私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

193 / 282
ホークスばっかり、いじめんでほしかぁ。


原作がどんどんブラックになっとりますやんか。どないなってますのん。個人的には好きだけど、どうなりますのん?ってな感じで『予期せぬ闖入者』な閑話の巻き

気に入らねぇ。

すかした顔で簡単に俺の記録を抜きやがった、あのクソ紅白野郎の事が。

 

気に入らねぇぇ。

あの馬鹿迎えにいかなきゃなんねぇんだっつうのに、邪魔しやがる目の前のタコ共が。

 

気にっ入らねぇぇぇ・・・!!

そもそも、俺の誘い簡単に蹴り飛ばしたあいつがっ、俺以外の誘いをホイホイ受けて、ここにいる事がっ、何より━━━━━気に入らねぇ。

 

 

 

 

 

「くそっ、ガキっが!!チョコマカ逃げてんじゃねぇ━━━━ぶへぇっ!!?」

「っせぇわボケが!!モブ如きがっ!!俺の前に立ってんじゃねぇよ!!」

 

紫色の筋肉ダルマの顔面に爆撃を叩き込めば、聞くに堪えねぇ汚い悲鳴が響いた。よろめくクソ野郎の顔面へ追撃に蹴りを浴びせれば、鈍い音が鳴り血が飛び散る。飛沫した赤は広く細かく宙を飛び、ズボンの裾へ赤の斑点が作った。

 

「━━━ってめぇ!!誰に断って、汚してんだぁ!!ああん!?」

「はやっぶっ!?をっ!?」

 

爆破で加速させた拳を鳩尾へ叩き込む。

紫デブから苦痛の声があがり、体がくの字に折り曲がる。

叩いてくれと言わんばかりに顎が落ちてきた。

すかさず顎へ爆撃をぶちこみかち上げさせ、ガラ空きになった正中線にそって爆撃を叩き込む。焼け焦げた臭いが鼻をついたが、目視した紫デブの姿に大したダメージは見えない。

 

だが、それは予想済み。

 

相手はモロに身体能力強化系の個性持ち。見るからに厚い筋肉の鎧に、並の攻撃はきかねぇのは百も承知してる。端から一撃で仕留めるつもりは欠片もねぇ。

 

「死ねや、ごらぁ!!」

 

だからこそ的確に弱点へ、小さく鋭く、速く━━━━死ぬまでぶちこむ。

 

「っぶく!?なッッッッッ!!?」

 

可能な限り攻撃の回転をあげ、爆撃の雨を紫デブの体のど真ん中目掛け放つ。瞬発力に意識を向けている攻撃。一撃一撃は大した重さはない。だが、それも数を重ねれば話は変わる。雨が岩を穿つように、重ねたそれは、確実にぶち抜く。所詮は身体能力の延長。無敵な訳じゃねぇ。

 

「ガキ相手に、何を手こずってんだ!!お前は!!」

 

紫デブが白目を剥いた頃、爆破で作った煙幕を抜けてカマキリ野郎が迫ってきた。最初にぶちこんでやったダメージも多少は回復してるのか動きは速いままだ。ついでに馬鹿でかくなった、そいつの水掻きのはった掌も視界に入った。

眉間にしわを寄せ、俺にガン飛ばしてるカマキリ野郎に冷静さは感じねぇ。直ぐ側にあの馬鹿が来てるってのに、まるで気づいてる様子がない。

 

「切島ァ!!」

「おうさ!爆豪ォ!」

 

合図を出してやれば、身を隠してた切島がカマキリ野郎にタックルをかました。金属並みの硬度のある切島の高速タックル。モロに腹で受け止めたカマキリ野郎は苦悶の表情を浮かべる。何とかたたらを踏むだけで耐えたようだが━━━切島の馬鹿に両腕を捕らえられた。

 

「ぐっ!?なっ、いつの間に、離せ!!」

 

カマキリ野郎が腕を振ろうともがくが、振りほどく所かビクリともしない。体育祭の頃の雑魚腕力ならとっくに剥がされてるだろうが、今の切島なら時間を稼ぐ程度にはそれが出来るだろう。ついでに言えば、俺のハウザーインパクト一発くれぇ耐える、クソタフネスもだ。

 

