私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
あと感想くれる人達、毎回おおきにやで。
励みになりまする。
「━━━━はぁ?」
手マンが超絶美少女戦士である私、双虎ちゃんをその目にしたコメントはそれだけだった。あえて言おう、糞であると。
私を目の前にしたら、取り合えず五体投地じゃろがい。
その後に「ははぁ双虎様」とお祈りを捧げて、金品を供物として捧げるのが双虎教教義じゃろがい。
とは、まぁ、言った所で話が通じるとは思えないから何も言わないでおいてあげるけども。
はぁ、調子狂うなぁ。
手マン野郎は首をボリボリと掻きながら私をジロジロ見てきた。包帯先生なんて比べ物にならないくらい変態の目だ。ぞわぞわする。
「なに、お前。何処から出てきた?」
随分と難しい質問がきた。
詩的過ぎる。
なんて答えよう。
私は一生懸命考えた。
手マンとの初会話だ。ここで下手な事言ったら怒られるのは目に見えている。私は平和主義者だから、出来るだけ喧嘩とかしたくない。皆で笑い合える世界とか作りたい。
なので一生懸命考えて、考えて、考えて・・・・。
「人が何処から来たのか、真摯に答えようと思ったら、一晩では語り尽くせないのだけど、どうだろうか?」
「・・・そういう事は聞いてない」
そういう事は聞いてなかった。
「じゃぁ、右から?」
「右?」
手マンが私の言うところの右。つまり手マンにとっての左を向いた瞬間、隙だらけの右頬に引き寄せる個性を発動しながら左エルボーを叩き込んでやった。
反応はされたけど、引き寄せる個性での加速についてこれなかったのかモロヒットした。
ざまぁ。
「っつ、てめぇっ、ガキが!!」
「そのガキにやられてりゃ!世話ないね!!ぷぎゃー!!」
手マンの嫌らしい手が迫ってくる。
私は冷静に引き寄せる個性で着弾位置をずらし、カウンターを鳩尾へと放り込む。
包帯先生の時にガードされたからどうかと思ったけど、予想以上に上手くはいった。
多分でしかないが、煽ったお陰で冷静さをかいてる様に見える。
うん、どんどん煽ってやろう。
「ばーか、ばーか!」
「はぁ!?・・・なんだ、それ?もしかして、煽ってんのか?ちっ、これだからガキは━━━」
あ、駄目だ。冷静になられる。
くそぅ、かっちゃんならこれで怒るのにぃ!!
悪口って言うとなると難しいな!
うー!出てこない!
双虎ちゃんちょー良い子だから、人を貶める言葉が思い付かない!良い子だから!
「なんだよっ!ちょっとは怒ってくれても良いじゃん手マン!!」
「・・・・はぁ?」
「私良い子だから、悪口とかあんまり出てこないんだよ!手マンの怒りポイントとか知らんからね!?」
「・・・いや、お前なんて」
「うっせんだよ、手マン野郎!!さっきから、くっせぇんだよ!?プンプンするわ!何が?ナニだよ、イカ野郎!え?どの手でいじってんの?ねぇねぇ、どの手がお気に入りなの?気分によって装着するの?股間にぴったりフィットするの?きゃーやだ、変態!変態がいるわ!!ナニするのに、手をチェンジする、新手のオナニーマスターがいるわ、きゃー!!」
ガリッ、と何が抉れる音が聞こえた。
「お前、死ねよ」
首筋から血を流した手マンが、凄い目でこっちを見ていた。
怒った・・・怒った!
おんじー!!怒ったー!
手マンが怒ったーーー!!
これで━━━━
「脳無、やれ」
━━━そっちはあかん!!
煽り耐性ない奴だから、ぷっつんしたら自分で来ると思ったのに━━━逆に冷静になるタイプだったみたい。ヤバイ。
双虎にゃん、予想外だにゃん。
動きだしたらかわすのは無理。
それは包帯先生のを見て分かった。
だから、かわすなら初動で見切るしかない。
「っ!」
黒筋肉の腕が頭を掠めていった。
死ぬかと思った。
大振りだったから返しは遅いけど、このままなら二発目はかわせない。普通だったら。
「━━━なっ!?」
黒筋肉に足を引っ掛けて、引き寄せる個性をフルスロットルで発動する。そして私と黒筋肉の間にヒョロガリを挟み込むように位置とりしてやる。案の定、黒筋肉の腕がヒョロガリに当たる寸前で止まった。
びっくらこいているヒョロガリの背中に二発膝蹴りを入れて、即ダッシュする。
近くにいたら危ないけん。
距離をとってから振り向いたら手マンがこっち見てた。
見れば分かる、キレてる奴やん。
「おまっえ、なん、なんだよ!?」
聞かれたのであれば答えよう。
「よくきけ・・・・お前に聞かせる名前はねぇ!!」
「本当、なんなんだよ、お前っ!!!」
煽れば煽るほど、繊細さをかいてくれる手マン。
煽り耐性低すぎである。あいつ絶対あれだ、掲示板とかで一回煽られただけで馬鹿みたいに食いついてくる奴だ。絶対そうだ。大人のふりした小学生だ。
「脳無やれ!!」
引き寄せる個性をフルスロットルで発動して、黒筋肉へと飛ぶ。加速した黒筋肉と行き違い、上手い具合に接近した手マンに跳び蹴りをかまそうとしたけど、なんか手を構えてたから炎をプレゼントした。
燃えてた。ざまぁ。
「クソっ、ガキ!!」
凄いそれよく言われる。
こんなに良い子なのに、不思議!!
