私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
待っててくれた人達にはありがとう。
そしてお待たせしましたやで。
よし、僕は寝るで。
おやすみ。
TDL。
それは僕達私達の楽園、夢の国をさす言葉。
TDL。
それは大人も童心に返れる、希望の言葉。
TDL。
それは━━━━━某テーマパークの事である。
私がいない間、色んな話が進んでいた事は知っている。
かっちゃんやお茶子達から聞いてたし、包帯先生からも改めて聞いたから、ヒーローの仮免許試験が間近にある事も、それに向けて残りの夏休み返上で特訓している事も、ちゃんと分かっている。
本当は夏休みを謳歌したい。
心の底から遊び尽くしたいと思っている。
だから本音を言えばやりたくない。
でも、仕方ないのだ。ヒーロー科に在籍しているからという理由もあるけど、それ以上にやりたくない事の先に、やりたい事があるのだから。
だから、あたい頑張る!とか、そう思っていたのだ。
なのに、それだ。
その矢先だ。
私がそれを聞いたのは。
『これからTDLに向かう。お前には一から説明する必要があるからついてこい』
包帯先生から告げられたまさかの遊びの誘い。
これから特訓が始まると思っていただけに、それ嬉しさはまた特別なものだった。
病み上がりの私を思って、こんなサプライズを用意してくれたのか、と。感動した。
凄く感動したのだ。
何に乗ろうか、何をお土産に買おうか、誰と一緒に回ろうか。ファストパスはかっちゃんに任せようとか。轟にポップコーン買って貰おうとか。
そう色々考えていたのだ。
なのに━━━━。
「うわぁぁぁぁぁぁん!!くそっ、くそぅ、くそおおおぉぅぅぅぅ!!」
今私の目の前にあるのはコンクリートで作られた荒れた足場と、この糞暑い季節なのに相変わらずトレンチコートを着たお化け先生の分身。
TDLって言ったのに━━━━!
「ニコちゃん108の必殺技ァ!!ルージュブレス派系ッッッッッ煉獄火祭り地獄inTDLぅ!!!」
「マッ、緑谷、チョ待ッッッッッアアア!?」
周囲に放った12の紅炎が軌跡を描きながら一斉にお化け先生の分身体に集まりその身体を焼き尽くしていく。その間3秒。私はまた一つ悲しみ故に強くなれた。こんな強さはいらないけど。
というか、やってられない。
「うわぁぁぁぁぁぁん!!包帯先生の嘘つきぃぃぃぃぃぃ!!TDLって、TDLって言ったのにぃぃぃぃ!!トレーニング、ダイニング、ルーム?馬鹿かっ!訴えられろ!何処がっ、TDLだ!!何処がTDLなのぉぉぉぉ!!かっむばっく、私のドキドキいいいいい!!」
一人悲しみから慟哭していると、またお化け先生がきた。何体目だろうか。
「名称ニツイテハ、ソノ、スマナイ。妙ナ期待ヲサセテシマッテ。後デコノ建物ノ名称ニツイテ、校長ニ変更ヲ提案シテオクカラ、何トカ矛ヲ納メテクレ」
「お願いっします・・・うぅぅ、こんな悲しみ、私だけで十分ですぅ。あと、USJについても、抗議します。ワクワクを返して」
「ス、スマナイ。校長ニ伝エテオコウ」
お化け先生と話していると、いきなり後頭部をひっぱたかれた。何事かと思ってみれば、ジト目のかっちゃんがそこにいた。
「ったいなぁ。なに?」
「なに?じゃねぇ、ボケ。さっきから火の粉が飛んできてあぶねぇんだよ。ちったぁ、火力抑えやがれ」
「私の隣でやるからじゃん」
「お前が寄ってきたんだろうが!」
ばっ、とかっちゃんが私の最初の立ち位置を指差した。
Oh・・・・!言われて見ればいつの間に。
「ジリジリ、ジリジリ、こっちきてんじゃねぇぞゴラァ!!気づかねぇとでも思ってんのか!?八つ当たりしてくんじゃねぇ!」
「・・・・・お化け先生!もう一度お願いします!必殺技のコツがっ、掴めそうなんです!!」
「白々しいことほざいてんじゃねぇ!!こっち見ろこらぁ!!」
怒り狂うかっちゃんから個性も使って即逃走。
元の位置に戻り振り返ってみれば、忌々しそうにこちらを見つめるかっちゃんの姿が。少しの間睨んできたけど、渋々といった様子で特訓に戻っていった。
危なかった。
しばかれる所だった。
「はい、お化け先生。続きやろ」
「ハァ、緑谷、オ前トイウモノハ・・・楽シソウデ何ヨリダ」
TDLで出された私達への課題は、最低二つの必殺技の創作。もしくは既存の必殺技の強化。私は既に108も必殺技があるので、今更一つ二つ増えた所でぶっちゃけ意味がない。
