私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
ずっとそう、決めてきたじゃない。
ねぇ。
んな事より、ヒロアカが烈火の炎みたいになってるやん。どゆこと。
「・・・・・イレイザーあのさ・・・あ、いや。やっぱり、なんでもない」
「・・・・そうか」
生徒達を送り出し、会場の観客席に移動してから暫く。
妙に大人しいジョークと試験会場を眺めていると、会場の中央にあった箱形の建物が開き、受験者達の姿が現れた。つい先程、うち一番の問題児の声が響いていたから察しはついていたが・・・・あの馬鹿。
「あとで説教だな」
「せ、説教っ?わ、悪い、それは確かにな、冗談でいう事じゃないのは、分かってたけど・・・でもな、聞いてくれ、そいうのはさ、こう、しらふでとか無理というか」
「ジョーク。分かったから、それ以上何も言うな」
「えっ、う、うん・・・・・・はっ!わっ、分かった!!言わない!」
何を分かったのか知らないが、静かにしてくれるならそれで良い。前々からこいつの冗談には辟易させられていた。その一言で言葉を飲み込んでくれるなら、面倒でなくて良い。これからもそうであってくれれば━━━
「・・・・っ!?」
━━━背中がぞくりした。
違和感に目をやれば頬を赤らめたジョークの姿があった。何故かこちらをチラチラと覗いてくる。
時折目につくやけに熱っぽい視線に、また悪寒が走っていく。
本能がこのまま放置したら不味いと言っていた。
「・・・・なんだ?」
「いや、なんでも・・・・お、お前に任せる」
何を任せる気だ、ジョーク。
そう言おうとしたのだが、試験開始まで残り五分を報せるアナウンスに言葉を遮られた。
タイミングを逃すと次が少々面倒だ。一先ずジョークの事はおいておき、俺は会場へと視線を向けた。
うちの生徒達はその殆どが固まっていた。
爆豪と轟はその個性の関係からか早々に動きを見せ、轟は単独で工場エリアに、爆豪はよくつるんでいる切島と上鳴を引き連れ中規模のビルが建ち並ぶエリアへと向かっている。
一番懸念していた馬鹿はと言えば、会場のど真ん中で偉そうにふんぞり返っていた。
「・・・・あの、馬鹿」
「ん?何を見て・・・ああ、さっきの子か。あれは、また随分と目立つ所にいるな。なぁ、今更かも知れないけど、やっぱり教えてやっておいた方が良かったんじゃないか?あの事」
そう言ったジョークの顔には笑顔は浮かんでなかった。
やんわりと細められた目や下げられた眉から、ただ純粋に心配しているのが伝わってくる。
「必要ない。特にあいつに関しては」
「そうか?でも、ありゃ、鴨にされるぞ。・・・・二十人。今回のイレイザーが引き連れてきた生徒達の数だ。いまだに一人も除籍してないってんなら、気にいってんだろ?違うか?」
気にいっている、とは言えない。
実際、問題児だらけのクラスで気に入らない所の方が多いだろう。
物静かなくらいが丁度良いと思っている俺にとって、あそこは少し騒がし過ぎる。
ただそれでも、可能性はあるとは思っている。
プロになれる、ヒーローになれる可能性がある事だけは認めてやっているつもりだ。
こいつに答えてやる義務はないが。
「別に」
「顔に出てるぞ。照れんなよ、ププッ」
「黙れ」
一人クスクス笑ったジョークは会場へと視線を向け、そっと続けた。
「雄英潰し━━━可愛い生徒達ならさ、言ってあげれば良いのに。見込みがあるなら尚更。今年も間違いなく起こるよ」
「だろうな・・・」
雄英高校に在籍するヒーロー科生徒は他校に比べ、プロヒーローになる為の機会をより多く得る事が出来る。潤沢な資金からくる機材や設備、現役プロヒーローによる適切な講習、数十年を掛けて築かれた豊富な人脈、結果に裏付けされた効果的なカリキュラム。それは過去雄英から輩出されたプロヒーロー達の活躍によって積み上げられた確かな実績と信頼からくる物で、この学校生徒になったが故に得られる特権。
