私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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ヤクザ編のOPちゅき。元気になれる。
ED?EDはエリちゃんが可愛かった。あと、改めてオーバーホールはコンテンパンにしようと思った。まる。


『The price of pain』の閑話の巻き

ヴィラン連合と電話でやり取りしてから三日後。

再び交渉場を設けた俺達は、交渉相手であるヴィラン連合の中心人物『死柄木弔』の到着をある地下室の中で待っていた。部屋にいるのは俺とクロノ、それと今回の件を仕切っているオーバーホール。部屋には無機質な時計の針の音と、俺が勘定している札束が擦れ合う乾いた音が木霊していた。

 

交渉の場にと用意したのは関東近辺に幾つもある隠し拠点の一つ。その中でも抗争が起きた時の避難所として作られたここは、他の拠点とは違いそれなりの備えがある。防音対策は当然とし、敵対組織からの狙撃を防ぐ為に窓は存在しない。外部から見れば幾つか窓が存在してるものの、それはあくまでダミーであり外から見えるブラインドの下には何もない。襲撃対策としてライフル射撃にすら耐える強化ドア、対戦車兵器を基準とした防壁。家具の殆んども防弾性になっている。防壁の強度は数字の上でしか知らないが、防弾効果は間違いなくいつカチコミ入れられてもこの部屋なら問題はないだろう。

そしてそれらはオーバーホールが個性を使い、作り直す過程で強化補強した物だ。金が無かった故の対処でもあるが、元より金があったとしても人を信用しないオーバーホールなら自分が調べ納得するまで作り直す可能性が高いだろうから、結果は大して変わらなかったかも知れないが。

 

他にもガスによる攻撃に備えて空気清浄機も・・・・いや、あれは、空気清浄機はオーバーホールの趣味か。一応は研究室に置いてあった物であったし、それなりに効果はあるだろうが良い所埃取りくらいにしか思ってないだろうな。オーバーホールもそこまであれに期待はしてないんだろう。なんやかんや外さないマスクを見れば、その気持ちはよく分かる。

 

慎重で潔癖━━━━特に潔癖はドがつく程で、以前無断でオーバーホールの私物に素手で触れた馬鹿は蹴り殺されかけた。俺達が止めなかったら、あの馬鹿は今頃魚の餌か木の肥料にでもなっていたかも知れない。普段が温厚に見える分そう言った稀に見せる暴力性が危険視され、組の中でさえオーバーホールを悪く言うものがいる。だが・・・俺はそれが間違いである事を知っている。

 

目の前のこいつは時に苛烈だ。

だが、それにも理由がある。なんの意味もなく突然そうする訳ではない。潔癖なんてもんは性格だから直しようもないし、以前蹴り殺されかけた馬鹿はその性格を知った上でやらかした。オーバーホールの怒りはもっともなのだ。誰でも自分のパーソナルスペースを越えられ勝手をされれば怒るものだ。

 

そして、こいつが苛烈になるもう一つの理由。

それも俺からすれば当然で、この八斎會に身をおいているなら、誰しもがそうであるべきだとも思っている。

 

『入中、廻の勉強の面倒見てやってくれねぇか。確かおめぇ、算数得意だったろ』

 

親父のあの言葉が無ければ、俺は一生気づかなかっただろう。オーバーホール・・・治崎という男がどういうやつなのか。

 

『へぃ、オヤジがそう言うんでしたら。一応俺も大学までは出てやすので小坊の勉強程度でしたら問題ありやせん。━━━ですが、手伝いてぇっつんだったら、幾つか餓鬼でも出来る事もありますぜ?実際の仕事みせりゃ、生意気な口も叩けなくなると思いやすが』

『そうなってくれりゃ良いがな。あいつは妙に大人びた所があっからなぁ。友達が出来たなんざとんと聞かねぇし・・・・はぁ、喧嘩ばっかりしやがって。たくよぉ。まっ、兎に角だ。廻にゃ勉強させろ。それも嫌なら、友達作って遊びでも行ってこいとも言っとけ。餓鬼が組の為にあくせく働いてるなんざ世間様にしれたら、うちの看板にケチがつく。いいな?』

『へぃ、畏まりやした。治崎には俺からしっかり伝えときやす』

 

あの時、オヤジの命令に頭を下げた時。

俺はオーバーホールの事を、面倒事ばかり起こす問題児程度にしか思ってなかった。

オヤジが少しだけ口にした、その喧嘩の理由をオーバーホールの口から聞くまでは━━━━━━。

 

