私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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おっす、おいらがきた(*´ω`*)

絶賛スランプ中につき、更新遅れ気味。
どうか容赦されたし。

にん。


必ず殺すとかいて必殺技。けれど最近の必殺技は大抵食らっても死なないよね。よし、そんな皆には、私が本物を見せてやりましょう!男を死に至らしめる禁断の必殺技。このゴールドボールクラッシャーを!の巻き

先に行われた試験の説明。

私はその説明の全部を聞いて無かったが、この試験で求められてる事を理解出来てると思っている。

 

目良っちはわざと煽るような言葉を吐いていた。

実例をあげて速さを求め、第一次試験の合格者数を"先着"という言葉をつけて更に焦らせた。加えて告げられた参加人数より遥かに少ない合格者数は、本来味方である者同士の間に疑心暗鬼を抱かせるようになる。

 

出し抜く奴がいるのではないかと。

 

それは試験が始まればより顕著になっていく。

誰かがアウトを取れば、合格者数が増えれば、自分の的が少なくなれば━━━━目良っちの煽りの言葉が呪いになって焦りから視界は狭まる。埋まっていく合格者の席が余裕を奪って正常な判断が出来なくなる。

 

そして何かの弾みに一度拗れれば最後、立て直しは不可能なものへと変わる。

最悪、味方すら敵になるのだ。

 

だから最も正しい戦い方は、時間や少ない合格者数に惑わされる事なく無理に攻めず━━━味方と足並みを揃えつつ、より多くの情報を集め、戦略的に戦うという物。それが最も確実で、高確率で多くの合格者数を出す方法。

 

だけど、それをやるつもりはない。

あまりにも普通過ぎるから。

 

 

 

 

スタートのアナウンスが鳴り響いた直後。

一斉に私達に向かって攻撃が始まった。

それは予想通り。

 

「百!!準備は!」

「大丈夫です!!思い切りどうぞ!!」

 

確認したいけどそこは信用する。

百は咄嗟の時に迷う事があるけど、決まった事をやらせれば誰よりも早く正確にやってくれる。

 

「何をっ!思い切りやるのかな!!緑谷双虎ちゃん!!」

 

声に視線を向ければエセ爽やかがボールを振りかぶってる姿が目に入る。最初から信用してなかったけど、本当に気持ちが良いくらいにやってくれる。

しかもまだ、何か企んでる気がする。

 

「まぁ、良いや。関係ない」

 

腰のホルスターからそれを手にした。

発目の第162子、直径五センチ、特殊な合金によって作られたボール型の兵器『ベイビースター』。

 

個性を活かす為に作った秘密兵器。

私の個性は対象の形状変化に弱い。加えて対象への理解度が低ければ引き寄せる力も弱く、出力をあげようとすれば負担が大きくなってしまう。

私の個性を最大限に活かす為には、対象への理解度をあげるしかないのだ。

 

だからこそ作って貰った。

中・遠距離にて個性の起点となれる、形状変化を気にせず使える頑強なそれを。

 

個性も使って力一杯空へ投げ飛ばす。

敵のボールが効果範囲に入るまで待ち、引き寄せる力を発動。轟に使った時のように対象を設定せず、全方位に向けての無差別に。

 

「ニコちゃん108の必殺技、『吸引力の落ちないただ一つのお星さま。人呼んでダイ●ンスター』ッ!!」

「ニコちゃん!そのやたらと長くて、色々危ない名前はあかんゆーたやんか!?」

 

多少頭痛がしたけど、空間に対象設定した時より負担が明らかに少ない。それにボールやら空気やら小石やら一気に集まっていく様子、感覚からかなり強く引き寄せられてるのが分かる。

私、絶好調━━━お腹以外は。

 

けれど流石に全部は無理で、数多くのボールがこちらに向かってきてた。

まぁ、各自頑張って貰おう。

 

こっちはこっちで、やる事がある。

 

「煌めけっ、僕っ☆!!」

 

あ、やってる。

位置的に全然見えないけど。

まぁ頑張れぇ。

 

最低限ボールをかわしながら腕に力を込める。

 

「百っ、パァス!」

 

私はボールに包まれたベイビースターに掛けた力をそのままに、引き寄せる個性を重ねるように発動。あまりやらない二重発動に若干ブレが出るが、問題なほどではない。些細な程度。

