私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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もう、疲れたよ。
もう眠っても良いよね?

パトラッ━━━(。-ω-)zzz


夢の話をしようよ。ねぇ、あの日聞かせてくれた夢の話をしよ。ほら、してよ、してみてよ。あれ顔赤いよ?照れてんの?ねぇ、照れてんの!?ねぇねぇ!っぶな!?はいっ!バーリア!!の巻き

『本日は十八時で閉園になります。ご来園ありがとうございました』

 

空が茜色に染まり始めた夕刻。

轟に奢って貰ったり、かっちゃんをからかったり、眼鏡の眼鏡に指紋つけたりして目一杯楽しんだ私は、有終の美を飾ろうと夕日を背にコーラを飲んでいた。

カフェの入り口でヘタレ込む、ボロ雑巾みたいな上鳴達を見下ろしながら。

 

「人間、ああは成りたくないものだ」

 

そう言ってまたストローを咥えれば、上鳴とブドウが憎しみのこもった視線を向けてくる。鼻で笑ってやれば、きぃーっと小さい声で喚いてきた。

 

「ミドリヤさん、友達にそういう事は・・・」

 

メリッサが申し訳なさそうに止めてくるが、私はそれをやんわり止める。止めてくるのを止める。なんだろ、この変なフレーズ。嫌いじゃない。

 

「大丈夫、大丈夫。案外これでこいつらは喜んでるから。━━━おらぁ、跪け下郎共ぉ!!貴様らの仕事ぶりにいたく感心なされた姫達から褒美の進呈じゃぁ!!」

 

袋詰めされたキャラメルポップコーンとチュロスをお茶子達女子ーズが見せれば、下半身に支配された二人は女子ーズの前へとダッシュ。そしてささっと地面へと膝をつき、迷う事なく頭を即行垂れた。その間、僅か二秒。あまりの必死さに、言うまでもなく女子ーズが若干引く。

 

しかし、そんな態度にも引くことなく、菩薩のような笑みを浮かべて近づく者もいた。優しきその者は自らが手にした物を上鳴達の手に置くと、力強く二人の肩を抱き寄せた。

 

「労働、よくがんばったな!上鳴くん!峰田くん!」

「いや、何で飯田だよっぉ!?」

「そこは女子の役目でしょーがぁ!!」

 

「レセプションパーティーの招待状だ!用意してくれたメリッサさんに感謝するんだぞ!二人とも!!」

「いや、だったらメリッサさんに渡させてくれよ!」

「てか、いつまで抱き締めてんの!?俺そっちの趣味ないからね!?」

 

アホ丸出しの男連中を指差して「ねっ?」とメリッサを見れば、少しきょとんとした後クスクス笑い始めた。

 

「雄英高校の皆って、いつもこんなに賑やかなの?少し前にいた・・・トトロキくん?がいた時も、凄く賑やかだったし」

 

そう言うとメリッサは少し離れた所から呆れ気味に眼鏡達を眺めるかっちゃん達を見た。視線の意味は言わなくても分かる。今でこそ落ち着いてるけど、轟が用事で抜けるまでは何かとワチャワチャしてたからなぁ。よくまぁ、毎回毎回争うネタが尽きないな。あの二人は。

 

「━━まぁ、うちのクラスは大体こんな。他の学年とかクラスとかは、どうなってるのか知らないけどねぇー」

「そうなんだ。・・・でも、なんか良いわね。楽しそう。私にも━━━━・・・うぅん、何でもない。素敵ね、ミドリヤさんのお友達」

 

そうして向けられた笑顔は、少しだけ寂しげに見えた。今日一日分だけしか知らないけど、メリッサは時折そんな顔をする。理由は分からないけど、心当たりがない訳でもない。何となしにそれを尋ねてみようかと思ったんだけど、いきなり頭パァーンされて言葉が喉の奥へと戻ってしまう。何事かと振り返れば、やっぱりかっちゃん。

 

「━━━━ったいなぁ!いきなり何すんのぉ!?馬鹿になったらどうすんの!!!」

「うるせぇ、最初からとびきりの馬鹿の癖して、今更何を心配してんだ。んな事より、さっさと帰って準備始めろや。レセプションのパーティーに出んだろ、てめぇは」

 

叩かれた事はムカッとしてるけど、かっちゃんは間違った事は言ってない。叩くとか、本当に糞だけども。

パーティー用の格好に着替えるとなると時間が結構掛かる。何せホテルに借りる所から始めなくてはならない。選ぶ時間もそうだし、着付ける時間も必要。なんて言ったってドレスコードだかんね。ドレスコード。私ドレス着るらしいですのことよ?やばいね。私の美少女っぷりに磨きが掛かっちゃうよ。あまりの美しさに見た人が石になるんじゃないかな。もうお金取ろうかな。

 

「あっ、そうだ。かっちゃん的にはどんなドレスが良いと思う?」

「あ?んで俺がてめぇのコーデ考えなきゃなんねぇんだ。好きにしろや、クソが」

「まぁ、好きにするけどさ?参考程度に聞きたかっただけ。轟は白とか漠然に言うしさ━━━━」

「淡い緑、露出すくねぇドレスにしやがれ。ヒールは低め。メイクもナチュラル心掛けろ。てめぇはただでさえ目立ちやがる、ヒラヒラしたのは止めろ」

「えっ?ん?うん?あいよ?」

 