 

 

 

 

 

 

 

『━━━━━本部長、きました』

 

少し昔のことを思い出していると、不意に部下の声が聞こえてきた。ヴィラン連合を迎えに入り口に待機させていた若衆の一人だ。俺は紙幣を数えるのを止め、イヤホンに集中する。

 

「何処で誰かに聞かれるかもしれねぇ。本部長は止めろ馬鹿。ミミックでいい。それで尾行はないな」

『はい、言われた通りに、途中何度か車を乗り換えてます。ダミーの車は予定通り各所に向けて移動中。今現在確認出来ている所、どの車も尾行されてはないとの事です』

「以前の会合は嗅ぎ付けられた。ヴィラン連合は目立つ、最後まで細心の注意を払え。いいな」

『へい。このまま案内します。ここからですと、到着は三十分程度掛かるかと』

 

部下との通信を終え、直ぐ様オーバーホールへ合図を送る。それを確認したオーバーホールは静かに立ち上がり予定していたソファへ腰を下ろした。俺もオーバーホールの護衛の為に側に腰掛ける。

 

「それじゃ、オーバーホール。俺はちょいと迎えに行ってきやす。幹部の誰も行かないってのは、奴さんにも面白くないでしょうから」

「・・・・ああ」

 

オーバーホールの返事を受け、クロノが部屋を出ていく。これからヴィラン連合との交渉が始まる。恐らく今回を逃せば協力体制を築くのは難しくなるだろう。ヒーローか警察かは定かではないが、今うちの組は監視されてる可能性が高い。チャンスはそう何度もないのだ。

だから交渉に向けて緊張するのは理解出来る。

 

だがしかし、どうもオーバーホールの表情が解せなかった。

 

「おい、オーバーホール。そいつはどんな面だ」

「・・・・いや。クロノはああ言ったが、恐らくその程度で臍を曲げるような奴ではないと思っただけだ」

「あぁ?事前の情報じゃ癇癪持ちの餓鬼だって聞いてたが?」

「俺もそう聞いていたが・・・・どうも違うらしい。以前の顔合わせで分かっていた事だが、頭はそこそこに回ると考えていいだろう。少し面倒になる可能性があるな。今回の交渉は」

「条件のことか・・・・ちっ、知恵をつける前に繋ぎたかった所だったな」

「仕方ない。こればかりは時期が悪かった」

 

時期もそうだがオールフォーワンの件も問題だった。ヴィラン連合に接触しようにも、どうやって知り得たのか老人共はあの男の影を察して幾度も俺達の邪魔をしていた。名を口にする事も、僅かにでも関わる事すらならぬと。やつが刑務所に叩きこまれてから老人達の妨害も止みやっと動き出す事が出来たが・・・その頃には警察の締め付けによって少なかったしのぎは更に少なく、例の件への資金を捻出するのでやっとの状態。

ヴィラン連合というビッグネームと接触するのはあまりにリスクが高く、会う為にもそれなりの準備が必要だった。金と人と時間、そのどれもが。それ故に接触すること叶わず、現状が最短だったとすら言える。

 

「それにだ、前情報自体が餌だった可能性もある。今更それを嘆いた所で現状が変わる訳でもなし。上手く転がすしかない」

「はぁ、餓鬼相手に接待か。頭のいてぇ話だ」

 

それからヴィラン連合との交渉について最後の打ち合わせを行う。元より決まっていた事の確認。五分もせずに終え、後はただひたすら待った。

 

到着予定時刻ほぼ丁度、部屋の扉が開いた。

視線を向ければそこにはクロノと死柄木の姿があった。

黒のロングコートを羽織った死柄木は相も変わらず顔面に手のマスクを付けた妙な出で立ちで、挨拶も無しに部屋の中を不躾に見回す姿はとても交渉の場に相応しいとは言えない様子。思わず怒鳴り散らしそうになったが、交渉を仕切るオーバーホールが視線で俺を制してきたので何とか口を告ぐんだ。

 

「殺風景な事務所だな、若頭」

「ゴチャついたレイアウトは好みじゃないんだ」

「あんたの趣味って訳か。あの地下の妙に入り組んだ通路も含めて・・・いい趣味してるな。丁度手頃なアジトが欲しかったんだ。あんたにでも頼もうか」

「勿論、金と時間を頂ければ期待に応えるとも。うちも手広くやっているからね。━━━とはいえ、先ずは電話の件を済ませてからにしないか。死柄木 弔」

「はっ・・・・まぁ、いいか」

 