不屈の乙女力で引っこ抜き、百が用意しているであろうそこへ目掛け、ボール付きベイビースターを引き落とす。

 

大きな音とくぐもった声。

それと「OKです」という百の声が聞こえた。

 

「ブドウ、瀬呂っ!準備は!」

 

「問題ねぇ!」

「オイラもだ!!やっちまえ緑谷!!」

 

ゴーサインを聞いて後ろに手を伸ばせば、柔い感触が掌に落ちる。

 

「ニコちゃん、ええよ!!」

「ほいきたぁ!!」

 

体が浮遊感に包まれた所で、前方にいる敵目掛け引き寄せる個性を発動。体を引っこ抜き、一気にその距離を詰める。

 

「なっ、はぇ!?━━ぐぇっ!!?」

 

間抜けな顔した雑魚の顔面に飛び蹴りを叩き込めば、蹴りを食らった雑魚の助が大きくよろめいた。けれど見た目より効いてないだろう。速度はあるけど体重がない事でダメージは軽いのだ。

もっとも、僅かな隙を作れれば、それで十分なのだが。

 

試験ボールと敵の的に引き寄せる個性を発動。

何処に的を設置しようが、見えてる場所ならなんの問題もない。速攻で一人目を仕留める。

 

「ちっ!おい、逃がすな!!」

 

経験値の高さか、直ぐに周りの連中が動き出す。

連携を取られても面倒なので炎で牽制。

敵さんの和をきちっと乱しておいてからベイビースターを二つずつ手にし、引き寄せる個性で体を引っこ抜きもう一度空中に飛んだ。

 

空中から見下ろし敵の位置を確認。

敵の的の位置を記憶。

次の行動を予測。

 

「お茶子!!」

 

合図を送れば体が重くなり、手にしたソレも重さを取り戻した。

それと同時にとっておきのそれを放つ。

 

 

 

ニコちゃん108の必殺技━━━Extra。

 

『ニコニコ・メテオール』を。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「真堂!!何か来るぞっ!

「分かってる、全員下がれ!!」

 

毎試験行われ、ある種の伝統となりつつある『雄英潰し』という現象。仮免許試験を受ける上で知らない者はいないだろう。ある者は噂で、ある者は経験者から、ある者は自らを鍛え導く教師からそれを耳にする。

かくいうオレもその一人。

 

ジョーク先生に伝えられたそれを元に作戦を立てた。

雄英生徒へ集まるヘイトを利用し、漁夫の利をつく確実で被害の少ない戦法を選んだ。狙いは間違っていなかったと、今でも思っている。

 

周りを誘導し、雄英に視線を集めさせた。

予想通りに雄英潰しが始まった。

けれど、想定通り進んだのはそこまで。

 

多少手間取ると思っていた集中砲火はただの一人の個性でほぼ完封。本来弾くなりかわすなりすれば散らばり、移動の邪魔になる敵から投擲されたボールも、控えていた女生徒が網に捕らえてしまいアクシデントは期待出来ない。

僅かに彼女達へと飛んだ攻撃も仲間達によって叩き落とされている。

 

ある意味そこまでは多少のズレはあっても想定内だったが━━━━あまりにも雄英の動きにブレがなさ過ぎるのが痛い。雄英潰しを事前に知っていたとしても、実際の光景を目にすれば多少は動揺するものだ。こちらもそれを期待した。━━━にも関わらず、この対応力。これは数ヶ月の訓練で身に付くものじゃない。

 

「伊達に、実戦は経験してないって事か」

 

実戦に勝る経験はなしって事なのだろう。

勿論望んで得た物ではないのだろうが、それでも羨ましい限りだ。

 

そして、もう一つ。

雄英がブレなかった理由。

 

「厄介だな、本当に━━━━彼女は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

走っていると酷く鈍い音が背後から聞こえてきた。

それは一度では終わらず立て続けに何度も響く。

土砂降りの雨のように激しく。

 

嫌な予感しかしないが振り返ってる余裕はない。

 

「ヨーくん!」

 

声に視線を向ければ、岩陰から顔を覗かせた中瓶の姿が見える。滑り込むようにそこへと隠れると、真壁と投擲の姿もあった。安全を確認してようやく後ろを振り返ってみれば━━━━想像していたより恐ろしい事が起きていた。

 

