私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
なんか、あっと言う間だったにゃぁ。
シリアスとじゃれたり、ギャグと戯れたり、アオハルと密会したり、忙しい章やったで。ふぅ(*´ω`*)
ガヤガヤと賑やかな四人組が去った後。
私は掛けていた個性を解除し己の体積を減らします。
そうすれば体を縛り上げていたチューブがたわみ簡単に抜け出す事が出来ました。隠しておいたナイフを手にすれば完璧です。
「ふふふー死ぬかと思いました。怖いですねぇー。同い年くらいなのに、あんなに強いなんて。ヒーロー志望の子ってみんなあんなの、なんですかねぇ?」
赤い髪の子に当たる瞬間、私は今の姿に似通った子に変身しました。
私より体格の大きい子だったお陰で体を覆うドロドロはちょっぴり多目。それが上手いこと緩衝材になってくれて、生身に通る筈の衝突のダメージが少しだけど緩和されました。お陰で今もこうして立って入られます。
あのドロドロも捨てたもんじゃないですね。
備えあれば憂いなしです。
おお、ちょっと賢いかもです、私。
偉い子ちゃんです、流石のトガちゃんですね。
━━まぁ、完全に防げた訳ではないので、回復まで少し時間は欲しい所ではありますけど?
「・・・それにしても聞いた事ある声でしたねぇー?うーん?」
あ、そう言えば、あの子がいる筈ですね。
ステ様を倒した、あの何処と無くムカツク子。
一度思い出せばさっきの声が誰だったのか見当がつきました。直ぐにあの映像とさっき見かけた彼女の姿が頭の中で重なります。なるほど、あの子ですね。
「弱っていたとはいえー、ステ様を倒したんですから、強くても仕方ないですねぇー。失敗、失敗。弔くん怒らないと良いですけど」
でも━━━。
視線を落とせば草むらに小さな注射器があります。あの子の血がちゃんと入ったそれが。
手にとって見れば、とても少ないですけど、少しの間なら変身出来る量が入ってます。
「全然気づきませんでしたねぇ~」
私はそういう時が人にあるのを知ってます。
とても傷ついた時、とても頑張った時、とても興奮してる時、人は痛みや疲れに気づかない時があるのです。そういう時は注意力もとても落ちます。その証拠に私が変わってる事なんて少しも疑わなかった。マスクや装備はそのままでしたけど、服なんて二重になってるのに。教えられた情報通りなら、まず間違いなく不自然な事に気づいた筈なんですけどね。ふふ、おかしいですねぇ。
ならきっと頑張ったんですねぇ。
とても、とても、とっても。
「あとどれくらいですかね?」
元気でいられるのは。
『トガ、聞こえてたら返事をしろ』
いきなりの声にトガびっくりです!
もしもしくらい欲しい所なのです。
でりかしーがないですね。
「聞こえてます、なんですか火傷くん」
『荼毘だ・・・まぁ、いい。それよりお前が向かった付近、例の女は行かなかったか?』
「おおーとってもたいむりーです!火傷く・・・荼毘くんストーカーさんだったりしますか?」
『なに言ってんだ、お前』
不思議に思って聞いてみたら溜息気味な言葉が返ってきました。荼毘くんは時折私にこうやってきます。
まったく失礼ですね。
『森で緑谷が捕捉出来ない。宿舎に帰ってる可能性を考えて俺を送ってる。俺なら、まず間違いなくあいつにアレを伝えてる━━━そうなりゃ、恐らくあいつは動く。こっちに出てくる筈だ。一番喧しい所目掛けてな』
「ああ、あの爆発くんですね?なるほど。どうりで直ぐに行っちゃった訳ですね。ついてます」
『通っていったのか・・・』
「はい、通っていきましたよ!!」
ブチッと通信が切られてしまいました。
これまたいきなりだから、トガびっくりです。
「ふむ、荼毘くん達が向かったなら、そろそろお開きですね。帰りましょう」
そこら辺にぶん投げられた装備を着直します。
あいにく武器だけは赤いツンツンくんに壊されてしまって使い物になりませんが、まぁ一応持ち帰るとしましょう。何かに使えるかも知れませんし。
「ふんふんふーん、ふん、ふん、ふふん」
それにしても可愛かったですね。
お茶子ちゃんに、梅雨ちゃん。
とっても良い子達でした、とても仲良くしてました。
素敵ですね、お友達。
羨ましいですね。
「━━━どちらに、譲って貰いましょうか?」
素敵なお友達。
沢山が良いですね。
良いです、とても良いです。
どっちが良いかな、お茶子?梅雨ちゃん?
