私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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ヤクザ編、プロローグ始めました( ;∀;)
ちょち短くてすまんな。


十一期:仁義なきアウトレンジビヨンド:こいつら皆、遠距離攻撃しかしねぇな編
『声の届かぬ、その場所で』のプロローグな閑話の巻き


もう随分と前、いつだったか分からないくらい前。

 

『━━━━』

 

私はその声を毎日聞いていた。

 

『━━━━』

 

それは優しくて、暖かくて。

 

『━━━━』

 

大好きな、声で━━━━でも。

 

 

 

『呪われているのよ!この子は!』

 

 

 

もう二度と、聞くことはないのだと。

私は知っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━━っ!」

 

腕に走った痛みに目が覚めた。

そこはいつもの私のお部屋で、もう誰もいなかった。

腕に巻き付いた沢山の包帯は新しくなっていて、今日はもうそれが終わった事を知った。

 

ズキズキするそこを擦ると、少しだけ痛くなくなる気がした。痛いのは嫌い。苦しくて辛いから。

 

ベッドから起き上がると、たまにお部屋にくるおじさんが置いていった玩具の箱が目についた。お部屋の隅に置かれたそれは、音もたてずにそこにじっとしてる。

おじさんは皆が好きな物だっていうけれど、私はそれを知らない。遊ばなくちゃいけないのは分かるけど、皆が見てるっていうテレビも、あの玩具が何をする物なのかも、私はそれを知らないから。

 

しーんとしたお部屋の中で、私は喉が乾いてベッドを降りた。玩具と同じようにお部屋の端っこ置かれた冷蔵庫の所へいってその扉を開ける。ごちゃごちゃになってる冷蔵庫の中を少し探すと、探してた赤いリンゴの絵が描いてある紙パックのジュースが見つかった。他にはないから、これが最後のやつだ。

 

ストローを差して吸い出すと、冷たくて甘いものが口の中いっぱいになる。甘いものは好き。嬉しくなるから。

最後のやつだから、全部は飲まないで半分くらい飲んだら冷蔵庫にしまう。これで次も飲める。

 

でも次に飲んじゃったらなくなっちゃう。探したけど、ほんとうにあれが最後だ。

それなら、その次も少し残そうかな?でも、あんまり残しておいても、臭くなっちゃうからダメだ。お腹が痛くなる。

 

おじさんにお願いしたら、もしかしたら持ってきてくれるかもしれない。だけど、おじさんはいつも怒ってて、いつも睨んできて怖いからあんまり話したくない。

 

私は冷蔵庫がちゃんと閉まったのか見て、それから近くの本棚から二つの本を取ってベッドに戻った。本を読むのに暗いのはダメだから、ベッドの近くある電気のボタンを押す。小さな灯りがついて、二つの本が光に照らされた。

 

もう何回も読んだ本だから少し汚れてる。

表紙をめくれば絵と文字が目に入った。

 

『エリはもうご本が読めるのか』

 

本を読んでると、ふと何かを思い出した。

何となく頭に触ると、なんだか不思議な気持ちになる。

誰もいないのに、そばに誰かがいる気がした。

 

「読めるよ。エリは、もうひとりで、ちゃんと」

 

そういっても何も返ってこなかった。お部屋はいつもと同じで静かなままで、暗がりの先には何もない。

けれど、なんでか少しだけ胸の所が暖かくて、私は読む事にした。

 

「これはね、アヒルって読むの。アヒルはね、鳥なの。お空を飛ぶんだけど、お池をすいすい泳げる鳥なの」

 

本に描いてある絵を指差す。

 

「それでね、こっちのね、この子はね、本当はアヒルの子じゃないの。私は最後まで読んだから知ってるんだ。卵がね、コロコロ転がって、それでお母さんの所から、別のお母さんの所にきちゃってね。そのまま温められて生まれたの。だから、皆がね、この子はアヒルの子じゃないのーっていうんだけど、それは本当なんだよ?」

 

ページをめくると、アヒルが皆から追い出されてる絵が描いてあった。

 

「これからね、この子はね、探しにいくの。本当のお母さんのこと。色んな所に行って、色んな人に聞いて。それで沢山探してるうちに、いつの間にか真っ白な白鳥になってて、一番最後はお母さんと会うの━━━あっ、リンゴのジュース。私も探しに行こうかなぁ。この子も出来たんだから、私も━━━」

 

何度も読んだから知ってる。

この子は今は寂しくても、お母さんに会える。

沢山探していれば、いつかは。

 

 

 

 

 

そうだ、私とは違って。

 

 

 

 

 

そう思ったら暖かくなってた所が、急に冷たくなった。側に感じてた何もなくなって、ページをめくる気分じゃなくなった私はそのまま本を閉じて近くの洋服タンスの上においた。

 

電気を消してベッドに戻ると、また腕がズキズキしてきた。シーツにくるまって腕を擦るけど、腕はどんどん痛くなって涙が出てきた。泣き虫だと怒られるから止めようとしたけど、どうしても出て来て、止まらなくて。私のベッドはどんどん冷たくなってく。

 

痛いのは仕方ないことなのに、泣いちゃダメなのに。

 

 

 

『これはお前の為でもあるんだ』

 

 

 

腕が痛い。

 

 

 

『お前の個性は危険過ぎる。呪われてるんだよ』

 

 

 

 

痛い。

 

 

 

 

『だから俺が管理してやらないと駄目なんだ』

 

 

 

 

 

痛い。

 

 

 

 

『お前みたいな、化け物は』

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・いたいっ、いたいよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━━まだ眠ってると思ったが、目が覚めてるな。エリ、こい。続きだ」


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