私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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ちょっとだけ、早めに更新、自画自賛。
YDKに、またなりたいなぁ(字余り)。

いや、無理だけども。


やりたい事を見つけたら取り敢えずやってみる主義なので、取り敢えずやってみるけど、大体思ってたんとちゃうってなるよね。えっ、例えば?えぇ、うん?うーん、ワゴン売りしてるゲームとか?の巻き

「━━━━━っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━━━んっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━━さんっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ニコさんっ!!」

 

 

甲高い声にハッとした。

頭に響く鈍い痛みを堪えながらぼやけた視線を動かせば、涙を浮かべたメリッサの顔が映った。メリッサの頬は赤くなってて、ドレスにも汚れが見えた。周囲を軽く見渡せばメリッサパパとあのテロリストの姿が見えなくて━━━━ぼんやりとする頭でも何が起きたのか、嫌でも分かった。

 

「━━━っそ・・・・!あのっ、クソ野郎・・・!」

 

やられた、ブラフかまされた。

冷静に考えれば、そんな事あり得ないのに。

だって、そんな暇与えたつもりはないのだから。

 

「ニコさん!大丈夫っ、私が分かる!?」

 

私に気がついたメリッサが顔を覗いてきた。

心配そうに見つめる目に胸が痛くなる。任せておけなんて言っておいてこの様。情けなくて仕方ない。

けれど、後悔は後だ。やらなきゃいけない事がある。

 

「私はっ、大丈夫。それより、メリッサパパは?」

 

そう尋ねるとメリッサが悲しげに顔を歪めた。

 

「パパは、あのヴィランに・・・ウォルフラムって呼ばれた人に連れて行かれて・・・・もうここには」

 

絞り出すように答えてくれたメリッサの瞳から大粒の涙が流れる。それは降りだした雨のように止めどなく、私の顔を濡らしていく。涙は酷く冷たかった。

 

「・・・ごめん、なさい。ごめんなさい、パパのせいで、こんな、ニコさんも、皆も、あんなに頑張ってくれたのに、傷つけてっ、パパの、せいで・・・!」

「・・・メリッサ」

 

メリッサがどんな気持ちなのか私には分からない。大好きな父親が罪を犯して、それが沢山の人を傷つけて・・・想像する事は出来るけど、きっと本当の意味でメリッサが涙を流す理由を理解は出来ない。

だから辿々しく溢される言葉を聞きながら、私は泣きじゃくるメリッサの腫れてない方の頬に手を伸ばして━━━━その柔らかそうな頬をびよんと引っ張ってあげた。

 

涙で滲んでいた瞳が私の目を見る。

 

「メリッサ、聞いて。時間はどれくらい経ってるの?」

「じっ、時間は、そんなに・・・・パパ達が部屋を出てから、5分も、経ってないと、思うけっ、けど」

「早く起こしてくれてありがとうっ・・・!」

 

気合いで体を起こせば何か嫌な痛みが全身に響いたけど、ヘタレてる時間はないのでそのまま根性で立ち上がる。ちょっと体がふらつくけど、一回気付けで顔をひっぱたけば痛みと共に意識がはっきりして、ふらついていた体が何とか止まった。足にも力が入る。

 

「最後まで守れなくてごめんなんだけど、メリッサはこれからセキュリティのコントロールを取り返しに行って。恐らくガラ空きだから。あいつら下手に被害者は増やすつもりはないだろうから、殺傷性のある罠もないと思うけど警戒はしてね。セキュリティを直すのに時間掛かりそうなら、先にアナウンスでもなんでも良いから、ガチムチに制御ルーム押さえた事を伝えて」

「えっ、ニコ、さん・・・?」

「私はこのまま屋上に向かう。メリッサパパとあのテロリストはヘリでI・アイランドを出ると━━」

 

不意にメリッサの手が私の腕を掴んだ。

動きかけていた足が止まる。

視線をそこへと向ければ必死な顔を

 