さっきまで自分がいた空間に鈍い銀の流線が走っていた。高速で動くそれは幾つもの光の軌跡を描きながら宙を踊るように舞い、そこにいた受験者達の体へと鈍い音をたてながらぶつかっていく。人の体にめり込んだそれは止まる事なく直ぐ様別の受験者に向かい、同じようにその者の体へとめり込み鈍い音を響かせる。

 

暴力を体現する何かが吹き荒れるそこに、いつの間にか朱が混じり、赤い光が倒れた受験者の体に灯っていく。更に観察していると黒い塊と白いヒモのような物が暴風へ紛れていき、嵐を飛び交う礫の如く正体不明のそれが受験者を襲っていく。

何が起きているのか分からないが、何かに襲われた受験者が地面に伏したままの様子を見ると、行ったら最後なのだろう事は分かる。

 

「・・・・ヨーくん、取り敢えずの目的は達したし、もう雄英狙うの止めない?」

 

中瓶がそう言うのも理解出来る。

流石に俺もあれは相手したくない。

投擲も無言のまま頷く。

 

「真堂とある意味意気投合してたから嫌な予感してたが、多分あれはもっと性格悪いと思うぞ」

 

真壁が言ってる言葉の意味が分からず視線を向ければ、自分の顔と股間を指差した。

 

「見てると分かる。さっきからあの銀色の奴な、その二ヶ所しか狙ってない」

 

投擲が身震いした。

 

「俺でもやらない」

 

投擲は優しい奴だからな・・・俺なら多分やる。

同じ男として多少心は痛むが、勝つ方法がないなら致し方ない。喜んでやるだろう。

そう思っていると、怯える男達を見た中瓶が首を傾げた。

 

「顔面は分かるけど、あれってそんなに痛いの?昔からよく聞くけどさ」

 

真壁と投擲が俺を見てきた。

そのアイコンタクトに含まれた物を理解した俺は、同意を示す為に頷いておく。異論などある筈もない。

 

「勿論痛いさ。でもね━━━━」

 

「「「━━━━女には分からない」」」

 

俺達の心からの言葉を聞いた中瓶は「ふぅん?」とまた首を傾げたが、納得してくれたのかそれ以上何も聞いて来なかった。

 

『━━━っと、早速一人目の通過者が現れましたね。これからどんどん来そうです』

 

通過者を告げる大きなアナウンスが鳴り響く。

普通であれば誰がと多少は気になるだろうが、この岩陰に隠れる俺達にそれはない。

 

『━━━あ、続いて二人、三人、四人・・・・多いですね。落ち着くまで待ちましょうか』

 

何故なら岩陰から覗いたそこに、倒れた受験者の残りの的をボールで押しまくる雄英生徒が見えるからだ。

 

『あーーーーー、あっ、はい。えっと、計十六人通過です。残り八十四枠、皆さん頑張って下さいね・・・・・早いなぁ』

 

会場に響くアナウンスを聞きながら、覗いていた先に耳を傾ける。そこから通過者である事を示す小さなアナウンスを耳にすれば、抱いていた考えは確信に変わった。

 

雄英生徒十六人がこの試験を通過し、同時に未だ通過出来ていない残りの四人が孤立したこと。

 

雄英体育祭一年の部にて優勝した男、爆豪勝己。

プロヒーローエンデヴァーの息子、轟焦凍。

他二人を含めた四人が、別行動を取っているのは把握している。確かに強く優秀な連中だ。自信を持つのも分かる。

しかし、ことこの試験においては、その自信が慢心が仇となる。

 

「どうする、真堂」

 

真壁の声に少し考える。

狙い目であるのは間違いない。

情報は使い方次第。

 

「取り敢えず、仕切り直していこうか」

 

まずは、この空気から壊していく。

有象無象の彼らには、まだちゃんと踊って貰わなければならない。

 

震伝動地。

 

雄英が残した受験者達の足元を狙い、最大震度で地面を叩き割った。おさまりかけていた混乱がぶり返す。一部では疑心暗鬼からか、それまで協力関係にあった者達と戦い始めてる所すらある。

 

焦る事はない、悲観する事はない。

戦いはまだ、始まったばかりなのだから。

俺達は俺達の勝ち方を見つければ良い。

 

「さぁ皆、上手くやろう。全員で勝ち上がる為に」


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