私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
クロムチカッコいいなぁ。
「ふおぉーーーとぅわあぁーいーーーせんせーーーー!!」
色々とすっきりした後、控え室を抜けた私は観客席にいた包帯先生の元に向かった。満点の笑顔で手を振り駆け寄る超絶美少女な私に、包帯先生は一瞥し額に手を当て感嘆の溜息を溢す。その気持ち、分かる。照れるよね。可愛いもんね、私。
どやさぁ!
「包帯先生!緑谷双虎!ただいまA組15人と共に、第一次試験無事とっぱぁ致しました!!しかも最速で、しかもしかも大体私のお陰です!!褒めて下さい!!手放しで!!」
「・・・・ああ、頑張ったな。さぁ、褒めたぞ。馬鹿なことやってないで、さっさと控え室に戻れ」
「ええぇぇぇ!?全然褒めてないですよぉ!!」
なんだ今の軽い褒め言葉!?
わたしゃびっくりだよ!!
大活躍したのに!!
「先生ぇ!!何ですか、そのテキトーな感じ!傷つきました!私はとても傷つきましたけどぉ!!」
「喧しい。分かった、よくやった。ほら、控え室に戻れ」
「全然分かってないぃ!何ですかその、面倒臭い人を前にしたような態度は!!」
「そこまで分かってるなら戻れ」
冷たいだと!?めちゃ頑張ったのに!
おかしい、ていうか、スマホ返してくれない!
何故だ!?
原因を探して先生の周囲を見ると、包帯先生の隣にジョーク先生が座っていた。苦笑いを浮かべてこっちを見る様子に乙女センサーがピンと反応する。
イチャイチャされておりましたか。
そうですか。
ジョーク先生に静かに敬礼すると包帯先生の手元から何かが飛んできた。天才ぶりを遺憾無く発揮してナイスキャッチすれば、見慣れた携帯端末スマホがそこにあった。虎にゃんこなストラップが揺れてる。
「それやるから戻れ」
「っざあぁぁぁすっ!!」
「試験中にやってみろ、解体してやるからな」
そんな言葉を聞いて私は口をチャックし、そっとポケットにしまった。
そして綺麗に一礼し、そっとその場を後にする。
そんな私に包帯先生は目を細め、そっと捕まえてきた。
違うんです!やらないです!もしかしたら勝手に電源が入ってとあるアプリが起動して五分くらい稼働するかも知れないんですけど、それだけですから!!取らないでぇ!分かりましたぁ!試験終了までやりませんからぁ!!えっ、や、約束?いや、それは・・・・あっ!し、します!!約束します!!
「はははっ、期待する生徒・・・ねぇ」
「黙れ、ジョーク」
何とかスマホを奪取して控え室に戻ると出掛ける前よりガヤガヤしてた。見ればうちのクラスメンバー以外の人の姿がある。
人混みを避けながら進んで行くと、試験場出入口の前にお茶子と眼鏡の姿があった。
本当よく一緒にいるな、あの二人は。まじで出来てぇるぅぅ?
「お茶子ーどんなー?かっちゃんきた?」
「あっ、ニコちゃん。おかえり。爆豪くんはまだきてへんよ。轟くんはさっき来たけど・・・なんか忍者と戦ってきたんだって!ニン!」
「そっかぁ・・・・忍者?」
忍者ってなんだ。忍者って忍者?にんじやとかじゃなくて、ニンジャーサンとかじゃなくて?
なにそれ、超気になる。
戦った轟に話を聞くのが一番かなぁと、周りを見渡したけど見つからない。一人ウロウロしながら探してると、突然現れた黒い壁とぶつかった。私の可愛いお鼻が痛みを訴えてくる。
「━━━ったいなぁ、どこ見て・・・・」
痛みに堪えて立ちはだかる壁を見上げれば、試験前にあった士傑高校の坊主頭だった。
名前は確か『アザラシ』とかいうやつだ。
「はっ!緑谷さんじゃないっすか!!すみません、自分少しよそ見してたっス!!」
「あーーいーよ。アザラシ。私もちょい不注意だったしさ」
「ありがとうございます!!あっ、でも自分、アザラシじゃなくて、夜嵐ッス!!」
かなりの馬鹿だと思ったけど、それ以上に強そうだったからここに居ても違和感は感じない。それにしてもゴテゴテした衣装だな。着るの面倒臭そう。
まぁ、それはどうでも良いからおいておいて。
私は親指を自分に向け立て、渾身のドヤ顔を見せてやった。
「ちなみに、私いち抜け!」
「本当ッスか!?すげぇ!!体育祭の時から凄い人だと思ってましたけど、本当に凄いッス!!雄英は対策を取られるのが当たり前っ、上位入賞者で人より多く個性を見せてるのに、それを物ともしないでトップ通過!!本当凄いッス!!尊敬するッス!!プロ間違いないッスね!!サイン貰って良かったス!!」
夜嵐のベタ褒めに私は頷く。
正しくそうだからね。
よいよい、もっと褒めよ。
「ちなみに、自分は17番だったッス!!」
「あ、それね、16番までウチの総取り。大体私のお蔭」
「スゲーッス!!!緑谷さんも、雄英の皆もカッコいいぃ!!」
「まぁぁぁねぇ!!━━━━ああ、でも全員じゃないってのが少し心残りではあるんだけど」
「いや、十分凄いッスよ!!俺、自分の事しか考えてませんでしたッスもん!!」
なんて気持ちの良いやつだ。こいつが雄英にいたら、さぞ良い馬になった事だろうな。惜しい。
ん?そう言えばこいつ・・・・。
謝快活な返事をする夜嵐を見てると、ふと包帯先生の言葉が頭を過った。推薦入試トップの成績を叩き出しながら、何故か別の高校にいったその事が。
