私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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弔きゅんが、やばい。勝てる気がしない。


モテる女ってのは、何も言わなくても男が寄ってきてしまうものなのだよ!そう、美少女の中の超絶美少女の私みたいな女にはね!・・・こっちみて。ほら、ねぇねぇ、こっち。美人はこっち。こっち、見ろごらぁ!の巻き

「やぁ!おはよう!良い朝だね、緑谷さん!一緒に学校まで行こう!」

 

お茶子にナニワチョップで叩き起こされて少し。

ジャムとバターをたっぷり塗った食パン咥えて寮の玄関を出ると、黒豆パイセンが高らかに挨拶してきた。隣のお茶子が説明して欲しそうな顔でこっちを見てくるけど、いや知らんし。私だって聞きたいわ。

 

取り敢えず昨日の事もあって好きくないので軽く会釈してかわそうとしたけど、ささっと回り込まれた。何?魔王からは逃げられない系なの?ファン?サインならイベントの時にしてよね。今の所イベントないけど。

 

「仕方ないにゃぁー、はいシャツ捲って」

「シャツ?これで良いかな?」

 

やっぱり私のあまりの神々しい奇跡的な美しさに見惚れてしまった一人のようで、サインが欲しさからかYシャツが躊躇いもなく捲られ柄物のTシャツが目に映る。隣で可愛らしい悲鳴をあげたお茶子をそのままに、鞄から取り出しサインペンでチャチャっとサインを書き込んであげた。ヒーロー科へいく事が決まってからずっと温めてきた、双虎ちゃんのにゃんこサイン。名前の隣に描いた猫の足跡がポイントである。

 

「名前入れます?」

「・・・あー、そういう事か!成る程!じゃぁ、折角だからお願いするよ!」

 

リクエスト通りに工場長へと書き込めば、それを見た黒豆パイセンは首を捻った。何捻っとんのじゃい。ゆーは腹パン工場の工場長じゃろがい。

 

「名前は多分覚えてないだろうから、昨日言ってた黒豆パイセンって書くのかと思ったんだけど・・・俺って工場長っぽいかな?」

「えっ?工場長じゃないんですか?昨日は生産ライン一人で担ってたじゃないですか」

「生産してたかなぁ・・・?あぁ、寒いギャグは凄い勢いで生産してたね!そういうことか!ハッハッハッハッ!自分で言っててなんだけど地味に傷つくね!これ!誰か上手いジョーダン教えてくれないかなぁ!ハッハッハッハッ!」

「え?はぁ、まぁ、それでも良いですけど」

 

それじゃ、と別れたつもりだったんだけど、歩き出すと黒豆パイセンも隣についてきた。またお茶子が説明して欲しそうな顔してるけど、だから私も知らないからね?本当だよ?なに疑ってん?ねぇ、こら。

 

「いやー良い朝だね!本当良い朝だ!コケコッコーって感じの朝だよね?」

「はぁ、コケコッコー?コケコッコーかは分かりませんけど、天気も良いで━━━━━」

「朝ごはん何食べた?俺は山盛りのご飯に納豆と卵をかけて食べたよ。あっ、お味噌汁はワカメのお味噌汁だったよ!あとおしんこ!早朝ランニングを終えた後のご飯はどうしてあんなに美味しんだろうね?」

「はぁ、どうしてですかね?私は朝弱いんで、早朝のランニングとかしたことな━━━」

「それは兎も角、緑谷さん。今度の休みの日空いてないかな?」

「━━━━話し掛けておいて、何一つ聞いてませんよね?黒豆パイセン」

 

ジト目で見れば黒豆パイセンはタハハーと笑う。隣のお茶子はなんかアワアワしてる。少し離れた所からは耳郎ちゃんを筆頭に女子ーズがキャーキャー騒いでる。なに?なんなの?ほわっつ?

 

━━━ん?そう言えば、さっき何か言わなかったか?休みの日?

 

少し考えて、改めて黒豆パイセンを見た。

私の視線に気づくとパイセンはめっちゃ良い笑顔を向けてくる。キラッキラだ、キラッキラ。ほう?これは、ほう?ほうほう・・・・・・いやぁ、モテるって辛いね!可愛いって罪だね!ごめんね、美人で!!でも残念。パイセンは私の好みではないのですよ。私は背が高くて、細マッチョで、イケメンで、お金持ちで、日がなゴロゴロしながらゲームしても怒らないで、三食ご飯作ってくれる人じゃないと無理だからぁ・・・・むぅ?

 

「黒豆パイセンって背大きいですよね?」

「ん?そうだね、緑谷さんよりはね?」

「ゴリマッチョって程でもないし・・・」

「無駄な筋肉をつけると動きが鈍るから、基本的に使う部位しか鍛えてないんだ」

「イケメン・・・ではないけど、まぁ愛嬌はあるかな?腹パンしてくるけど」

「ありがとう、なんだか照れるね。腹パンはごめんね」

 

ふむ?

