私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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割と悩んだ結果・・・こうなりましたっ!
(゜ロ゜)クワワッ!


茶化したりしないぉ!ぼくはそんなことしないぉ!ほんと、ほんと!ほんとのホトトギスだぉ!だから教えてよぉー、ねっ?ねっ?えっ?驚くほど信用出来ない。・・・へぇ、それはよい目をお持ちで。の巻き

試験結果発表。

 

それは万国共通ありとあらゆる試験受験者にとって、天国と地獄の分かれ目を告げる、世界終末のセブンズトランペットの音そのものである。

その音を聞きしある者は歓びの声を、ある者は嘆きの声を口にする。そこに一切の慈悲はない。己が出した結果を、他者によって突きつけられた結果を、あるがまま受け止め飲み込むしか答えはないのだから。

 

そしてその日、その場所、その時間で。

また一つの喜劇とも言える悲劇とも言える。

運命の結果発表が行われようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、名前あった」

 

はい、まぁね。色々言いましたけどね。

私は普通に合格しましたよって。

あたりきしゃりきよー。

 

そりゃぁね、頑張ったもんね。押さえる所押さえましたもん。はい、狙いましたよ?何か?ふふん。

 

採点基準について明確な内容は聞いてなかったけど、それまでの流れを見れば協会が何を考えてるのかは何となく分かる。協会は兎に角、協調性が比較的あって、そこそこ使える手駒が欲しいのだ。

それはつまり、増える犯罪者に対してガチムチのような象徴を立て抑制するのではなく、ヒーローの頭数を増やして数で対応する人海戦術を選んだという事。

 

だから、授業でやった事を普通にやってれば大丈夫だとは思ってた。役割を完全に割り振って動いた理由はそれだ。実際救助に向かう事なく避難場所の確保、避難誘導や救助の手当てといったどちらかというと裏方になった百チームの面々が、全員合格してるのが良い証拠。

おめでとー、百ー。

 

あっ、かっちゃんの名前あった。

切島から聞いた感じだと、中々にクレイジーな救助してたって言ってたから、これは駄目かなぁと思ってたんだけど・・・・救助即行切り上げで、戦闘班に交ざったのが良かったのかなぁ。あれなら採点下がらないし。

ふと隣を見るとドヤ顔のかっちゃんがいた。

 

「・・・良かったね。シャチマフィアきて」

「どういう意味だ、ああん?」

「そういう意味だ、こらぁ」

 

パッと見た感じウチに落ちた奴いなさそう。

お茶子も眼鏡も・・・・おぉ、轟の名前もあった。

・・・んん?

 

ぼやーっと眺めているとアザラシの文字がない事に気づいた。他所の学校の奴とはいえ、私の可愛いファンだから気になって探したらこれだ。

五十音順になっているから直ぐに見つけられる筈なんだけど、何度見てもアの行になくイの行になってしまう。眼鏡の飯田になってしまう。あしどんと梅雨ちゃんはあったけども。

 

「やっぱり駄目だったかぁ・・・・アザラシ」

「・・・一応言っとくが、アで探したら一生見つかんねぇからな」

「え?うん?まぁ、見つからなかったけども」

「そうだろうな」

 

かっちゃんの憐れむような謎の視線に首を傾げていると目良っちの声が響いていた。

 

『えー全員ご確認いただけたでしょうか?続きましてプリントをお配りします。採点内容が記載されてますので、しっかり目を通しておいて下さい』

 

黒服の人に配られるそれを、側にいたかっちゃんと貰いにいく。貰ってる最中も採点について目良っちから追加の説明を聞いて、減点方式で採点してる事が分かった。マックス100点の合格ボーダーライン50点だそうだ。

 

黒服のおじさんから貰った紙を覗くと、90点という高得点がそこに刻まれていた。さすわた、と心から思う。

目立った注意点も特になく、迅速で適切な行動にはハナマルを貰えていた。じゃぁ何が駄目かと言えば、かっちゃんのせいだった。かっちゃんと無駄話してしまった事と、ふっくの人をふっくの人と呼んだのが駄目だったらしい。不真面目さを感じるとの事。

 

くそぅ、なんでやん。

かっちゃんの事は兎も角、ふっくの人については本当の事言っただけなのにぃ。

 

ただ何故か手書きで『それを差し引いても良い連携だった。今後も精進を続けよ』とお褒めの言葉が書き込まれていた。可愛い字で。・・・多分だけど、シャチマフィアな気がする。入院してる時貰った、シャチマフィアのお見舞いについてたメッセージカードの字だもん。

 

「━━━ん?おかえり、かっちゃん。何点だった?」

 

採点内容を頭からまた見直していると、かっちゃんがプリント片手に戻ってきた。どうにも表情が渋いのでどうだったか聞いたらそっぽを向いてくる。

そんな姿を見てると、私の悪戯心に火が灯った。

 

