私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~ 作:はくびしん
とち狂ってて、すまん。
どうしてもやりたかったんや(*´ω`*)コウカイナシ
「いえす!はっぴぃーはろうぃぃぃぃぃぃん!!」
中学生になって初めての年の10月31日。俗にいうハロウィンの日。
友人に誘われて彼女の家へ訪れれば、黒のトンガリ帽子と黒のワンピースを身に纏った友人が無邪気な笑顔と共に元気一杯で出迎えてくれた。少し化粧もしてるのか、美人といって差し支えない顔はより磨きが掛かってる。もはや、芸能人とかモデルといっても通じるレベルだ。本気だして一体何を落とすつもりなのか。
取り敢えず出会い頭に一枚写真を撮り、いつものように「よっ」と挨拶しておく。するとそれに応えるように元気良くポーズを取ってきた。耳に手を当てたホーガ●ポーズ。ホーガ●ポーズだよね?前に言ってたし・・・あっ、称賛しろってか。
「もう!焦れったいぬぅわぁ!どうよ!ちょー似合うっしょ!ねぇねぇ、どうよ!」
「あーーはいはい、可愛い可愛い。分かったから変なポーズ取らないの、台無しになるわよー」
「ふふ、パシャ子。分かってないなぁ~、台無しなんてなるものかよ。私はいつだってキャワイイ。そう、こんなポーズを取ってもね!!」
バッと鶴の構えを取る友人。
まぁ、言われた通り可愛いは可愛いが・・・それ以上にアホに見えた。私はまごうことなきアホを取り敢えず手元のカメラで写真に収めておく。後で馬鹿にしよう。
「それはそうと、今日は随分と気合い入れてるね。子供会の手伝いで近所回るだけでしょ?」
「ふふふ、分かってないなあ。お菓子の量って相手のさじ加減でしょ?やっぱりあげる方もさ、全力でトリトリしてる方にお菓子あげたくなるじゃん。そういうこと━━━━で、つまり!パシャ子!なんだその気合いの籠ってない仮装は!シーツ被っただけって、こらぁぁぁぁ!」
いや、まぁ、シーツだけど。
でも一応目を描いたり装飾だって付けている。
最低限はやってると思うのだ。お化けだよ、お化け。
けれど友人はお気に召さなかったらしく、随分とご立腹の様子。しかしトリトリって・・・いや、トリックオアトリートの略なのは分かるけどさ。
荒ぶる友人の話をぼんやり聞いてやり過ごしてると、直ぐに友人のお母さんが顔を見せた。友人は母親から鋭い眼光を向けられ即座に固まる。それこそ蛇に睨まれた蛙のように。
「何玄関先で騒いでんの。近所迷惑でしょうが・・・あら、いらっしゃい。ユーちゃん迎えにきてくれたのね。ごめんなさいね、いつもいつも」
「いえ、どうせ暇でしたので。それにこれとは好きで付き合ってますので、気にしないで下さい」
これは本当。小学校からアホさ加減は見慣れてる。
知った上で面白いから結局あれこれ付き合ってるのだ。
でなければ、こんなトラブルメーカーと一緒にはいない。
「これ!?いま、これ呼ばわりしなかった!?ねぇ!」
「今、ユーちゃんと私が話してるの・・・見えなかったかしら、双虎?」
「はっ、はぃ!!母様!!」
シュバッと、一瞬で友人━━双虎は直立不動の姿勢へ。
流石に、天才で美少女で暴走特急な友人にとって数少ない弱点の一つ。中学に進学してもその効力は未だ衰え知らずらしい。引子おばさん相変わらず凄いな。
それから少し友人の家でお茶してから、子供会の手伝いをする為に集合場所へ向かった。友人が背負った大きな籠を目にし、楽しげな鼻歌を聞きながら歩くこと少し、集合場所となっている公園に小学生がゾロゾロと集まってる姿を見つけた。思い思いの仮装に身を包んだその子達は楽しそうにお喋りしたり駆け回ってたりする。
私達が近づくと何人か知り合いの子が気づいて、以前と同じ笑顔で駆け寄ってきた。
