私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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一体いつから、本日Am6:00に更新されたと思ったら削除されている、と錯覚していた。
あれは、あれだ・・・そう、それだ。それなのだ。
つまりは、そういう事だ。

・・・・卍ッ解!!(ヤケクソ)


はい、そんな訳で改稿版やで( *・ω・)ノ

朝は中途半端に出しちゃってごめんねぇ!!
納得出来なかったので、ちょっと手直ししたで!
まぁ、いうても前のやつと大体一緒だけどね(*ゝ`ω・)



言葉にしないと分からない事がやたらと多いので、思いきって吟じます!頑張った私はお腹がとても減ったからぁ~ご褒美に美味しい物が食べたぃ~ぃ~!!さぁ、奢れぇぇぇぇ~~!あると思います!の巻き

『皆が笑って暮らせる世の中にしたいです』

 

そうお師匠に伝えると、お師匠はいつものように笑った。不敵に、楽しそうに。

そしていかれてると口にしながら、お師匠は真っ直ぐに私の目を見てきた。私の夢を認めてくれてるかのように。 

 

私は嬉しくて、もう一度心の中で呟いた。

その言葉を。

 

 

私のオリジンとなるその言葉を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はははっ!流石ヒーロー!ナンバー1!オールマイトだ!・・・頼まれもしないのに、よく守ってくれる。自分の身も顧みずに。━━━いやぁ、本当に、お笑いだよ!!」

 

オールフォーワンの声を聞き、私は視線だけを僅かに背後に向ける。そこにはビルの瓦礫に紛れた女性の姿が見えた。無事とは言いがたいが、先ほどより怪我が悪化していない様子に胸を撫で下ろす。 

 

再び空に浮かぶ奴へ視線を向ければ、楽しそうに笑い声をあげながら手を大きく広げた。

 

「頬はこけ、目は窪み!!貧相なトップヒーローだ。恥じるなよ?それが本当のキミなんだろう?」

 

その言葉に返す言葉はない。

事実だ。

 

「ヒーローは大変だね、オールマイト。君達は・・・いやぁ、君は、守る者があまりにも多い。例えば今君が守った彼女、例えば先に僕達と戦って使い物にならなくなった同僚、例えば背を見せて逃げる教え子達。ああ、可哀想に。君にそんな枷さえなければ、今の僕程度、簡単に勝てたろうに━━━━━まぁ、そのお陰で無事弔達を逃がせたのだから、キミのその無駄な正義感には感謝しているけどね」

 

感謝とは、面白くない戯れ言をいう。

そう思って睨みつければ奴は肩を竦めた。

 

「まったく・・・思い出すよ。あの時の君を。忌々しい限りだ━━━おや?」

 

瓦礫の崩れる音に視線を向ければ、先ほど倒した筈の脳無が這いずるようにこちらに向かってきている。

手足はあらぬ方向へと曲がり、身体を覆っていた筋繊維は力をなくしただ引き摺り、血を吐きながら血を撒き散らしながら、それでも僅かな生気を宿した目で何かを求めるように。

 

 

その目は、確かに人間の目だった。

 

 

「もう動けないかと思ったけど、存外頑丈だな。これは勿体無い事をしたかもしれないね。ちゃんと調整してあげれば、面白い物になったろうに━━━━残念だよ」

 

それだけ言うとオール・フォー・ワンは私に放ったようなソレを脳無へと叩きつけた。脳無の目から生気が失せ、自らの流した血だまりへと沈む。

 

それはまるで、ゴミでも処分するような自然な手つきだった。

それを脳が理解した瞬間、血が熱くたぎっていくのを感じた。

 

 

「何故、貴様が、殺す!!仲間ではないのか!!」

「君が熱くなるなよ、オールマイト。作った者の責任として不良品を処分しただけさ。折角与えた力もまともに使いこなせない、所詮はガラクタだよ。━━━それとも君には、これが人間に見えるのかい?冗談はよしてくれ。自分で考える事も出来ない、ただの個性の入れ物。人の言うことを聞くだけの、人形だよ。これはね」

「人だ!!彼もまた、人間だ!!貴様には彼の目が見えなかったのか!!」

「目?はは、面白い事言うな。理解に苦しむよ、ヒーロー。どんな目をしていようと、もうあれはガラクタ以外何物でもないさ。僕が保証する。改造してあげた、僕が」

 

