私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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最近感想に返信出来んですまんな。
でもいつも読まさせては頂いとります。
ほんま励みになっとります、心からサンキューやで。

もうな、色々あってなぁ・・・。

次回も遅くなりそ、ごめんね(´・ω・`)シュン



どうしてそんなに大きくなっちゃったんですかと聞かれればっ!なんでやろなぁーと答えるのが世の情け!引っ越し業界の未来を守る為!真心と頑張ってやってきたからよを貫く!アリさ━━━はっ!?なんだ夢か。の巻き

ギンギラギンの太陽が高くあがった正午。

むせ返るような暑さをクーラーの冷気で誤魔化しながら車に揺られる私は、見慣れた風景が流れていく窓を眺めつつ、それを口ずさんでいた。

 

「じゅうごーーでねぇやぁーはーよめにいきーー、おさとーのたよりもーたえはーてーたー」

「・・・・双虎ちゃん、そんな悲しげな声で歌わないで。おじさん、ちょっとUターンしたくなるから」

 

隣で運転するかっちゃんパパが困ったように言った。

かっちゃんパパには悪いが、これは言わずにはいられないのだ。今だけは我慢して貰いたい。

 

だって気持ちに収まりがつかない。

私はまだ、全然納得してないのだから。

 

 

 

 

それは二日前の夜の事。

うっかり家庭訪問を寝過ごした私が母様より告げられたのは、おうち退去命令という驚愕のモノ。母様がこっそりとっておいた頂き物のバームクーヘンを食べた事がバレたのかと思って謝ったけど━━━そうではなかった。それはそれで怒られたが。

聞けば二度の襲撃を重く見た雄英が、生徒達の安全を考慮して全寮制へと変えると言い出したそうだ。そして母様はそれに賛成し、私を寮に叩き込む方針なんだとか。

 

私はまっこともってプンスコした。

勝手に決めた事もそうだが、寮とはいえ独り暮しなんてしたくなかったからだ。

 

独り暮し、それは全部自分でやらなくてはいけない苦痛な暮らし。洗濯は勿論、ご飯も自分で作らなくてはいけないし、朝だって起こしてくれる人がいない。疲れて帰ってきてもお風呂沸いてない。冷蔵庫が勝手に補充されない。トイレットペーパーだって、電球だって、自分で買ってこなくてはいけないのだ。

 

私は力強く抗議した。

嫌だ!と。

 

けれど、母様の意思は予想以上に固く、全然聞く耳を持ってくれなかった。味方が欲しくて久しぶりに父にもSNSしたけど、返ってきた反応は『双虎が連絡くれるなんて、パパ嬉しいなぁ。感激(*≧∀≦*)』と空気の読めない事をほざいてきたので既読スルーしておいた。

その後何かメッセが送られてきたけど見てない。

既読スルーするのも面倒臭い。

 

そうしている内にあっという間に話が進み、母様に服とかを日用品とか段ボールに突っ込まれ、引っ越し業者が現れたかと思えば段ボールは勿論のことベッドとか机とか運び始めて、私自身は母様の協力者の一人であるかっちゃんパパの車へ叩き込まれていた。

それが今に至る全てである。

 

 

あ、ゲーム機どうなったかな。

運ばれてたらいいなぁ。

 

 

「双虎ちゃん、お昼まだだったよね。何か食べていかないかい?」

 

 

憂鬱な気持ちのままボンヤリ外を眺めていると、かっちゃんパパが声を掛けてきた。

きっと私を慰めてくれようとしてくれてるのだろう。

かっちゃんパパは優しいなぁ。かっちゃんもこういう所見習った方が良いと思う。

 

「ありがとうございます。でも、お茶子が待ってるみたいなんで・・・・」

「そうか、お友達が━━━なら、テイクアウト出来る物にしようか。通り道に色々あるから皆の分も買っていこう」

「・・・・良いんですか?」

 

悪い気がしてそう聞くと、かっちゃんパパは笑顔を返してくれた。

 

