私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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オーバーホールがいつの間にかオーバーオールになってたみたいだから直した。色んな所がオーバーオールだった。ちょっとシュールで笑えた。反省はしてる。

反省はしてる。(正直、こいつ腹立つから滑稽極まりないこの名前のままでも良いような気がしたけど、久々のシリアスの晴れ舞台だから仕方なしに直したのは内緒)

シリアス「なんか、おっそろしい副音声が聞こえる」


自分が悪くない時は意地でも謝らない。自分が悪い時もなんやかんや謝らない。ていうか、私が悪い時なんて全然ないよね。それが、私だけどなんかある?うん?正座?ここで?私が?いやだ!!の巻き

「ふぁぁぁぁぁぁぁぁ!?えぇぇぇぇぇぇ!?ちょ、えっ!?女の子に発信器と通信機つけて!?それを頼りに治崎達の後を追い掛けて!?ついでに屋敷に乗り込んで!?虐待受けてるっぽい女の子とお話してきましたって!?しかも私に連絡済みって、嘘でしょそんな訳ないじゃないのっておおおおおお!!?本当だっ!?全然気づかなかっ・・・・ちっ、違うんです!サー!そんな目で見ないで下さいよ!知っててスルーした訳じゃないんですって!本当に!今知りましたから!今知りましたからぁ!!」

 

時刻はうっかり20時過ぎ。門限見事にぶっちぎりなあうちな時間。七三の事務所に帰って一通りエリちゃんとの事を説明すると、バブっちが狂喜乱舞のフィーバータイムに突入した。やだ、すごい楽しそう。リアクションの神様おりてますやん。コンビ組んでお笑いの天下取りにいきたいよね。

 

そんな元気一杯なバブっちと対称的に七三は厳しい視線を送ってくる。籠った感情はきっと、怒りなんだろう。めちゃオコだ。

 

「君は、自分が何をしたのか、理解しているのか?」

「お花摘みにいった流れで、ちょっと遠くをパトロールして、そのついでに可愛い友達と話してきただけじゃないですか?何か?」

「君の浅慮で、何もかもが無駄になる所だったと言っているんだ!!何故ミリオの指示を待たなかった!!何故勝手に行動した!!君の行動によって捕らえられる機会をふいにし、それによってどれだけの人間が犠牲になるのか!!それを考えたのかと聞いている!!緑谷双虎!!」

 

いきなりの怒号に思わず耳に指を突っ込む。

そうしたらただでさえ怒りに歪んでいた七三の眉間に、より深いシワが寄った。隣で様子を窺ってる黒豆パイセンとバブっちがアワアワと私と七三を見比べてくる。

 

「もう、良い━━━━出ていけ。君をこれ以上雇うつもりはない」

「サー!緑谷さんはっ!彼女はただ、治崎が連れていた、あの子の事を」

「それがどうした。ただ一人を救い、百人の人間を不幸にするか?ミリオ、分かっているだろう。志だけでは助けられる程世の中は甘くはない」

「それは・・・そうです、が」

 

「じゃぁ、見捨てるんですか?」

 

言い淀んだ黒豆パイセンの代わり、そう聞いたら七三に強く睨まれた。

 

「そういう事ですよね?目の前に困ってるやつがいて、そいつが不幸になって百人幸せになれるなら、そいつを見捨てるんですよね」

「・・・・・そうだ。私は選べる程強くはない。より多くを救う為に、小を切り捨てる」

「ご立派なヒーロー様ですねぇ。私とは合いそうにないので喜んで帰ります。それじゃ黒豆パイセンも帰りましょう。もう学校の食堂間に合わない時間ですし、帰りにラーメン奢って下さいよ」

 

そう黒豆パイセンに言うと険しい顔で見られた。

何か変な事言ったかと思い返してみるけど、特に思い当たる事もない。不思議に思ってると、「それで良いの!?」と聞かれた。別に仕事したくてきた訳じゃないし、元々冬休みを人質に取られたから来ただけだと言ったら黒豆パイセンは顔を手で覆って「頭痛がする」と一言呟く。さようですか。

 

「せめて、自分の気持ちで来て欲しかった・・・・いや、そうじゃなくてね。あの子の事は、もう良いの?そんな簡単に終わりにして、後悔はしない?」

「・・・・はぁ?後悔?しないですけど」

「彼女の為に君が怒ったのは嘘だったのかい?助けようと、手を伸ばしたのは気紛れだったのかい?違うでしょ、緑谷さん」

 

ムワッとする熱気の籠った言葉に漸く分かった。

黒豆パイセンが何を言いたくて、何を勘違いしてるのか。私は一言も、そんな事言ってないのに。

 

「あの、黒豆パイセン」

「緑谷さん、俺は見ていたよ。あの時、君が治崎に食って掛かったのは演技なんかじゃない。ましてや気紛れなんかじゃない。君は本心から彼女の━━━」

「いやいや、聞いて下さいよ。別に諦めた訳じゃないですから。エリちゃんは助けにいきますよ」

 