 

人を人と思わない。

奴は平然とそれを口にする。

だから私はそれが許せない。

 

「━━━オール・フォー・ワン!!」

 

力を振り絞りマッスルフォームへと変わる。

僅かなインターバルではあったが、回復した。

まだ戦える。

 

「怖いなぁ、君は・・・!!」

 

オール・フォー・ワンは倒れふした彼女へと掌を向けた。彼女に逃げる余裕は見られない。

私は彼女の前で構えた。

 

 

「なんだい、逃げないでいてくれるのかい?流石ヒーロー、サービス精神旺盛だな。オールマイト」

 

 

オール・フォー・ワンの掌が空気を弾く。

飛ばされた不可視のそれに合わせ拳を振り抜けば、弾かれた空気同士がぶつかり爆風が周辺一体に吹き荒れた。

追撃しようと振り抜いた拳と逆の拳を構えたが、そこから放つことは出来なかった。

軋むような痛みが、それを止めたのだ。

 

「本当によく守るな、君は」

 

私を嘲るように、何が楽しいのか奴は笑い声をあげた

 

「何を言いたい!!」

「彼は守らなかったのに、ね」

「━━━彼?」

 

オール・フォー・ワンは自らの顔に手を当てた。

 

「彼だよ・・・死柄木弔。旧名を志村転弧。先代ワン・フォー・オール継承者、志村菜奈の孫である彼をさ」

 

心臓が跳ねた。

 

「君が嫌がる事を、ずぅっと考えてた」

 

その言葉が意味するものを、私は知っている。

目の前の男がどんな手段を使ってくる奴なのか。

私は、知っている。

 

だから、理解した。

お師匠の家族に起きた、悲劇を。

 

「君と弔が会う機会をつくった。君は弔を下したね。何も知らず、勝ち誇った笑顔で」

「ウソを・・・」

 

漸く絞り出した声に「事実さ」という答えが返ってきた。

 

「僕のやりそうなことだ、そうだろ?君はそういう僕を倒したんじゃないか━━━━あれ?おかしいな、オールマイト」

 

ぐいっと、オール・フォー・ワンが自らの頬に手を当て、持ち上げる仕草をした。

お師匠のそれと重なる、それを。

 

「笑顔はどうした?」

 

 

 

『人を助けるって、つまり、その人は怖い思いをしたってことだ』

 

 

 

「いつもの笑顔だよ、オールマイト」

 

 

 

『命だけじゃなくて心も助けてこそ真のヒーローだと私は思う━━━』

 

 

 

「君の師匠の教えだろう?」

 

 

 

『━━━だから、どんだけ恐くても「自分は大丈夫だ」って笑うんだ。世の中笑ってる奴が一番強いからな』

 

 

 

頬に指を当て笑う、お師匠の姿が頭を過った。

 

「き、きさ、まっ・・・・!!」

「ははっ、やはり楽しいな・・・!良い顔だ。一欠片でも奪えただろうか。君から」

 

息子の幸せを願い、離れる事を選んだお師匠の悲しげな顔も言葉を今も覚えている。

家族の幸せを願い戦うお師匠の背中を覚えている。

 

私は知っていたのに。

それなのに何も知らずに。

 

私は、彼等を・・・!!

 

 

 

 

「━━━━いで」

 

 

 

 

声が聞こえた。

 

 

 

 

「オールマイト、お願い、助けて」

 

 

 

 

か細い助けを求める声が。

 

『オールマイト、後は頼んだ!』

 

後悔が渦巻いていたそこへ、またお師匠の姿が浮かんだ。最後まで戦い続けた、お師匠の姿だ。

 

 

「・・・・お嬢さん、もちろんさ」

 

 

私は止まってはいけない。

まだ、ここじゃない。

約束したのだ、お師匠に。

 

「ああ、多いよ、ヒーローは・・・!守るものが多いんだよオール・フォー・ワン!!」

 

平和の象徴になるのだと。

皆が笑って暮らせる世の中にするのだと。

だから。

 

「━━━だから、負けないんだよ」

 

見上げた私に奴は笑い声をあげるのを止めた。

そして掌をこちらへと向けてくる。

 

