私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
いや、まぁ、エンデヴァー掘り下げは、ちょっと嬉しいことでもあるけども(*´ω`*)
久しぶりに回転寿司で豪遊した帰り道。
幸せという物を染々と噛み締めていると、私はガチムチからとんでもない書類を手渡された。
「インターンの許可証じゃないでくぅわぁ!!」
くわぁ、くわぁ、くわぁと、私のセイレーンもかくもやというスーパー美声が響く。便乗して乗り込んだ、ガチムチを迎えにきた送迎車の中で。
ガチムチは耳に突っ込んでいた指を抜き、申し訳なさそうに口を開いた。
「・・・・その、ごめんね。なんか、その、断る空気じゃなくて」
「空気とか読まないで下さいよ!断るのに空気とか関係ないですから!ガチムチは初めてあったオジサンに誘われて、空気を読んでワケわからん宗教に入信しますか!?怪しい名刺を差し出す芸能プロダクションのスカウトと、空気を読んで所属契約しますか!しないでしょ!!そこはバッサリ断って下さい!大人でしょ!一人暮らし始めたばっかの大学生じゃないんですよ!?」
「もっともなんだけど、君に言われるとなんとも言えない気持ちになるな。なんでだろう」
何処と無く納得してなさそうなガチムチはスマホを取り出すとサササッと操作する。そうして何かが画面に映ると私に見せてきた。
「明日の出勤時間と仕事内容、その他諸々の雇用規約とか保険の話とか・・・まぁ、インターンの契約についての連絡が今さっききたんだ。少し目を通してくれないかな?勿論、緑谷少女が行きたくないのは分かってるから、無理にとは言わないけど・・・でもね、考えるだけ考えて欲しいんだ」
「えぇぇぇーーー、めんどくさいんですけどぉ」
「・・・・帰りにコンビニでシュークリーム買ってあげるから」
「仕方にゃいにゃぁー、ガリえもんはぁー。ホイップ入ってるやつ買って下さいねぇー」
「現金だなぁ、もう」
渡されたスマホに視線を落とすと、そこにはインターン生の仕事内容や契約に関する事がびっしり書いてあった。怪我した時の補償とかも思ったよりしっかりしてる。仕事内容は学校や皆から聞いてたヒーローそのものって感じだ。平時はパトロールで、事件事故が起きた場合は一般人の避難誘導や救助活動、ヴィラン逮捕の協力などなどがお仕事。ヴィランを逮捕出来れば特別手当ても出すらしい。勤務の時間は基本八時間労働で、仕事の影響で帰宅時間が伸びた場合は残業代もあり。交通費も事務所全負担。今日の交通費も出るみたい。
と、軽く流し読みした後━━━━それに気づいた。
そう、それは、基本給の部分である。
「えっ、こんなにっ・・・・!?」
自分の目を疑いもう一度見た。そこには私のお小遣い(課金分を除く)四ヶ月分の数字が日当として刻まれている。それは、業務の中で命を懸けるかも知れないと考えるとあまりにも安い金額だけど・・・・でも、保険料とか諸々差っ引かれてこれなら、やっぱり高いと言って良い額な気がする。
お昼代は流石に自分持ちだけど、交通費はしっかり事務所持ちなので、そっちの出費は一切なし。更に、悪党をボコればボーナスまで貰えちゃうときたもんだ。ヒーローの仮免許ぱねぇす。こんなに簡単に稼げちゃうんだね。すげぇ、すげぇよぉ、ヒーローすげぇよぉ。流石に国家資格か。仮免許でもこの稼ぎようよ。ふふふふ。
「いやー、でもなぁーやっぱり私には少し早いと思うしぃー?はい、やりまぁす!とは言えないですねぇーふへへ。あっ、因みに相場としてはどうなんですか?これ高い方なんですか?あっ、かっちゃんにも聞いてみよ!おハゲは見栄っぱりだから、結構いい金額にしてそうだし・・・ふへへ、来週はかっちゃんの奢りで焼き肉かなぁ」
「忙しないね、君は」
かっちゃんにメッセを送った後、頃合いを見計らってたガチムチが給料について話してくれた。ガチムチのデビューした時代はあまりヒーローに肯定的でなかった為、今より平均的に給料は安かったそうだ。保険やらなにやらこみこみでこの金額なら高い方ではないかな、らしい。
「ナイトアイはヒーローとしてメディアへあまり顔出ししない分、そういった方面では儲かってはいないんだけど・・・ヒーロー同士のマッチアップの仲介をしたり、警察から情報分析の依頼を受けたり、主に裏方の仕事では名が知れてるヒーローなんだ。あとは個人的に株をやってるみたいで、結構儲けてるみたいだよ?」
「へぇ、カブ。カブかぁ。あれで農家だったんですか、へぇ。私も大人になったらカブ畑作ろ」
「・・・緑谷少女はたまに凄いアホになるね。というか、今何も考えてないのかな?ナイトアイのことそんなに興味無い?」