だが、その特権も良い所ばかりではない。特権を得るということはそれだけの人の視線を集める。掛かる期待は大きく、要求される技術も当然高い。雄英体育祭など最たるもので、あれは雄英が持つ特権に対する、応えなければならない多くの人が抱く期待への返しだ。どれだけこちらの生徒が情報という一点で不利になろうとも、開催しなければならない。
だがそれは、当たり前の事。
「何かを得ようとする者は、それ相応の何かを必要とする」
「━━━んっ?」
思わず溢した言葉に、ジョークが少し抜けた声をあげた。先程とは違う視線を感じる。
「あいつらが並のヒーローで良いなら、それも良かったんだろうな。あれもこれも伝えてやったんだろう。赤子でも扱うように。だが、あいつらは知った上でここを選んだ。全国でも屈指の雄英高校ヒーロー科をだ。あいつらに目指す場所があるなら━━━━」
馬鹿の周りに残った連中が集まり出している。
恐らく最初から何か仕掛けるつもりなのだろう。
状況を把握した上で、不利を知った上で。
「━━━━ここは乗り越えなければいけない。自分達の力で。プロを目指すなら、より高みを目指すのであれば尚更だ」
見せてみろ、お前ら。
短い間とはいえこの約五ヶ月、これまで何を目指して、何を考えて、何をしてきたのか。
ここにいる節穴共に。
「理不尽を覆していくのがヒーロー。そもそもプロになれば個性を曝すのは前提条件。ジョーク、悪いがウチは他より少し先を見据えてる」
『試験開始一分前』
アナウンスの声が響いた。
緊張が周囲に漂い始める中、ジョークはまた笑い声をあげた。いつものように、楽しそうに。
「━━━━━はぁーあ、こりゃ、当分振り向いてくれそうにないな。ちょっとは期待したんだけど・・・・なぁ、イレイザー。気づいてないかも知れないけどさ、お前今、凄い楽しそうな顔してるからな?」
思ってもない言葉に思わず顔を触った。
触れた感じだけで言えば、いつもと変わりがあるとは思えない。だがジョークの様子を見れば、からかっているだけというのも・・・・。
『試験開始十秒前』
「・・・・いつもの冗談か?」
アナウンスに釣られてそう聞いたが、ジョークは何も言わず会場へと視線を戻した。開始のカウントが進む中、尚も黙るジョークから俺も試験会場へと視線を戻す。
「本当だよ、ちょっと妬ける」
「・・・・そうか」
『START!!』
アナウンスに紛れてジョークの方から何か聞こえたような気がしたが、俺はそのままウチの連中を見た。
夢への新たな一歩を踏み出した、その姿を。
◇◇◇
『試験開始五分前です』
そのアナウンスが流れると一気に緊張感が高まった。
側にいるお茶子とか分かりやすく顔を強ばらせている。安心させる為に顎の下をゴロゴロさせていると、ブドウがマントを引っ張ってきた。
「お、おい、緑谷!マジで大丈夫なんだろうなぁ!」
「大丈夫!多分!!」
「それは大丈夫って言わなくねぇか!?━━━ぺぇふぁっ!ありがとうございます!」
喚くブドウに軽くビンタして、私は周りを見渡す。
予想通り他の受験者がこちらの様子を窺っているのが見えた。恐らくこのまま開始直後に攻めてくるだろう。
結局こういう試験が始まる事になって、私は状況を皆に説明し協力体制をとることにした。雰囲気やら状況を考えて大体気づいてたり嫌な予感を感じてたみたいだけど、やっぱり何人かはびっくりしてた。具体的に誰とは言わないけど・・・・ブドウとか、葉隠とか、あしどんとか。
かっちゃんと轟が協力してくれればもっと色々策もあって楽出来たかも知れないんだけど、あの二人早々に別行動を始めてしまった。
かっちゃんは「お前のおこぼれに預かれるか、ボケぇ」と━━━━後で殴ってやろうと思う。
轟は「今の俺が通用するのか試してくる」だそうだ━━━━ええ、ああ、うん、頑張れぇ。
ついでに切島と上鳴がかっちゃんの事が心配だったみたいで一緒に行ってしまって、A組メンバー計四人不在の状態だ。轟には誰もついてかなかったのかって?眼鏡が死ぬほど悩んでたよ。最終的に「委員長としての義務がぁ」とか言って残ったけど。