「ねぇ、夜嵐ってさ推薦入試組でしょ?トップの成績を出して蹴ったって聞いたけど、なんでなん?」
「━━━っ、それは・・・」
言い淀んだ夜嵐の目が何かを見た。
視線をそこへと移せば探していた轟の姿がある。
同時にあの妙な雰囲気の轟を思い出した。
「・・・もしかして轟となんかあった?言いたくないなら別に良いけど」
「すみません。人に言うような事じゃないんで」
「そっ。じゃぁ、この話はお仕舞いね。たださ、一言だけ良い?━━━轟は私のベストフレンドだからさ。そういう目で見るの止めてくれる?普通にムカつくから」
そう伝えると夜嵐が目を見開いた。
まるで信じられないとでも言うような反応だ。
私としては轟を見るあんたの目の方がどうかと言いたいくらいなんだけど。
「ベストフレンドなんスか?轟と?」
「会った初日からベストフレンドやってるけど?なに、文句ある?」
「・・・いや、普通にスゲーと思ってるだけッス。あの轟と、ベストフレンド。・・・・・いや、マジスゲーッス。緑谷さん、本当尊敬するッス━━━━けど、悪い事言わないんで、付き合い考えた方が良いッス」
夜嵐の目付きがイヤに鋭くなった。
雰囲気もピリピリし始めてる。
「いつか緑谷さんの足引っ張る事になるッスよ」
それだけ言うと夜嵐は同じ制服を着た連中の元に向かい、その人の輪の中に消えていった。
後頭部にミサイルキックをお見舞いしてやろうかと思ったけど、それは見送っておく。一応試験中だし。
「━━━━ふぅ、まぁ良いか」
夜嵐の事は一旦放り投げて轟の元へ向かった。
轟は私を見つけると手を上げる。
「忍者ってなに?!」
「いきなりきたな。そんな気はしてたが」
相変わらず無表情なつれないあん畜生に話を聞くと、どうやら忍者は忍者でも、忍者風のコスを着ただけの連中で、忍術とか出来ない忍者だったらしい。
私はがっかりだよ。
「緑谷、さっきあいつと何話してたんだ」
忍者の話に一段落つくと、轟にそんな事を聞かれた。
最初はなんの事か分からなかったけど、さっきと言われて思い当たるのなんて夜嵐くらいしかいない。夜嵐の事かと聞き返せば轟は頷いた。
「んーーー、特に大した話はしてないけど。私の実力をこれでもかと自慢してきただけだしね」
「そうか」
「と言うか、私からも聞きたいんだけど、アザラシと何かあった?凄い目であんたの事見てたけど」
「アザラシ?そんな名前だったかあいつ。何もないと思うが・・・正直あの頃の事はあまり覚えてなくてな」
そう言うと轟はあの時と同じような空気を出した。
「推薦入試の頃・・・・俺は親父に復讐する事ばかりで、それだけの事しか考えてなかった。だから、本当に覚えてないんだ。八百万の事もクラスに入るまで碌に知らなかった」
言われて思い出した。
そう言えば最初の頃、轟はいつもこんな空気を漂わせていたなぁ、と。
最近はずっとゆるキャラみたいな感じだから勘違いするけど、轟はどちらかと言えばクールボーイだった。
今はゆるキャラだけど。
「今は・・・・緑谷達のお蔭で、少しは周りが見えるようになった。飯田達クラスの連中と話すようになった。俺の見てるものだけが、本当じゃない事も知った。お母さんの気持ちを知ることが出来た。━━━だから思うんだ。推薦入試って聞いて、覚えてないあいつを見てると・・・・」
轟の視線は士傑の連中を見た。
「・・・・どうしてもっと早く、そう出来なかったんだろうなってな。━━━━━そうしたら、俺はあいつを知っていた筈なんだ」
そっと轟の手が握り込まれた。
いつもの無表情だけど、少しだけ悔しそうに見える。
「轟って、友達いっぱい欲しい系だっけ?」
「いや、そういう訳じゃない。ただ、あいつに振り回されてヒーローになりたい理由忘れてたみたいに、あいつの事もその一つだったんじゃないかと思ってな」
「また小難しい事考えてるなぁー楽しい?」
「楽しくはないな」
なら止めれば良いのに。
『ハイ、えーーーー、ここで一気に8名通過来ましたーーー!残席は10名です』
不意に流れたアナウンスに全員の視線が出入口を見た。
私と轟もつられて見ると、出入り口から入ってくるエセ爽やかの姿があった。
エセ爽やかは私を見つけると笑顔を見てせ近づいてくる。
「やぁ、緑谷さん!一次試験突破おめでとう!一位抜けだよね?見てたよ、流石だ」
「見てたんだ。やっぱりファンじゃん。今からでもサインしてあげようか?随分時間掛かったみたいだし、一次試験一位抜けしたご利益に満ち溢れた私のサイン、二次試験の験担ぎで書いて上げるよ?特別にタダで」
優しさからそう伝えると、エセ爽やかは「遠慮しておくよ」と掌をヒラヒラさせた。
「それに、俺より験担ぎが必要な人がいるから、そっちにサインしてあげて欲しいな」
「はぁ?」
「もしかしたら、験担ぎする必要も、なくなるかも知れないけどね?」
「はぁ?」
そう言ったエセ爽やかは通り過ぎていった後、お茶子と眼鏡がやってきた。
何処か焦ったような様子で。
「緑谷さん」
声に振り返ると、笑顔を浮かべたエセ爽やかの姿があった。
「君が早々に抜けてくれて助かったよ。爆豪くん、一次試験突破出来ると良いね」
嫌味の籠った言葉に私は確信する。
こいつ絶対性格悪いなと。