こっそり移動して黒筋肉との間に手マンがいるようにしてく。黒筋肉はかなり限定的な動きしかしないので、移動直線上に手マンがいればダッシュしてこないと思う。してきても、手マンの所で止まる。
黒筋肉は意外と目でちゃんと周りを見るし、音も聞いてる。でも頭は使ってない。生物だけどロボットよりの存在だと思う。命令されてちゃんと従ってるように見えるけど、多分そんなに細かい事は出来ない。
だから、セーフティーみたいなのがあると思ったら、本当にそうだった。
あれだけ速く動けてパワーが凄かったら、完全制御なんて難しい。命令者が最低限怪我しないように、そういう事が念頭に置かれてると思ってた。しかも使うのは小学生だし。安心設計乙。
反撃を開始させると厄介だから、この機会を逃さずこちらがどんどん攻めていこうと思う。一番ベストなのは、命令させる前に倒す事。手マンが思ったよりアホなので、黒筋肉の動きの隙をついてやっていくしかない。
私は息を大きく吸い込み、手マンに向かって吐き出した。
美少女JKに脈々と受け継がれる108の必殺技の一つ、火竜のファイアである。
「脳無」
手マンが一声掛けると黒筋肉が手マンの前へ盾になるように現れ、これを防いできた。ちょっと予想外。
多分基本的な動きの一つなのだろうけど厄介過ぎる。
「・・・・・・」
しかもダメージが殆んど通ってないときた。
違うか、幾らロボットみたいな奴とはいえ、今の高温を受けて平気な訳がない。
なら、多分━━━━。
そう思って目を凝らせば、見たくない物が見えた。
じゅくじゅくと火傷跡が消えていってる。
これで確定した、再生能力の類いを持ってる。
手マンが気兼ねなく盾にする訳だ。
「まぁ、あんまり関係ないんだけども」
引き寄せる個性で手マンを引っこ抜く。
手マンの体は黒筋肉の所で止まるけど、支えがない私はそのまま飛ぶように手マンへと近付ける。移動手段として考えた事はなかったけど、割りと便利な可能性ありあり。
黒筋肉に出してる命令は恐らく守る事。
近づく私にノーリアクションなのが、良い証拠。
木偶の坊になってる黒筋肉を踏み台にして、それを飛び越える。
黒筋肉に張り付くような姿勢でいる手マンに、渾身の思いを込めて炎を吐いた。
「ちっ!!脳無!!」
手マンを覆うように黒筋肉が動く。
本当、あれ厄介。
一言命令系に守る動きを入れるのはずるい。
胸くそ悪い話だけど、黒筋肉の設計者は多分頭が良い。
黒筋肉がどういう風に使われるか、よく分かってる。
面倒臭いことこの上なし。
覆い被さるように構える黒筋肉の腕の隙間を狙って追加ファイアしておく。嫌がらせ程度の火力だけど中から「っぁち!?」という悲鳴が聞こえてきたのでヨシとしよう。ざまぁ。
こんな事になるなら、さっきの船から燃料を少しでも持ってくれば良かった。上手く使えば、手マンくらいは倒せたかも知れない。
なんか、思った以上に手マンが弱い。
このまま上手いこと━━━━
「死柄木 弔」
━━━と思ったけど、あかん。
なんでこうもいらん事起こるかな。
リズムが崩れるわ、リズム天国いつまでたっても出来ないんですけど。
「━━━っち、黒霧、13号はやったのか」
あ、出てきた。黒かまくらから出てきた。頭がモシャモシャしてるけど大丈夫?軽くアフロってるけど大丈夫?
てか、ちょう物騒な話なんですけど。
え、死んだの?着込狂、死んだの?
「行動不能には出来たものの、散らし損ねた生徒がおりまして・・・・一名逃げられました」
「・・・・・・・は?」
「ぷっ」
思わず笑ったら、二人にガン見された。
いや、だって、お前らが悪いんやないかい。
笑うわ、そんなの。大の大人がよってたかって、結局逃げられましたって。ぷってなるよ。それは。
ワタシ悪クナーイ。
「貴女、先程の━━━!!」
「ワタシ貴方知ラナーイ」
「まだフザケルか!!」
ふざけてんのは、どっちかと言ったらお前らだと思うけど。ヴィラン連合ってなに?かっこいいの?それかっこいいの?ねぇねぇ━━━
「脳無、やれ」
━━━それはアカン。
急いでそこら辺に落ちてるチンピラに引き寄せる個性を発動し、その場を飛ぶ。けど、スタミナ切れか引き寄せる力が不十分で速度が━━━
━━━ぐるんと視界が回った。
肩の痛みで、かわし切れなかったのが分かる。
直撃じゃない。だとしたら、多分死んでる。
「かすって、これとか━━━━」
馬鹿みたいだ。
本当に。
地面が見えて、天井が見えて、また地面が見えて。
目の前に真っ黒の塊が見えた━━━━━━