!あ、もち私の全勝だけどね!」

「・・・・・・」

「ん?どした?」

 

元気に泣きじゃくっていた洸太きゅんだったけど、今度は急に黙り込んでしまった。

どうしたのかと思えば、肩に置かれていた手が強くしがみついてくる。

 

「お、おれっ!いまは、無理だけど・・・大きくなったら、その、パ、パー子の事、助けるから・・・!」

「助ける・・・?あータッグマッチ的な?」

「タッグマッチ?た、たぶん!」

 

今はちびっ子だけど、大きくなったら多少はマシになるかな?どうだろ、かっちゃんバリ天才だからなぁー。

━━てか、待てよ。洸太きゅんがマシになるまで、そもそも私はかっちゃんと喧嘩してるのかな?え、何年後?一年・・・はあるわけないし。三・・・四年?いやいや、十年?その頃、私は確実に二十歳は越えた大人だと思うんだけども・・・まぁ、いっか。味方は多い方が良いし。

 

「まぁ、期待しないで待ってるよ。そん時は一緒にボコボコにしよ!」

「う、うん!」

 

よく分からないけど元気になったなら結構。

そのまま走っていると宿舎が見えてきた。

 

「パー子!あそこ!」

 

洸太きゅんの声を聞いて視線をそこに移せば、マジダッシュする包帯先生が見えた。

 

「先生ーーー!!」

 

そう声を張り上げれば、包帯先生がこちらを見て目を見開いた。そして直ぐ眉間にしわを寄せ、今度はこっちにダッシュしてきた。あれはオコの顔だ!怖いもん!

 

「大馬鹿がぁ!!戦闘したな、お前!」

 

「洸太きゅん!双虎にゃん、緊急援護要請!包帯先生を攻撃せよ!!」

「え!?い、いいのか!?」

 

洸太きゅんが悩んでいる間、ものの見事に接近されてしまう。そして頭にチョップ入れられた。軽くだったけど。

 

「お前は本当に言うことを聞かない奴だ!!夏休みをくれてやったのは間違いだったようだなぁ!!!状況が状況だ!戦闘は百歩譲って、安全を確認したら電話での連絡も出来た筈だ!!なぜしなかった!言い訳があるならいってみろ!!」

「ひぃっ!!違うんですよ!いや、違くないんですけど?違うんですよ!電話はその、戦闘中にくしゃりといきまして・・・で、画面が割れちゃって、その、電源ははいるんですけど、タッチ出来なくてー。だから、まぁ、違うんですよ!」

「何がどう違━━━━」

 

「僕が!!」

 

洸太きゅんの声に包帯先生が言葉を止めた。

少し振り返って洸太きゅんの顔を見れば、泣き顔を引っ込めて男の子っぽい顔してた。可愛いというよりはかっこ可愛い的な。

 

「━━━はぁ、良い。洸太くん、分かった。緑谷、説教は後だ。お前はこのまま宿舎にいけ。補習室分かるな?そこに行け。俺はこのままマンダレイの所に行く」

「戦闘許可でも出して貰うんですか?」

「お前は本当に・・・そういう事だ。実際に戦闘してどう思った?手短でいい」

 

どうと言われてもなぁー?

 

「やばたん?」

「手短にとは言ったがな、頭の悪い回答しろとは言ってないぞ━━━ったく、こんなんで分かるとはな。はぁ、自分が情けなくなる」

 

なんか納得したみたいな包帯先生。

何故だか深い溜息をついてきた。

このやろう。

 

その後、包帯先生と別れ際、ヴィラン連中の狙いが生徒の拉致、もしくは殺害かもしれない事を伝える事も忘れないでやっておく。ふふん、やっぱり出来る女は違うね。流石、私!!

 

包帯先生と別れたら洸太きゅんと宿舎へゴー。

ガヤガヤしてる扉を開くと全員では無いけど補習組以外にも何人か見えた。眼鏡達も見かけたけど、かっちゃん達の姿はなかった。お茶子も梅雨ちゃん達も。

 

「緑谷!それに洸太くんか!━━━ん?どうしたその怪我は!!」

 

入り口付近にいたB組の先生が私に気づき、酷く焦った様子で近づいてきた。結局包帯先生と同じようなやり取りをさせられ、双虎ちゃんの体力パラメーターは更に低下。クタクタでやんす。休ませてちょ。

 

先に避難してた眼鏡にも色々絡まれ、ようやっと休める頃にはマンダレイのテレパスが頭に響いてきた。

 

《A組B組総員━━━━━プロヒーローイレイザーヘッドの名に於いて、戦闘を許可する!》

 

その内容に補習室にいた皆がざわつく。

言葉の指す意味を重く受け止めているのだろう。

そしてマンダレイの言葉は続く。

 

《尚、ヴィランの狙いに生徒の拉致、もしくは害そうとする動きあり!!戦闘を避けられぬ場合、この二点を頭に十分に注意を!!》

 