それとも、あの子になってしましょうか?そうしたら、どちらともお友達ですね。
「素敵ですね、とっても素敵。弔くんにお願いしましょうか?」
体はズキズキしますけど心はとても楽しいです。
踊るような気持ちで私は集合場所に向かいました。
今夜はとてもよく眠れそうです。
◇◇◇
クモみてぇに動く拘束野郎を牽制してると、紅白野郎が名前を呼んできた。視線を少しそこへとやれば、幾つか氷柱が立てられていた。
「ちゃんと出来てんだろうなぁ!!」
「問題ねぇ、っても、こんな事俺もやった事ねぇから、何処まで有効かわかんねぇぞ・・・!」
「んなもん、分かっとるわ!!どけや!!」
爆破で紅白野郎のが用意した氷柱の元に飛ぶ。
見た目にはいまいち分かりずらかったが、それまでの物と違うのは何となく分かった。俺は手に納めてたソレを紅白野郎に渡し、次の準備に取り掛からせる。
ソレを投げて寄越した俺に紅白野郎が批難がましい目を向けてきやがった。
「危ないだろ、爆豪」
「危なくねぇわ!火がなきゃ爆発なんざしねぇ!」
「そこら中にお前が散らした火の粉があるだろ」
「っせぇ!さっさと次の準備しろや!一気にやんぞ!!こらぁ!!」
紅白野郎が次の準備を始めたの切っ掛けに、俺は氷柱の一つに触れた。
「死ねやぁ!!」
爆発と共に氷柱が砕け氷の礫が弾ける。
ショットガンの弾のように四散し飛ぶそれは、拘束野郎の防御を掻い潜り体へと降り注ぐ。
何発か当たったが見た目によるダメージはねぇ。
俺は直ぐ様二本目の氷柱も同様に爆破し、氷の弾丸による追撃を加える。また数発その体にめり込み、今度は僅かに苦しげな声を漏らさせた。
俺が紅白野郎に作らせたのは弾丸とその発射台。
一発限りの使い捨て固定散弾銃だ。
牽制用みてぇな固ぇだけの氷じゃこうはならねぇ。強度自体もそうだが、形作りから考えて作らねぇと上手く弾けねぇし、弾ける前に俺の爆破で解かしちまう。
やれとは言ったが、ぶっつけでこれなら十分だ。
「にく、肉面、みせて」
拘束野郎の面からは分からねぇが、かなりこの攻撃にうっとうしさを感じてやがる。
その証拠に野郎の動きにムラが出始めやがった。
動きを阻害される、リズムに割り込まれる。
その苦痛は手に取るように分かる。
それがどれだけウゼェか、俺はあいつに死ぬほど見させられてんだ。
「人の嫌がる事は、率先してやりましょうってな!!死ねぇやぁ!!」
タイミングを見計らいながら氷柱を使う。
拘束野郎が防御に専念し始め、攻撃はますます通りにくくなったがそれでいい。時間を稼ぐのが仕事だ。
残弾数が2発になった所で氷の壁が俺の前に現れた。準備が完了したって合図。
視線を向ければ歪な氷塊があった。
「爆豪、準備出来たぞ!!」
その紅白野郎の声に拘束野郎が壁を乗り越えてくる。
そして氷壁の上に立った拘束野郎は、真っ直ぐに氷塊を攻撃してきた。
一瞬にして削り取られていく氷塊を見ながら、俺は足元の氷の中で光るソレを爆破した━━━。
「あほぅが!!」
直後、爆発は爆発を呼び連鎖していく。
拘束野郎が足場にしていた氷壁も砕け散り、氷壁に仕込んでおいたソレにも引火。側にいた拘束野郎も巻き込み爆発が起きる。
