私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
うむむ、話つくりって難しいネ!
空気を震わせる大きな音が響いてきた。
ビル街の先、逃げ惑う人の波が押し寄せてくるその方向、目的地であるその場所から。
「爆発の人!!反応消えました!!反対方向、おおよそ5㎞先です!!━━━━━おや?この方向は確か・・・」
人混みの騒ぎを物ともしない大きな声が響く。
そっと視線を向ければモニタを手にしたサポート科の発目くんの姿が目に入る。
「━━━と、反対方向!?本当かい!?」
「勿論本当です!!眼鏡の人!!━━━あ、やっぱり!少し前のSNSに挙げられた情報なんですけど、この近くに警察がやけにウロウロしてる場所があるとの事だったんです!!きっともう一つの奇襲ポイントですね!!あ、ちなみにですね、その情報を電脳空間から拾ったのは私の第126子である━━━━」
「爆豪くん!!」
前を走る爆豪くんにそう声をかければ「黙って走れや!!」と取りつく島もない言葉が返ってきた。
「爆豪!!良いのかよ!!」
「そうですわ!!」
僕に賛同するよう切島くんと八百万くんも声をあげるが、爆豪くんは脇目も振らずに駆けていく。
そんな爆豪の背中に轟くんが口を開いた。
「爆豪、何か確証でもあんのか?」
「んなもん、あるわけねぇだろがボケが!!勘だ、勘!!あの馬鹿はくそウルセェ所にいるって相場が決まってんだよ!!」
あまりに迷いのない返事に「そうか」と何故か轟くんが納得してしまった。
そうかではないが。
「そもそもっ、その受信機が追ってんのは脳みそ丸出しのクソヴィランだろうが!!なら反応追った所で、クソヴィランしかいねぇ!!それになっ、クソヴィランが別の場所に飛ばされてまだ騒ぎが続いてんなら、当たりは多分こっちだ・・・!!」
成る程そうか・・・はっ、僕も轟と同じじゃないか。
「だがな、爆豪く━━━━━」
「ですが、爆発の人!少なくとも私達はそれを目印に走ってきてます!!方針転換するのであれば、皆から意見を聞くべきではないですか?」
遠慮のない発目くんの声が響く。
僕が言いたい事、全部言われてしまった。
だがその言葉にも爆豪くんは足を止めない。
「るっせぇ!!文句あんならついてくんなや!!端からてめぇらに期待してねぇ!!つーか、勝手についてきといて何ほざいとんじゃ!!」
「他は兎も角として、私は爆発の人に頼まれて来たのですが!!それに私がついていかないと目的地がわからなくなると思います!!」
「分かるわ!!地図なんざ一回見りゃ十分だろうが!!」
喧嘩しながらも走る二人を眺めていると、直ぐ後ろを走る切島くんが声を掛けてきた。
「なぁ、あれはどういう関係なんだと思う?」
「どうもこうも、緑谷くん繋がりだろうな」
「だよなぁ」
不思議な関係を築く二人に何とも言えない気持ちを抱えながら、僕はここに来ることを決めた数時間前をなんとなしに思い出した。
爆豪くんのお見舞いにいったその日の夜。
轟くん達が気になった僕は病院へと向かった。
夜間外出など両親の心配を考えると胸が痛くなったが、危険な事へと足を踏み入れようとする二人の事を考えるといてもたってもいられなかった。
病院前に辿り着くと案の定轟くんと切島くんの姿があった。
そしてそこには、あろうことか八百万くんと爆豪くんの姿もある。
「どうしてだ・・・!!君達までっ!!」
抑えきれない気持ちと共に彼等へ近づこうとすると、思いきり何かが背中へとぶつかってきた。何とか受け身をとったものの、背中に走った衝撃はけっして軽くなく呻き声が漏れてしまう。
「おや!?こんな所に人がふらついてますね!!病院は目の前ですよ!頑張って下さい!!」
しれっと先を行こうとするその人物に驚いた。
惚けている様子はない。本気で僕にぶつかった事を自覚してないのだ。その事実に気づき、二度驚いた。
「待ちたまえ!!せめて一言謝罪をいれるべきではなかろうか!?君がぶつかったんだぞ!」
「はい?私がですか?気のせいでは?」
「気のせいでは絶対ない!君は何を考えて━━━━」
顔をあげるとまた驚いた。
そこに見えたのはサポート科の発目くんだったのだ。
矢鱈と大きな荷物がその大きくない背中に背負われている。
「発目くんではないか!何故ここに!?」
「?自己紹介した覚えはないのですが・・・?」
「覚えていないのか!?体育祭で━━━」
「あ、そんな前の事覚えてないです」