そんなこんなで残った十六人。
私はこのメンツを以てある目標を立てる事にした。
試験を突破するのは当然。私は1位から16位までのクリア順位をウチでぶん取っちゃおうと思っているのだ。勿論それはやるからには勝つ、とかではない。そんな気持ちもゼロではないけど、真の目的は別にある。
そう、私の目的は完璧にクラスの指揮をとり、多大な功績を築きあげ、包帯先生にめちゃ褒められ、ご褒美にスマホを返して貰っちゃおうというものだ。
そしてそして、今回こそ手に入れるのだ。
私の初めてのSR。
物欲センサーにより阻まれ早一年。
ニューシリーズに移行してから、一度として手に入らなかったSR。前作でも二体くらいSRがあったのに、本当に今回は一体も手に入らなかった。今シリーズURとかもあるのに。噂だと今度
・・・まぁ、他のゲームに比べ育成要素が強いゲームだから、ぶっちゃけコモンとか、アンコモンのキャラとかでも十分強く出来るし、Rとかでも育てればSRにだってひけをとったりしない凄い子に出来る。そもそもRとかは育て易くてお手軽なのだ。限界まで育てたRプラスとか、超強いし。なんならRプラスの強化のメンテとかこないかなぁとか思ってるし・・・・・SR欲しいなぁぁぁぁぁ!!いっても、SR普通に強いからなぁぁぁぁ!!強化なんてなしで、普通に育てるだけでRプラスボコボコだからね!欲しいなぁぁぁぁ!!欲をかけばURも欲しいなぁぁぁぁ!!あれって都市伝説じゃないのかなぁ!運営が仕組んでる罠だったりしないかなぁ!!うわああああぁぁぁぁ!!
「何一人で悶絶してんの、ニコ」
「ニコやん、絶対に別の事考えてるね」
「ですわね」
「けろっ。━━━というか、いい加減お茶子ちゃんをゴロゴロするの止めてあげて。しまらない顔になってきてるわ。響香ちゃん」
「はいよ、やめいアホたれ」
『試験開始一分前』
お茶子の喉を撫でていた手を耳郎ちゃんにぺしられ、耳にアナウンスが響き私はハッとする。
そんな事考えてる場合じゃなかったのを思い出したからだ。今は何より、先にお花摘みにいかねばならなかった。そっとお腹に触れるとけたたましくグルグルと音が鳴っている。うん、絶不調。うける。
やばい、気づいたら余計に苦しくなってきた。
あ、ヤバい、ふぐぅぅぅぅ!!
「緑谷のやつ今度は急に内股になってガクガクしだしたぞ・・・大丈夫なのか、あいつ。おれ怖い。尾白、面倒みてこいよ。彼氏だろ」
「瀬呂、あれでも女の子だからあんまり見てやるな。というか、誰が彼氏だ。爆豪に聞かれたらどうするんだ。お前、本当そういうの止めろ。本当に止めろよ。そろそろ正中線にかますからな」
「闇よりの誘い、それは人が背負いし抗えぬ運命」
「常闇、それどういう意味だ?」
男共の馬鹿な話をぼんやり聞いていると、やたらとキラキラした外国人のアオヤーマが視界に入ってきた。ヒーローコスがスッゴいキラキラしてる。目に痛い。
「緑谷くん!」
「ど、どうしたMr.アオヤーマ。出来れば叫ばないで。響く、何処にとは言わないけど」
「ウィ!」
ビシッ、とポーズを決めたアオヤーマ。
うぃ、が何かは分からないけど見事な叫びだった。そしてきっと、私の言葉はつゆほどにも聞いてないのだろう。この野郎。
そんなアオヤーマは歯を光らせながら続けた。
「君に、届いたとは到底言えない。僕はまだまだ未熟さ。けれど、今日きっと君に見せるよ。僕がライバルである証をさ☆!」
・・・・うん?ライバル?
何を言ってるんだろう、アオヤーマは。
『試験開始十秒前』
そのアナウンスに全員が構えた。
カウントが一つずつ進む中、私はアオヤーマの言葉の意味を考えた。無視しても良かったけど何か返して欲しそうな顔してるし、流石にスルーは可哀想に思ったから。
『5』
カウントが進む。
『4』
一つ。
『3』
また一つと。
『2』
・・・・。
『1』
「よく分かんないけど、やったれやーぃ」
「ダコール!!」
『START!!』
テキトーな私の言葉と共に、第一次試験は始まった。