私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
今日の分の奴等は、なんとか、倒したんだが・・・ぐはっ、明日からちょっと空きそうだぜ・・・がくっ。
感想の反応遅くてごめんやで(ボソッ)
「あかまきまき、あおまきまき、きまきまき・・・なんか違うな。となりの客はよく客くうやつだ。ん?客くうのか?」
「ぶーん、次回予告だぶーん!次回のトランスフォ●マーはメガト●ン様大活躍だぶーん!!え?来週はラット●が主人公?残念だぶーん!」
「ヤス、犯人は・・・この中にいる!じっちゃんの名にかけて!!ばばーん!」
「奴はとんでも無いものを盗んでいきました・・・あなたの・・・あなたの?あなたの・・・?・・・警部殿!物色された形跡はありましたが、気のせいのようです!」
「・・・・」
「・・・・・・・」
「うーん、暇だ・・・!!」
真っ暗闇の中、私は心の底から思った。
背中を痴漢された直後、おかしな空間に押し込まれたと思ったら直ぐに暗くなって、かと思えば天地のあれやこれやが怪しくなって、もう双虎にゃんマジで訳わかめちゃん。超ストレス。神に愛されてる私がそうなる訳がないけれど、気持ち的には禿げそうな気分。
だから下手に動かず救助を待ってたけど、どうもそこらへん期待出来そうにないみたいなので、自力で脱出出来ないか調べる事にした・・・ていうか、じっとしてるのも飽きた。
とは言え立った私がちょっと手を伸ばして届く程度の空間しかないから調べがいは全然ない。ちょっとペタペタすれば終わりだった。それで分かったのは玉みたいな物に入れられてるって事と、出口っぽい物はないって事。それと、自分を覆ってるそれが、中々頑丈であるという事。
本気でファイアすれば破れなくもなさそうだけど、密閉された空間で炎出すとか自殺も良いところなので止めておく。
「しっかし、何なんだろ、ここ?」
僅かだけど聞き覚えのある爆発音だったり、おはようの挨拶よりよく聞く怒鳴り声が聞こえてるから、まったくの別空間ではなく何らかの個性で私だけが隔離空間に捕まってるのは分かったけど・・・情報が足りないから、それ以上は何とも言えない。
何となしに丸壁をノックしてもしもししたけど、返事は返ってこない。
本気キックをかましたけど足が痛くなるだけ。
奥さん!開けて下さい奥さん!警察です!と迫真の演技をしてみたけど、やっぱり意味がなかった。
ふむ・・・。
私は考えた。
とても、とても考えた。
どうすれば出られるのか。
で、ある程度考えて思った。
押して駄目なら引いて見ようかと。
私の個性は認識する事で初めて発動出来る。
分からないものは引けないけど、分かるものなら話は別。射程内であれば、何となく位置が分かれば、あとは感覚で引っこ抜ける。
目を瞑り意識を集中。
僅かに聞こえるその音を追う。
時折手に掛かる感覚から、かっちゃんが側にいるのが分かる。そして目標であるかっちゃんがあっちこっち動きまくってるのも。
狙いが定まらないから止まれボケ━━━と言いたい所だけど、私が移動してる可能性もあるから仮に外に出られたとしてもそれは言わない。間違いなく不毛な争いになるもんね。喧嘩良くない。面倒臭い。
仕方がないので私から合わせる事にした。
かっちゃんの動きをシミュレートしながら追い掛けてみる。予想通りなら直ぐにでも引き寄せられた筈なのに、どうにも掴み損ねてしまう。そうなってくると、かっちゃんだけに原因がある訳ではないという事になる。
恐らく私自身も移動してるのだろう。それもかなり厄介な運び手によって。
まぁ、天才たる私に不可能はないけどね。
