私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
「ヴィラン!?ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!」
誰かがそう叫んだ。
私も思ったけど、態々言わんでもと思った。
そうお前だよ、切島ぁ。
「先生、侵入者用センサーは?!」
「もちろんありますが・・・」
今度は百とゴルゴがお話。
お前ら、本当に余裕だな。
電話とかしな?今こそイチイチゼロだよ?あれ、繋がんないな。電波立ってないとか、どんだけクソなんだよ、この建物。アンテナ工事しとけよ。
そうお前だよ、ゴルゴぉ。まったく。
おい、上鳴!お前だよお前!
ほら電気使える系だろ、連絡とれ連絡!なんか電波むりぽなんだよ。使えるだろ?ビリビリって。そうだよ、お前だよ、お前がやるんだよ。
「現れたのはここだけか、学校全体か・・・。何にせよ、センサーが反応しねぇなら、向こうにもそういうこと出来る個性がいるってことだな━━━━」
今度は轟きゅん?
君らね、本当に話すの好きね。
絶対にそんなことしてる場合じゃないからね。
ていうか、それ私いま言ったからね。聞いてないの?馬鹿なの?あ、天然さんだった。
「━━━バカだがアホじゃねぇ、これは━━━」
はいはい、落ち着きーみんな落ち着きー。おかしだよーみんな。おかしを大切にするんだよー。おい、眼鏡、委員長だろ、鎮めろクラスメートを。お前の仕事じゃろがい。
で、繋がった?上鳴?出来ない?電波妨害系がいるな、これ。ダメぽよだ。連絡、ダメぽよ。
もう避難しよーそうしよー。
避難する為に、混乱する皆を一列に並べるように眼鏡に命令しているとヴィランの様子を窺っていた包帯先生が叫んできた。
「13号避難開始!学校に━━━」
「ダメぽよです!電波がダメぽよです!」
「なら、上鳴の━━━」
「上鳴もダメぽよです!口だけナンパ野郎でした!」
「━━━━━━避難開始再開!!緑谷先導!!13号フォローしてやれ!!」
「いえっさっ!!」
「わ、分かりました先輩!」
逃げていいと言うのであれば喜んで逃げる。それが私。勝てぬ戦など頼まれてもやらぬのよ。
「そういう訳で、お前ら一列に並んでついてこーい!」
「緑谷ちゃんがかっこよく見えるわ」
「ほんまや、別人みたい」
「ぐっ、これが真のリーダーシップ!それに比べて僕は・・・!!」
「・・・自分が早く逃げてぇだけだろ、クソが」
黙れぇ、かっちゃん!!なにちっちゃい声でぼそってんだ、お前は!
皆が上手い具合に勘違いしてんだから、今だけはさせとけぇ!!足取りが遅くなるだろうが!!
いいか!私は一刻も早く逃げたいんだよぉ!
「だ、大丈夫やろか、相澤先生・・・」
私の後ろをついて着ていたお茶子が心配そうに言った。
ぱっと見、やばいヴィランは最初に見た手マンと、その後に出て来た黒筋肉くらいだ。ワープモヤモヤを出してる奴は個性は凄いけど、多分タイマンしたらボコボコに出来ると思うからそんなでもない。他にもヴィランいるけど、ただの雑魚だ。有象無象でしかない。
包帯先生は素で私より強いから、私が勝てる奴には苦労しないと思う。まず雑魚は歯牙にもかけない。モヤモヤも包帯先生の個性もあれば完封間違いなし。
けれど、問題は残りの二人だ。
あれは、底が見えない。
安心させる嘘をついた方が良いのだろうが、この場面で友達に嘘をつくのは好きくない。
「お茶子・・・多分、ダメぽよ」
「なんやろ、大丈夫な気がしてきた」
本当の事教えたのに安心されてしまった。
いやまぁ、逃げる事に集中してくれるなら、なんでも良いけどさ?うん。
「すげぇ・・・!相澤先生ってあんなに強かったのかよ!」
誰か包帯先生に振り返ったのか、そんな言葉が聞こえた。勿論そんな場合ではないので、注意するように眼鏡の尻を蹴りあげる。
「い、今は避難に集中するんだ!!皆!」
よく言った。眼鏡。
お前には来年も学級委員長をやる資格を与えてやろう。
「させませんよ」
出口付近までやって来たのに、黒モヤモヤが目の前に現れた。これだからワープ系は嫌いなんだ。チートめ!