「だ、駄目っ!ニコさん、あなたまだ体が・・・!」

「だいじょーぶ、こう見えて頑丈だから。鉄パイプで頭ひっぱたかれたりとか、中坊の頃にもあったし慣れたもんよ。それに受け身はとったし」

「受け身って・・・・嘘つかないで!そんな風には見えなかった!あんなに強く打ち付けて、大丈夫な訳ないでしょ!もう良いからっ、仕方ないの、これはパパが━━━━パパがいけないの。だから、もう」

 

「メリッサ」

 

メリッサの言葉を遮るように声を掛ければ、少しずつ下がっていた視線が私を見る。赤く充血した目が、真っ直ぐに私を。

 

「メリッサみたいにヒーローに憧れてる人に言う事じゃ無いんだけどさ。・・・・私は、メリッサと違ってヒーローに憧れてないし、なりたいと思わなかった」

「ヒーローに・・・なりたく、ない・・・?でも」

「個性を使う資格が欲しいだけ」

 

私の腕を捕まえる手に、私は手を重ねた。

私を守ろうとしてくれるその手は温かった。

母様やかっちゃんの手みたいに。

 

「私は私の守りたい物の為に戦いたい。だから、大手をふって個性を使える権利が欲しかったの。もし他に方法があったら、私はここにいたのかは怪しいと思う」

 

「最初はね、守りたいものなんて少しだけだった。母様とか、かっちゃんとか・・・それだけで良かった。でもね、少しずつ変わっていった。最初はかっちゃんのパパとママ。それからよく話す同級生とか、よく行く美容院のお姉さんとか・・・色んな場所に行って、色んな人に会って、色んな事をして、本当に、少しずつ、少しだけ増えてさ━━━━」

 

「━━━━メリッサも、もうその一人なの」

 

重ねたメリッサの手を握る。

少しでも気持ちが伝わるように。

きっと言葉だけじゃ分からないから。

 

「行かせて、メリッサ。メリッサの守りたいもの、私に守らせて」

 

私の言葉に、メリッサの手が僅かに緩んだ。

そしてせっかく止まっていたモノが、瞳から溢れて頬を伝って床に落ちていく。

 

「私はっ、あなたに、そんなにして貰えるような、そんなこと、まだ何も・・・・」

「そんな寂しいこと言わんといてー。まだ出会ったばかりだけど、私はメリッサの事は友達だと思ってるし、これからも友達でいたいと思ってるし。━━━だから、また今度会う時は、笑って会いたいじゃん?じゃぁ、やるっきゃないでしょ!って・・・でも、本当ごめんね?格好つけて全部任せとけーとか言えなくてさ」

「そんなっ、そんなことない!・・・・ねぇ、ニコさん。私っ、私も、頑張るから、私もきっと、だから、だから、お願い━━━」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━━パパを、助けて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は笑顔を返した。

今出来る精一杯の気持ちを込めて。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

ケースを肩に、部下に博士を連れさせ屋上へと上がると、予定通りヘリが喧しくプロペラを回していた。ヘリを警護をしている部下の二人は、俺の姿を確認するやいなや背筋を伸ばし敬礼して見せる。

 

「お待ちしておりました!」

「補給は既に済んでおります!」

 

手を上げて返事を返せば、機敏な動きで直立不動の姿へと変わる。教育が行き届いているようで何よりだ。

 

「船と連絡はついたのか」

「はっ!現在ポイントαにて待機中との事です!」

「遅刻魔の連中が定刻通り来たか。なんだ、明日は雪でも降るのか?」

「はははっ、ご冗談を。北半球は真夏ですよ。もしそうなったら、天気予報師がこぞって首を捻るでしょうな」

「よっぽど、コイツがお気に召したらしいな」

 

