私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
皆、もち喉に詰まらせてないかな?大丈夫かな?
あれね、洒落にならんけんよう噛んでくうんやで。
最近めっきり感想にお返事出来んですまんな。
毎度楽しく読まさせてもろうてますが、お返事までの余裕がちょっと足りんねん。体力もやしですまなんだぁ(´・ω・`)
高校生になって初めての夏。
それは一言で言うならば、激動の時であった。
怒涛の如く押し寄せたハッピータイム。
皆でバスでワイワイしながらいったプライベートビーチ。因縁の戦いに勝ち越し、ついでに誕プレ貰った夏祭り。Iアイランドへの楽しいプチ海外旅行。先生達とのカラオケ大会。わんこはまぐり。耳郎ちゃんとこっそりいった音フェス。梅雨ちゃん姉弟ズといったプール。A組女子ーズで乗り込み食べた、北海道フェアの濃厚アイスクリーム。お茶子のおもちパーティー。馬鹿スリーwithお茶子で飛び入り参戦したお笑いGP━━三回戦敗退。
そしてそれと同じくらい怒涛の如く押し寄せたアクシデント。
宿題。課題。母様からの執拗な家事要求。ゴロゴロに対する母様の妨害キック。母様に占領されしテレビから流れる韓ドラ祭り。母様からのマッサージ要請。夏イベ用ガチャ40連爆死。突然の引っ越し。慣れぬ独り暮らし。募る不安、溜まる洗濯物、散らかったままの部屋。消灯時間という強制睡眠要求。夏の暑さでセーブデータが飛んだプレステ●。誤って踏んづけて割ってしまった、かっちゃんから借りたCD。まさかの課金禁止令。過酷な夏期訓練。押し付けられた掃除当番。ガチムチの体調不良を原因にした、奢り焼き肉無期限延期報告。包帯先生からのOSEKKYO━━━━━━━あ、それとヴィラン騒動。
本当に色々あった。
・・・色々あったなぁ。
そうして迎えた仮免許試験当日。
二時間程の移動時間を経て辿り着いたのは試験会場『国立多古場競技場』。そこには私たちと同じ様に試験を目的とした人々に溢れかえっていた。
眼鏡に先導されバスから降りた皆は、その光景にそれぞれ緊張を口にする。
そんな中私は━━━━絶賛スマホゲームのイベ消化中であった。
唸る。私の指が、心が唸る。
石を溜め、後一回だけガチャを回せと唸りをあげる。
延長された夏イベをクリアし、初のSSRを手に入れよと、神様も仏様も母様も三沢光●様もタイガーな二代目様も、きっとそう言っている、に違いない。
だから熱くなるのだ、緑谷双虎。
心を燃やし挑むのだ、緑谷双虎。
「頑張れ私!止まるんじゃねぇぞおおぉぉぉ!!」
「いつまでスマホ弄ってるんだ、大馬鹿」
「━━━━ぃったい!?」
後一ステージクリアという所で包帯先生に頭をひっぱたかれた。意識外からの痛烈な突っ込みはめちゃ痛かった。効いた。知能指数8は減った。
痛みに悶絶してると、いつの間にか私のスマホは包帯先生の手のひらの上に。
あまりの早業にふたにゃんびっくり。
「包帯先生返してぇ!後5分だけだから、いや、後3分だけだからぁ!!」
「5分でも3分でも同じだ。これは試験終了まで俺が預かっておく」
「なん、だと・・・!?」
私は絶望した。
天才の中の天才たる私はちゃんと覚えていたのだ。
出発前に配られた今日の日程表を。
そこにはこう書かれていた。
試験終了予定時刻、午後4時半と。
私は訴えた。本当に一瞬で終わる事なのだと。14時にメンテが始まったら全てが終わってしまう事を。初めてのSSR入手チャンスなのだと。イベクリアの報酬で石も手に入れば、ガチャでもうワンちゃんもあるのだと。あれもそれも出発前にウザ絡みしてきた物真似太郎が悪いから、あいつに全ての罪の贖罪をさせて良いからと。
そう気持ちを込めて頑張って伝えると、包帯先生はいつもの無表情でこう返してきた。
「知らん」