青いタヌキー!誰か青いタヌキを呼んでー!未来の世界の猫型タヌキ呼んでー!どこでもいける系のドア持ってきてー!あれがないと勝てない系ー!!
てか、包帯先生こいつだけは抑えておいてよぉ!
「初めまして我々━━━」
いきなり自己紹介を始めたモヤモヤ。
私は直感する。
こいつ喧嘩トーシローだと。
先手必勝。
私は一か八か引き寄せる個性を発動する。
すると、モヤモヤが引き寄せられた。
つまり実態があると言うこと。らっきー。
驚くモヤモヤに向かって炎を吹き付ける。
溜めがなかったから火力は弱めだが、怯ませる事は出来た。
怯んだ隙に引き寄せる個性で引き付けながら、私も接近していく。
「なっ、にがっ!?」
未だ混乱が覚めない黒モヤモヤの首っぽい所目掛け、渾身のラリアットをかましてやった。
ラリアットを受けて空中を一回転する黒モヤモヤ。
碌に体勢を整えられなかった黒モヤモヤは、そのままびたーんと地面に叩きつけられた。
流れでついつい止めの肘打ちを打ち込んでしまったのはご愛敬である。
ピクピクと動く黒モヤモヤに、クラスメートは固まった。
「死んだ?」
「えげつねぇ」
「・・・・」
「必殺必死」
生きてるよ、きっと。
なんやかんや、私この技で人殺した事ないもん。
ないよ。本当にないって。疑うなって。やってないから、やってない・・・なんだその目は!
皆の誤解をといているとかっちゃんが側に来て頭を小突いてきた。ったぁ!この、野郎!乙女の顔をなんと心得る!
「━━無茶すんな、バカ女」
「無茶はしてないけど・・・」
「下がってろ、後は俺がやる」
別に無理はしてないんだけどなぁ。やれると思ったからやっただけで。凄い弱かったし。
もうあれだ、モヤシかと思ったわ。
「おい、爆豪!いちゃつくのは後にしてそのモヤ野郎どうにかした方が良いんじゃねぇか?」
「言われなくてもするわ、ボケ。この手の奴は━━━」
「油断、大敵ですね━━━━!」
黒モヤが、黒モヤモヤに包まれた。
直ぐにかっちゃんが爆破したけど距離をとられた。
逃げた所で引き寄せる個性を発動したけど、黒モヤモヤも学習したのかワープを使って効果範囲より外へと一気に逃げてしまう。この、青いタヌキ野郎!モヤシの癖に回復力はあるなぁおい!それともあれか?寝てたんか?あの一瞬で寝てたんか?どこかの射的と綾取り得意な眼鏡っ子もびっくりな早寝だな、おい!!
「子供とはいえ雄英生徒。金の卵達といった所でしょうか。改めまして、我々はヴィラン連合。せんえつながら、この度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは、平和象徴オールマイトに息絶えて頂こうと思ってのことでして━━━━━」
なんだ、この黒モヤモヤ。
ガチムチに用があったのかよ。
ははん、さてはホモだな?傍迷惑な。
「ガチムチなら留守だぞー!サボりだぞー!」
「ええ、そのようで。本来ならここに━━━」
「か・え・れ!か・え・れ!か・え・れ!」
「オールマイトが━━━」
「はい、みんなも一緒に!か・え・れ!か・え・れ!」
「━━━━━う、あ」
帰れコールを一人熱唱していると、段々と声が集まってきた。流石にカリスマがEXを誇る私だ。先導の神であるな。
「「「「か・え・れ!か・え・れ!」」」」
なんて一体感、ちょっと気持ちよくなってきた。
はい、か・え・れ!か・え・れ!か・え・れ!
テンポを変えていこうか?ちょっとリズミカルにいこう!いえーい!
ん?あれぇ?なんか黒モヤモヤがプルプルしてきた?どうしたの?寒いの?冷え性なの?暖房つけてあげようか?
あ、これはヤバイやつだ。
「バカ女!いつまで馬鹿やってんだ!下がりやがれ!!」
「散らしてっ、殺すぅ!!!」
「━━━━━っ双虎!!」
私の視界は一瞬で真っ暗になった。
反省はした、後悔はしてない。