「っせぇ。んでも良いだろ」

「まぁ、合格したならね何でも一緒だろうけどさ。私ギリだったよ。危なかったぁ~」

 

私がそう言うとかっちゃんが怪訝そうな顔をした。

うん?嘘はついてないよ。誰も合格ギリとはいってない。90点代ギリギリだったよって、そう言ってるだけだ。あはは。

「あ?ギリだぁ?」

「そうギリギリ。結構採点厳しかったのかもね。で、かっちゃんは?」

「・・・・ちっ、ほらよ」

 

さっと差し出されたそれを見ると、かっちゃんは51点だった。まさかの滑り込み。ほんまもんのギリ。

これには、流石の私も笑えない。書かれてる注意点は大体救助対象に対する態度の悪さが目立っている感じだ。まさしくクレイジーな救助だったようだ。

あ、またシャチマフィアが褒めてる。なんで手書き。

 

そんな点数を叩き出したかっちゃんは、入れ換わりで渡した私の点数表を見て凍りついてる。暫くフリーズした後、錆び付いたロボみたいにこっちを見てきた。見開かれた目には淀んだ何かが宿ってる。怖い。

 

ごめんね、本当に。マジで。

 

「今度、ご飯奢るから・・・・」

「何慰めにきてんだてめぇは!!ざけんなゴラァ!!さっさとそれ返せや!!」

「ごめんそれは、ちょっと。ほら、光己さんに見せないと」

「何写メ撮る準備しとんだ!!!止めろゴラァ!!!」

 

みんなぁーーーー!!聞いてよぉーーーー!!かっちゃんがねぇ!!リアルにドイヒーな点数を━━━━っぶなぁ!?危ない!何で蹴るの!?避けなかったらおしりパーンなんですけど!?乙女のお尻を何だと思ってんだァ!!この野郎!!

 

『━━━とまぁ、今回合格点数に届かなかった方々にも補習を受けて貰う事で・・・・・・すいません。ちょっと、お二人さん。お静かに願えますか?本当に仲が良いですねぇー。僕もですね、何百人もの受験者を覚える程、記憶力の良い訳ではありませんが━━流石に覚えましたよ。爆豪さん、緑谷さん。合格を取り消されたくなかったら、少し静かにしていて下さいね』

 

私とかっちゃんは振り上げた拳をそっと下ろし、お口チャックで壇上に上がる目良っちへ視線を送った。しっかりと互いの足を踏みながら。

 

『━━━・・・はい、まぁ、結構です。爆豪さん、緑谷さん。次はありませんからね。では先程の話を━━━━』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ありがたい目良っちのお言葉で締め括られた仮免許試験。さっさと帰ろうと会場を後にしてバスに乗り込もうとしたけど、包帯先生に捕まって正座させられた。勿論、かっちゃんと。

もうね、慣れたから叱られるのは良いけど、帰ってからでも良くない?恥ずかしいんですけど。公衆の面前で恥ずかしいんですけど。助けてお茶子。

 

チラッと視線をお茶子に送ると、さっと目を逸らされた。おっと、ウラギリィ。

ならばとベストフレンズの紅白饅頭ことショート様に視線を送ると、アザラシに絡まれていた。なんか変な空気が漂ってる。

 

「・・・緑谷、よそ見するとは良い度胸だ」

「あっ、すんまっせん。不穏なコンビがいたので」

「不穏?なにを━━━━」

 

 

「ごめん!!嫌な態度とって、お前に迷惑を掛けた!!」

 

 

アザラシは凄い勢いで頭を下げ、その勢いのまま地面に頭をぶつける。凄い激突音が辺りに響く。

あまりの光景にネチネチ叱っていた包帯先生が思わず固まって言葉を止める。周囲にいた受験帰りの人達も

固まる。

 

そんな中、轟はいつものノボーっとした表情のままゆっくり口を開いた。

 

「・・・・・気にするな。それにそれを言うなら、お互い様だ。入試ん時、俺こそ態度悪くて悪かったな。・・・せっかく話し掛けてくれたのによ」

 

轟の言葉を聞くとアザラシが頭をあげた。

分かりやすく唖然としてる。

渾身のポカン顔だ。

 

ポカンVSノボー。

何あれ、面白い。

 

「・・・・変わったな、轟」

「そう、かもな。雄英に行かなかったら、あいつらと会ってなかったら、きっとお前とこんな話してねぇと思う」

「それは・・・多分俺もだ。士傑に行かなかったら、先輩に叱られなかったら、まだお前は気に食わないだけの奴だったと思う」

 

曲げていた腰をあげ、アザラシは胸を張った。

 

「正直、まだお前の事は好かん。━━━でも、お前の事を知りたいと思った。友達になってくれ、轟」

「友達は別に良いが、俺もお前の事はあんまり好きじゃないぞ」

「お互い様だな!」

「・・・ああ、そうだな」

 