「・・・面白くないな」

 

オール・フォー・ワンの腕が膨らんだ。

 

「なら、精々守ってみるといい。死ぬまで━━━」

 

弾かれた空気の塊に拳を振り抜く。

渾身の力を込めたが打ち消す事しか出来ない。

全盛期ならばと、思わず愚痴が溢れそうになる。

 

次々と放たれるそれに拳を合わせる。

オール・フォー・ワンも本調子ではないのだろう。

必殺という程のものはない。打ち消せる。

 

だがそれでも、体力の消費は私の方が上らしい。

徐々に身体が押され始めた。

 

「僕はね、オールマイト。君が憎い」

 

爆発するような風の音に混ざり、奴の声が聞こえてきた。

 

「僕から何もかも奪った君が、憎いんだ。心から。だからね、出来るだけ惨たらしく死んで欲しいんだよ。何もかも奪われて、絶望しながら死んで欲しいんだよ。あの女みたいに」

 

呟くような、その声が。

 

「まずは、その力を奪おうか」

 

オール・フォー・ワンの両腕が大きく膨らんだ。

禍々しい物を漂わせながら、見たこともない程に。

 

「━━━━避けろ!!オールマイト!!そいつは受け止めんなぁ!!」

 

 

怒鳴り声が聞こえる。

しゃがれた声、グラントリノの声だ。

遠くから響くその声に助けにくる余裕は感じ取れない。

である以上、避ける訳にはいかない。

 

ヒーローとして。 

 

「こいっ!!!オール・フォー・ワン!!」

「ああ。言われずとも、そうするさ・・・!」

 

奴の攻撃に備えたその時、紅蓮の炎が奴を襲った。

オール・フォー・ワンは私への攻撃を止め、腕の一振りで炎を振り払う。

炎があがったそこへと視線を向ければ、頼もしい男の姿があった。

 

 

「なんだ貴様・・・」

 

 

烈火を纏う男。

 

 

 

「その姿は何だ、オールマイトォ!!!」

 

 

 

フレイムヒーロー、エンデヴァー。

 

 

 

「なんだ、そのっ、情けない背中は!!!」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

『━━━━ああ、エンデヴァーが今、現場に現れました!!見てください、カッコいい!!あ、他のヒーロー達も続々と!!ああ!!炎がっ!やれぇエンデヴァーァァァ!!出すのか!出すのか!赫灼熱拳!!━━━出したぁぁぁ!!え!?あっ!申し訳御座いません!少し熱くなり過ぎました。あ、いまエッジショットが交戦を始めました・・・』

 

「このリポーター、どんだけエンデヴァー好きなんだよ。エッジショットとの落差ひでぇ」

 

私の手にしたポータブルテレビから流れていく音を聞きながら、先頭で階段を駆け上がる切島が呆れたように呟く。私も「ね」と同意しておく。

ガチムチの時とハゲの時、それ以外を説明する時の熱量に差がありすぎるのだ。しっかりしろぃ、プロだろうがYOと言いたい所である。

 

心の中で超頷いていると、そんな切島の様子を見ていた轟の眉が下がった。

 

「・・・わりぃ」

「いや、轟なんも悪くねぇし。てか、何故謝った」

「いや、なんかクソ野郎が迷惑かけてる気がしてな。・・・家族とは思いたくねぇけど、一応血は繋がってるから・・・その、な。わりぃ」

「や、やめろぉ!!複雑そうな家庭環境を背にして謝るなぁ!!俺どんな顔していいかわかんねぇから!」

 

苦悩する切島だったけど、直ぐ後ろを駆けていた我が愛馬爆号が尻を蹴りあげた事でそのお悩みタイムも強制終了。

代わりに抗議の視線がこっちに向いた。

 

「爆豪!!痛い以前に危ないだろ!?階段だぞ!?」

「るっせぇ!!チンタラ走ってんじゃねぇ!!クソ紅白!!てめぇも面倒臭ぇこと言ってんじゃねぇぞ!!帰ってからやれや!!」

 

「そうだな、悪かった」

 

かっちゃんに抱っこされたままの私はテレビから一旦目を離し、壁に描かれた番号を確認する。描かれていたのは8階の文字。

 