「そのまま、しっかり抑えつけとけ!!切島ァ!!」

「おう!俺の事は気にせず、思いっきりぶちかませ爆豪!!」

「端からそうするつもりだ、死んでも離すな!!」

 

紫デブをカマキリ野郎目掛け爆撃で吹き飛ばし、爆破の反動を利用して空に飛ぶ。カマキリ野郎共に合わせ姿勢を維持しつつ、爆破で回転を加えながら加速。ぶちかます右の掌に汗を溜める。

 

「てっ、めぇ!仲間ごと!?やめっ━━━━」

「『榴弾砲・着弾』ッッッ!!」

 

回転を加えながら叩きつけるように放った、今の俺が出せる必殺の一撃。掌底から放たれた爆炎は渦を描きながら進む。地面を砕き、空気を焼き、爆風を撒き散らし━━━そこにいた紫デブとカマキリ野郎、切島も何もかも巻き込みながら。

 

立ち上った爆煙が散ると、床にボロボロになったヴィラン二人の姿が見えた。側には服の殆んどが焼け落ちた切島もいやがる。俺の視線に気づくと「よぉ!」と軽く返事しやがった。無事だろう事は分かってたが、ここまで無傷だと腹が立つ。

 

「しっかし、いきなりなんだったんだろうな?一体よ。さっきの警報となんか関係あんのか?警備の人達って訳じゃなさそうだもんな、この人達さ」

 

カマキリ野郎をそいつらの持っていたワイヤーで縛りあげていると、紫デブを任せていた切島のアホがぼやいてきた。

 

「いきなり個性使って襲ってくる警備なんざいるか、馬鹿が。この様子だと、セキュリティ辺りはヴィラン連中のコントロール下だな。さっきの警報も信用は出来ねぇ」

「ええっ!?マジか!?けどよ、タルタロスくれぇすげーセキュリティなんだろ!?ここはよ!あんのか、そんなことよ!」

「うるせぇ、ぶっ飛ばすぞ。凄かろうとなんだろうと、実際に俺らが襲われてんだろうが。・・・そもそも、セキュリティなんざ内側に穴がありゃ意味なんざねぇ。何処の誰だか知らねぇが、セキュリティが甘くなってるエキスポのどさくさに紛れて、余計な連中引き入れたんだろうよ」

「えぇ・・・・マジか。てか、よくそんなことポンポン思い付くな。マジか」

 

ぼやく馬鹿から目を離し、周囲の様子を改めて確認する。植物園のようなこの場所に、特別目につくような物は見当たらない。通路という通路への入り口がシャッターに覆われてるぐれぇだ。中央に位置するエレベーターも、今は動いてる様子は見えねぇが・・・こうなった以上、必ず追撃が来る筈だ。セキュリティロボか、こいつらと同じ連中か分からねぇが、何もねぇって事だけはないだろう。

 

「ちっ・・・・!」

 

いや、それより問題なのはあの馬鹿の事だ。

連絡がとれねぇが、間違いなく何かやってやがる筈だ。こういう時に大人しくしてる程に、分別弁える殊勝なやつだったら俺は苦労なんかしてねぇ。

 

「・・・・あのさ、悪い。俺が迷ったばっかりに。やっぱよ、緑谷のこと心配だよな?俺が余計な真似してなけりゃ、今頃皆と合流出来てたろうにさ・・・・」

「あ?はっ、一丁前に責任なんざ感じてんじゃねぇ。うざってぇ。てめぇを信じた俺が馬鹿だっただけだ。うだうだ言ってる暇あったら、そいつら端にまとめとけや」

「爆豪、それフォローしてるつもり?だとしたら、お前駄目だぞ。本当、駄目だぞ。そんなんだから、緑谷に恋愛対象にされないんだからな?」

「うるせぇ、爆殺されてぇのか」

 

念の為にスマホを確認したが、未だに電波は入ってこねぇ。最後に受け取った連絡は『遅刻確定、なぅ』というメッセとアホ面した猫のスタンプだけ。

 

「━━━━━爆豪!!なんか来たぞ!?」

 

馬鹿の声に視線を向ければ、開いたシャッターの先からセキュリティロボの群れが目につく。それと同時、エレベーターが起動する音が聞こえた。確認すれば下にさがってやがる。