やった事は単純な思慮の誘導。
端から紅白野郎の個性で仕留めるつもりはねぇ。
あいつに任せたのは最初の氷柱と、俺の汗が染み込んだ爆弾を拘束野郎に気づかれねぇように撒くこと、それと目立つ囮を作る事だけだ。
氷塊はあいつを引っ張り出す囮でしかねぇ。
警戒するように散々氷柱を使ってやれば、あの馬鹿はものの見事に引っ掛かりやがった。何も仕掛けのねぇ氷塊に釘付けになった。
油断しなけりゃ、いい気にならなけりゃ、多少はマシだったんだろうが、それは負けた言い訳にはならねぇ戯れ言。やれるときにやらねぇ奴は、ただのクソ雑魚でしかねぇ。
「爆速ターボ!!」
一気に加速し真下に潜り込む。
爆発音を聞いた拘束野郎が煙幕に撒かれながらも周囲へ刃をつき出す。だが、真下には一つの刃も来なかった。この期に及んで拘束野郎が警戒したのは、氷による攻撃。ただの一度も当たらなかった俺の攻撃は僅かすら意識してなかった。
腹は立つが、文句を言うつもりはねぇ。
文句は拳骨で叩きつけりゃ良い。
爆発ターボ、最高出力F1━━━━。
真上に向かっての急加速。
流石に気づいた拘束野郎が枝分かれの刃で妨害してくる。だが全然当たる気がしねぇ。欠片も。
足場の悪さ、爆発のダメージ、煙幕による塞がれた視界。それら様々な要因で混乱する思考。
絡み付いた条件に足を取られ、焦りだけで放たれたそれに脅威を感じない。
「くたばれやぁ!!」
木々より高い位置にいるそいつに、現状最高火力を込めた右の掌底を叩きつける。
直後、爆炎が噴き上がり拘束野郎を吹き飛ばす。
伸ばしては歯の刃が砕け散り、拘束具や黒服の一部も崩れ落ち、拘束野郎は白目を剥き地へと落ちていく。
もしもの時に備えホバリングしながら様子を見ていると、矢鱈と喧しい声が聞こえてきた。
「かっちゃぁぁぁぁぁん!!」
まさかと思って視線を向ければ腕を拡げた馬鹿が見えた。避けようかと思ったが、その接近速度はあまりにも速く気がつけば抱きつかれていた。
ほぼタックルだった。
「っぐ!!?」
あまりの破壊力に思わずそんな声が漏れてしまう。バランスは何とか保ったが、もし馬鹿が声もあげずに突っ込んできていたら撃墜されていたかもしんねぇ。
だが文句は出なかった。
馬鹿が相変わらずどうしようもねぇ馬鹿だったからだ。
「かっちゃん、良かった」
そう言って抱きついて離さねぇ双虎の手は少しだけ震えていた。傷だらけの体を見れば、どれだけ無茶をしてきたのか嫌でも分かる。
「・・・良くねぇわ、アホ。大人しく避難しとけや」
そっと頭を撫でてやれば、嬉しそうな顔を見せてきた。
昔どっかで見た、その顔を。
「うわぁぁぁぁ!!ニコちゃん!!こっち無視せんといてぇぇぇ!!着地させてよぉ!」
「けろーー」
「勝手に射出してくなよ!緑谷のアホぉぉぉぉ!!」
双虎から少し遅れてごちゃごちゃした人の塊が飛んできた。まぁ、そっちは受け止めてやる義理がねぇから避けたが。
「爆豪くんのアホぉぉぉぉ!」
「けろーー」
「爆豪の馬鹿ぁぁぁ!」
うるせぇ、てめぇらでどうにかしやがれ。