よく分からない会話が終わり、二人はがっちりと熱い握手を交わした。

なんだあれ、変な友情が生まれとる。

 

ふと包帯先生を見ると眉間を指で揉んでいた。

ついでに気も揉んでる事だろう。

お疲れ様です。うっす。

 

「イナサ、帰るぞ」

 

そんなモジャモジャパイセンの声が聞こえると、アザラシは元気よく返事を返し走っていた。それも器用に、こっちに手を振りながら━━━━━

 

「またなー!!轟ー!!俺のアドレス●●●●●●●だ!!駄目だったら電話くれ!!電話番号は●●●━●●●●━●●●●だ!!後で連絡くれ!!」

 

━━━━ついでに公衆の面前で個人情報も大公開しながら。将来が心配だなぁ、サイン一号。

 

 

 

「・・・それにしても、あのエロ女いなかったな」

 

 

遠ざかってく士傑の背中を見てると、ふとそんな事に気がついた。だからと言ってどうという事もないのだけど・・・何故か気になった。

 

「むっ?」

 

エロ女の事を思い返しているとスマホが震えた。

包帯先生の意識が轟に向かってるを確認してからコソッと見てみるとメッセージが入ってる。

 

珍しいことに、ガチムチから━━━━━。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

一足先に試験会場を出ると、日はすっかり傾き夕刻を迎えていた。街並みは赤く照らされまるで血塗られたよう。建物と建物の影には表の赤と相反するように、深い闇が差し込みつつある。それは何処かノスタルジックで、私はそこにある独特の雰囲気を楽しみながら、二色に染まる街を歩んだ。

 

手にしたビンの中身を眺めながら歩いていると、ポケットにしまっていたスマホが震え出す。取り出して画面を見れば見慣れた人物の名前が浮かんでいる。

 

だから通話ボタンを押そうとしたのだが━━━そのままでは彼を驚かしてしまう事を思いだし、掛けられた魔法を、個性を解いた。

 

長い茶色の髪が、白い柔らかそうな肌が、指先を彩っていた爪が、誘うような厚い唇が、体から泥のように落ちていく。

変わらないのは頭に被せた黒い帽子だけ。彼女から拝借してきた、士傑高指定のその帽子だけ。

 

 

『━━━━やっとつながった!どこで何をしてる!?』

 

 

スマホから流れる声を聞きながら、私は私に戻ります。

他の誰でもない、私だけの私に。

 

 

『トガ!!』

 

 

そう、私は渡我被身子。

ただの、普通の、可愛い女の子。

今はヴィラン連合でお仕事してる、良い子な働き者。

 

「━━━素敵な遊びをしていました」

 

返した私の言葉に、通話先から憤りを感じます。

みすたーが少しオコです。

 

『定時連絡は怠るなよ!一人捕まれば全員が危ないんだ!』

「大丈夫なんです。私は今まで見つからず生きてきたので━━━━まぁ、一人厄介なのに目をつけられましたけど」

 

流石に気づいていたとは思いません。気づいていれば、あの性格悪い女が何もしない訳ありません。この程度で済んでる以上、そういう事でしょう。

ですが、あのままいたら面倒な事になっていた可能性も高いと言えます。態度や言動を見れば、確証こそなかったかも知れませんが、何かしら不信感を抱いていたのも間違いないでしょうし。

 

『おっ、おい!それって大丈夫なのか!?』

「大丈夫ですよ。追求される前に振り切ってきましたので・・・・それより面白い物を手に入れましたよ」

 

手に持ったそれは街灯に照され、ビンの中で赤い光を放ちます。綺麗な、綺麗な、とっても綺麗なルビーのような赤。

 

「爆豪くんの血を手に入れました。うふふ!」

 

あの女を引っ掻き回すには、きっとこれ以上の物も無いでしょう。どうやって使うか、今から楽しみで仕方ありません。胸がドキドキのワクワクです。

 

思わず鼻歌を歌っていると、はっと気づきます。

私、今、絶賛お電話中でした。

 

「・・・・あっと、それでどのようなご用件ですか?これから帰るつもりですけど」

 

投げ掛けた言葉に溜息が返ってきます。

 

『トガちゃんは本当っっっと、マイペースだね。楽しそうで何よりさ。それでね、用件っていうが召集ってやつね。帰ってくる予定なら余計なお世話だったみたいだけど。・・・どうにもトゥワイスが面白い話を持ってきたらしいんだよ』

「仁くんがですか?」

『せっかく気分盛り上げようしてるのに・・・本名言ったら駄目だぜ、トガちゃん』

「仁くんは仁くんですから」

『うーん、そうね。分かった、それで良いよ、もう』

 

用件も聞き終わり通話ボタンを切ります。

後に残るのはひっそりと静まり返った暗い街並み。

私は皆の元に向かう為、夜が呼んだ暗いそこへ体を沈ませました。

 

誰にも見られないように。

そうっと。

 

 

 

 

 

 

 

 


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