そんな事をガチムチが真顔で聞いてきた。
少し双虎にゃんびっくり。あまりにも今更な質問だったから。
「まぁ、全然無いですけど・・・」
「無いのか・・・・そうかぁ」
寧ろあれで興味持ってという方が無理というものだ。ユーモアユーモア言う割には自分で面白い所を見せない。変な機械でサイドキックにセクハラ&パワハラ。態度も口調もトゲトゲしくって、その上息がつまりそうな雰囲気を出す。髪型が七三。あと、何となく好きじゃない。
ある意味では興味が出たけど、それも確実に悪い方面のみ。それも、知らないなら知らないでいいかなぁっ、てレベルだ。
「少し黒豆パイセンの戦い方のことで聞きたい事はありましたけど・・・あの調子だと教えてくれなさそうですし。もうお給料以外、興味の欠片も無いですね」
「曲がりなりにもヒーロー免許取ろうとしてるんだから、他所では言っちゃ駄目だよ?それにしても、君が聞きたいことか・・・珍しいね。誰かに教えを請おうとするのは」
「まぁ、その方が効率が良いと思ったんで・・・無駄に終わりましたけど。ガチムチって黒豆パイセンの戦い方って見ました?」
私の言葉にガチムチは「一応資料には目を通したよ」と短く返した。
「個性も、個性の扱い方も素晴らしいけれど、それ以上にその冷静かつ迅速で的確な動きに目がいったよ。状況を正しく把握し、何をするべきか考え即座に答えを導き出し、それにそって正確に体を動かす。基本的な事ではあるけれど、実戦でそれを行える者は非常に少ない。恐らくナイトアイが徹底的に叩き込んだのだろうね。彼は個性がら人の動きを読む能力に長けているから」
「個性がら?なんの個性なんですか?」
「少しは調べなかったの?普通に検索すると出てくるのに・・・いや、まぁ良いけれど。彼の個性は未来予知さ。文字通り、彼には未来が見える」
「へぇ、未来予知・・・宝くじとか当て放題ですね。良いなぁ」
思わず願望が口から溢れるとガチムチが微妙な目で見てきた。ついでにそれまで無言でハンドルを握っていた運転手の人も「良いですね、未来予知。夢が広がる」と話に交じってきた。
「運転手さんの個性はなんなんですか?私個性二つ持ちです。良いでしょう?」
「流石、雄英のヒーロー科の生徒さん。羨ましいねぇ。僕の個性はね、右手がプラスドライバーになる個性さ。特訓したらマイナスにも出来たし、よく分からないドライバーにも出来たよ。あとサイズ変更も」
「工作系の仕事すれば良かったのにぃー」
「個性が発現した時は、漠然と時計職人になるって思ってたよ。いやぁ、人生って分からないね。まさかオールマイトや、未来のスーパーアイドルを送り迎えする人間になってるとは思わなかったよ」
「スーパーアイドルなんて、えへへ。そうですけど」
「謙遜するどころか、なんて良い笑顔で返事を返すんだ。緑谷少女」
それから学校につくまでの間、雄英高の専属ドライバーになるまでの運転手さんの波瀾万丈な人生について聞いた。時計職人を目指して町の時計屋に弟子入りしたり、友人の頼みを聞いて廃部寸前の野球部で甲子園目指したり、柔道少女を助けたのを切っ掛けに裏柔道界と戦ったり、知り合いの所有する島で不可解な殺人現場に遭遇したり・・・・。思ってたより波瀾万丈な話に、私よりガチムチが目を丸くして聞き入ってた。「はぁー」とか言って感心してるけど、ガチムチの人生も大概でしょうに。
あと、そんな帰り道の途中かっちゃんから『てめぇにいうか、ボケ』とのムカつく返事も貰った。気を良くした運転手の人にドーナッツを買って貰ったんだけど、やつには分けてやらんと決めた。━━━えっ、シュークリーム?シュークリームも勿論買って貰ったよ。ガチムチに。けど、これは私のだ。私のオヤツだ。つまり誰にもやらんってこと。
そんなこんなで学校につくと、ガチムチからお茶に誘われた。時間も時間なので帰ろうとしたけど、真面目な話らしくガチムチの縄張りである仮眠室に直行。テーブルを挟んで向き合う事に。
出されたお茶を啜りながらシュークリーム片手に話を聞くと、七三の所へインターンに行ってくれないかって話だった。
「通形ミリオ。彼はね、ナイトアイが見出だしたワンフォーオールの後継者候補なんだ」
ガチムチが以前コンビを組んでいた七三は、数少ないワンフォの秘密を知る一人で、コンビを解散してからも後継者候補を探していてくれたそうだ。それで一年と少し前、私を後継者とすることを勝手に七三に報告したらしいんだけど、そこでひと悶着あったとか。
「君のことを話したら、すごく怒られてね。中学生の、それも女の子に継がせるべきものではないと。考え直せと」