「勿論だよ。ああ、でも少し手加減して貰えると嬉しい━━━━━」

「流石かっちゃんパパ!!太っ腹ぁ!ひゅーひゅー!よっ、お大尽!あ、もしもしーお茶子?お昼何食べたいー?皆にも聞いてー、かっちゃんパパがお昼奢ってくれるってー!テイクアウトで持ってけるやつね?ええ?ハンバーガーとか、フライドチキンとか?え?食べちゃった?そう言えば時間も時間かぁ・・・じゃオヤツ買って貰う?ドーナッツとかは?」

「━━━━あ、うん。良かったよ、元気になったみたいで・・・・足りるかなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に車に揺れれる事30分程。

私は漸く雄英高校へと辿り着いた。

かっちゃんパパに買って貰ったお土産を抱えて校門の所まで行くと、笑顔のお茶子が出迎えてくれた。

 

「ニコちゃーん!」

「お茶子ーー!」

 

お茶子が手を広げて駆けてきたので受け止めようとしたけど、手に荷物を抱えてる事を思い出し踏みとどまった。危ない、折角買って貰った物をぐしゃってしまう所だった。

お茶子も私が荷物を抱えてるのが見えたのか、動きがピタッと止まる。

 

二人でどうしようか考えてると、お茶子の後ろからきた梅雨ちゃんが「持ってるわ」と手を出してくれた。

なので、梅雨ちゃんにお土産を預け感動の再会を再開した。

 

お茶子ぉぉぉぉ!!会いたかったぞーー!

いや、この間病院で会ったけどもーー!

 

勿論その後、お茶子に荷物を持って貰って梅雨ちゃんともハグした。

 

 

梅雨ちゃぁぁぁぁぁん!!会いたかったぞーー!

 

 

感動のハグを済ませると梅雨ちゃんから引っ越しのトラックが先に来てる事を教えて貰った。既に荷物は部屋へ運びいれてあり、後はレイアウトするだけとの事も。

三人でかっちゃんパパにお土産の件をありがとうして、私は皆が待つ寮へと向かう。

 

案内されてついた所は結構立派な建物でお高そうな所だった。ハイツアライアンスとか名前まで付いてるらしい。

 

玄関を潜るとA組の女子ーズの姿があった。

いつものように軽く挨拶すると駆け寄ってくる。

嫌な予感を覚えた私は直ぐに持っていたお土産をお茶子にパスしておく。

 

「ニコーーー!!」

「ニコやーん!!」

「━━━━ふんっ!!」

 

あしどんと葉隠からタックル気味に抱き着かれたけど、そこは気合と不屈の乙女力で耐え抱き締め返しておく。

気持ちは受け取ったぁぁぁ!ナイスタックル!!

 

「こら、芦戸、葉隠。緑谷はまだ病み上がりなんだから飛び付くんじゃないの」

 

冷静な声に視線をやれば耳郎ちゃんがいた。

 

「やっほ、耳郎ちゃん」

「やほ。なんだ、思ったより元気そうじゃん。手伝うからさっさと引っ越しやっちゃおう・・・・よって、何?」

 

耳郎ちゃんの視線があしどんと葉隠を見つめる。

なんだろうかと二人に目をやると、二人が耳元に口を寄せてきた。

 

「ニコ親分、今クールっぽく振る舞ってるけど、響香のやつさ結構心配しまくりだったよ」

「ニコ閣下!響香ちゃんが事あるごとに『緑谷どうしてるかな?』とか『緑谷からなんか連絡あった?』とか皆に聞いてる姿を確認しております!」

 

「ちょ、何言ってっ・・・!!!」

 

耳郎ちゃんの顔がみるみる内に赤くなっていく。

実はお茶子からそういう話は聞いてたんだけど・・・ふむ。ここは知らないふりしておこうかな?面白そう。

 

何食わぬ顔で耳郎ちゃんを見て「心配してくれてありがと」と言うと、照れ臭そうな顔で目を逸らされた。

耳郎ちゃんは可愛いなぁ。

 

生暖かい視線が耳郎ちゃんに集まりだした頃、パンパンと乾いた音が鳴った。音の方へ視線を向ければ手を合わせた百がいる。

 

「はい、皆さん。騒ぐのはその辺にして下さい。時間は有限。やるべき事をやってしまいましょう」

 