それまでのかっちゃんの動きから、運び手の動きを予想━━━なんだろ、めちゃ頑張ってる感が凄い。がむしゃらに逃げてる感じがする。読みづらい。
それでも何とか動きの癖を割り出し、かっちゃんが飛び込んでくるであろうタイミングに合わせ、思いきり引っこ抜く━━━が、失敗。
かっちゃんを引き寄せた感覚はあるし、私を包んでる玉的な何かが動いたような気はするけど、壁か何かに阻まれた感じがする。
なんのこれしきと、二度目のチャレンジ。
思いきり引っこ抜いたけど、また何かに阻まれた。
それから何度か引っこ抜いてみたけど、結果はあまりよろしくない。感触はあるんだけど、何かに阻まれる感じがあってどうにもならない。箱詰めかな?小さくなってる可能性もあるかも?うむむ。
あと、引っこ抜く度に聞こえる、苦しそうなうめき声みたいなのが気になる。本当、外で何が起きんてんだろうか・・・。
手慰めに感触を頼りに引っこ抜く。
やっぱり何に阻まれたけど、今度は違和感を覚えた。
壁に触れてみるとヒビが入ってる。
ノックしてもしもししたけどヒビ割れは大きくならない。衝撃か何かで入ったヒビではないらしい。
試しにもう一度引っこ抜いてみる。
ヒビが増えた。
「・・・・・・ふむ」
相変わらず外の様子は分からないけど、引っこ抜く事に意味はあるらしい。
それならとタイミングを合わせてフルスロットルで引っこ抜く。
すると光が見えた━━━かと思えば、丸壁のヒビが一気に全体へと広がっていくのも見える。
おお、不吉。
ヤバイかなぁと思っていると、突然景色が変わった。
「双虎!!」
視界が拓けたと思えば夜の森が目に映る。
響いた声に顔を向ければかっちゃんの姿。
それとその背後に轟達と対峙する火傷顔とタイツ男、加えてさっき倒しておいた筈のJKの姿も見える。
だから引き寄せる個性で敵っぽい奴等の足を引っこ抜いとく。バランスを崩した敵っぽい連中が轟達からキツイ一発を平等に貰う。痛そう。
「━━っとんだじゃじゃ馬だな、お嬢さん。おじさん、歯が砕けちゃう所だったよ」
呻くような声が背中に掛かった。
視線をそこへ向ければシルクハットを被った男が口許を押さえて苦しそうにしてる。
見た感じ敵なのでシルクハットおじさんの顔面に引き寄せる個性を使った高速膝キックをお見舞いしておく。回避しようとしたけど、もちろんそんな暇は与えない。
瞬殺王ニコちゃん、ここに爆誕。
そうこうしてるとかっちゃんが側に来た。
その様子を見れば心配してくれたのが分かる。
まぁ、でも取り敢えず━━━。
「状況説明よろ」
「てめぇが捕まる、追い掛ける、敵集合、ぼこる」
「OK把握」
よく知らない人はボコって宜しいと、そういう事ですね。分かります。
「緑谷!!爆豪!!」
轟の声に振り向けばいつかの脳みそ丸見え男がいた。
背中から何本もの腕。しかも本来手がある場所に武器を生やすという人間離れした異様な格好。
取り敢えずかっちゃんと自分の体を後ろに引っこ抜き距離をとる。降り下ろされた脳みそ丸見え男の攻撃が空を切った。
隙をついてかっちゃんが爆撃をかますけど、ダメージはいまいち通ってない━━━けど、回復する様子がない。
「かっちゃん!!」
「言わんでも、分かっとるわ!!」
掌を敵に翳したかっちゃん。
私も息を吸い込む。
ニコちゃん108の必殺技━━━━━。
「━━━っ!!?」
炎を吹こうとした直後、頭痛が走った。
何とか絞り出したけど、出そうとした紅炎とはかけ離れた物。オレンジ色の低火力の炎。
私の炎は目眩まし程度の威力しか発揮しなかったけど、次にかっちゃんが叩き込んだ爆撃の威力が高く、何とか後退させる事が出来た。かっちゃんは私を一瞥した後、轟達の方を見た。