 

「因みに今、お財布の中身が幾らか教えても━━━━いだだだだだだだだだだだだ!?にゃにごとぉっ!?」

 

お財布の話をした途端、頭が万力みたいな物で締め上げられた。痛みにこらえながら頭を締め付けるそれを確認すると、触り慣れた手が頭の上に乗っかってる。

 

「くぅぉっちゃん!?なんで、なんでアイアンクロー!?何故に!?」

「っせぇボケ。誰が、くぅぉっちゃんだ。朝っぱらから寝惚けたこと抜かしてんじゃねぇぞ」

 

不機嫌そうにそう言うと頭を締める力を強めてきた。

割れちゃいそうに痛いというか、もう割れてる気がする。ぱっくりいかれてる気がする。だって、そういう痛さだもん。鏡怖くてみれんわ!割れてない!?われて、いだだだだだだだだだだだだ!!そんな事言ってる場合じゃなかったぁ!!

 

「おい、先輩。クソ忙しい朝っぱらから、馬鹿にちょっかい掛けてんじゃねぇよ。誰が馬鹿やらかすこいつの後始末つけると思ってんだ」

「それもそうだ。ごめんね、緑谷さん。朝早くから畳み掛けるように。俺も少し気持ちが急いてしまったみたいだ。じゃ、今度はお昼休みにでもくるよ!」

「くんじゃねぇ━━━━━って、聞けやこら!!」

 

用件は済ませたと言わんばかりにかっちゃんの返事も聞かず、黒豆パイセンは嵐のように去っていった。かっちゃんの怒鳴り声をどういう風に受け取ったのか笑顔で手まで振ってくる始末。かっちゃんのアイアンクローの力が強まるからマジで止めて欲しい。いたいっ、いたいよぉぉぉぉ!八つ当たりしないでくんない?!ちょっ、見守ってる連中ぅ!!助けぇ、お助けぇぇぇ!なん、ちょっ、笑ってん!?こらぁぁぁぁ!!関節極めるかんな!上鳴ぃ!!

 

「なんで俺だけ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝からマジ切れアイアンクローを食らうという、悪夢のスタートきったその日。

 

「一年生の校外活動ですが、昨日協議した結果、校長をはじめ多くの先生が『やめとけ』という意見でした」

 

おおぅ、朝私を助けなかったからじゃぁ。

天罰じゃぁ、ざまぁぁにゃぁ。

 

包帯先生の言葉を聞いて愉悦からほくそ笑んでると、かっちゃんにバレて頬っぺたをつねられた。痛い。

そうこうしてると切島が残念そうな声をあげた。

 

「えーあんな説明会までして!?」

「でもよー、全寮制になった経緯考えたらそうなるか・・・」

「上鳴、ぼやきながら俺の尻尾撫でないでくれ。背筋がゾクゾクするんだよ。それ」

 

男連中がワチャワチャした所で包帯先生が「━━━が」っと鋭い声をあげてクラスが静まり返る。

 

「今の保護下方針では強いヒーローは育たないという意見もあり、方針として『インターン受け入れの実績が多い事務所に限り一年生の実施を許可する』という結論に至りました」

 

ふぅん?行く場所の制限はするけど、インターンの許可自体は出すのか。私はてっきり今回は見送るのかと思ってたんだけど・・・ちょっと宛が外れちゃったな。

 

それから少しインターンについて許可書の書き方だったり、必要書類の話だったりの説明があったりして朝のHRは終わった。次の授業にむけ準備しながらも、皆の口からはインターンの話題が止まらない。大半の人が前回職場体験した所に頼もうって流れみたいだ。

 

そんな話を聞いてるとふと思った。

・・・そう言えば私って、行く気になったらおハゲ雇ってくれんのかな?と。いや、働く気はないけどね?でもお給料とかどうなるの?とか気になるじゃん?

 

別に働く気になった訳じゃない。依然としてやる気ゼロ。ただおハゲからどれくらいのレベルだと思われてるのか、それがちょっと気になって轟の所へ行って聞いてみた。そしてたら「どうだろうな?俺は糞親父じゃないからな」と首を傾げられた。ただそれに続いて「インターンの噂聞いたのか、こんなのは届いたけどな」とスマホを見せてくる。

 

そこにはおハゲから轟に送られた数件のメッセージが入っていた。『焦凍、爆豪少年も連れてインターンに来い』とか『お前達に頂に最も近いプロの仕事を見せてやる』とか『給料はサイドキックと同じとする』とか『既読スルーするな』とか『焦凍!』とか『返事をしろ、焦凍』とか━━━━━━『緑谷双虎は絶対に連れてくるな』とかだ。

 

・・・・・ん。ふむ。

 

「あのホモ野郎!!どういうつもりどぅぉぁぁぁぁ!!なんで、行った事のある私じゃなくて!かっちゃん誘ってんの!?てか、なに名指しで私ハブってんだ!!あの、あのハゲ野郎ぉぉぉぉぉ!!拡散してやる!!実はヅラでハゲでしたって、世界各国に広めてやるぅ!!」

「庇う訳じゃねぇが、程ほどにしてくれ。何となく、それは姉さん達が苦労する気がする」

「むむむむぅ。じゃぁ、スマホ貸して」

「・・・・?ああ」

 