「かっちゃん次、屋上!」

「切島!!ドアあったらぶっ壊せ!!」

 

かっちゃんの怒鳴り声に切島がガッツポーズを見せた。

 

「おっしゃぁ!任せておけ・・・なんて言うか!!もっと穏便に開く事をかんがえろぉ!あるだろ!非常事態の時に開くようの、鍵的な━━━」

「大丈夫です!!」

 

切島の声を遮るように発目が声をあげた。

かっちゃんの肩越しから覗けば、いつもの半笑いの顔で工具を見せつけていた。怪しげな道具満載である。

 

「どんなドアだろうと開けます!!チョロいです!」

「ナチュラルな犯罪者っぽいんですけど!?大丈夫!?なぁ緑谷!!これ、大丈夫!?お前友達なんだよな!?」

 

私はもう一度発目を見た。

キラキラした目で楽しそうに笑う発目を。

そして確信する。

 

「トモダチ、ダイジョーブ、ワルイコトシナイヨ」

「目を合わせてリピートしてみろよぉ!!」

 

ごめんね、それは無理。

 

階段を上がり続けRの文字が見えると、かっちゃんに「双虎」と名前を呼ばれた。最近当たり前になってきたけど、こうして改まって聞くとむず痒い気もする。

まぁ、嫌な訳ではないけど・・・。

 

「━━━あ、えっと、何かっちゃん?」

「・・・準備は俺らがやる。お前は何を言うかだけ、ちゃんと考えてろ。いいな」

「・・・・うん、ありがとう」

 

そっと視線を落としテレビを見れば、ガチムチの姿があった。・・・ついでに元気に炎を放出するハゲの姿も見えたけど、そっちは置いておく。

 

遠目から映されるガチムチに感じる物はない。

けれど、あの時感じた不安はまだ胸の所に張り付いたままだった。

 

「屋上見えたぞ!!」

 

切島の声に顔をあげる。

ドアが見えた。

 

私は心の中で言葉を探した。

 

伝えなきゃいけない言葉を。

私が伝えたい言葉を。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「━━━━煩わしい」

 

 

 

 

 

 

 

轟音が鳴り、地響きが起こり、風が吹き荒れる。

その場にいた全てが遠く弾き飛ばされた。

私と奴以外の全てが。

 

 

空に浮かぶ奴は私を見下ろした。

悠然と。

 

 

「精神の話はよして、現実の話をしよう」

 

 

奴の腕が歪に膨らむ。

 

「筋骨発条化、瞬発力×4、膂力増強×3、増殖、肥大化、鋲、エアウォーク、搶骨」

 

体積は徐々に増えていき、服を引き裂き尚も巨大化していく。ついには奴の身の丈に迫る程の巨腕へと変わった。 

 

「折角、僕と君の久しぶりの戦いだというのに。無粋な連中だ。そうは思わないか?」

 

その異様な姿はかつて全盛期だった頃の奴と、少しだけ重なって見えた。

身体がかつての戦いを思いだし震える。

 

「衝撃波では体力を削るだけで確実性がない。確実に殺す為に、今の僕が掛け合わせられる、最強・最適の個性たちで━━━━君を殴る。邪魔が入る前に決着をつけよう、オールマイト・・・!!」

 

らしくない言葉だ、だが理由は分かる。

奴も余裕がないのだ。

 

私も奴も元々万全でない。

その状態で戦った。私は脳無達と、奴はここにいたヒーロー達と。そしてぶつかった、お互い限界が側にある事をしりながら。

最早、どちらも満身創痍といっても良い。

 

そしてこれは私とって望んでもない展開だ。

ならば、私がとる手段は一つだけ。

 

「オール・フォー・ワン!!」

 

真っ向から捩じ伏せる。

私の全てを込めた一撃で。

 

「━━━結局、君は誰にも継がせなかった。愚かな事だ。こうなる事を知っておきながら。今日を以て君を、その力を、僕が殺す」

 

奴が私を目掛け飛ぶ。

弾丸のように、鋭く、速く。

 

「それとも彼女に託したかい?あの弱くて頼りない、臆病なだけの彼女に。期待するだけ無駄だよ。彼女は器じゃない。彼女はきっと辿る、僕と同じ道を。先生としても、君の負けだ」

 

巨拳が引き絞られる。

 