「金髪!馬鹿女についてろ!!下手に離れんな!!」
それだけ言うとかっちゃんは爆速ターボで脳みそ丸見え太郎に追撃しにいった。
流石天才かっちゃん。
切り替えが鬼のように早い。
即行で戦力外通告してくるとか。
合宿の疲労が溜まってるのは自覚していた。
ダサマスクに付き合ったせいで消耗してるのも。
切島とか、さっきの空間でなんとか体力回復を図ってはいたけど、やっぱり無理があったらしい。
実際完全に休んでた訳でもないから、仕方ないっちゃ仕方ないんだけど。
「だ、大丈夫かい・・・!?」
かっちゃんに呼ばれた転校生がこっちにきた。
日本の高校に通うだけあって日本語ペラペラである。
ちょびっつ羨ましい。
「おーけーおーけー。あいむふぁいんせんきゅーだYO」
私の素晴らしい英語を聞いて転校生がその顔に困惑を浮かべる。発音が良すぎたのかも知れない。
敵にちょっかいを掛けながらかっちゃん達の様子を眺めていると、森の中からお茶子達が現れた。
お茶子達は私に気づくと混戦する中を突っ切り駆けつけてきてくれる。勿論無謀に突っ込んだ訳じゃない。ちゃんと周りの様子を見て隙をついてだ。
まぁ、その行動が格好いい事に変わりはないけど。
お茶子まじ男前、惚れる。
「大丈夫ニコちゃん!!」
「ふぁいんせんきゅー」
「なんで英語なんや!」
こんな時だっていうのにキチンとツッコミ。
もうあれだ。結婚しよ、お茶子。
「お茶子ちゃん、のんびりしてる時間はないわ。直ぐに撤退するわよ。その様子だと、走るのは無理ね?」
「あ、うぅ、ごめん、つい。━━ニコちゃん取り敢えず私の背中にっ!」
さっと私の前で背中を向けて膝をついたお茶子。
男前過ぎる行動に胸がきゅんとする。
格好いいよぉ、お茶子ぉ。
そんなお茶子に向かって転校生が口を開いた。
「あの、僕が・・・」
「青山くん、気持ちはありがと。せやけど、私なら個性で軽く出来るから大丈夫や。それに攻撃手段持っとる青山くんは身軽な方がええ。だからそっちをお願い!」
「あ、うん」
話がまとまった所でお茶子の背中に乗ろうとすると、それが目についた。
お茶子達が現れた方向。
帰りの道を遮るように現れた黒モヤ。
USJで見たそれ。
「黒霧!!時間過ぎてるぞ!!どういうつもりだ!!死柄木の指示か!?」
火傷顔の怒声が響いた。
その声に黒いモヤに浮かぶ二つの光が揺れる。
「申し訳ありません。こちらの様子を知ったあの方が、自ら彼女を迎えにいくと仰りまして━━━━━」
「━━━ああ、黒霧。後は僕が自分で言うよ」
黒モヤの後から聞こえた声に息が止まる。
「邪魔してすまない、皆。こうして会うのは初めてだね。僕だよ、弔の先生さ」
その声に吐き気がする。
「本当は弔に全部任せるつもりだったんだけど・・・どうにも雲行きが怪しいと言うじゃないか。僕個人としても彼女とは話してみたくてね。これを逃すと次の機会がいつになるか分からないと思って・・・手伝いにきたんだよ」
黒いモヤから黒いマスクを被ったスーツ姿の男が現れた。瞬間、空気が重くなった。手マンに感じた嫌な気配が、子供騙しだと思えるくらい淀んだ何かが周囲を漂う。
胃がひっくり返るような刺激に耐えながら周囲を見れば、殆んどの人が顔を青くさせたまま震えてる。
かっちゃんですら息を飲んでた。
「やぁ、双虎ちゃん。迎えにきたよ」
伸ばされた手に寒気が止まらない。
逃げようと思うのに体が動こうとしない。
「これだと少しつまらないなぁ。ああ、ここは彼にあやかって見ようかな?ねぇ、双虎ちゃん」
「僕がきた」