無情な言葉に「後生だからぁ!!」とお願いしたが、包帯先生は私のスマホをポケットにしまい「後生はもっと別の機会に使え」と試験会場に向けて歩き出してしまった。返す気が微塵も見えない。
地面に突っ伏して項垂れていると、包帯先生の足音が止まった。
「あーー、一つ言い忘れた。馬鹿のせいで気が緩んだ奴がいるかも知れないが、それは今改めろ。これから君らは、君らより訓練期間の長い生徒達と競わなければならない。重ねた経験も、鍛えた体も、磨きあげた技術も、君らより長く年月をかけ身につけた生徒達だ」
「━━━だが、俺は君らが特別劣っているとは思っていない。全てではないが、俺達雄英教師は出来うる限りの技と知恵を与え、体づくりに尽力を重ねてきた。不本意ではあるが、君らは一足先にヴィランとの交戦した経験もある」
「この試験に合格し仮免許を取得出来れば、君ら志望者は晴れてヒヨッ子。セミプロへと孵化できる。━━━━頑張ってこい」
皆が大きな声で返事するのが聞こえる。
私にはそんな元気残ってないのでやらないけど。
「ニコちゃん、置いてかれるよ?」
涙がちょちょぎれそうになっていると、お茶子が慰めるように声を掛けてきた。からっとした笑顔を見せてあげたいけど、今はマジ無理ぽよ。マジつらたん。
「気持ちは分かる━━━とは言えんけど、気持ち切り換えてやらんと。仮免許試験、一発で合格するんやろ?伝説残すんやろ?」
「せやけど・・・・」
「ニコちゃん、言うほど落ち込んでへんやろ」
疑いの眼差しを向けてくるお茶子から目を逸らすと、こっちに歩いてくるかっちゃんと目が合う。
生意気にも、なんか呆れた顔してくる。
「おい、馬鹿女。いつまで道の真ん中で丸まってんだ。どけや、邪魔だ」
「うっさい、はげろかっちゃん」
「んだと、こら」
落ち込んでる可愛い過ぎる女の子に、なんて声をかけるのか。本当駄目だな。かっちゃんは本当駄目だな。そういう所だよ。そういう所。
だからお前は彼女も出来ないで、まだ素人童貞なんだよ。ざまぁ。
そう馬鹿にしてやったが、それでもまだなんか言ってくるかっちゃんにムカッとしたので、取り敢えずスネを一回ひっぱ叩いておいた。
「緑谷、俺のスマホ使うか?」
スッと目の前にスマホが差し出された。
顔をあげたら直ぐ側に轟と百がいた。
轟は相変わらずの無表情だけど、今だけは仏様のような後光が差して見える。
「ありがと。気持ちだけは貰っておく。でもいいや。ゲームID控えてないから、スマホ変えてもアクセス出来ないし。意味ないし」
「そうか・・・・悪かった、力になれなくて。今度は覚えておく」
「それは助か・・・・いや、いやいや。他人が普通に知ってたらIDの意味ないから」
「ああ、それもそうだな━━━━」
「どおぉしたですかあああぁぁぁ!!?お腹でも痛いんですかああああぁぁぁ!!」
突然馬鹿デカイ声が響いてきた。
視線をそこへと向ければドタドタと駆けてくる、笑顔全開な大男の姿が見える。
大男はスライディングで私と轟の間に滑りこみ、手を差し出してきた。
「どうぞっス!!手を貸します!!」
「はぁ、どうも」
嫌な感じがしなかったので手を取ると、変な浮遊感と共に引き上げられた。
「薬とか持ってないんですけど!!大丈夫っですか!!」
「大丈夫。てか、別にお腹痛い訳じゃないから。ちょっと世界に絶望してただけで」
「世界に絶望ですか!!よく分かんないっすけど、壮大っスね!!」
邪気のない目で壮大とか言われるとちょっと照れる。
夏イベやりたいだけだし。
「でも、まぁあ?世界を救っちゃう途中だから?壮大っちゃ壮大だよね。夏イベは世界の海を救っちゃう話だし?」
「世界を救うんすか!!すげぇっス!!自分凄い人と━━って雄英高校の緑谷双虎さんじゃないですか!!自分雄英高校大好きっス!!だから体育祭見てました!!格好良かったっス!!サイン貰っても良いですか!!」