「そんなに前でもないのだが!?」
思わず声を荒らげてしまうと、皆がこちらに気づき視線を向けてきた。怒るつもりだったのだが、今はもうそんな気分になれない。視線が痛い
「飯田・・・」
バツが悪そうに切島くんが目を逸らした。
他の皆も似たような反応をする。
僕が怒るまでもなく、いけない事をしている自覚はちゃんとあるようだ。
「皆の━━━━━」
「あ、爆発の人ーーー!!お待たせしましたぁ!!色々と使えそうな物を持ってきましたよ!!というより、この間のブーツの具合は如何ですか!?改良点があれば早目に伝えて下さいよ!!ガスの噴出口はまだまだ調整が必要ですから!あ、特にカートリッジ類は消耗品ですから、容器に異変があれば壊れた理由と使用回数など分かる限りの事をレポート用紙に纏めて即行で持ってきてきて下さい!!そく改良してお渡ししますから!!」
捲し立てるように喋る発目くんは、僕の存在を忘れたかのように爆豪くんの元へと向かった。
あまりの無視具合に、自分がここにあるのか少しだけ不安になる。
「轟くん、僕は・・・」
「どうした、飯田」
「良かった」
「?取り敢えず、わりぃ。お前の気持ち無駄にしちまって。でも聞いてくれ━━━━」
発目くんのお陰で冷静になれた僕は改めて皆の話を聞く事にした。爆豪くんや轟くんにとって緑谷くんは特別だ。僕にとっても恩人の一人で特別だ。そんな緑谷くんが今敵の手中にいるかもしれない以上、心配する気持ちは分からなくはない。
轟くん達が考えていたのは、戦闘を視野にいれない救出作戦。勿論、個性の使用もしないとのことだった。
確かに法にも規則にも触れない。
だが、現実的でないし、仮に出来たとしても褒められた事でもない。
とてもじゃないが、頷けなかった。
そんな僕に爆豪くんが口を開いた。
「何勝手ほざいてんだ。俺は使うぞ、個性━━━」
「爆豪!!お前はちょっと黙ってろ!!」
切島くんが口を抑えたがしっかり聞こえてしまった。
他の皆は兎も角としても、爆豪くんだけは連れていけないと心の底から思う。
どうするべきか考えていると、目の前に奇妙な棒が突きつけられていた。
それを手にしているのは発目くんだ。
「スタンガン警棒です」
「スタンガン警棒・・・?」
「個性を使ったらアウトですから、色々と持ってきました。どれも販売許可が降りている、既製品ばかりです。戦闘以外で使用する道具であれば、幾つか自分のベイビー達もいますが」
このご時世、個性使用をきつく罰する反面こういった護身道具の所持について寛容になってきている。発目くんが手にした警棒のような物もあれば、催涙スプレーなど割と簡単に手に入ってしまう。━━━とはいえ、手放しに許容される物かと言えばそれもまた違う。
言い淀んだ僕の態度に思う所があったのか、発目くんが真剣な顔でこちらを見てきた。
「言いたい事は理解してるつもりです。武器を持つという事の意味。これでも私はサポート科です。まだまだ半人前のペーペーですが、ここにいる誰よりもそういった事とは向き合ってきたつもりです」
「道具は人を選べません。使い手次第で誰かを助けますし、人を簡単に傷つけてしまいます。殺してしまう事も。その事を忘れた事なんてありません。だから私は、そのつもりでずっと携わってきました。それでも私は、私達作り手は作るんです。作り続けるんです。それぞれの想いを抱えて、そうなりますようにと願いを込めて」
「少なくとも私はずっと、自分の作った子供達が誰かの笑顔を守ってくれるよう、願いを込めてきました」
さっと警棒の持ち手を向けられた。
発目くんの手は電流が流れるであろう棒の部分に触れたままだ。
「法や規則以前に、心が受け入れられないのであれば、そのまま電源を入れて下さい。少なくとも私は止められます。私も覚悟をしてここに来てます。簡単には止まれません━━━━━━━大切な友人が、助けを待ってるかも知れないんですから」
他の皆を見れば爆豪くん以外全員が同じような表情を浮かべていた。仮にここで発目くん一人止めた所で、皆は行くつもりなのだろう。
「・・・それらの装備は、あくまで自衛目的なのだな」
「当然です。・・・まぁ、性能面や耐久力から考えて、実戦の主要武器として扱うのは無理だとは思いますが」
「いや、そういう専門的な話ではなくてな・・・いや、その事はおいておこう。話が進まない」
納得は出来ない。
法には触れてなくても、これは多くの人に迷惑がかかる行為でしかないからだ。成功すればいいとか、そういう類いの話でもない。