 

「おいっ!切島ァ!さっきあの紫デブ共が来た時、エレベーターは最初上から降りてきたな!?」

「えっ!?あっ、えっと、確かそうだと思うぜ?最上階の表示があって、それが一回降りてきて、そんで上がってきたら二人が乗ってて・・・」

 

だとすれば、ヴィランは大きく分けて二ヶ所にたむろってる可能性が高い。一ヶ所は最上階、もう一つは今から表示される場所。この状況から考えれば、当たりは最上階だろう。もう一ヶ所は恐らくこのタワー内で最も厳重に抑えなければならない、多くの兵力が必要な場所。オールマイトを始め、多くのプロヒーローが集まっている筈のレセプション会場。こっちに回されたさっきの二人は、何かしら事を終え過剰戦力となった連中━━━だとすれば行き先は決まった。

 

「━━━━切島ァ!上に向かうぞ!!付いてこい!!」

「ええっ!?いきなり!?なんで!?てか、見えてる!?あのセキュリティロボ見える!?」

「見えとるわ!!掴まれ、ぶっ飛ぶぞ・・・・・!!」

 

慌てた様子で体にしがみついてきた馬鹿をそのままに、爆速ターボで一気にエレベーターを駆け上がり、天井近くに吊り下がっていた通路へ滑り込む。

背後を確認したがロボの付いてくる様子はない。通路に引っ込んだ所を見ると、別のルートから来るんだろうが。

 

「爆豪!取り敢えず説明から始めろ!どうするつもりだ!?」

 

通路を走り始めると、後ろを付いてくる切島が怒鳴り声をあげた。こいつは本当に察しが悪ぃ。

 

「最上階に殴り込みに行く。恐らく、ヴィラン連中があくせく何かしてやがるのはそこだ。それをぶっ潰す!!」

「はぁ!?待て待て!なんでそうなる!?この状況だと、人質とか、なんかそういうのあんじゃねぇの!?」

「あるだろうな、間違いなく。━━━だが、さっきのあいつらは、それを口にしなかった。実力行使で捕らえようとしやがった。だとすりゃ、俺達の素性が割れてねぇのか、知った上で餓鬼だと心底舐められてんのか・・・もしくは人質が俺達を縛れるもんじゃねぇ事を理解してるか、だ」

「はぁ?!人質って、えええ?言ってる意味が分からねぇんだけど・・・」

 

あくまで勘でしかねぇが、今回の件を考えた奴と末端で動いてる奴らは違う筈だ。目的は勿論、所属も思想も。

だからこそ、こんなチグハグな事しやがる。

 

シャッターを爆撃で吹き飛ばすと、通路の先にセキュリティロボが見えた。先程見た時より数は少ない。まだ集まりきってねぇんだろう。

なら進むのは今しかねぇ。

 

「はぐれんじゃねぇぞ」

「はぁーーーたくっ、お前らといると退屈しねぇぜ!後ろは任せとけ!!」

 

ガチンと拳を打ち合わせた切島を連れ、俺は上階へ向けて踏み出した。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「はぁ?植物プラントが突破された?」

 

他の部屋を確認し戻ってくると、コントロールルームに残した同僚達が難しい顔で不穏な報告をしてきた。

モニターに向かってる同僚に聞き返すと、そいつは静かに頷く。カチカチとマウスとキーボードを動かし、画面に監視カメラの映像が映る。

 

そこには白目を剥いた同僚二人の姿があった。

身動きがとれないよう、体はワイヤーで縛り上げられている。敵を捕らえる為に持たされた道具で自らが捕らわれてる姿は、何とも言えない間抜けな絵面だった。

 

「おいおい、なんだこの様は・・・・スキャミングミスったな、お前」

「・・・こちとら初めて扱うもんだぞ。キーがあるとは言え、タルタロスクラスのセキュリティ弄ってんだ。褒められる事はあっても、文句言われる筋合いはないね」

「ほぅ?ボスに同じ事言ってみろよ」

「それは言うなよ・・・くそ」

 

カタカタと、同僚が何かを打ち込むとモニターに映った画面が切り替わった。画面にはセキュリティロボを粉砕する二人の男が映っている。どちらも見覚えがない。事前の資料にいなかった以上、プロヒーローではない筈だ。