軽い皮肉でのやり取りを交わしてから、死柄木は俺達の対面にあるソファへと腰を下ろした。尊大な態度でドサッと勢い良くだ。

 

オーバーホールから目配せを受け、この件について予定通り俺から話し始める。

 

「でだ、先日の電話の件、本当なんだろうね?条件次第でウチに与するというのは」

「都合の良い解釈するな」

 

呆れたようにそう言うと、死柄木はテーブルへと足を乗せた。不機嫌を示すようにオーバーホールが目を細める。

 

「そっちは計画とやらの為にヴィラン連合の名が欲しい。俺達は勢力を拡大したい。お互いニーズは合致しているワケだろ」

「足を下ろせ。テーブルが汚れる」

「『下ろしてくれないか?』と言えよ。若頭。本来頭を下げる立場だろ」

 

苛立ちの混じるオーバーホールの声を聞きながら、死柄木は淀みなく言葉を続ける。

 

「まず"傘下"にはならん。俺達は俺達の好きなように動く。五分・・・・所謂提携って形なら協力してやるよ」

「それが条件か・・・」

「そしてもう1つ、お前の言っていた"計画"。その内容を聞かせろ。自然な条件だ。名を貸すメリットがあるのか検討したい」

 

言う言葉は比較的まともだ。

それが不機嫌さを隠しもしないオーバーホールの前でなければ。

 

「尤も━━━━」

 

そう言いながら死柄木がロングコートの内ポケットへ手を差し込む。瞬間、オーバーホールから合図が送られ、俺とクロノはほぼ同時に行動を開始する。個性を使い体を変化。体の一部を大きな腕へと変えた。

そして俺がその巨大な腕で死柄木の胸ぐらを掴み上げ、クロノが後頭部へ銃を押し付ける。

 

「調子にのるなよ。自由が過ぎるでしょう色々」

「さっきから何様だチンピラがあ!!!」

 

俺の怒声とクロノの怒りを孕んだ静かな声に死柄木は怯えの色も見せず、俺達の様子を伺うように冷めた視線を送ってきて━━━━━思わず、俺は掴む力を緩めてしまった。そこに敵意があれば良かった。それは自然な事だ。だが、死柄木の目は嫌に静かで、感情がまるで見えない得体のしれないものだった。気づいた瞬間から背筋が酷く寒い。

 

「そっちが何様だ?これから仲良くやろうってのに、俺達とお前達じゃぁ失った物が釣り合ってないよなぁ。ザコヤクザの使い捨て前提の肉壁と『ヴィラン連合』のオカマ━━━━その命は等価値じゃないぞ。加えて、プラス腕一本分だ。この程度の譲歩も出来ないなら、この話はここで終わりだ」

「・・・・・クロノ、ミミック下がれ。折角前向きに検討してくれたんだ」

 

オーバーホールの声に、どちらともなく武器を納めた。

予定と違い死柄木が態度を変える様子はない。怒りもしなければ恐れもしない。それどころか俺達の様子を見て笑い声をあげてきた。嘲笑うかのように。

 

「何が面白い・・・」

「何がって・・・こんな餓鬼の為にしっかりお遊戯の用意してくれたんだろ?今日日のヤクザ者っては随分と世知辛いらしい。ヴィランの予備団体なんて馬鹿にされる訳だ」

 

吐き出された言葉に部屋の雰囲気が一気に冷え込む。

演技ではない本物の殺意が空気に混じる。

だが、死柄木はそんな空気をものともせずに懐からソレを取り出して話を続けた。小さな針のついたソレを。

 

「お互いくだらない駆け引きはなしだ。治崎 廻。興味が出てきた、計画とやらを聞かせろ。これが関係しているんだろ?撃たれたMr.コンプレスは暫く"個性"が使えなくなった。これから何をするつもりだ」

 

僅かな静寂が流れた後、オーバーホールは呟くように言った。

 

「理を壊す・・・・この"個性"社会の、な」

 

 

 

 

 

 

 

俺は計画について話し始めたオーバーホールの姿に、あの日の幼かった治崎の姿を重ね、思い出していた。こいつに付いていくと決めた、忘れもしないあの日を。

目の前で狂人が如き言葉を吐く、オーバーホールの目的、その先にあるその思いを。

 

何かが大きく動き出す。

聞こえる筈のない、その音を聞きながら。

 

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