私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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後悔なんて、しない。(本当はしてる)


スライム缶で遊べる年頃っていつなの?ちいちゃい子にあげると食べそうになるし、それなりに知能がついた頃渡しても汚ってなりますやん。いつ上げたらいい、この無駄に余ったスライム缶の巻き

個性を人に向けて使った事を上手く処理してくれる代わりに、ドロドロのおっさんを箱詰めするという新手の誘拐の片棒を担ぐ事になった私は粛々とその任と向き合っていた。

 

ペットボトルを片手にドロドロのおっさんを下敷きで掬い見事なまでにしまっちゃう、しまっちゃう、しまっちゃうオジサンした。

 

よくよく考えればヒーローのお手伝いなんてまさに善良市民の仕事。やらない方がおかしい。善良市民の模範とも言える高潔な魂を持つ私は文句も言わずにやっちゃうのだ。

 

ああ、めんどくせぇ。帰りてぇ。

 

「しかし君、その歳で随分と個性を鍛えているみたいだね。ヒーロー志望かな?」

 

いきなりガチムチが話し掛けてきた。

私、困惑。止めて、ガチムチは好きになれないの。私どっちかって言えば細マッチョ派だから。

 

とかなんとか言って機嫌を損ねるのもなんで、取り敢えず話を合わせて話しておく。

 

「そうですね」

「そうか。君みたいな有望な若者がいてくれるなら、私も安心して後継を探せ━━━━んん!!いや、なんでもないぞ!HAHAHA!」

「そうですね」

「・・・しかしだな、あまり慢心してはいけないぞ。今回は上手くあしらえたが、次が上手くいくとも限らないからね。」

「そうですね」

「・・・それに個性を人に使うのも・・・」

「そうですね」

「うん!君はよく人に、人の話を聞かない子だと言われないかな?」

「そうですね」

「そうだろうね!おじさんジェネレーションギャップと言うものを犇々と感じるよ!」

 

話を合わせてやったのにガチムチは何か気に入らないのか、なんかほざいていた。聞いてなかったので分からなかったが、きっと可愛い男を紹介して欲しいとかそんなだろう。

これだからホモは。

 

それから自称ヒーローであるらしいオールマイトとか言うガチムチのおっさんと、ドロドロのおっさんをペットボトルにないないしていった。

全部を詰め終わる頃にはすっかり夕刻。暴れん坊なお殿様の再放送が終わる時間になってしまった。

まぁ、ガチムチと出会った時間から既に暴れん坊の終了のタイムリミットはあんまり無かったんだけど。

 

「さて、これから私はこれを警察に届けなくてはならないから、これでおいとまするよ」

「あ、そっすか」

「・・・・」

「?」

 

ドロドロが詰まったペットボトルをポッケに無理矢理しまい跳び去るのかと思えば、ガチムチのおっさんは何故か私の顔をガン見してきた。なんぞ。

母様の尊き遺伝子を引き継いでいる私が至極美人なのは知っているが、初めて会ったガチムチに見つめられて許す程寛大ではない。━━━なので、がんつけてやった。

 

「そんなに怖い顔しないでくれないかな。オジサン泣いちゃいそうだ」

「じゃぁ、なんすか。私、花も恥じらう女子中学生なんで、そんなに見つめられると110したくなるんですよ」

「怖い事をさらっと言う子だな!いやね、大した事では無いのだけど、サイン、本当にいらないのかい?」

 

サイン?

 

「生憎、借金の借用書は持ってませんけど」

「何にサインさせるつもりだい?まさか保証人じゃないよね?」

「それ以外に何処にサインさせると?」

「本当にさらっと怖い事言う子だね!オジサン君の将来が心配だよ!分かった!もう何も言うまいだね!それじゃ!」

 

そう捨て台詞を吐いたガチムチは勢いをつける為か膝を大きく曲げた。しゃがみこむような体勢になったその時、ガチムチの尻ポケットから財布が落ちそうになってるのが見えた。

気を利かせて教えてやろうと肩を掴んだその瞬間、私の視界は一面の青が広がっていた。

 

何が起きたのか、理解が及ばない。

けれど体はしっかり命の危機に対応しており、母様の引き寄せる力が私の手とガチムチの服をしっかりと繋げていた。

 

視界の中に空高くから見下ろした町並みが見えた時、全てを理解した私は腹の底から声をあげた。

 

「ガチムチ!!」

「━━━!?君、そんな所で何をしているんだ!?」

「あんたがいきなり飛ぶからだろ!!てか不時着しろ!!」

「いきなりそんな事言われて━━━oh、shit!!こんな時に!!」

 

突然煙をあげるガチムチ。

ガチムチの生態系には詳しくないけれど、それが普通でない事はよく分かる。このガチムチ、なんかヤバイ奴だ。手を離しても生きられそうなら、直ぐにでもそうしたい。

 

 