「えっ、まぁ、そうですね。私もそう思います」
「改めて考えてみると、私もそう思うよ。体のこともあって焦っていたんだろうね、私も。急ぎ過ぎていた。けれど、その時の私は君に継がせるべきだと思ってたんだ。だから、私は彼が後継者候補として名前をあげていた通形少年の件を・・・断った」
話を聞いてあの態度の理由に納得いった。道理で矢鱈と睨まれる訳だ。気に入ってないと口にしたのを聞いたけど、あれは実際にあった私に対する事だけじゃなくて、この件の事も含まれているんだろう。
「それじゃ、どうせ私はワンフォはいりませんし、今からでも黒豆パイセンに継がせれば良くないですか?実力はあると思いますけど」
「いや、今日の彼を見てはっきり分かったよ。彼はね、私の後継ではなくナイトアイの後継だ。きっと通形少年自身も、私の後継者の席は望まないだろう」
「まぁ、黒豆パイセン、七三大好きですもんね」
「ははは、そうだろう?だからそういう意味でも、私は彼を後継者には選べない」
そんなに長く七三の事は聞いてないけど、黒豆パイセンが七三にどんな感情を抱いているのかは察せた。何せヒーローの事を一所懸命に話す、ちっちゃい頃のかっちゃんと同じように目をキラキラさせながら七三の事を話すのだ。分からない方がどうかしてる。
ただ一通り聞いてやっぱり分からない事がある。どうして私がインターンに行かないといけないのか、って話だ。そのまま聞いてみたらガリガリな顔に笑みを浮かべて、七三に自慢したいのだと言った。
「君の努力も君の才能も、私は見てきた。まだ通形少年には届かなくとも、君自身が設けた基準に実力が達していなくとも、君の力はプロとして十分活躍出来るものだと私は確信している。だから、ナイトアイに見せてやりたいのさ。私が選んだ生徒の力をね。『ナイトアイ、君は間違っていない。けれど、私も間違えていない。彼女は立派なヒーローになれるんだ』ってね」
「・・・・それとね、緑谷少女に少しでも安全に経験を積んで貰いたいからってのもあるかな?ナイトアイはそこら辺の人の調整は上手いし、無理な仕事はさせないだろうから。通形少年も含め、それなりにインターン受け入れの実績もある。どうだろう?」
どうだろうと言われても、ふぅんと思うのが関の山だ。だって行きたくないんだもん。仕事したくないんだもん。休みの日ぐーたらしてたいんだもん。すりーだもん、アウッッッ!・・・・だけど、まぁ、経験が必要なのは分かるし、あのいけ好かない七三の鼻を明かしたい気持ちもある。つり上がった眉毛をしょんぼり下げさせながら、『私めの目は節穴でしたで候う!』って頭をグィングィン下げて欲しい。
でも、やっぱりなぁ・・・・。
「━━━━━━━━━━なぁ・・・・残念だよ」
リスクとメリットについて考えてるとボソッとガチムチが何か言った。聞き取れなかったので耳に手を当て澄ましてみる。わんもあ、ぷりーず。
「一月だけでも頑張ってくれたら、冬休みに緑谷少女の補習計画をたててる相澤くんに、私から一言言ってあげるんだけどなぁ・・・・残念だよって」
冬休み、補習計画・・・・?ほわっつ?
じっと、ガチムチを見るとガチムチはどこか遠い目をしてお茶を啜り始めた。
「これは一人言なんだけど、緑谷少女の授業態度がここ最近また悪くなってきたから、冬休みは全部補習にしようかって・・・・職員会議前に相澤くんがぼやいてたんだ。実際どうなるか分からないけど、次の職員会議ではその話題もあが━━━━━」
「自由!ガチムチ!校風に自由がどうとかってありますけど!?」
側の本棚にあった『雄英の歩み』とかいう糞つまらなそうな資料を手にガチムチに抗議したが、「自由と無法はまた別ものだからね」と諭すように言ってきた。つまり、言い訳は聞かないと。成る程。ひいては、私の冬休みという名の自由の翼は、今包帯先生によってへし折られる寸前ということか。成る程成る程━━━━━━。
「ガチムチ先生!!なんかぁー私ぃー急にぃ、ちょーインターン行きたくなったっていうかぁー行こうかなぁってーいうかぁ━━━━━行きますッッッ・・・!」
「本当に現金なんだから、君は」
「で、約束ですよ!!」
「うんうん。これに懲りたら、君も授業中出来るだけ眠らないようにするんだよ?」
「それは保証しかねますけど!」
必要書類にパパパっとサインした私は、憐れむような悲しき視線をぶつけてくるガチムチを背に、ドーナッツを抱えて即行でとんずらした。
助けてかっちゃん!お茶子!!補習させられる!冬休み一杯、クリスマスも正月もなしに補習させられるぅぅぅ!!いやぁぁぁぁ!!