私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
おくれてごめんねぇぇぇ(;・∀・)!
心の底から、ごめんねぇぇぇ!
もうね、そういう事だよね(*ゝ`ω・)
嵐のような一夜が明けて数日。
黒いマスクから解放された私は、新たな敵"白い悪魔達"によって身柄を捕らえられていた。
「どこ行った!!あの馬鹿娘ぇ!!」
直ぐ側から聞こえる怒鳴り声に怯えながら、私は息を殺しお饅頭を食す。甘くて旨い。モクモクしながらじっとしてると、ツカツカと早歩きする音が聞こえてきた。
「婦長!!こっちの売店にはいませんでした!!顔も見せてないようです!!」
「まったく!!なんだってこう、立て続けに厄介な子ばかりくるのかな!!━━━取り敢えず出入り口は固めてあるわ!しらみ潰しに探すわよ!」
「はい、婦長!!見つけたら、目の前でケン●ッキーしてやりましょう!」
「お馬鹿!患者を煽ろうとしないの!」
いかにも怒ってますという足音が去った後、私はベッドの下から顔を出して周りを確認する。敵影なし。思いきって廊下を覗けば遠くに怒りのオーラを纏いながら歩く悪魔達の姿が見えた。
「━━━ふぅ、ヤレヤレだぜぇ」
そっと額の汗と口元の饅頭カスを拭き取っていると、枯れた手とそこに乗ったお煎餅が視界に入ってきた。
視線をちょっとあげると、ついさっきベッドの下に匿ってくれたお婆ちゃんのニコニコした笑顔と目が合う。
「お煎餅、好きかい?」
「好きぃー!!」
好意に甘えてお煎餅を貰い、早速モグモグ。
甘しょっぱい、旨い。
お腹が少しずつ幸せになっていく。
なんかお婆ちゃんに頭撫でられた。
口の中がパサパサしてきたなぁと思ってると、お婆ちゃんのお見舞いにきてたオッチャンが紙パックのお茶をくれた。当然貰う。
ありがたくゴクゴクしてると、オッチャンが自分のダンディーな髭を触りながら口を開いた。
「それにしても、お嬢ちゃんはなにしたんだい?婦長さん優しい人で怒った時なんて━━━━あったね、トヨさん。あれだ、この間の」
「そうさねぇ、この間も怒ってたねぇ・・・いつだっけねぇ。やだよ、歳はとるもんじゃないね」
「ああ、確か患者が脱走しようとしたとかなんとか。お嬢ちゃんもその口かい?悪い事言わないから大人しくしておきな」
「━━ぷはっ。えぇ、別に何もしてないですよ?」
お腹が減ったから売店にいこうとしたんだけど、なんか止められて、むきゃついたからフェイントかけてぶち抜いただけだし。
あ、お婆ちゃんお煎餅ありが━━━え、どら焼きもくれるの?あざーす。モグモグ。
『━━━次のニュースです。神野区で起きた事件について、警察より新たな発表がありました。先日11時に神野警察署にて行われた記者会見では━━━』
不意にテレビの音が聞こえてきた。
振り向くとお婆ちゃんの向かいのおばさんが隣の患者とテレビを見てた。
「またヴィラン。最近多いわねぇ、ねぇジェシー」
「ホントデェス。コワイデェス」
因みにおばさんのお隣さんは身長2メートルのゴリラと熊を足して二で割ったような欧米人である。腕とか丸太みたいである。
鏡を見て出直すといいよ(黒マスク風味)。
『━━━事件について、今後も新たな情報が入り次第お伝え致します。今日のクイックニュース、次はこの一週間で話題になったニュースを振り返る、ウィークリートピックスのお時間です。今週はどんな話題がランキングに入るのでしょうか』
『ランキング~クイッククイック!今週のトップトピックは突然神野に響き渡った、焼きに━━━』
今週のトップトピックはー?
ん?神野??