私の言葉に黒豆パイセンが円らな目を更に丸くさせる。

 

「えつ、いや、でも、帰るって・・・・」

「帰りますよ?七三の所なんてやってられないんで。少しは話の分かる所探して勝手にやりますよ。丁度動かしやすいハゲが知り合いにいますし、なんやかんや雇ってくれると思うので。嘴のやってる事知ったら、七三よりは良い反応すると思うんですよねぇ」

 

エリちゃん一人の証言だけじゃ、ヒーローにしろ警察にしろ動かすには説得力が足りない。とはいえ、エリちゃんの言葉を裏付けする何か証拠が見つかれば、多少強行だろうと動かざるを得ない話でもある。内容が内容だから、つかっちー辺りに聞かせれば少しはマシな返答が出ると思うし。

 

何を食べようか考えつつ扉に手を掛けた所で、「待ちなさい」と七三の制止を求める声が掛かった。それを聞いた私は黒豆パイセンの手を引きながら、そのまま扉を開けて外に出た。放って置けば自動で閉まる扉なので、手を離せば何事もなくバタンと閉まる。

 

「・・・・・それで、何ラーメン食べます?気分的には味噌ラーメンの野菜と油マシマシのチャーシュートッピングでいきたいんですけど」

「そうだね、俺は醤油のチャーシューメンかな。トッピングは別に・・・いや、待ってあげて!!今、サーが待ってって言ったよね!?あれ、幻聴かな?いや幻聴じゃないよ!」

 

華麗なノリツッコミに希望が見えたので拍手しといた。やんや、やんや。黒豆パイセン、ボケはあれだけどそっちはいけるよ。鍛えてこ、パイセンはそっちでいこ。えっ?本当にかって?本当本当、マジマジ。パイセン才能ありますよ。ツッコミの。ボケてる場合じゃないですよ。練習しましょう。今日から。はい、123!はい、123!腕の角度が甘い!こうっ!こうきたら、こう!ズビシッて感じで!そう!そうですよ!いいよ、キテる!

 

ツッコミの練習をしてると扉が勢い良く開いた。

びっくりして二人で振り向くと、七三じゃなくてバブっちがいた。

 

「いや、そこは━━━」

 

「━━━━━━七三でしょ!」

 

二人で綺麗に分担しながらツッコむと、バブっちが勢いよく綺麗に腕をズビシッと振り抜いた。

 

「いや、ツッコミたいのはこっちだから!ていうか、ミリオくんまで何してるのかなぁ!?」

「はっ!!」

 

何かに気づいた黒豆パイセンが申し訳なさそうにバブっちの隣へと帰ってく。なんと、あっさり敵に寝返りおったわ。こやつめ。

黒豆パイセンをじと目で見てるとバブっちが口を開いた。

 

「スルーしないであげて、サーはあれでいて繊細なんだから!元々説教とかしないタイプなの!だけど立場とかあるから仕方なくやってるの!!説教した後、一人でこっそり落ち込んでたりするの!そういう優しい人なの!今回怒ったのだって、緑谷さんのこと心配してる所もあるんだよ!?察してあげて!緑谷さんそういうの得意でしょ!」

「あっ、はい、すみません」

「分かったならまず部屋に戻って!はい!ほら!」

 

手招きされるがまま部屋に戻ると、窓の外を眺める哀愁漂う七三の背中があった。少し、ほんの少し、スマホの傷防止フィルムの厚さくらい悪い気がして・・・・。

 

「あの、なんか、すみませんした。心配かけたみたいで」

「・・・・いや、私も言い過ぎた。プロヒーローとして認める訳にはいかないが・・・人道的に君は間違ってはいない」

 

お互い謝ると何とも言えない空気になった。

なにこれ、辛い。辛ぽよも言えない、こんな部屋の中じゃ。ぽいずん。

 

「あー、はいはい。まずは向き合いましょう。サー聞きたい事があるんですよね?そうですよね?」

「・・・・・ああ」

「コーヒー用意しますね。良いですね?」

「・・・・ああ」

 

七三のコーヒーを用意するついでに私も聞かれたので、カフェオレを頼んでおく。飲み物がくるのを待って、私は改めて話を聞かれた。カフェオレを飲みながらエリちゃんから聞いた事を伝えれば、七三達は難しい顔をする。

 

「あの子が・・・・まさかっ・・・」

「酷い、そんな事っ・・・・!」

「特異な個性。それを宿す少女の人体を材料に作った、何か・・・・いや、正確には人体に宿る個性を利用した道具か。どちらにせよ、まともではないが」

 

「まっ、エリちゃんが聞いてた事が、そのまま全部本当ならですけどね。多少聞き間違いもあれば、大事な所が抜けてるかも知れませんから」

 