なのでこれまで試せなかった技の練習と、その強化に勤しむ事にした。
勿論これらは来るべき仮免許試験の為の特訓だ。
恐らく雄英体育祭の映像から私達への対策をたてられているだろう。何かしらの強みがなければ簡単に策に嵌められて終わる事は請け合いというもの。
包帯先生はあえてこの事を言わなかったみたいだけど。
「ソレニシテモ━━━━」
お化け先生の回し蹴りが喉を掠めていく。
咄嗟に身体を引かなければ狩られていただろう。
流石にプロは違う。
「━━━病ミ上ガリデ、ヨクココマデ動ケルモノダ」
回し蹴りの回転を止めず、お化け先生は更に一回転。
その速度を更に増した回し蹴りが飛び込んでくる。
狙いは腹部。腕を割り込ませながら、お化け先生の足を回転方向と反対に引き寄せる。
鈍い衝撃が腕に走る。
完全には止められなかったけど、威力は大分殺せた。
反撃する余力が残ってる。
「防イダカ、良イ反応ダ」
体勢の悪いお化け先生頭部を引き寄せる個性で揺らす。
僅かなぐらつきを確認したら、一気に踏み込み━━━━自分の拳とお化け先生を引き寄せ合わせる。
今出来る最大出力で。
ニコちゃん108の必殺技。
ニコちゃん印20連ガチャパンチ━━SR無しの悲しみVer。
「スカスカスカスカスカスカスカスカスカァァァ!」
「ゴフッ!?アダダダダ!?」
お化け先生の腹部に拳を突き刺し、直ぐに引き寄せ個性で引き抜く。そしてまた、引き寄せる個性でお化け先生の腹へと拳を叩き込む。それを繰り返すだけだ。ただし、出力全開でだが。
おかげで腕への負担が半端ではなく、今の所20連が限界だ。いつかは100連をしたいと思っているが、いつになるのやら。
全部綺麗に叩き込めば、お化け先生が消えかかる。
放っておいても消えるだろうが、折角なので普段やれない技を試しておこうと思う。
ニコちゃん108の必殺技。
ニコちゃん砲派生━━━━━━━ニコ玉。
両手を腰だめに、空気を思いきり吸い込む。
限界ギリギリまで吸い込む。
「んんーーー(ニコーーー)」
頭の中でイメージする。
掌にエネルギーが集まるイメージを。
「ふぁんーーー(ちゃんーーー)」
限界まで火力を練り上げた炎を吐き出す。
圧縮し極限まで火力をあげた紅炎の弾。
腕を突きだしながら、引き寄せる個性で紅炎弾をお化け先生に目掛けて飛ばす。
「はーーーーーーーッ!!!」
飛び出していった紅炎弾はお化け先生にぶつかると大爆発。半径十メートルすべてを焼き払い、周囲に灼熱の波動を撒き散らした。
なんか地面溶けてるように見える。
因みに、熱かったので私は即刻逃げたよ。
あっつい!なにこれ!
私の必殺技は中々の必殺技だったらしく、遠巻きにこっちを見てたA組メンバーが野次馬してきた。
「なんなん!?ニコちゃん、今の音!?」
爆発の音を聞き付けてマイベストフレンドお茶子が駆けてくる。顔を見れば驚かせてしまったのが分かった。少しだけ申し訳なく思う。
「いやぁ、ごめん。思ったより凄いの出ちゃった。テヘペロ」
「テヘペロゆーとる場合ちゃうからね?凄すぎるわ。なんやったん今の。体大丈夫なん?」
心配そうなお茶子の視線を受けて、取り敢えず自分の身体を見てみた。特に大きな怪我はないけれど、ヒーロースーツが所どころ焦げてしまってる。一応耐火性らしいんだけど、この分だと持たなさそう。
反対に耐火性能をあげておいた手袋は大丈夫みたいだけど。
「体は大丈夫そ。でもスーツがちょっとねぇ」
「あ、焦げて穴空いとる」
「━━━ナラバ改良ヲシタ方ガ良イナ」
お茶子と話してるとお化け先生が側にいた。
多分、お茶子の訓練に付き合ってた方だ。
「緑谷、オ前ガコスヲ幾度カ改良シテイルノハ聞イテイル。ダガソレハ装備ガ中心ダロウ?コスハ初メニ受ケ取ッタ物ノママダト聞イテイル」
「いいやつだって聞いたので」
「素材ハナ。ダガ、ドンナ物デモ使エバ劣化スル。何ヨリ、今ノオ前ニ合ワナケレバ意味ガナイ」
そうかも知れないけど・・・結構愛着があるんだよなぁ。
「フム・・・アマリ乗リ気デナイノハ分カルガ、ソノ様デハ仕方アルマイ。修繕シテ使ウノモ構ワナイガ、一度話ダケデモ専門家ニ聞イテキナサイ。丁度今日ノ訓練モ終ワリノ時間ダ。サポート科ニ友人ガイルノダロウ?」
「発目のことですか?あれ?でも、あいつ謹慎だったんじゃ・・・」
お茶子から道具を勝手に持ち出した件と使った件でかなりキツいお灸を据えられたと聞いていた。