「見つけたァ!!あっ!?貴女っ、先生から許可がおりるまで食べちゃ駄目って言ったでしょぉ!!!」
「・・・ごふっ!」
びっくりしてお茶が変な気管に入った。
振り返ってみれば下っぱの白い悪魔がいた。
下っぱの声に釣られてか、廊下から駆けてくる足音も聞こえ始める。やばい。
「にんっ!」
出入口は下っぱに押さえられて駄目。故に仕方がないと窓から脱出する事にした。
運の良いことにそう遠くない所にいい感じの木がある。
ぴょんと飛んで、ぐいっと引っこ抜けば脱出可能。
まぁ、個性使って逃げると後が怖いんだけど・・・あの駆けてくる足音の方が今は怖い。
さっと窓へダッシュすると焦るような下っぱの声が聞こえてきた。勿論応えてやらない。さらばだ。
窓を開け足をかけ━━━━た所で、それが視界に入った。
「何してんだ、馬鹿」
呆れ顔で見上げてくる、ポケットに手を突っ込んだかっちゃん。
「元気そうだな、緑谷」
いつもながら眠そうな顔した、大きめの紙袋を手にさげた轟。
「ニコちゃん!!」
元気そうに笑顔で手を振る、我がベストフレンドお茶子。
「・・・双虎、そんな所であんた、何してんの?」
そして大きめの荷物を肩がけした般若。
世界に私という尊すぎる存在を産み出した、ある意味私より偉大な母様である。
おかしいな。
いつもは愛らしさすら感じるぽっちゃりシルエットが、今はどう好意的に見ても鬼神にしか見えない。丸いのに。ポヨポヨなのに。おかしいなぁ、オーラがどす黒いなぁ。
「━━━捕まえたァ!!!」
「うひゃぅ!?」
あまりの迫力に動けないでいると、いつの間にか迫っていた白い悪魔達に身柄を拘束された。まさかの四人がかりである。流石の私も動けない。
その様子を見た母様が目を見開く。そう、怒りのどんぐり目である。
「これから検診だっていうのに・・・。何をしたのか、部屋に帰ったらじっくり聞かせて貰うから、覚悟しておきなさい」
吐き出された低い声に、思わず背筋が伸びた。
「これは違うんですぅ!」
「返事は・・・・?」
「か、かしこまりぃぃぃぃ!!ごめんなさい!!」
それから直ぐ、部屋に乗り込んできた母様にお説教されたのは言うまでもない。ガチでしょんぼりん。
「はい、双虎ちゃん明日退院ね」
母様よりありがたいお説教を貰って、お茶子と感動の再会を果たして、かっちゃんと轟からお土産を頂いて少し。
検診にやってきた担当医から、気軽に退院を告げられた。
「本気とかいて、マジで?」
「そうね、マジマジ。胃腸の方も大丈夫そうだから、ご飯も普通に食べて良いよ。あぁ、でも重たいのはまだ控えてね。確実にもたれるよ。もう一度入院したいのなら、それでも構わないけど」
「胃腸薬下さい」
「食べないという選択肢はないの?」
そんな選択肢はない。
肉食女子な双虎ちゃん、退院祝いは肉と決めている。寿司でも可。
胸をはってそう言おうとしたけど、母様に頭ひっぱたかれた。いたい。
あ、お茶子!何その可哀想なものを見る目は!?
かっちゃんは・・・まぁ、良いとして。お茶子は味方してよぉ!!無条件でタッグパートナー務めてよぉ!
んで、轟もその生暖かい目止めて!!お母さんか!!
そんな私の様子を見てか、担当医は呆れた顔をしてカルテを覗いた。隣の看護師さんも似たような顔してる。
こ、こにょやろう共をぉ。
「・・・はぁ、それじゃ一応二日分の薬は出しておこうか。だからと言って食べ過ぎは禁物だからね。節制を心掛けるように。良いね?」
「退院祝いで焼き肉に行くことになってるんですけど」
「うん?聞いてた?僕の話、聞いてた?」
じと目で見てくる担当医から目を逸らせば、溜息混じりの「まったく」という言葉が聞こえてきた。
「彼氏くんとお友達も、目を光らせておいてね」
その言葉にお茶子と母様が目を見開いてこっちを見てきた。なんだその目は。私もびっくりしてるんだから、その「いつの間に」とか呟くの止めて。「光己さんになんて言ったら」とかも止めて。
簡単に信じるんじゃないよぉ!
