私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
次回もまさかの閑話の予感ッッッ!?
おかしいなぁ!
「っ、皆さんっ来ます!!」
救助活動をしていると、情報収集をしていた口田が突然大声をあげた。聞き慣れない声に少し戸惑ったが、それよりもその直後に起きた爆発に全員の視線が集中する。
立ち上る埃で姿は見えないが、口田の指示に従った鳥達が何かを発見したかのように、埃が舞うその場所の上空を飛び交っている。
「口田ちゃん。来たって、そういう事なの?」
口田は口を閉じたまま首を縦に振る。
緑谷の勘が当たったという事だ。
それから大して時間が経たぬうち、空に向けて光の柱があがり、大きく円を描くように動いた。
散らばった俺達に、次の行動を促すように。
『念の為に、妨害対象が現れた時のフォーメーションも考えとこうと思うんだけど』
二次試験が始まる前。
話し合いが一区切りついた頃、緑谷はそう言った。
これから行われるのは救助演習。額面通り受けとるなら、それは必要のない備え。だが、それを言ったのはあの緑谷だ。こういった場面で、考えなしにそういう事口にするような奴じゃない。
どうしてかと八百万が尋ねれば、緑谷は顎に手を当てて唸った。
『んーー勘というか、何となくね。いやぁさ、なんか簡単な気がしてさ。一次試験の時みたいな性格の悪さっていうの?ああいう感じが薄いんだよね。まぁ、同じ人が試験内容決めてる訳じゃないかも知れないけどさ』
『もし一次試験と同様の方が、もしくはそういったテーマの下試験が組まれてるとすれば、緑谷さんはどうなると思いますか?』
『そりゃ、十中八九妨害の為に何かしら突っ込んでくるでしょ。私なら中盤過ぎた頃にやるかな?もしくはふっくの人がある一定数減ったタイミング。流石に何が来るのかは分からないけどね。受験者の人数と安全面を考えれば、ある程度戦闘能力を持った連中が来るとは思うけど』
勘と言いながら緑谷の口調には迷いがなかった。
確信しないまでも、ある程度は予想がついているんだろう。そして緑谷から滲み出る自信と余裕さは、皆を頷かせるには十分過ぎた。
そうして決まったのは何かしらの要因から救助行動の妨害が発生した場合、それに対処する特別チームを編成するという事だった。敵対勢力の撃退ではなく、救助活動に対する妨害行為を阻害する為に作られたチーム。求められるのは速さと対応力。加えて演習はあくまで救助だという事実もあれば、自ずとチームの形は見えてくる。
『チームは少数精鋭。私とかっちゃん、それと轟の三人でいく』
最少人数で、最速で、最大の結果を。
緑谷の出した答えに否と口にするやつはいなかった。
俺と、爆豪も合わせて。
「えーっと、つーことは、俺達は救助一旦中止。集合の後に再編成したチームで活動って事で良いんだよな?」
「そういう事になるわね」
「で、でもよぉ、他の受験者とかみたいに、どんどん救助してった方が良くねぇか?どんな採点されてるか知らねぇーけどさぁ、やっぱり多く救助した方が得点高いだろ?他の受験者の先輩とかを手伝ってさ。集まってる時間とか勿体ねぇよ」
峰田の言葉には焦りが滲んでいるが、その言葉自体に間違いはない。一理は確かにある。ある側面を考えなければだが。
案の定、蛙水も強い否定はせず「そうね」と頷いた。
「でも、それをやるには私達の経験が足りないわ。試験を受ける前、相澤先生も言っていたけど他の受験者と違って私達は明らかに経験が足りないの。連携を組もうにも足並みが揃わない。足を引っ張ってしまう。お互いにとって良くない事よ━━━士傑高校の人の行動の速さを見たでしょ。私達では救助ヘリの発着場を設けるなんて考え、咄嗟に浮かばないわ」