確認の為にお茶子を見れば頷いてくる。
「謹慎ハ一昨日マデダ。パワーローダーカラ聞イタ話、謹慎ガ解ケタ翌日カラトイレト食事以外ノ理由デ外出スル事ナク、工房ニ入リ浸ッテイルソウダ」
狂気やん。
流石に行きたくない。
はぁ、でもなぁ・・・あいつほどこっちの要望聞いてくれるサポートもいないしな。
ううん。
「取り敢えず話だけでも聞いてきます」
「アア、ソウシナサイ。ソレト麗日。友人ヲ心配スル気持チハ分カッテヤルガ、訓練ヲ疎カニスルホド、今ノオ前ニ余裕ガアルトハ思ワナイ事ダ。良イナ」
「あっ、す、すみません」
それから程なくして終了時間の鐘が鳴り、A組メンバーの訓練は終了。TDLでの訓練を終えた後は自主練にいくものや用事を済ませに出掛けるものと各自はバラバラに去っていく。
私はかっちゃんとお茶子、それと装備を改良したいという眼鏡と轟を引き連れてサポート科が活動してる工房へ向かった。
工房が近づくと大量の機械を動かすようなけたたましい音が響いてきた。もう嫌な予感しかしない。
「ニコちゃん、仲良いんだよね?」
「いや、仲良いというか、上手く付き合ってはいるつもりだけど・・・」
「助けにくるくらいだから、凄い仲良いんとちゃうの?」
仲良い・・・・どうだろ。
winwinな関係だとは思うけど。
というか、あの時あいつが助けにきた事が、未だに信じられないんだけど。
「まぁ、いいや。取り敢えず話だけ━━━━━」
お茶子に振り返ったその瞬間、目と鼻の先に見えた扉が爆散した。
咄嗟にお茶子は引き寄せる個性で物影に飛ばし━━━━
「っ!?」
━━━痛みを覚悟したけど、やってきたのは少し固い感触。覆い被さるようにきたそれに、私は押し倒された。
次の瞬間、突風が吹きあれ辺りに煙が充満する。
少しじっとしていると、煙が晴れていき周囲の様子が見えるようになった。壊れた扉、立ち込める煙、焦げ臭さ。それと目の前にかっちゃん。守ってくれたみたい。
一応感謝しておこうかと思ったんだけど、ふと違和感を感じて視線を顔から下に動かしてみる。
するとかっちゃんの手が私の胸をぎゅうと掴んでいるのが見えた。
かっちゃんも私に釣られて視線を下に。
自分の手の位置を見て、フリーズした。
「「・・・・・」」
えっと、ええぇっと・・・・。
うん・・・・えっ?
なんだこれ。
早くどかして貰いたいのに、声が出てこない。
あ、あれっなんか、こう・・・・。
あぅ。
「おやおや!!緑谷さんではないですか!!お久しぶりですね!!」
聞き慣れた声が聞こえた瞬間、脳が急速に動き出した。
かっちゃんと天井に引き寄せる個性を発動。
思いっきり吹っ飛ばす。
天井に背中を打ち付けたかっちゃんは苦痛の声をあげ、直ぐに落ちてきた。勿論避ける。私が避ければ当然かっちゃんは地面にぶつかった。カエルが潰れたような情けない声が聞こえてくる。少し心配になったけど、まぁ、大丈夫そうだ。
取り敢えずかっちゃんをスルーして振り向けば、顔も服も汚した発目がそこにいた。
「?何をしているんですか?あ、それより聞いて下さい!緑谷さん!面白い物を考えたんです。いましがた試作品を作っていたのですが失敗してしまいまして!それでですね、是非ともご意見をお聞きしたいと思いまして━━━━━ああ、そちらも何かご依頼ですよね?分かっておりますとも。そちらも直ぐに手をつけますから、兎に角今は中にどうぞ。いやぁ、やはり作るのは堪りませんね。謹慎中はアイディアを形にする時間が貰えずヤキモキしましたが、こうして実際に手を動かしていると改めて思います。作るって素敵です。想像していた物を実物に変えていくのは楽しくて仕方ありません。これぞ、発明の醍醐味ってやつですね。あっ!それでですね先日頂いたデータを元に装備品の改良品を幾つか作りましたので、そちらも是非試してみて下さい!スパイクの軽量化と━━━━━━」
「長い、長い。落ち着け発目・・・・ああ、でも、今はありがとう」
「━━━━はい?よく分かりませんが、お役に立てて何よりです。さ、中にどうぞ。顔が赤いですね?今日は暑くなると言ってましたからね。では冷たいものお出ししますよ。何が良いですか?水かスポーツドリンクか栄養ドリンクしかありませんが」
喧しい発目の話を聞きながら、促されるまま私は部屋に入った。なんか色々忘れてる気がするし、考えなくちゃいけない事があった気がするけど、暫くは何も考えたくないので忘れておく。
まずはお水頂戴。発目。