「せんせー、かっちゃんは別に━━━━」
「誰も爆豪くんがどうとは言ってないけど・・・そっか、双虎ちゃんは爆豪くんの方が良いのかぁ。ま、趣味は人それぞれだしねぇ」
イヤらしい笑みを浮かべた担当医に、冷静沈着が売りの私の心が怒りでムカ着火ファイヤー。
誰の好みがっ、口を開いたら悪口しか言わない、DV予備軍のかっちゃんだぁ!!奢ってくれる所くらいしか良いところないんだぞ!!こいつは!!なのに━━━この野郎!!このすかし顔ぉ!!明日のおてんとう様を見れると思うなよ!!
「そもそも、私の趣味は普通だぁ!!イケメンで金を持ってて、休みの日に朝から晩までダラダラしてても怒らなくて、遊ぼって言ったら面倒くさがらずに構ってくれて、掃除も洗濯も進んでやってくれて、オヤツもご飯もかいがいしく用意してくれるっ、そんな優しい人が好みじゃこらぁ!!課金させてくれたら尚良し!!」
「この子はまったく・・・はぁ」
「ニコちゃん・・・・はぁ」
溜息をつかなくてもよくなくない!?
え!?だって、これ女の子の夢でしょ!?
答えてよぉ!母様、お茶子ぉ!
「━━━ていうか、かっちゃんも黙ってんじゃないよぉ!!!なんか言ってやれぇい!!」
「・・・ああ?んなことすっかよ、面倒くせぇ。つか、干物くせぇこと言ってんじゃねぇ」
「んだとこの野郎!!誰が干物女だこらあ!!」
あまりの塩対応、あまりの暴言にイラッとして掴み掛かったら簡単にいなされた。
この野郎、生意気に小手先ばかり上手くなっていきおってからに!!
かっちゃんと争ってると、轟が間に割って入ってきた。
イラッとして見るとなんかこっち見てくる。
「洗濯と掃除、それと料理だな。分かった」
「・・・・ほわい?」
「しゃしゃってんじゃねぇぞ!!クソ紅白!!」
怒鳴り声をあげたかっちゃん。
轟の胸ぐらを掴みあげ廊下へと出ていった。
きっと親友同士で話がおるのだろう。
はっ・・・ちゃっかり逃げられた!
逃がすかぁ!
「まだ話は終わってないぞ、かっちゃんこらぁ!!」
◇◇◇
ニコちゃんが廊下へとダッシュしてしまって少し。
がらんとした部屋の中で担当医の先生が苦笑を浮かべてニコちゃんのお母さんへと視線を送る。
「・・・・まぁ、あれだけ元気なら大丈夫でしょうけど、何かあったら直ぐに病院に来て下さいね。緑谷さん」
「は、はぃ、ありがとうございます。それとうちの馬鹿が色々と申し訳ありません」
「あぁ、まぁ、ははっ。お気になさらず。あれはあれで、悪いことばかりでもないので」
そう言うと担当医の先生は隣の看護師さんへと視線を向ける。看護師さんは一度頷くと、ニコちゃんのお母さんと退院の手続きについて話し始めた。
ここにいても邪魔になるかなと思って居場所を探してると、担当医の先生と目があった。
「双虎ちゃんのお友達・・・で良いのかな?」
「あっ、はい!麗日お茶子です!ニコちゃんがお世話になってます!━━━って、これはちゃうか」
「いや、あはは。しっかりしてそうなお友達がいて良かった」
笑い声をあげた先生は続ける。
「双虎ちゃんの事、よく見ていてあげてね。あの子きっと無理をするだろうから」
普段の姿を嫌と言うほど知ってるから、そんな言葉に思わず苦笑いが溢れてまう。ニコちゃん、こんな事言われるなんて、病院で何をしてるんやろか。
「そんなに不安そうな顔しなくて良いよ。悪いことをしてる訳じゃないからね」
「あ、いや、そ、そういう訳ちゃうんで━━━違うんです」
「そうかい?ふふ、彼女は良い友人を持ったなぁ。こうして当たり前のように心配してくれる人達がいる。少し羨ましく思うよ」
「羨ましく、ですか?」
「まぁね」と先生がカルテに視線を落とした。
「彼女ね、あまりご飯食べようとしなかったんだ。胃が荒れてるのもあったけど・・・どちらかと言えば精神的なものからくる食欲不振でね」
「え、でも、いま・・・」