ケースをちらつかせれば、部下の目はそれに釘付けになった。予めブツについてこいつには話してある。目を奪われるなという方が酷だろう。

何せこれは個性学の権威デヴィット・シールドが造り上げた発明品。それもI・アイランド上層部が発表を見合わせる程の代物だ。

 

「個性を増幅させる装置・・・・これが」

「興味があるなら、付けてみるか?」

「い、いえ!そのようなことは!」

 

ケースを眺めていた部下は俺の言葉に背を伸ばした。

少し固い気もしねぇでもないが、これで頷くような馬鹿なら元よりいらねぇ。弁えているようで何よりだ。

 

足音を聞き背後に視線を向ければ、博士に肩を貸した部下が近くまで来ていた。博士の顔は俯いたまま、表情は伺い知れないが何かを企んでいる様子は見えない。出発前に一度脅しを掛けておくつもりだったが、この様子なら必要もあるまい。これから仲良くお仕事をするお友達だ。友好的に対応出来るなら、それに越したことはない。

 

「博士を乗せて差し上げろ。お客様だ、丁重にな」

 

敬礼する部下に博士を任せて、俺はヘリポートの端へ行く。視界に広がったのは色とりどりの光の海。人工島に相応しい人工的で無機質な光源達は、ここの騒ぎなどないように煌々と街を照らしていた。

 

「良い景色だ」

 

餓鬼の頃から、上ばかり眺めていた。

街を埋め尽くすビルは空に届きそうな程高く、そしてビルに入っていく連中は誰も彼もが綺麗な格好をしていた。生まれも育ちも、何処の誰が作った餓鬼かも知れない俺とは、何もかもが違う世界にいるのだと、俺はいつも奴等を眺めていた。

 

それが、どうだ。

一時的にとはいえ、今や俺が見下ろす側だ。

この景色は今、俺の足元にある。

 

直に俺の手元には数え切れない大金が転がり込んでくる。目の前の景色が当たり前に成る程の莫大な富だ。蔑むような目で見てきたあの連中は、今度は俺を見上げることになる。この俺を。スラムを彷徨い歩いていた、小汚ない餓鬼でしかなかった、溝鼠と馬鹿にされた、この俺を。

 

手を伸ばした。光の映るその景色に。

開いた掌を握り締めれば、何かを掴んだような気になった。手に入らないと思っていた、あの日見上げた時に見ていたソレを。

 

「もう直ぐだ、もう直ぐ」

 

俺のモノになる、全て。

この景色も。

この力も。

何もかも。

 

あんたも越えて、俺が━━━━。

 

 

 

 

不意にヘリポートがライトアップされた。

光源の操作は手動を除き制御ルームでしか操作は出来ない。屋上にそれらしき人影がない以上、導き出されるそれはセキュリティシステムが復旧したことをさす。

部下にもそれが分かったのか酷く慌てた様子でこちらに向かって大口を開いた。

 

「ボス!セキュリティがっ・・・・!」

「見れば分かる、セキュリティシステムが完全復旧する前に島を出るぞ」

「しかしっ、他の連中がっ」

「聞こえなかったか?セキュリティが復旧する前に、島を出る。変更はない。今すぐポイントαに受け入れ要請しておけ。俺達の到着と同時、直ぐ出られるように用意しとけとな」

 

念を押して伝えれば、部下は体を一度震わせた後ヘリに乗り込み出発の準備を始めた。仲間おもいは大変結構だ。時と場合を考えられるようなら、だが。

 

連絡をとり準備が済んだ所でヘリに乗り込むと、それとほぼ同時に大きな音と共に下階から繋がっている通路のドアが開いた。

視線をそこへと向ければ、綺麗な顔を怒りで歪ませた女の姿が見える。女は俺を確認するやいなや、真っ直ぐに駆け出してきた。

 