そんな百にあしどんと葉隠が「冷たいー」とかブーブーと文句を垂れたけど、百に動じる様子はなく反対に目付きを鋭くさせた。

 

「仮免許試験が目前に迫ってる今!遊んでる時間は一分一秒とてありません!!特にっ、芦戸さん!合宿でどうして補習を受ける事になったのか、お忘れなら教えて差し上げますが!」

「ご、ごめんなさい・・・!」

 

即行で謝ったあしどんの姿を見て、百は満足したのか力強く頷く。

 

「分かって頂ければ構いません。別に緑谷さんのお手伝いをする事も、無事を喜ぶ事も駄目だとは言ってません。ですが━━━━━」

「あーはいはい、ヤオモモその辺にしてやって。始めよ、始めよ」

「━━━━あっ、ちょっと、耳郎さん!?まだお話が、あ、あの、緑谷さん!退院おめでとう御座います!ご無事で何よっ、お、押さないで下さい!」

 

お説教を始めようとした百の背中を耳郎ちゃんが押して連行。百によるお叱りタイムは強制終了した。

危ない所を助けられたあしどんは冷や汗を拭い、遠くなる耳郎ちゃんの背中を拝んだ。「茶化してごめん」とか「ありがたやー」とか聞こえる。

 

「それじゃ、私たちも行きましょうか。緑谷ちゃん」

「そだねーいこっか」

 

それから皆に手伝って貰って部屋を整え始めた。

元々憂鬱な引っ越しだったけど、皆でワイワイやってると悪くない気がしてく。お茶子の個性でベッドも机も楽チンに移動出来るから、皆であーでもないこーでもないとレイアウトし放題だし。

散々言い合いし移動を繰り返したあげく、結局引っ越し業者が最初に置いた場所にそれらが収まったのは、おかしくて皆で笑った。

 

レイアウトが決まった所でかっちゃんパパが奢ってくれたドーナッツでオヤツタイム。百は片付けを済ませようと言ってきたけど、ドーナッツを口に入れればあっさり陥落。それからは紅茶を供に美味しそうに頬張っていた。特にポン●リングの食感がお気にめしたようで「さぞ名のあるパティシエが作っているのでしょう」と目をキラキラさせ褒める褒める。

皆の生暖かい視線が百に注ぎ込まれたのは言うまでもない。

 

オヤツタイムが終われば部屋の片付けを続行。

段ボールの数を数えればそんなに多くなく、これなら直ぐ終わるかな━━━━と思えばそんなことなかった。何せ段ボールの中身は魔窟。手を止めるような代物がわんさかあるのだから。

 

「おお、懐かしい」

 

中学の頃着ていたジャージが出てきたりして、思わず見てしまう。最近寝巻きとしても着てないからどうなってたのかと思えば、ちゃんととってあったのか。

というか、母様め、結構適当に詰めたな?

 

段ボールを開ける度、私を含め誰かの手が止まるから中々作業は進まず時間だけが・・・・ん?どした、お茶子。ああ、それね、それはあれだ、小学ん時にかっちゃんに貰ったやつだ。誕生日プレゼントだったっけ?いや?ホワイトデーのお返しだったっけか?結構抱き心地が良くて、今でもたまに抱き枕にしてて━━━うん、あ、それそれ。むっ?・・・・何あしどん?あ、中学の卒アルじゃん。ええ?見て良いよ、別に。あーかっちゃんね、そこの━━━━━━━━。

 

そんなこんなで引っ越しが終わったのは、カラスが帰宅し始める夕陽が眩しい頃。

仮免許にむけて特訓していた男連中も帰ってくる時間だった。

 

疲れた顔して戻ってきた男連中は私の顔をみると駆け寄ってきて、女子ーズと同じように声を掛けてきた。こちらも心配してくれたらしい。

お見舞いに来たかっちゃんと轟には軽く挨拶されるくらいで特別何も言われなかった。まぁ、昨日の夜もかっちゃんと轟とは電話で話してたし、お見舞いの時にも色々話したし、今更特別言うこともないだろうしね。

 

その後は何故か外国人から激しく謝られたりしたが、あれは何なんだろうか?よく分からないけど気持ちは伝わったので許しておく。

 