 

「誰なんだ、こいつらはよ」

「今出た。ヒーローの卵だ。日本のハイスクールに通う子供だ。ただ一人は、あの雄英体育祭で優勝してるみたいだな」

「はぁ、エリートって訳か。けっ、気に入らねぇな」

 

保護者に守って貰ってヒーローごっこって訳か。

いいご身分だこって、羨ましい限りだ。

選べなかった俺達と違って、本当に。

 

「ボスに連絡は?」

「とっくにしてる。何人か対応に向かった」

「レセプション会場も碌に人が残ってねぇだろ。大丈夫なのかよ。あのオールマイトまでいるだろうが」

「レセプション会場には他から回した。・・・・セキュリティシステムは掌握している。セキュリティロボが動かせる以上、ある程度はカバー出来るからな。何より、作戦の殆んどは終えてる。あとは時間の問題だ」

 

そう言われて時間を確認すれば、確かに予定の半分を過ぎている。そろそろ撤収の準備を始める必要があるだろう。

 

「あの馬鹿共はどうすんだ?迎えに行くなら・・・」

「ボスから連絡が来ている。あいつらはここに捨てていくそうだ。助けてやってる余裕がないっ、てな」

「━━そうかい。まっ、仕方ねぇか。てめぇの仕事も碌にこなせねぇような奴じゃぁな・・・」

 

淡々と語る同僚の言葉に、ボスの面影を見た。

知らずの内に握った拳が僅かに震える。

 

あの時のボスの目は忘れられねぇ。

背中に氷を突っ込まれたみてぇに寒気がし、体の芯から震えた。本気で殺されると思った。

首にはまだ、あの嫌な感触が残ってやがる。

 

それまでそれなりに経験を積んだ。

スラムじゃ負けた事は無かったし、ボスに拾われてからも多くの仕事をこなしてきた。個性は強くはねぇが、戦闘になっちまえばどんな奴だろうと勝てると、自信があった。なのに━━━━。

 

「ちっ、クソ・・・・見回りに戻る」

「ああ、しっかりな」

 

同僚に一言掛け廊下へと向かおうとしたその時。

不意にそれが目についた。

沢山の映像が映されたその中、一番端にある一つの画面に。

 

「おい、端のカメラ。何処のやつだ?」

「ん?端ってどれだ。番号でいえ、画面の端に映ってるだろ」

「小さくて分からねぇんだよ。えーっと、あーF180ーES0011Eか?」

 

カタカタと弾くような音が鳴った後、それが大きくモニターに映った。風力発電機と思われる複数のプロペラ、カラカラとそれが回る後ろに複数の人影が見えた。

明らかに逃げている様子のない、意思を持って動いている男女達が。

 

その内の一人が何かを見つけたように指を指した。

 

瞬間、ぞくりとする。

ボスに睨まれた時のように。

 

「おい!!ここ何階だ!!風力発電機っていやぁ、相当上だぞ!!セキュリティロボはどうした!?ああ!?」

「セキュリティロボは、殆んど下に回して、無いわけでもない、けど、あっ、かっ、階は、180階だ!」

「シャッター下ろせ!!止めろ!!乗り込んでくるぞ!!」

「おっ、落ち着けよ!乗り込んでくるって、お前、見るからに女子供じゃ・・・・迷ったのかも知れないだ・・・」

 

呑気な事をほざくそいつの胸ぐらを掴みあげる。

一体俺はどんな顔をしてるのか、俺の面を見たそいつが息を飲んだ。

 

「風力発電機のある階は、一般人は室入禁止になってた筈だ。ドレス着た女が出歩くか?それもこの非常時に!!ええ、おい!!」

「それっ、それは・・・」

「ましてあいつらは、俺達の監視の目を逃れてここにきてやがる!!それが、普通のガキ共の訳ねぇだろうが!!」

 

俺の言葉にそいつが目を見開いた。

手を離せばすぐにキーボードを叩き始める。

 

「取り敢えず待機させてるセキュリティロボを回す!!ボスにも━━━身元照会が済み次第・・・お、おい!ソキル!?」

 

慌てて対応を始めたそいつを背に、俺はそのまま廊下へ走り出した。勘に従って前へと。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。