急な掌返しと具体的な要求にちょっとドキリとした。てか、参考だっつってんのに、かっちゃんは厚かましいなぁ。なんだその『はい決定!』みたいな言い方。まぁ、でも轟のぼやぁっとしたアドバイスより悪くないな。今回は濃いめは止めて淡い色にしようとは思ってたし、ヒールも高いのとか苦手だし?分かってんじゃん的な気は・・・まぁしないでもないけど。

 

「んーー参考にする。ありがと」

「けっ!」

 

一つ候補が決まった所で漢字の漢とかいて男なキリシマンが手をあげた。何か言いたげだけど、やつのセンスは壊滅的なので視線を逸らしておく。

 

「いや、無視すんなよぉ!?露骨過ぎるだろ!」

「じゃぁ、はい、切島」

「その信用ゼロの視線向けんの止めろ。普通に傷つく。まぁ、アドバイスって訳じゃねぇーけど、爆豪は赤シャツに白い薔薇柄がアクセントが入った紺のベストだからな」

「へぇ、そうなんだ?また派手だねぇー」

 

確認をとろうとかっちゃんを見れば、何故か怪訝そうな顔をしてる。ほわい?

 

「・・・おい、切島。なんで俺が、んなもん着る事になってんだ?ああ?」

「何でって・・・なんも用意する気ねぇお前に代わって、俺がちゃんと準備してやったからに決まってんだろ?お前の趣味にバッチリヒットだろ!」

「余計な真似してんじゃねぇぞ、こらぁぁぁ!!」

「うぉっ!?」

 

ツンデレかっちゃんが照れ隠しで暴れてるのをよそに、女子ーズは全員集合で着るドレスの話を始める。被らない為にも打ち合わせは必須。その結果危うく百と私のドレスの色ががっつり被る所だった事が判明した。百なのに淡い緑のドレス着ようとしてた。百なのに。

熾烈な争い(じゃんけん)を制した私は予定通りに淡い緑を獲得、百は皆の勧めで燃えるような赤になった。かっちゃんと被るけど・・・まぁ、かっちゃんなんて目じゃなかろうから問題ないと思う。私的には胸元ばぁぁぁぁんって開いてて、ラメがどぉどぉぉーん入ったキラッキラのシャンパンゴールドを推したんだけど、それだけは嫌だと全力拒否された。なので代わりに、なるたけセクシーなのを選ぶように追加注文しといたけど。

頼んだ、お茶子、耳郎ちゃん。私の分も飾り立ててあげて。

 

待ち合わせ場所と時間を決め、いざ解散。

次は戦場(パーティー会場)で━━━━と別れてホテルに帰ろうとしていたのだけど、メリッサに呼び止められた。どうやらアトラクションを回ってた時に私がちらっと漏らした個性の話を覚えていたらしく、それについて見せたい物があるらしい。

 

炎を対象にした、引き寄せる個性の使用。

轟戦で行ったあの日以来、引き寄せる対象として炎を認識出来るようになっていた。出来る事が増えるのは良いことだ━━━と最初は喜んだけど、これが全然駄目だった。炎を対象にした時の出力の低さ、安定性のなさ、燃費の悪さ、脳への負担の大きさ。何をとってもイマイチで、実戦で使えるような代物ではなかったのだ。勿論練習はしてるけど、今日まで大した変化はなかった。無差別に引き寄せるなら、結果として出来なくはないけれど、あれはやりたい事とは違い過ぎるし。

 

そんな訳で、何かのヒントになればと、何処かの発明馬鹿みたいなギラギラした目のメリッサに同行。メリッサが通う学校にある、メリッサの専用ラボへとやって来た。

 

「散らかっててごめんなさい。ちょっとだけ待ってて」

 

そう言いながら部屋の奥へといくメリッサにつられ軽く見渡したけど、部屋は普通に綺麗だった。確かにテーブルというテーブルの上には道具やらノートが置きっぱなしだけど、それだって無駄な物は置かれてない気がする。これで散らかってるとか、私の部屋見たら発狂するんじゃなかろうか。三日に一度は母様が額に青筋たてながら掃除するレベルなんだけど。

同じサポート科の発目の活動拠点とか、業者が入らないとどうにもならないレベルなんだけども。月とすっぽんなんだけど。

 

「━━━━というか、学校から個室貰えるレベルなら、メリッサって成績的に上から数えた方が早い系でしょ?百と似たモノを感じるんですけど」

 

資料棚の上に並んだ盾やらトロフィーやらを指差して聞いてみれば、メリッサは棚を探しながら口を開いた。

 

「うーん、どうかしら?私はそんな事ないと思うけど。きっとモモさんの方が私より優秀よ」

「そう?普通の人は賞とか貰えないと思うけど」

「ええっとね、実はね、私そんなに成績良くなかったの。今でこそ賞を貰えたりする事もあるけど、最初はてんで駄目で・・・・だから一生懸命勉強したわ。どうしてもヒーローになりたかったから」