借りたスマホでおハゲにメッセージを返してやった。『はげろ』と一文だけ。

そしたら即行で既読ついて短いメッセージが鬼のように返ってきたけど、メッセージを見る事もなくおハゲのメッセだけ着信音も何も表示しないように設定し直してアプリを閉じてやった。

 

はげたら良いんだ、あんなオッサンは。

 

「まぁ、おハゲの事は置いておいて、それかっちゃんに話した?」

「・・・いや、まだだ。正直、俺自身あんまりな。ナンバーワンを目指すなら、あいつから指導を受けるのも、そう悪い手じゃないとは思うんだが・・・・」

 

轟はそもそもおハゲの事が嫌いだもんねぇ。

そうでなくても暑苦しいし、声無駄にでかいし、直ぐに怒鳴るし・・・あれと四六時中一緒にいると疲れるもんなぁ━━━━でも、プロの世界を経験するなら、あそこ以上はないと思うんだけどさ。それになんやかんや奢ってくれるし。

 

「何騒いでんだ、てめぇは」

 

不意に後ろから声を掛けられた。

授業の準備を終えたかっちゃんである。

早い!もう宿題のプリントまでテーブルに用意してる、だと!・・・・やばい、宿題やってなかった。ま、良いか。

 

「それはそうとさ、かっちゃん」

「あ?」

「おハゲからインターン来ないかって誘われてるみたいだよ?」

「・・・・いや、誰だよ」

 

本気で困惑したかっちゃんに轟が「うちの糞親父だ」と言えば、困惑した顔がより困惑した。分かる、意味が分からんって顔だ。私もなんでおハゲがかっちゃんを誘おうとしてるのか分からないもん。

 

そんなかっちゃんに轟が口を開いた。

 

「・・・・性格はあれだが、ヒーローとしては一流だ。調べていないからはっきり言えないが・・・流石に、相澤先生の言う条件はクリアしてると思う。・・・お前が行くなら、連絡はしておくぞ」

「あ?ふざけてんのか、誰がてめぇの世話になんざなるか!爆散されてぇのか!?ああ!?」

「嫌なら別に良いんだが・・・お前は俺と違って、親父に思う事もないだろ。どういう理由かは知らねぇが、あいつがヒーローとしてお前に声を掛けたんたら、それなりに理由がある筈だ。もし上を目指すなら悪い話じゃないだろ」

 

轟の言葉にかっちゃんが珍しく言葉をつぐんだ。

体育祭の前とかだったら、かっちゃんが怒鳴り散らして終わっただろうに・・・・仲良くなったなぁー。この二人。親友かな?

 

「・・・まぁ、考えておいてくれ。俺は・・・まだ決められないが」

「・・・・・ちっ!」

 

舌打ちするとかっちゃんは席に戻っていった。

あの様子だとなんやかんやおハゲの所に行きそう。かっちゃんは目敏いというか、チャンスは見逃さない人だからね。

 

「━━━━しっかし、何だってかっちゃんはOKで私はNGなんだか?何かしたっけ?」

 

おハゲの謎のメッセージについて考えてると、スマホがブルブルと震えた。何事かと思って画面を見れば、電話が掛かってきた事を教えるマークとおハゲの名前が映ってる。しつこく鳴るので電話に出ると『貴様ァ!!』と怒鳴り声が聞こえてきた。

 

『貴様だな!!焦凍のスマホでメッセージを返してきたのは!!返信がようやく返って━━━━いや!普段から当たり前のように返ってはくるが!!』

「おハゲ、既読スルーされてるの知ってるから。ぬか喜びしたんだよね?おつ」

『このっ、見たなら分かるな!貴様は出禁だ!!間違っても私の事務所にはくるな!!来たとしても門前払いしてやるからな!良いな!!分かったな━━━━━ぐっ、こ、お前らっ、━━━━━あっ!もしもしお電話代わりました!ニコちゃーんお姉ちゃんだよー!覚えてるー?一緒にカラオケした!サイドキックの!インターン待ってるからねー!━━━━はいはい!お電話代わりましたよっと。さっきのアホとコンビ組んでるお兄さんだよー!元気してた?やほー覚えてるかなぁ?まぁ、焦凍くんと一緒にきな!皆も待って━━━━ッッッッッッ』

 

サイドキックの皆の声が聞こえてきたと思ったら、今度は激しく電話が切れた。電話を切ったのは間違いなくおハゲだろう。職場体験の時からそうだけど、あそこはアットホームだなぁ、本当。最初は私達がいるせいか堅苦しい感じだったけど、直ぐ化けの皮剥がれたもんね。なんであんな職場作れてる癖に、おハゲ奥さんと上手くいってないんだか?不思議ぃ。

 

そうこうしてる内に一限目の担当であるコンクリート先生がやってきた。なのでスマホをポケットにinして、委員長の号令に従って起立。そんで礼して着席して、教科書を盾に夢の中へダイブした。

・・・・・ぐぅ。

 




おまけ。冬美さんサイド。

「えっ?緑谷さんをインターンで?良いんじゃない?焦凍も喜びそうだし」
『━━━━━━━━!!!!!!』
「・・・なんでそんなに怒ってるの、お父さん?」

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