「何も残せない事を、悔やみながら死ぬと良いよ。オールマイト・・・!」

 

放たれた拳に、渾身の拳を叩きつけた。

 

「衝撃反転」

 

呟くような声が聞こえた瞬間、腕に衝撃が走る。

骨が折れるような音が鳴り、腕がグシャグシャに歪む。

力を込めなんとか腕は戻したが隙をつかれて一気に押し込まれた。

 

踏み込んだ足が地面を抉りながら滑るように後退していく。全身が軋み、全身に痛みが走る。

 

だが、危機を目の前にしながら、私の心は酷く落ち着いていた。

 

「━━━見当違いさ、オール・フォー・ワン!!何もかもな!!」

「おかしくっ、なったかい?この状況に」

「違うさ!!何も、おかしくなってやしない!!」

 

ようやく分かったんだ。

私がやるべき事を。

 

「託すまでもない!!彼女は既に持っていた!!」

 

誰よりも優しい彼女に、私は教えられた。

 

「お前は何も分かっていない!彼女の強さを!!彼女を支えてくれる友人達を!!」

 

誰かと笑う彼女に、私は教えられた。

 

「彼女は歩む!!ヒーローとしてではないかも知れないが!!きっと!!何処かで泣いている誰かを、幸せにする道をっ!!」

 

 

その為に━━━━━お前だけは残しやしない。

 

 

「オール・フォー・ワン、お前には付き合って貰うぞ!!地獄の底まで!!」

「それは素敵なお誘いだ・・・やってみるといい。出来るのならね」

 

 

この命に替えても。

 

 

「うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

命を燃やす、何も残さない程に。

明日を生きる彼女達の為に。

この場で持てる全てを出し尽くす。

 

私が終わらせるのだ。

この男を、この長く続いた因果を━━━━━。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『「やああぁぁぁーーーーーっ!!!」』

 

 

 

 

 

 

 

 

突然、いる筈のない彼女の声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『「きいいぃぃぃーーーーーっ!!!」』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

甲高いノイズ混じりの大きな声。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『「にいいぃぃぃーーーーーっ!!!」』

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の声が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『「くうううぅぅぅーーーーーーー!!!」』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉にあの時の笑顔が過った。

悪戯っ子のように楽しそうに笑う彼女の。

その太陽みたいな笑顔が。

 

 

 

 

 

「━━━━どうしようもないな、私は」

 

 

 

 

 

また、勝手に決めつける所だった。

約束までしたというのに。

 

 

━━━滑っていた足が、止まった。

 

 

瞬間、腕にかかる負担が一気に高まる。

すかさず押し込まれた腕のワン・フォー・オールを解除。身体を捻り巨腕をかわしながら力に抗わず受け流す。

そしてがら空きの懐へ、踏み込む。

 

『正面からはまず有効打にならん!虚をつくしかねぇ』

 

グラントリノの言葉に従い、死角から左拳を叩きつける。

 

「らしくない、小細工だ。誰の影響かな━━━浅い」

 

それは当然だ。

これはお前の注意を逸らす為だけの、餌でしかないのだから。

 

私に攻撃しようと左腕に力を溜める奴を見ながら、全エネルギーを右腕に乗せる。

巨腕に隠れた私の腕、奴は気がつけない。

 

「!」

 

オール・フォー・ワンの顔が、巨腕の陰から現れた私の右腕を見た。

だが、今さらだ。

 

もう拳は加速し始めている。

 

「お前と死ぬわけにいかなくなった━━━━彼女が待っている」

 

全身のバネを使い更に加速。

拳に全体重を乗せる。

 

 

「UNITED STATES OF━━━━━━」

 

 

奴の顔面に━━━━

 

 

 

 

 

「誤算だった、君がこんなに抗うなんてね」

 

 

 

 

 

━━━━叩きつける。

 

 

 

 

 

「SMAASH!!!」

 

 

 

 

 

 

生きて、帰る。

彼女の元へ。

かわした約束を、果たす為に。

 

「これは、高くつきそうだ━━━━ありがとう、緑谷少女」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拳の余波で巻きあがった風もやみ、更地と化したそこで私は拳を突き上げた。

 

この姿が彼女へ届くように、そう思いを込めて。

高く。

 


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