ここはやはりオールマイトや他のプロを信じ待つ事こそが一番なのだ。
それになにより、爆豪くんが目に宿している光が気になる。覚悟を決めた、重く静かな火を灯したその目が。
彼はまず間違いなく、その時がきたら個性を使ってしまうだろう。敵に対して、躊躇う事もなく。
「爆豪くん、本当に良いのかい。今回の件が公になれば、君のヒーローへの道は閉ざされるかもしれない」
爆豪くんは僕に背を向けて歩き出した。
「るっせぇわ・・・行くぞ、クソギーク」
「あっ、はい勿論です!!━━━と、その前におっぱいの人、少し受信機を拝借させて下さい!」
「おっぱいの人っ!?」
発目くんに質問攻めにされている八百万くんの姿を眺めていると、轟くんが側へときた。
申し訳なさそうな顔が目に入る。
「わりぃな、飯田」
「いいさ・・・僕も同行する」
「良いのか?」
愚問だな、轟くん。
「良くないさ。全然ね。けれど、君達は行くのだろう?意地でも。なら、僕も行く。君達が過ちをおかさないように見張らせて貰う。そして、その時がきたら僕が止める」
先に歩き出した爆豪くん達の背中を追い掛け、僕たちも歩き出した。
彼女が待っているかも知れない、その場所に向けて。
「━━━っ!!?」
数時間前の事を思い出していると、突然何かが爆発するような音が鳴り響いた。
それも目指している方向からだ。
「なんだよ、今の!?爆発!?」
人々の悲鳴が飛び交う中、切島くんの驚きに満ちた声が聞こえる。
そして目の前には立ち上る煙と、崩れたビルの残骸が転がっていた。
「嫌な予感がするな・・・」
轟くんの呟きに言葉を返す人はいない。
けれど、ただ一人だけ、その言葉に反応するように加速した者がいた。
「爆豪さんっ・・・!!」
微塵の迷いなくそこへと走る背中に、僅かに兄の姿が重なる。誰よりも早く、人を助ける為に駆けた兄の姿と。
「ヒーロー、か」
今のご時世では誰にも認められないかも知れない。
法を守り戦う、それが今のヒーローなのだから。
けれど、僕は思う。
きっとヒーローという言葉は、彼らのような者達から産まれたのだろうなと。
誰かを救う為に、己の不利を省みず。
誰かを救う為に、躊躇わず。
誰かを救う為に、それ以上の理由を求めない。
爆豪くん、轟くん。
僕を助けてくれた君達を犯罪者などにはしない。
絶対に。
「彼一人だと無茶しかねない!轟くん!先に行かせて貰う!」
「分かった、頼む・・・!」
僕は爆豪くんを追い掛けて足を踏み出した。
彼が間違いを犯す前に、止められるよう。
彼にヒーローとしての道を残せるよう。
「ウォッチメン飯田として!!」
「飯田、頼むから気が抜けるような事言うな」
「すまない轟くん!!━━━うぉぉぉぉ!!」
「眼鏡の人燃えてますね!」
「うん、まぁ、いつもは、もっとちゃんとしてんだけどな・・・」
「ウォッチウーメンも、その、あんな感じにした方が宜しいでしょうか・・・」
「八百万はそのままでいてくれ、頼むから」
おまけぇぇ(*´ω`*)
おまけのあらすじ!!
目的地付近に辿り着いたニコちゃん救出し隊一行。
救出を成功率させる為には、できる限り密かに動く必要があった。しかし、テレビで顔ばれしてる彼等にはそれが難しい。彼等は考えた。隠密に動くためにはどうすれば良いのか・・・そして思い付く、必殺の秘策ッ!!悪魔的発想ッ!!いや、もはや悪魔そのものッ。
それはつまり変装ッ!!それもニンジャの如し最強の変装ッ!!
彼等は向かう。国内有数の有名ディスカウントショップへと・・・!!
いまこそ多々買え、愛する友の為に・・・!!
ドンドンドン●ンキー●ンキーホーテー
やおもも「完璧な変装ですわ!!」キャバジョー
ととろき「そうか」ホストー
眼鏡「チャンネーイルヨォォ!」ヨビコミー
切島「みんな割とノリノリで買うのな」チンピラー
かっちゃん「けっ、くっだらねぇ!」ワカガシラー
Ms.はつめ「おや、爆発の人!さっきの信号機みたいなカラーリングのコスプレヒーロースーツは止めたんですね!!」ツナギー
かっちゃん「うるせぇぇぇ!!!!つか、てめぇは色変えただけじゃねぇか!舐めてんのか!」ヤクザァァァーーー!!
やおもも(・・・俺がきたっ、とか言うのでしょうか)
眼鏡(・・・それは目立つな。止めてくれて良かった)
切島(あいつ地味にオールマイトファンだしな)
ととろき(信号機・・・?ヒーロー、ああ・・・・)
ととろき「買い直してくる」
一同「「!?」」」