続けられた言葉に切島や眼鏡、あしどん達が、戻って来てない皆の為に援護しにいこうと声をあげ始める。けど、扉付近で敵の襲撃に備えてるB組先生は首を縦に振らない。伝言に関してあくまで自衛の為であると言い聞かせていく。切島達の気持ちは分かるけど、ここはB組先生の通りだから何も言わないでおく。

 

「緑谷!お前からも何か言えよ!爆豪の事心配じゃねぇのかよ!!」

 

ぼやっと怪我の治療をしながら待ってると切島が突っ掛かってきた。鬼気迫る雰囲気に、治療を手伝ってくれてた洸太きゅんがびっくりして肩を揺らす。

 

「うるさいなぁ、洸太きゅんがびっくりするでしょーが」

「あ、わりぃ。で、でもよ!まだ爆豪達も戻って来てねぇんだぜ!!良いのかよお前も!」

「心配する気持ちは分かるけど、現状どうしようも無いでしょ?相手の総戦力は不明だし、少なくとも私が相手した奴は━━━━」

 

 

「全員ドアから離れろ!!」

 

B組先生の急な怒鳴り声。

私は洸太きゅんを抱えて切島を盾にした。

反射的に切島が硬化する。

 

あしどんを抱えてとんだB組先生の背後。

ドアを突き破り炎が溢れ出す。

炎が晴れた先には身体中に火傷のような痕が残った妙な男の姿があった。

 

「さっきやられてたヴィラン!!?」

 

咄嗟に叫んだブドウの言葉の意味は分からない。

けど、それが敵であるなら私がやることは変わらない。

 

引き寄せる個性でそのまま近くの壁へ、フルスロットル発動して叩きつける。火傷ヴィランの顔が歪む。

すかさずB組先生が壁にめり込み気味の火傷ヴィランに肉薄し、赤い血みたいなもので体を固定、動けなくする。

 

物真似野郎が「操血」と言ったので、血そのものみたいだ。貧血にならないのかな、あれ。

 

様子をなんとなしに眺めてると火傷ヴィランが何か話し始めた。小難しい話に、双虎ちゃんちょっとウトウト。合宿とさっきの戦闘のお蔭で眠さ倍増。ちょっと洸太きゅんの肩を借りる・・・・スヤァ━━━は!いけないいけない!流石に今寝たら駄目な気がするよ!頑張れ私!

 

頑張って話を聞いてると、信頼が~とか、杜撰な~とか言ってる。生徒を犯罪集団に奪われる~とかもほざいてたので、目的判明。アホだね、あいつ。言っちゃったよ、自分で。まぁ、嘘でなければだけど。

 

切島達はアホだから見事に挑発みたいなその言葉に乗っかったけど、私は特に何も思わず話を聞いた。

するとヴィランが私を見て口元を歪めた。嘲笑するように。

 

「随分と余裕だな、お前━━━━━誰が狙われてるのかも知らないで」

 

含むように笑うその姿に嫌な物を覚える。

 

「なんて言ったっけな、ああ、そうだ、爆豪とか言ったか━━━━━」

 

 

 

 

 

その言葉を最後に、ヴィランは何も言わなくなった。

正確には何も言える状態じゃなくなったのだ。

部屋へ飛び込んできた包帯先生に顔面を蹴り飛ばされてしまったから。

 

「イレイザーヘッド!」

「無駄だブラド。こいつは煽るだけで情報ださねぇよ」

 

包帯でぎちぎちに締め上げた火傷ヴィランに包帯先生は足踏み体操体操。ヴィランの体は泥へと変わる。

 

「これはっ!ニセモノか、しかしこいつ確か炎を!」

「ああ、俺も見た。どういう原理か知らんが、厄介な奴だ。警戒してくれ」

 

 

二人の話を聞きながら、私の頭の中ではさっきの言葉が木霊してしていた。あげられたかっちゃんの名前。勿論煽りの為、もしくは混乱を招く為の可能性は高い。どうにも嘘臭かったから。

 

でも、もし本当だとしたら・・・それなりの戦力が導入されてる事になる。体育祭で力がバレてる、かっちゃんの元に。

 

「パ、パー子・・・!」

 

不意にズボンを洸太きゅんに掴まれた。

何を言いたいのかなんて、その目を見れば直ぐに分かった。けど、そういう訳にはいかない。

 

「洸太きゅん、ちょっと様子見てくる」

「お前、ダメだ!怪我してんだぞ!まだっ」

 

心配そうに顔を歪める洸太きゅんをぎゅっとしてあげる。

 

「心配してくれてありがと、でも、大丈夫。私はヒーローじゃないから」

「え、ヒーロー、じゃない・・・?」

「そうヒーローじゃないの。だから命を懸けて誰かを助けたりしない。私は出来る事しかしないの。危なくなったら直ぐに逃げちゃうの。だから大丈夫。必ず元気で戻ってくるから」

 

 

ヴィランの言葉は嘘かも知れない。

でも、もし本当だとしたら、ここで何もしなかったら、きっと私はこの先私を許せない。

 

 

 

 

 

「だからね、守りにいかせて。私の大切な人が、まだあそこにいるんだ━━━━」

 


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