「そ、それはそうかもしんねぇーけどさぁ」
「それならいっそ、他グループとは必要最低限の連携に留め、理解しあえる人と組んで動いた方がずっと効率が良いわ。峰田ちゃんの焦る気持ちも分かるけど、今だってちゃんと救助出来てるから大丈夫よ」
「・・・・そ、そうだよな」
納得した様子の峰田から俺に。
力強い蛙水の視線が向く。
「そういう事だから、轟ちゃんは先に行って。轟ちゃんには轟ちゃんの役目があるでしょ。私達は飯田ちゃんと合流してから向かうわ」
「・・・・ああ、わりぃな。ここは任せた」
「けろっ、任せられたわ」
自信に満ちた言葉を背に、三人を置いて俺は予定通り目的地へと向かう。
一次試験の影響でまともに走れる状態じゃないのもあるが牽制の要として出来るだけ早く来るようにも言われている為、氷結の個性も使い道なき道を進む。
今出来る最速で、最短距離を、真っ直ぐ。
『頼りにしてるからね、マイベストフレンド!』
遠目に緑谷の姿が見えて、ふと二次試験開始前に掛けられた言葉が頭を過った。頼ろうとしてくれた、その緑谷の言葉が。
これまで緑谷を見てきて分かった事だが、緑谷は感覚的に動いてるように見えて、その実はそこにある情報を分析し予測して動いてる事の方が多い。戦闘訓練なんかでペアを組んだ後よくよく話を聞いてみれば、突飛な行動も計算の上成り立ってる事がよくあった。
コンマ数秒の中で、緑谷は物事を考える。
誰よりも早く、誰より多くの事を。
そして結論を見つけ行動する。
たった一人で。
USJの時も、ヒーロー殺しの時も、合宿の時も。
あいつはいつも一人で走っていく。
脇目もふらず。
そんなあいつが━━━面と向かって頼ってきた。
期待してると声を掛けてきた。
それは余裕あっての事なのだろうが、俺はそれが単純に嬉しいと思った。
だから、応えてやりたいと思う。
漸く掛けられた、その期待に━━━━。
「━━━━っ!?」
━━━━突然大きな耳鳴りが聞こえた。
振り返れば砂埃は消え、傑物高校の真堂と名乗った受験者が敵と対峙している姿━━━いや、正確には対峙した後の姿があった。崩れ落ちる真堂の影の奥、赤い瞳が爛々と輝く。
そこにいたのはヒーローランキングNo.10。
緑谷の救出時居合わせたプロヒーロー。
ギャングオルカ。
「この実力差で殿一人・・・?なめられたものだ・・・!」
低い重い、落胆が混じる声が聞こえる。
ギャングオルカの影から現れた仮面の連中が瓦礫を踏み締め、あたりに散っていく姿が見える。
だが、それより耳に目についた物があった。
対応仕切れず留まってしまった他の受験者。
避難が遅れ取り残された救助対象者。
以前の俺ならきっと、目につかなかった━━━人達の姿。
「━━━━わりぃ、緑谷」
たとえ演習だったとしても放っておけない。
お前が思い出させてくれた理想は、お前に伝えた俺の夢は、ここで誰かを見捨てるような奴じゃない。
本物のヒーローに━━━そうだろ。
移動に割いていた力を足に集中。
溜めた力を一気に放出、氷柱の波をギャングオルカと仮面の集団に向けぶっ放す。
完全に不意討ちだったが氷があげる轟音に気づかれ、直撃寸前で対応された。ギャングオルカ周辺、けたたましい音と共に氷が砕かれてるのが見える。
それでもそのまま氷結の個性を使い続ければ、良い時間稼ぎにはなりそうだ。足が止まっている。
「今の内に、救助対象者の避難をっ・・・!」
声を張り上げれば立ち止まっていた受験者が動き出す。流石に俺達より多くの経験を積んでいるのか、一度動き出すと迅速に事を進めてくれる。救助対象者は直ぐに避難所へと運ばれていった。
「この氷は━━━━ああ、貴様か」
去っていく救助対象者から視線をそこへと移せば、氷の壁隙間から覗く赤い瞳と目があう。