「ユーちゃん!ふたちゃん!」
飛び付くようにくっついてきた下級生に友人がホーガ●ポーズをする。察しの良い子が「可愛い!」とか「綺麗!」と言うと一気に調子が最高潮になった。
ちょろすぎて不安を覚える。いや、勘は矢鱈良いし、大丈夫だとは思うけど。
そんな友人を見て素直になれないお年頃な男の子が舌打ちをした。あっ、と思ってると男の子がそのまま口を開く。
「化粧とか、ババァじゃん」
それは恥ずかしさを誤魔化す小さな呟きだった。
けれど友人の耳にはちゃんと届いたそうで、寒気のする笑顔で少年を見つめたかと思うと、その隙だらけの頬をぎゅぅと横に引っ張る。
「あんだと、この野郎・・・?誰がババァだ、誰が」
「あででででで!!んだよ、ババァはババァだろ!!」
「よーし、よく言った。貴様には地獄すら生温い。私が押さえてるから、今の内やっておしまいお前達!!」
そんなアホ満載な言葉に友人を慕ってる女の子達がワラワラよってくる。手には何も持ってないけれど、ワキワキと動くその様子を見れば何をするのか理解出来た。
少年もそれを理解したようで、何とか友人から離れようと暴れ始める。・・・・だが、無駄。伊達に男子と殴り合う日常を送ってる訳でない友人の腕力から逃れる事は出来ず━━━━程なく少年の笑い声が公園に響いていった。割としつこく。
取り敢えず少年の勇姿と大人げない友人の姿を写真に収め、私はハロウィンイベントの最後の打ち合わせの為、子供会の保護者達の元へ向かった。
「やっ、ひゃめろぉぉぉ!!」
「ふははは!泣け!喚け!己の愚かさを恨みながら!」
「くっ、くしょぉぉぉぉぉ!!まじょ、おんにゃ、ひゃめろぉぉぉぉぉぉ!!」
中学生になったというのに、相変わらず馬鹿な友人を横目に見ながら。
「━━━━ぷっ、まったく」
「トリックオアトリート!!」
「「「「トリックオアトリート!」」」」
「どっちかと言うと、お菓子欲しいです!」
「「「「お菓子欲しいです!」」」」
元気な声でお菓子を要求して回る友人と子供達の姿を写真に収めながら歩く事暫く。予定の半分を終えた今現在、友人の籠には沢山のお菓子が積まれていた。小さい子達よりずっと多くだ。
元々子供会の呼び掛けに応えてくれた家々だから、お菓子を渡してくれるのは当然なんだけど・・・それにしても友人は貰い過ぎな気がする。私もおこぼれでそこそこ貰えたけど倍くらい差があるのだ。
不思議に思ってると一人のお爺さんが「双虎ちゃんに悪戯されるのは怖いからねぇ」とニコニコしながらお菓子を渡してる姿を見て察した。
お供えだったか、あれ。
そんな事を露知らず「化粧したかいがあったな!」と満面の笑みを浮かべる友人は幸せそうなので、真実は胸の内にしまっておこうと思う。
友人の幸せそうな横顔を写真に収めていると、カメラのレンズ越しに見慣れた顔が映った。爆発したような金髪頭。喧嘩ごしの鋭い目付き。ポケットに手を突っ込み肩を揺らして歩く姿は威圧感たっぷりで━━━━。
「かっちゃんがいたぞぉぉぉ!!取り囲めぇぇぇ!!」
「━━━━ああ!?んだ、てめぇら!?」
━━━━不良にしか見えない男の子、友人の幼馴染でもある爆豪勝己くんはあっという間に友人と子供達に囲まれた。不憫に思う。予想出来る未来、お菓子もぎ取られる姿を思って。
「トリックオアトリート!!お菓子くれないと悪戯するぞ!!机の中に蛇入れたり、お昼前にお弁当を空にしたり、下駄箱に偽ラブレター大量に入れるぞ!!」
「てめぇか!!人様の弁当空にしやがったのは!!クラスのどいつも何も話しやがらねぇから、どうせてめぇだろうとは思ってたが・・・・つか、あの糞手紙もてめぇか!!何処かラブレターだ、ごら!!不幸の手紙だろうが!!」
そういえばそんな事してたなぁ。