それから私がいない間に起きた部屋王の話だったりとか、包帯先生のお叱りだったりとか、仮免許試験の話だったりとかを聞いた。

部屋王は参加したかったので、第二回をその内企画したいと思う。皆の部屋が汚れ出すあたりに。

 

そうしてると時間はあっという間に過ぎて━━━━━。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ばんわー、入れてちょ」

「入れてちょ、じゃねぇー馬鹿」

 

皆が部屋に帰った後。

こそっとかっちゃんの部屋に訪れた私に、かっちゃんは眉間に皺を寄せてそう言ってきた。

 

「部屋王の時部屋見せなかったらしいじゃん。ほら、私に見せよ」

「見せるか、ボケ」

「まぁまぁ」

「まぁまぁじゃねぇんだよ。そもそも夜に男の部屋には━━━━ごらぁ!入ってくんじゃねぇ!!」

 

かっちゃんを押し退けて部屋に入る。

ぱっと見渡してみたけど面白い物がない部屋だった。

というか、少し狭くなっただけで、いつものかっちゃん部屋そのもの。新鮮味すらない。

双虎にゃんガックリ。

 

「・・・普通なんかあるでしょ?」

「あるわけねぇだろ。俺が落ち着かねぇ部屋にしてどうすんだ。アホか。てめぇの部屋だって実家ん時と大差ねぇだろうが、ああ?」

 

むむ、そう言われればそうかも。

てか、見てない癖によく分かるな。

 

ベッドは相変わらずフカフカで私は思わず寝転んだ。

包み込まれるような優しいスプリング感、心の底から私のベッドと交換して欲しいと思う。

何となく枕を引き寄せて抱き締めると、なんか凄い良い匂いがする。これもいつものかっちゃん枕あるあるだ。

毎回思うけど、なんの匂いなんだろうか。

 

ベッドを堪能してると戸締りしたかっちゃんが部屋に戻ってきた。

 

「おまっ、また人のベッドに・・・ちったぁ・・・・はぁ。いや、てか何しに来たんだよ?」

「別にぃーーー・・・・」

「良いから言えや」

 

ボスっと、かっちゃんがベッドに座った。

 

「どうせくだらねぇ事考えてんだろうが。意味わかんねぇ事する前に言えや。面倒臭ぇ」

 

面倒臭いなら聞かなければ良いのに。

少しそう思ったけど、言うのは止めておいた。

だって聞いて欲しかったから。

 

かっちゃんに。

 

 

 

「私さぁ、家出るつもりなかったんだよねぇ」

 

 

 

「そりゃぁさ、大人になったら、仕事とか大学とか結婚とか、理由があって離れる事もあるかも知れないとは思ってたよ━━━━でも、まだ先の話だと思ってた」

 

 

 

「それにさ、そういう時が来たら、出来るだけ実家から通える場所とか、近い所選んでさ・・・まぁ、うん。そう思ってたんだぁ」

 

 

 

そう言うとかっちゃんは「そうか」とだけ答えた。

もう少し何かないだろうかと思うけど、かっちゃんにそれを期待するのは間違いなので言わないでおく。

聞いてくれるだけありがたいというやつだ。

 

少しボーッとしてたら頭を撫でられた。

相変わらず乱暴な手つき。

でも何処か優しかった。

 

「━━━━━大丈夫だ」

 

呟くような小さな声が聞こえる。

視線を向ければ、いつもと違う落ち着いた色合いの瞳が私を見つめていた。

 

「・・・そうかなぁ」

「んな心配すんな。大丈夫だ」

 

落ち着いた声に何故だか凄く安心した。

 

「そっかぁ」

 

かっちゃんに撫でられながら目を瞑ると、眠気と共にふと幼稚園の頃思い出す。

お昼寝の時間、私に布団を乱暴に被せてきて『ねむれーねむれー』と忌々しげな顔でお腹ポンポンする、そのちびっ子かっちゃんの姿を。

別に手つきが優しかったりした訳じゃないけど私はアレに弱くて、どんなに元気百倍でも直ぐに眠ってしまったものだ。

 

そんな事を思いながら、私は少しずつ薄れていた意識を手離した。

昔から変わらない、掌から伝わるかっちゃんの温かさを感じながら。

 

 


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