「神野以来か・・・・ふん、まだ青いなっ」
一際大きな音が響いた。
耳をつんざくような甲高い爆音。
氷の壁が円状に大きく砕け散り、こちらに少しずつ近づいてるギャングオルカ達の姿が覗く。
流石に手加減してどうにかなる相手ではないらしい。
氷結の出力を更にあげ氷柱の規模を更に拡大。
そびえるそれを一気に押し出す。
今度は手応えがあった。爆音は響いているが遠い。厚みのある氷の壁を越えてはいない。
左に炎を灯しながら体温調整しつつ出力を維持。
体力の消費が激しく長くは持たないが、少しでも時間を稼げれば良い。
これだけ派手にやっていれば、直ぐ緑谷達が加勢にくる。
「っ!」
突然風が舞い上がった。
咄嗟に見上げれば、空に風を纏った男の姿がある。
俺を険しい顔で見ていた男の━━━。
「ふぅきィィィィィ飛べぇええっっ!!!」
氷を巻き込みながら吹き荒れる豪風。
それはギャングオルカ達の体を大きく後退させる。
その身についた傷を見れば、多少ではあるがダメージを受けているように思えた。
「ヴィラン乱入とか!!!!」
マントをはためかせたそいつは、ゆっくりとその高度を下げてくる。無骨な装備をから風を吐き出しながら。
「なかなか熱い展開にしてくれるじゃないっスか!!」
見上げていると目があった。
何故だか睨まれてしまう。
なんだ。
「あんたに、遅れをとるなんてな・・・・!」
怒りすら籠った声と眉間に寄った深いしわ。
爆豪とは違った何かを感じる。
明確な敵意や憎悪・・・感じるのはその辺りだ。
覚えてねぇが、試験の時やはり何かやっちまったらしい。━━━とはいえ、今はおちおち話してる時間もねぇが。
「名前は忘れたが、士傑高校の。相手が相手だ。少しの間で良い、フォローに回ってくれ。頼む」
男からの返事がない。
ただ、さっき見た個性の練度を考えれば、即席でも合わせられるだろう。精度の高さ、地力の強さは間違いない。
そう思い炎を放出したが━━━ほぼ同時に放たれた風に誘われ大きく逸れていってしまった。
「何で炎だ!!熱で風が浮くんだよ!!」
さっきまで氷結使ってりゃそう思うのも無理はねぇ。
そいつが言うように、これは俺が悪かった。
普段訓練で緑谷と爆豪なら当たり前に合わせてくるから、そう出来ると完全に勘違いしてた。
普通は分からねぇ。
他のクラスのやつらみてぇに、言葉にしねぇと。
「━━━悪い、氷結は使い過ぎたせいでガス切れだ。暫く炎中心になっちまう。上手く合わせてくれ」
「っな、なんでっ!あんたが!!今更そんな事言うんだよ!!」
妙な言葉に視線を向けると、その目は何処かで見た色に染まっていた。そして同時に俺は理解した。どうしてこんなにも、こいつの事が気になっていたのか。どうしてこんなにも、こいつを見てると胸がざわつくのか。
「あんたはっ、そんな奴じゃないだろ!!」
それは俺が一番知ってる目だ。
「あんたは、エンデヴァーの、あいつの息子だろ!!」
忘れる訳がない。
「今更っ、今更ヒーロー面してんじゃねぇよ!!ヒーローはあんたらみたいな親子が、あんたらみたいな目した奴等が、なっていいもんじゃねぇんだよ!!ヒーローは熱いもんなんだ!!熱い心がっ、人に希望とか感動とかを与える!伝える!!」
それはずっと、俺がしていた目。
親父に向け続けてきた。
その目だ。
『やぁった、勝ったぞ!!でも次はわかんないな!あんた凄いな!』
俺は本当に、何も見てなかったんだな。
どうしてこんな顔にさせるまで、忘れていられたんだろう。
『あんたってエンデヴァーの子どもかなんか!?凄いな!』
手を差し伸べてくれてた奴の事。
笑いかけてくれた奴の事。
『邪魔だ』
そんな心ない言葉で切り捨てた事も。
「俺はァ、あんたら親子の、ヒーローだけは認める訳にはいかないスよぉ!!」