エリちゃんと約束した後、エリちゃんの現状や保護者扱いになってる嘴の事について少し聞いた。

その結果、嘴の変態野郎がエリちゃんから定期的に血液を抜いてる事が分かった。しかも限界まで抜くと嘴の個性で無理矢理体を治されて、何度もそれを繰り返しやらされるのだと。まずこの時点で、嘴のキン●マを蹴りあげて子孫を残せないようにする事を決めたよね。

それで話を戻して、抜いた血液はどうするの?って話なんだけど・・・それは嘴が怪しい研究して、何か武器を作ったっぽい。流石にエリちゃんもそこは詳しく知らなかったけど、嘴が楽しげに個性がどうとか破壊がどうとか言ってた事や、最近は以前よりいっぱい血を抜かれると教えてくれた。この時点で、嘴の尻に鉄パイプ刺すことを決めたよね。二度とまともにウ●コ出来ないようにしてやるよね。

 

「状況から考えれば、研究は何かしら形になった。生産体制に入り、その分の血液を必要としている。それが妥当な所か。センチピーダーから裏稼業団体の接触が増えたと聞いたが・・・無関係とは思えんな」

「もしそれが本当なら、出来るだけ早く保護してあげないと・・・・サー」

「分かってる。バブル。だが、情だけで動く訳にはいかない。下手に動いて逃げられれば、エリちゃんを救えない所か治崎が手掛けた物が世に出回ってしまう可能性がある。それが何か分からないが、子供の体を材料にして作る物が良いものである筈もない。それだけは阻止しなければならない」

 

二人の話を聞いてると、なんか協力してくれそうな感じ。はっきり切り捨てるって言ったくせに、この七三結構親身に考えてくれてる。気がついたら少女がエリちゃん呼びに変わってるし。もしかしてツンデレ?

じっと見てると、七三が私の視線に気づいて目を逸らした。ツンデレだ。絶対ツンデレだ。

 

心の中で七三(ツンデレ)を付けてると、バブっちが苦笑いしながら口を開いた。

 

「あー、えーっとね。緑谷さん。そういう訳で、他所にはいかないで。ここでちゃんと対応するから。私もサーも、その子の境遇を許してる訳ではないの。だけどエリちゃんを保護するのも、明らかになってない犯罪で治崎を捕まえるのも難しい事だってのは理解して。その為に準備が必要なのは・・・・緑谷さんなら分かるでしょ?」

「まぁ・・・それは」

「一から準備してる時間なんてないでしょ?今も苦しんでる人がいる。早く助けてあげないと。証拠集めも人手集めも、緑谷さんが思ってるより時間が必要よ。その点私達は随分前から治崎周辺を探ってる。情報は多い、実績のあるサーなら人手を集めるのに苦労もしない。エリちゃんを助けたいなら、私達を利用する方がずっと効率的でしょ。しかも調査に参加すればお給料も貰えるし、悪くないと思わない?」

 

それは尤もだ。今からおハゲを説得したとしても、この件に首を突っ込むには調査から始めないといけない。有能なサイドキッカーは多くても、情報集めは地道に行うものでやっぱりそれなりに時間が掛かる。元から情報があるなら、その方がずっと良い。お給料の交渉もしなくて良いし・・・。

 

「バブル、私はまだ・・・」

「誤魔化すなら、さっきのことバラしますよ」

「・・・・・」

 

ジト目でバブっちに見られた七三(ツンデレ)は居ずまいを正すと手を伸ばしてきた。まるで握手を求めるみたいに。

 

「もう少しだけ、君を見てみたい。それが私の率直な思いだ。君が嫌ならば強要はしない」

 

ここで拒否しておハゲの所にいって、どれだけ時間が掛かるのか。冷静に計算すればするほど、合理的に考えれば考えるほど、元から情報を持っていて人手も集められる七三の手を取らない理由はない。早くエリちゃんを助けるなら、この人の手を取った方が良い。

ただ、一つだけそれが気になった。

 

「手をとる前に、聞いておきたい事があるんですけど、良いですか?」

「・・・・なんだ」

「七三はなんでヒーローになったんですか?」

 

私の質問に七三は少し考えてから呟くように言った。

 

「どうしようもなく、焦がれたからだ。誰かの為に戦う、そんなヒーローの背中に」

 

そう言う七三の目を見てなんか何となく納得した。

だってそれは私がよく知ってるやつだ。

差し出された掌を握れば、軽く握り返された。

 

「かっちゃんと話合いそうですね」

「かっちゃんとは誰だ」

「爆殺卿です」

「ヴィランか」

「似たようなものです」

 

 

 

 

「かっちゃんって、爆豪くんのことだよね!?緑谷さん!ヴィラン呼ばわりは酷いよ!あの子言動はあれだけど良い子だからね!」


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