「君達が来ると知ったら直ぐに動いたみたいだよ。その時対応した看護師から聞いたんだ。気を持ち直してくれたのは嬉しいことではあるけど、担当医としては他の方法をとって欲しかったかなぁ」
さっきの言葉が頭を過った。
確認するように先生に視線を向けると困ったような笑顔を見せてくれた。
「ね、困った子だろう?」
「そう、かも知れませんね」
それだけ聞くと、担当医の先生は看護師さんに一声かけて部屋を出ていった。
私は話し合うニコちゃんのお母さん達の話をぼんやり聞きながら、あの日を思い出した。爆豪くん達がニコちゃんを助けに走った、あの日だ。
あの日、私は爆豪くん達と行けんかった。
それが間違ってるとも、今も思わん。
飯田くんが言ったようにプロに任せるべきだと、心から思っとる。より確実に助ける為にも。誰も欠けずに迎えられるようにも。
帰ってきたニコちゃんが、笑顔でいられるようにも。
それが良いと、思った。
けれど、少しだけ後悔しとった。
テレビの映像を見て、少し映ったニコちゃんの姿を見て、なんで私はそこにいないんだろうって思った。
「友達・・・か」
私はまだ、そう言って貰える資格があるのやろか。
ニコちゃんは何も言わんかった。いつもみたいに笑って受け入れてくれた。
でも━━━━。
「お茶子ーーー!!」
突然響いてきた声に窓の外を覗けば、ニコちゃんが中庭で手を振っていた。ニコちゃんの後ろにはまだ睨み合ってる二人の姿も見える。
「どないしたんーー?」
「かっちゃんと轟が売店で奢ってくれるってーーー!買って欲しいものないーーー!?母様にも聞いてーー!」
言われた通り聞いてみようかと振り返れば、ニコちゃんのお母さんが額に指を当てて溜息をついていた。重い溜息だった。
「ニコちゃんーーー、私もニコちゃんのお母さんもーーーー何もいら━━━━」
「甘いものともち買って帰るねぇぇーーー!!」
「あっ、ちょ!?ニコちゃんーーー!ニコちゃんーーー!!いらんから!いらんからねぇぇぇ!!?」
聞いたくせに碌に返事も聞かず、ニコちゃんは二人を引き連れて売店のある方へと走り去っていってしまった。
いらないという言葉はきっと届いてへんのやろ。
まったくニコちゃんは。
ふと部屋に視線を戻すと看護師さんの姿はなくて、ベッド周りを掃除してるニコちゃんのお母さんと目があった。思わず二人で苦笑いしてしまう。
「ごめんなさいね、うちの馬鹿が」
「いえ。私こそ止められんで申し訳ないです」
「ふふふ、そんな事ないわ。いつもあのお馬鹿の面倒みてくれてありがとう。嫌じゃなければ、これからも仲良くしてあげてね」
「━━━━あ」
掛けられた声に返事が返せなかった。
そんな私を見てニコちゃんのお母さんが笑顔を浮かべた。
「あの子ね、貴女がお見舞いに来るって聞いて楽しそうにしてたわ」
「ニコちゃんが・・・」
「色々とあるのかも知れないけど、難しく考え過ぎても良くないわよ。私がそうだったもの。・・・あ、でもね、うちの馬鹿みたいな何も考えてないのは駄目よ。お手本にしないでね?」
相変わらずニコちゃんのお母さんはニコちゃんに厳しい。
「馬鹿なんてそんな、ニコちゃんは・・・」
「お馬鹿よ、お馬鹿。だからね、ちゃんと言ってあげて。お茶子ちゃんの気持ち。大丈夫━━━」
「━━━それがどんな言葉でも、あの子はきっと受け止めるから」
私は、また返事を返せなかった。
でも、それでもなんとか頷いてみせたら、優しい笑い声が返ってきた。
「お茶子ぉぉーーー!!もちが売ってなかったから、雪見だい━━━━━」
「うわぁぁぁぁん!!ニコちゃんーーー!!」
「うわっ!!?何事!?そんなにもちが良かったの!?かっちゃん、轟ぃ!!ひとっ走り買いにいってぇぇぇ!!一つ一つが袋詰めされてる、越後製●のやつ買ってきてぇぇぇ!!」
「もちのことで泣いとるわけちゃうから!うわぁぁぁぁん!ごめんねぇぇぇ!!」