証拠写真は家にある気がする。
苦笑いしながら生暖かい目で悪戯にせいを出す友人を見守る皆の姿が脳裏に過る。
「おかし!おかし!かっちゃん、おかし!」
「かっちゃん!おれヒーローチョコ欲しい!!」
「おれも!!」
「っせぇ!かっちゃんかっちゃん喧しいぞ!!糞餓鬼共ぉ!!馬鹿に便乗してくんじゃねぇ!!蹴散らすぞ!!」
荒い言葉使いだが周りにいる子供達はさして気にした様子はない。すっかり友人に毒された子供達には通じないらしい。そんな子供達の様子を睨みつけていた爆豪は不意に私を見てくる。何とかしろ、って言われてる気がする。
「おい、ごらぁ!!モブ顔てめぇ、すかした顔で見てんじゃねぇ!!何の為に馬鹿と一緒にいんだ!!止めろや!!」
「えぇっ・・・別に私ストッパー枠でもないし、それにそういうのは爆豪の役目でしょ」
「んなぁ訳あってたまるか!!」
本人はそう言うが、少なくとも小学校から付き合いがある連中にはそれが共通認識なんだけど・・・いや、余計なことは言わないでおくか。どうせ否定されるだけだし。
そうこうしてる内に爆豪は完全に追い詰められていった。少し離れた所から見つめてた保護者は、やっぱり生暖かい目で見守ってる。流石、ご近所さん。耐性半端ない。
「だぁぁぁぁぁぁ!!糞が!!っせぇ!離れろや!!菓子渡しゃぁ良いんだな!?面倒くせぇ、くれてやっから寄るな!」
あっさりと陥落した爆豪に歓声があがる。
爆豪のお小遣いがどの程度あるのか知らないが、今月分は間違いなく飛ぶだろうなと、ちょっと可哀想に思う。
取り敢えず情けない姿をカメラに収めておく。
「・・・おい、パシャパシャすんじゃねぇ」
「学校じゃ撮れないから、つい」
思わずまたパシャりとしてしまう。
するときつく睨まれた。
「何が面白ぇんだ、お前はよ。昔っから」
「ははは、ごめんごめん。━━━━後で、撮った写真送るからさ。ね?」
「なっ、んなもんいるか!!ボケが!!」
苛立ち混じりに爆豪はそう吐き捨てるけど、チラチラとこっちを見る姿に葛藤を感じる。
欲しいんだろうな、うん。意地でも言わないだろうけど。
「━━━━━なに話してんの?ほら、お菓子。はよ」
「ったく、黙ってろ馬鹿」
友人に側に寄られ、爆豪は少し慌てた様子で近所のスーパーに向けて歩き始める。その後を追い掛ける友人と子供達・・・それと保護者達。仮装もあって百鬼夜行のようである。何も仮装してないのに、しっくりくるな爆豪。何処か忠犬臭いし、狼男とか?ふふ。
しかし、誰もこの寄り道に文句言わないな。
いつもこんなん何だろうか。
我が友人の周りは。
「・・・ふふ、飽きないなぁ」
シャッターを切ったのも友人が初めてだった。
叔父さんと同じように写真の個性を持っていたのに、私にはそれを原像する能力がなかった。瞳というレンズに映した映像を頭の中でしか残せない、そんな欠陥個性。
それでも写真を撮るのは好きだった。人には見せられなくても、頭の中で素敵な景色をいつでも見れたから。優れてなくても、私はそれだけで良かった。
『どう、どう!今のかっこ良かったしょ!アングル的にこう、こう!ほら!こうさ!背中語ってない!?へへっ、燃えたろ・・・?ほらぁ!どうどう!?』
何処かの誰かさんが、目をキラキラさせて撮れた写真についてアホみたいに聞いてこなかったら・・・きっと今でも変わらなかったと思う。
あの時初めて、誰かに見せたいと思った。
私が見えてる景色を。
カメラを構えてレンズの向こうを覗く。
喧嘩しながら歩く楽しげな二人を視界に収め、瞳に宿る個性と共にカメラのシャッターを押した。
カシャリ、と。
「かっちゃん、私アイスが良い。ハーゲン●ッツが良い」
「ふざけんじゃねぇ馬鹿」
パシャ子の名前間違えてた(;・ω・)
直しといたで。すまんな。