 

声から少しだけ元気がなくなった。

真っ直ぐ前を見てる目が、どこか寂しげにも見える。

何となく待っている気がしたので、それを一応聞いてみた。

 

「・・・どうしてプロヒーローを目指さないのって、聞いた方が良い?」

 

そう言うとメリッサが困ったように笑う。

探す手を止めることなく。

 

「何となく、ミドリヤさんには気づかれてる気がしてた。だってミドリヤさん、見てないようで人を良く見てる人だから━━━私ね、無個性なの」

 

その告白にはやっぱりかぁ、という感想しかない。

今日一日見てきたけど、そうじゃないかなぁとは思ってた。気づいた理由は色々あるけど・・・・一番はメリッサの話し方。個性と自分が別にあるみたいな、その話し方だった。

 

「五歳になっても個性が発現しないからお医者さんに、調べてもらったの。そしたら発現しないタイプだって診断されたわ」

「そっか、私は普通に出来たからなぁー」

「そうなんだ?ミドリヤさんは発現した時の事とか覚えてたりする?」

「覚えてるよ。かっちゃんの事ぶん殴った時だったから」

 

教えてあげたらメリッサが微妙な顔でこっちを見てきた。なんぞ?

 

「ミドリヤさん・・・私が言う事じゃないかも知れないけど、バクゴウくんに優しくしてあげてね?」

「えっ、なんで?!」

「ミドリヤさんって、バクゴウくんだけには鈍いわよね?少しは見てあげても良いのに・・・なんて。偉そうに言えるほど、私も経験なんてないんだけど。あっ、あった━━━━きゃっ!?」

 

ぼんやり眺めてたら高い棚を漁っていたメリッサがバランスを崩した。なので、引き寄せる個性でちょちょいと助けておく。と言っても、転ばないように体勢を整えてあげただけだけど。

 

「あっ、ありがとう。凄いわね、ミドリヤさん。今のって引き寄せる個性よね?・・・聞いてた感じだと、調整が難しそうな個性なのに、一瞬で、こんな正確に」

 

まぁ、外から見ると簡単に見えるんだろうな。

仕方ないけど。

 

「んーーーこれでも最初は苦労したんだけどね?出力は弱かったし、狙いをつけるの難しかったし、効果範囲は狭かったし、使うと凄く疲れるし、今ほど自由は利かなかったしで。高校入ってから個性的に成長期入ったのか、色々出来ること増えたけど━━━━中学の頃の私なら、メリッサの事引き寄せてキャッチするくらいしか出来なかったと思うよ?」

「あの一瞬で対象を選択して、引き寄せる個性発動させて、キャッチ出来るくらい引き寄せる力があって、それを考えつく余裕があるなら、それも十分凄いと思うけど・・・・あっ、これ、ふふふ、さっきと同じね?」

 

クスクスと笑うメリッサの顔には、さっきとは違う柔らかい笑みが浮かんでいた。

 

「子供の頃はね、マイトおじさまみたいになるんだって信じてた。パパにサポートアイテムを作って貰ってね、空だって海だってビューンって飛び越えて、沢山の人を助けてあげられるヒーローにって━━━それが私の最初の夢。だからね、私はミドリヤさんが羨ましい。そんなに凄い個性持ってるなんて、ズルいって、少しだけ思っちゃった。・・・でもそれだって、私と同じなのよね?沢山努力して、沢山頑張って、試行錯誤を繰り返して、ミドリヤさんがそこに居られるのは、きっと・・・・・━━━━━━私ね、今は別の夢があるの」

 

メリッサの視線は棚に並べられた写真へと向く。

色んな写真がある中で、メリッサの視線はメリッサパパを見つめていた。その目を見れば、メリッサが何を目標にしてるのか聞かなくても分かる。

なんとも、随分と高い目標だこと。

 

「まぁ、ガンバ。ノーベル個性学賞までの道のりは、めちゃ遠そうだけど」

「ふふっ、見ててね。今にパパより凄くなっちゃうんだから!そうだ、サイン貰っておく?プレミアついちゃうかも知れないわよ?」

「じゃぁ貰っておこっかな?証拠に写真もよろしく、あっ、名前はニコちゃんへで」

 

書いて貰った不恰好なサインと共にパシャリとやってから少し。とあるアイテムを貰った私は、レセプションパーティーの準備の為に、メリッサと共に学校を後にした。小走りで。

 

レセプションパーティーまで、残り・・・・あっ、止めた。止ぁぁぁめたぁぁぁ!数えるの止めたぁぁぁぁ!これからドレス選んで、着付けして、化粧ですよ!?アホらし。考えるのを放棄します!私は放棄しますよ!!てか、間に合わないよね!?メリッサ、間に合なかったら、一緒にジャパニーズゴメンナサイの土下座だかんね!!えっ、私が?何回もサインを書き直させるから?だって、普通に名前書いただけだと価値的にあれでしょ!?格好いいの欲しいじゃん!!


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