結局、そんな儚い私の願いは叶う事なく、煙を発するガチムチと適当なビルの屋上に不時着する事になった。

着地後直ぐに逃走をはかろうとしたが、ガチムチスチームで出口が分からず逃走を断念。

ガチムチスチームが落ち着くのを待つ事に。

 

「━━━━ん?」

 

すっかりガチムチスチームが落ち着いた後、出口を探して辺りを見渡していると、ヒョロガリのおっさんが視界に入った。ガチムチのおっさんは見当たらない。

 

「━━━しまったな。この姿を見られてしまうとは」

 

意味深な発言をするヒョロガリを放って出口を探す。

あ、このドアは開かない感じだ。

 

「出来れば君には━━━」

「あそこか?あーそーこーはー・・・開かない」

「━━━だは、個性でね・・・・ほら良くいるだろう?プールサイドで━━━」

「ここは?お、開いた開いた」

「━━君は人の話を本当に聞かないな!」

 

何故かヒョロガリが激おこプンプン丸と化した。

 

「少しは興味を持たないだろうか?自分で言うのもなんだけど、分厚い筋肉を持った男が骨と皮だけのような体になったんだよ?おかしくはないかな?」

「そうですね」

「それは君が聞いてない時の常套句じゃないか!どれだけ興味ないんだ君は」

 

そうは言っても興味がないんだもの。

ガチムチがヒョロガリにクラスチェンジしようが、ヒョロガリがガチムチにクラスチェンジしようが、私の人生には一ミクロン足りとも関わりがないし、どうでも良いんだもん。個性でしょ?OKOK。把握。

 

「じゃ、そういう事で」

「よーし分かった!よく分かった!オジサンは君に、じっくり教えなきゃいけないと言う事が!君には理解した上で口を噤んで貰わなきゃいけないという事がね!」

「うぇ」

 

それから暫くの間、ヒョロガリさんの半生の物語を聞くことになった。なんでもヒョロガリさんは正体不明で個性不明なオールマイトというナンバーワンヒーローらしく、なんか凄い人らしい。テレビやら広告やら関連商品やら出しまくってる、金持ちの有名人なのだとか。私は知らないけど。

 

それで戦い続けてきたヒョロガリさんのボデェは怪我で限界。自分の立場を引き継ぐ後継を探しているらしい。

 

全部の話を聞いた後、私は思った。

これは聞いたらあかんタイプの話やんと。

 

「これは聞いたらあかんタイプの話やん?」

 

思わず考えていた事を話すと、ヒョロガリさんは「興味の欠片も示さないで、よくそんな事が言えたね。すぐ忘れる癖に」と苦笑いしてきた。

まぁ、実際、明日には忘れてそうだしね。誰かに話す前に忘却待った無しですわ。

 

「━━━あ、そう言えば、さっき気づいたんだけどさ」

「ん?どうしたのかな?」

「ヒョロガリさん━━━おー、おーるまんって」

「オールマイトだよ。よくこの数分で忘れたね。オジサン、君が信じられないよ」

「オールマイトさんって、十年以上前、大災害の時に倒壊したビルやらなんやらから救助活動してませんでした?1,000人くらい助けたやつです」

「十年以上前・・・・ああ、覚えているよ。ネットに散々流されてたからね」

 

おお、やっぱり。なんか見覚えがあると思ってたんだよ。チクチクチクチク、私のトラウマスイッチが刺激される筈だ。

 

「私あれを見てたんですけど」

「HAHAHA、なんだか気恥ずかしいな。あの頃は━━」

「私あれを見て、心底ヒーローになりたくないなって、思いました」

「・・・・oh」

 

なんか驚いとる。

いや、まぁ、普通は尊敬とかする所かもだし、仕方ないけど。私はそうは思わないってだけだしね。

 

「━━私は倒壊したビルに突っ込む貴方の姿に恐怖しました。同じ人じゃない、化け物みたいに思いました。それが人間のフリをするのが、たまらなく怖かった。不気味だった。笑顔もきもかった」

「・・・そ、そうか。」

「そしてそれが人に誉められるのが、もっと分からなかった。自分の命を平気で危険に晒しているのに、それが正しいみたいに。皆が皆して誉める。誰も危ないだろって、そう怒らない。どうしてって、ずっと思ってました。力があるからとか、無いからとか、そんな事じゃなくて━━━」

 

ヒョロガリが少し真面目な顔してきた。

いや、別に真剣に悩みを話してるんじゃなくて、聞いてみたかったからそうしてるだけなんすよ?やめて、そんなマジな目で見るの。

 

「━━━えっと、まぁ、今となってはどうでも良い事なんですけど」

「え?どうでも良い事になっちゃったのかい?!これから核心に入りそうな雰囲気だったのに!?」

「いや、まぁ、ぶっちゃけ。それよりも聞きたいんですけど、ヒーローって━━━」

「━━━━ヒーローって?」

 

 

 

 

 

 

「年収いくらなんですか?」

「そういう雰囲気では無かった事だけはたしかだね」

 

 

その後、めっちゃ怒られた。

解せぬ。

 

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