私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
ねる。
あとで、書き直す・・・かもな。
ぐぅ。
空に大きな爆発音が鳴り響く中、私は梅雨ちゃん達と一緒に夜の森を駆けていた。
「梅雨ちゃん!段々音と離れていってへん!?本当に大丈夫なん!?」
「そうだぜ、梅雨ちゃん!!」
私の声に後ろを走っていた切島くんも同じように不安を口にした。言葉にはしないけど、常闇くんも障子くんも同じような顔をしている。
そんな私達に前を走る梅雨ちゃんが少しだけ顔を向けた。その顔に確信するような物はない。
そこにあったのは私達と同じ、不安に満ちた表情。
「問題ない・・・と断言は出来ないわ。けれど、あの時、爆豪ちゃんの考えた予想が正しければ、これも誘導の一つの筈よ」
その言葉に轟くんが「ああ」と同意の声をあげる。
「こっちの個性が把握されてる。なら対策も練ってるだろう。俺の個性が避けられたのが良い証拠だ。━━━それにだ、戦う事を苦手だと口にするような奴が、わざわざ姿を現したんなら、それなりの理由、もしくは何かしらの逃走手段は残してるに違いねぇ。まともに追い掛けてどうこうなる相手じゃねぇって事だ」
前を走る轟くんの表情は見えないけど、その声の硬さを聞けばどれだけニコちゃんを心配しているのか分かる。
それでも取り乱さずに前を向いているのだ。
自分の勘、仲間の出した、その答えを信じて。
私はまた前を向いた。
今更どうこう言っても始まらないから。
最初にそう思ったように、信じ続けるしかないのだ。
投げられた、その賽を。
「ニコちゃん、待ってて。絶対に━━━」
私は腕を大きく振った。
轟くんが巨大な氷柱で追撃した直後。
追い掛けようとした私達に向かって、爆豪くんは口を開いた。
『追い掛けんな!!意味がねぇ!!』
突然の拒絶の言葉に私は爆豪くんがいつもの癇癪を起こしたのかと思い、頭が沸騰するような怒りを覚えたのだけれど、その表情を見てそれが勘違いである事は分かった。怒りや焦りを滲ませながらも冷静に努めようとする、その複雑な顔を見れば。
その顔のお陰かどうかは分からんけど、不思議と私の気持ちは落ち着き、その後の爆豪くんの話をすんなり聞くことが出来た。
爆豪くんから伝えられた話は二つ。
爆豪くんがニコちゃんを拐った仮面を追い掛ける事。私達が敵の逃走ルートになってると思われる、ワープ系個性を持つ人物を排除する事の二つだった。
私に文句はなかったんやけど、そこに常闇くんが食い付いていった。どうしてかなんて考えるまでもなかった。直前の失態のせいや。焦ったその顔を見ればいやでも分かった。
『待て!俺の責任だ!!俺にも━━━』
『っせぇ!!クソカラス!!個性まともに使えねぇんだ、黙ってろ!!』
悲痛な表情で気持ちを訴えた常闇くんやったけど、爆豪くんは歯牙にも掛けんかった。それ所か、かなりきつい言葉を突きつける始末。
そのあまりに強い言葉に障子くんが止めに入ろうとしたけど、爆豪くんはそれを振りきって常闇くんに詰めよっていった。真剣さが宿した、その顔のまま。
『良いか!聞け!てめぇと俺の相性は最悪だ!!俺が追い掛ける以上、てめぇは十全に戦えねぇ!!なら、てめぇか俺か、どっちかが行くかしかねぇんだ!!てめぇが夜でも関係なしにまともに個性使えんなら話くれぇ聞いてやるが、今のてめぇには出来ねぇだろ!!ああ!?』
『・・・尤もだ。気持ちを優先して済まない』
悔しそうに言葉を噛み締める常闇くん。
せやけど落ち込んでいられたのは一瞬だけやった。
爆豪くんが常闇くんの胸ぐらを掴みあげてもうたから。
『萎縮してんじゃねぇ!!やることがねぇ訳じゃねぇぞ!!ボケが!!クソ紅白と動け!!あの馬鹿の補助がありゃそれなりに戦えんだろぅが!!ぶっ潰しとけ、ごら!!』
それはあまりに厳しく荒い、せやけど優しい言葉やった。少し呆けたけど、直ぐにその意味に気づいた常闇くんが大きく頷いたのを切っ掛けに、私達は一気に動き出した。ニコちゃんを助ける為に。
飛び出してった爆豪くんを他所に梅雨ちゃんを中心に私達は考えた。敵の言動や状況を考慮し、何処に敵が出口を用意するか。
結論が出るまでそう時間は掛からんかった。
ある程度挙げられた意見を聞いた梅雨ちゃんが、早々にある場所を口にしたからや。
梅雨ちゃんが差したのは山火事が起きた場所と、ガスが溜まっていた場所の狭間。ニコちゃんから聞いたヴィランの話。爆豪くんが飛び出した後、仮面ヴィランが口にした五分という制限時間。
それらを統合した時、この状況で最も可能性のあるとされる場所がそこだというのだ。