「サイン?私の?・・・ふふん、仕方ないなぁ~」
いつも持ち歩いてるマイマジックを取り出した所で、かっちゃんに頭叩かれた。痛い。
「何すんのぉ!?」
「何すんのぉ、じゃねぇ。敵といつまでくっちゃべってんだ。馬鹿が。制服見てみろ」
かっちゃんに言われて見てみれば、被っていた帽子にデザインされたSの文字が見えた。
「・・・・・これは!・・・かっちゃん、なに?」
「わかんねぇのかよ。士傑高校。西の雄英なんざ呼ばれる、難関校の一つだ」
流石みみっちい事に他の追随を許さないかっちゃん。
ライバルになりそうな奴等の事はちゃんと調べてるらしい。他にも知ってそう。
「自分、士傑高校ヒーロー科一年、夜嵐イナサって言います!!緑谷双虎さん、雄英高校の皆さん!!今日は競いあえるようでとても光栄っス!!どうぞ、よろしくお願い致しまっス!!!」
夜嵐と名乗った大男は物凄い勢いでお辞儀した。
その勢いときたら地面に頭を叩きつけ、地面にひびが入る程だった。
私は察した。
天才が故に察した。
こいつ馬鹿だと。
夜嵐の声とお辞儀で周囲から注目が集まる。
有名な高校なのか、ザワザワしながら士傑と雄英の言葉が飛び交う。
そんな中、夜嵐と同じような制服を着た連中がゾロゾロと現れた。
その内の一人が「イナサ」と夜嵐を呼ぶ。
「あっ!!先輩!!呼ばれたんで、自分はこれで!!」
「サインは?」
「はっ!!忘れてたっス!!このメモ帳にお願いします!!」
ささっと可愛いサインを書いてあげれば、夜嵐は笑顔全開で帰っていった。
なんかめちゃ手振ってくる。
あーはいはい、ぷるすうるとらー。
笑顔馬鹿な夜嵐が去っていくと包帯先生が戻ってきた。
そして私の頭に徐にチョップをくれると、夜嵐を見ながら口を開く。
「・・・夜嵐イナサ、か。またいやなのと同じ会場になったな」
呟いた言葉に葉隠が反応した。
「先生、知ってる人ですか?」
「別に知り合いという訳じゃない」
一度言葉を区切り、包帯先生は続ける。
「夜嵐イナサ。昨年度・・・つまりおまえらの年の推薦入試をトップの成績で合格した━━━━にも拘わらず、何故か入学を辞退した男だ」
「推薦入試のトップ・・・!?あっ、でもそれって・・・・」
二人の会話を聞き、皆の視線が推薦組に向かう。
私も何となしに轟を見てみた。
パッと見いつもと変わらないのだけど、轟の雰囲気が変な感じになってる。
「・・・何かあった?」
「いや、別に」
そう言う割にはピリピリした物を感じる。
でもそれ以上何も言う気がなさそうなので、余計な事は言わないでおいた。面倒臭いし。
「でも変なやつだな。雄英好きって言ってた割に、入学蹴るってよくわかんねぇな」
「ねー変なの。瀬呂ならおこぼれでも飛び付くのに」
「ああ、俺なら迷いなく・・・・っておい、芦戸。今凄い失礼な事言わなかった?ねぇ?ねぇ、芦戸さん?」
「ヲォ?ワターシニホンゴワカリマセーン」
即席芸人コンビが誕生した所で「イレイザー」と包帯先生を呼ぶ声が響いてきた。
見ればカラフルな色合いの服を着た女の人がいた。
見るからに包帯先生が嫌な顔をする。
「テレビや体育祭で姿は見てたけど、こうして直で会うのは久し振りだな!!」
「・・・・ジョーク」
二人を眺めていたら突然私の中で雷が走った。
何か面白い事が始まると、女の直感が告げていた。
だからこんな時の為に用意しておいたカメラとボイスレコーダーの電源を入れて構える。
するとジョークと呼ばれた女の人が己れの事を指差し、満面の笑みを浮かべながら言った。
「結婚しようぜ」
その時、包帯先生の止まっていた恋の歯車が、音を立てて動き出した。
「るるるーるるるるーー次回『繋がる気持ち』お楽しみ」
「緑谷、勝手に予告するな」
「ぶっは!!繋がっちゃうのかよ、うける!」