「ごらぁぁぁぁぁぁぁ!!何処行くつもりだ!!超絶スーパー天然ウルトラアルティメット天才美少女ニコちゃんがぁ!折角おじゃましに来てやってんだから、ほうじ茶と和菓子持って、お土産に洋菓子用意して出迎えろやぁぁぁぁぁ!!季節感無視してコートとか着ちゃってるイカれた服センスした陰険赤髪ミリオタ鉄仮面!!なにそれ流行ってんの!?場末のチンピラのがもちょっと格好いいわ!!ばぁぁぁか!!」

 

殺すつもりこそなかったが、それでも継続戦闘出来ない程度には痛めつけたつもりだった。まさかここまで元気に追いかけて来るとはな。拘束しておかなかったのは少し舐めすぎたか。

 

しかし、頑丈さに感嘆すべきか、呆れるべきか。

まったく、病気だな。

こいつらは。

 

「出せ」

「はっ!上昇開始します!」

 

ヘリポートを離れるヘリを見て、女は加速する。

俺の時に見せた個性による不自然な空中での加速。

弾かれるように速く高く空に飛び上がり、伸ばされた手が━━━━ヘリの足へと届いた。

 

けれど、それまでだ。

懐から抜いたもう一つの黒塗りのそれを、諦めの悪い女の頭に向けてやった。女は僅かに目を開き、眉間にしわを寄せる。

 

「確かにお前はヒーローだ。馬鹿だけどな」

 

トリガーに指を掛けた所で、それが目についた。

追い詰められた筈の女の、僅かにつり上がった頬が。

 

「駄目でしょ、ヴィランが獲物逃がしてちゃ」

 

その言葉に目の前の女の個性を思い出した。

念動力のような力を有する個性。

 

ヘリは搭乗口がどちらも開け放ったまま。

その個性を使えば━━━━━。

 

そう思って振り向いた先。

デヴィット・シールドの姿はあった。

発明品の入ったケースも変わらず。

 

「ボス!!」

 

叫び声が耳に響いた直後、痛みと共に視界がぶれた。

視界の端にヘリの中へ乗り込んだ女の姿が映る。

個性で止めようとしたが、コントロールが上手くいかず容易くかわされる。それ所か、俺の個性が部下の二人を凪ぎ払ってしまった。

 

「ぷっぷー、自分でやらかしてりゃ世話ないね」

 

挑発するような言葉と共に、シールドの体が女に担がれる。止めようと銃を構えるが、引き金を引く前に蹴り飛ばされた。

 

「卑怯でごめんね、でもさ私はっ、ヒーロー様じゃないからっ!!」

 

女の拳が顔面を貫いた。

仮面越しにも関わらず芯に響く腰の入った一撃。

視界が更にぶれ、意識が更に遠く━━━。

 

「ボス!!掴まってて下さい!!」

 

部下の声と同時にヘリが傾いた。

ケースは何とか押さえたが、女はシールドを担いだまま空へと投げ出される。

 

「━━━━━っが!!戻れっ!!シールドの身柄を押さえる!!女はぶち殺して構わん!!」

「はっ、はい!!直ぐに━━━━━ひっ、ぼ、ボス!!」

 

操縦席に座る部下が悲鳴をあげた。

コックピットへ乗り込み部下の視線の先を見れば、女とシールドを抱えた大男の姿を見つけた。金色の髪をした筋骨隆々の、笑顔を絶やさない大男。

 

「ちっ!もうお出ましか、オールマイト・・・!!」

 

大男は二人をヘリポートへ置くと直ぐ様飛び上がったきた。何処へでもない、俺達の方へ。

 

「ボス!!」

 

情けない声をあげる部下を無視し、ケースを無理やり抉じ開ける。出来れば未使用のまま売り渡したかったが仕方ない。有効に使わせて貰う事とする。

 

 

「テキサス━━━━」

 

 

拳を振りかぶる大男を見ながら━━━━

 

 

 

「━━━━━スマーーーッシュ!!」

 

 

 

━━━━俺は取り出したそれを頭へと取り付けた。


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