『散らばったヴィランが五分という短い時間で集合出来る場所。それもある程度安全が確保されているとなると、何かしら障害物があって目につかず、尚且つ距離が近い筈よ。炎もガスも、恐らくヴィランが用意した仕掛け。なら━━━━』
その梅雨ちゃんの言葉に反論のなかった私達は、直ぐにそこへと駆けた。少しずつ離れていく爆発音を聞きながら、不安を胸に抱えながら、それでもそこへと。
暫く皆で走っていると光が空に走った。
見覚えがあったのか常闇くんが驚きから声をあげる。
「青山だ!!」
常闇くんの声に隣を並走していた障子くんが頷く。
よく見れば複腕から目と耳が光の放たれた方向へと向いとる。
「青山以外に二人の男・・・いや、加えてもう一人、女だが聞きなれない声━━━━っ!!不味い、挟み撃ちに遭うぞ!」
珍しく酷く焦った声をあげた障子くんに、切島くんが拳を打ち合わせた。
「っしやぁ!!そういう事なら━━━だよな!!皆!!」
「言うに及ばず!!」
切島くんの言葉に常闇くんが声をあげた。
他の皆も気持ちは同じなのか、決意に満ちた表情を浮かべとる。そしてその表情から、何をするのか分かってしまった。
「麗日!!梅雨ちゃん!!頼む!!」
そう言って差し出された掌達。
これからやろうとしてる事を考えたら止めるべきなのかも知れんけど━━━私はその掌達を自らの手で打ち付けた。
「ごめん、皆!任せてもうて!」
「気にすんな、麗日!!適材適所って奴だぜ!!」
切島くんを始めとした男子達が浮かぶ。
梅雨ちゃんはそんな男子達を纏めて舌に巻く。
そして大きく腰を落とし、体に捻りを加えた。
「直ぐに追い掛けるわ・・・!!」
風切り音が鳴り、男子達が空を飛んだ。
大きく、高く、早く。
◇◇◇
「大丈夫だな!荼毘!怪我は深い!どうにもならないぜ!!」
耳に響く陽気な声を聞き、腕から流れ落ちる血を眺めていると、自らの迂闊さを思って溜息が溢れた。
誰かが覗いている事に気づいてはいたが、まさか牙を剥いてくるタイプの敵だとは思っていなかったのだ。震えるだけの臆病ものかと思えば、存外ヒーローらしい事も出来るらしい。
俺へ攻撃を仕掛けてきた男に目を向けると、大きくその肩を揺らした。
「攻撃されたからには、無視する訳にはいかないよな?ヒーローさんよ。取り敢えず、死ぬ覚悟は出来てんだよな?」
泳ぐ視線に脅威は感じない。
やはり子供。
炎を出せば見るからに怯える。
「荼毘!こんな奴相手にすんのか?マジかよイカれてるぜ!正直言って、最高だぜ!!」
どうやらトゥワイスも俺と同じ事を考えているらしい。
こんな雑魚、相手をするまでもないと。
ヒーロー殺しの思想。
その事を考えれば、目の前のこいつは社会のガンでしかない。殺すべき対象と言える。
だが、どうにもやる気になれない。
食指が動かない程、目の前の男は弱いのだ。
どうしようかと考えていると、草むらを割って歩く足音が聞こえてきた。視線を向ければ、男の背後にトガの姿が見える。
トガは怪訝そうに男を見た後、直ぐに興味を失い俺に手を振ってきた。
「ただいま帰りましたー。皆さん、まだですか?」
トガは男の存在を完全にスルーして、俺へ声を掛けてくる。男は突然現れたトガに酷く怯えたが、それは取り越し苦労も良いところだろう。
何故ならトガはと言えば、何も感じてないのか最初に男を少し見て以来、欠片も意識を割こうとしていないのだ。
「・・・イカれ女。何か気になんねぇのか。お前は?」
「何か気になる?あ、それよりごめんなさいです。血、一人分だけです。それも少しだけです」
「一人!?最低三人はって言われてなかった!?」
トガの言葉にトゥワイスが抗議の声をあげた。
だが、トガは相変わらずの様子で「仕方ない」と答える。
「相手が強かったのです。ステ様を倒した人ですから。あーあ、あの子さえいなければ、お友だちが出来そうだったのにぃ」
「お友だち!?てか、それ俺!?ごめん、ムリ!」
「仁くんは、もうお友だちですよ?」
「マジかよ!気がついてた!!」
脈絡のない頭の痛くなる会話。
聞いてるとうんざりしてきた。
「うるせぇな、黙って・・・・!」
二つの音が耳に響く。
どちらも上からだが、音の質が明らかに違う。
「青山!!」
一つは複数人。
声の質から子供だと分かる。
けれどもう一つは━━━━違う。
「荼毘ぃ!!どけどけぇぇぇ!!」
本来一人でここに来るであろう男の焦った声。
それと耳に響く爆発音。
意味する所は、それだ。
「厄介なのに追い付かれたな、Mr.」
大きな音と共にMr.が降りてきた。
面倒な男達を引き連れて。
「歓迎しねぇぞ、爆発頭━━━━」
俺の言葉に影の一つが頭をあげる。
その顔には悪魔のような笑みが浮かんでいた。
ヒーローらしからぬ、そういう笑みが。