私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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とうやくんの話、めちゃ重そうやん。おまっ、こんな重そうなもん後において置かないで。下手したらおかんのより酷くなりそうやん。ほんと、エンデヴァーはエンデヴァーだな。もう。そういうとこだぞ☆!


覚悟完了したので突撃しますけど、おまんら覚悟出来とるとや?そう、なら、今しなさい!十秒以内に!10987654321、ゼロぉ!!はいアウト!!の巻き

アイアンクローの悪夢から翌日の夜。

かっちゃんの部屋にてB組のれいちんから借りたホラーゲームで敵を無心のまま殴り倒していると、不意にスマホから必殺する人が出てきそうな曲が鳴り響いた。

 

私はコントローラを放り出し、素早くローリングして充電器に差さりっぱなしになってるそれをキャッチ。かっちゃんが文句言う前に、これまた素早く画面を操作し、目的のそれを表示させる。

 

「・・・おい、馬鹿双虎。せめぇ部屋ん中でバタバタすんな。それで?」

「体力全回復のお知らせだった・・・かっちゃん回っといて」

 

さっと差し出せばかっちゃんは渋い顔しながらも、なんやかんやアプリを起動してイベクエを回し始めてくれた。

 

「パスするくれぇならやんじゃねぇよ。ったく。そもそもなんで同じ曲にしとくんだよ。ややこしいだろうが」

「いや、これもこれで大事だし・・・」

「色々言いてぇが・・・・だとしても、今だけは変えとけや」

 

あれからまだ一日。早期に動くといっても、流石に昨日の今日で何か動くとも思ってない。当日は現場近くに通行規制も敷きそれなりの規模のガサ入れになるらしいから、関係各所と打ち合わせしなきゃいけない事は幾らでもある筈だ。あのヒーロー達との打ち合わせも、それの一つだったに違いない。

 

だからこうしてバタバタしても仕方ないのは分かるんだけど・・・・どうにも落ち着かないんだよなぁ。

 

「ああぁぁぁぁぁぁーーーー」

 

ゲームに戻る気力がでなくて、私は側にあったクッションに顔を埋めてうめき声をあげてみた。

特に意味はないけど。

 

「あああぁあぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁ」

「・・・・」

「あっ、ああああっ、ぁぁぁあああっあぅあ」

「・・・・・・」

「ああああああああああああっ━━━━たぁ!?」

 

突然のお尻への痛みに振り返れば、かっちゃんの踵がめり込んでいた。乙女のお尻になんたる無礼者。しかもそれが超絶天才美少女である私の神々しいお尻様である事を考えれば、もう無礼者では済まされないギルティ。許すまじ。

 

「貴様ぁ・・・私のプリチーなお尻に踵落としとは。覚悟は出来てるんでしょーねぇ?シチュー掻き回しの上、打ち水、ポ●モン刑ものだかんな。この無礼者めが」

「てめぇは俺に何をさせてぇんだ」

 

呆れたように言うと、尚もゲジゲジお尻を蹴ってきた。

腹立ったので脛目掛けて蹴りを入れてやる。

しかし、不発・・・・!当たる寸前で足を浮かされ、難なくかわされた━━━ので、そのまま下半身を持上げ、腰を捻って回転。勢いそのままにカポエィラキックをかっちゃんの太腿に叩き込んでおく。あしどん師匠から教わったブレイクダンスがこんな所で火を吹くとは・・・・よし!

 

流石にそこまでやるとは思ってなかったのか、クリーンヒットしたかっちゃんがうめき声をあげた。

ざまぁである。

 

「無駄な技能っ、身につけやがって・・・・!」

「無駄ではない!こうして役に立ってる!ありがとう、あしどん!」

「あのっ、黒目女・・・!余計なもん、馬鹿に覚えさせやがって」

 

そうこうしてるとかっちゃんの部屋のドアがノックされた。誰か呼んだのかとかっちゃんに目で聞いてみると、心当たりがないのか首を捻っていた。そのまま二人で様子を伺ってると、もう一度ノック音。

 

「爆豪、いるか?」

「おっす!爆豪!ちっと話しようぜ!」

 

ドアの向こうから響いてきたのは落ち着いた声と賑やかな声。直ぐに二人の顔が頭に浮かぶ。無表情なのと、暑苦しいのだ。

 

「良いぜ、開いてるから入ってきな。話しよーぜ。くそ髪、紅白饅頭」

「誰の真似だ、こら」

「胸に手を当てて考えてみるんだぜ、こら」

 

かっちゃんの物真似して声を掛けると、ドアの向こうから切島の狼狽える声が聞こえてきた。

なんかブツブツ言ってる。

 

「━━━ん、いるな。爆豪。やっぱり緑谷も一緒だったのか」

「えぇっ!?轟!?おまっ、駄目だろ!この空気は入っちゃ駄目なやつ!駄目なやつだから!そうだろ、爆豪!!」

 

「ぶっ飛ばすぞ、クソ髪」

 

かっちゃんの悪態に切島が「素直じゃねぇーなぁー本当によぉ!」と嘆いてる間に、轟が当たり前のように入ってきてテーブルの所にコンビニ袋を置いて腰掛けた。なんか良い匂いがする。中華まん?

 

じっと袋を見つめれば、轟がその袋から取り出した肉まんを私の方へ差し出してくる。その眼差しは兄貴みに満ちた優しげなものだった。滲み出るあんちゃん感に胸がほわほわする。あんちゅわん。

 

「わりぃ、緑谷。お前いるって知らなかったから買ってなくてな。俺の肉まんで勘弁してくれ」

「・・・ゆるす。あんちゃん、次はピザまん買ってきて」

「あんちゃん・・・ピザまんか、分かった」

 

妙にキラキラした目で頷く轟は放っておき、貰ったホカホカの肉まんにパクつきながら改めてやってきた二人の話を聞くと、どうやら私と同じように落ち着かなかったそうだ。それでその気持ちを分かってくれる話し相手が欲しくて、ウロウロしてたら廊下でばったり遭遇。そのまま何やかんや話聞いてくれるかっちゃんの部屋にきたらしい。正直、私以外からも話し相手認定されてるとは思わなかったので驚きを隠せない。

 

「・・・・でもなぁ、いや、よく考えれば分かる事だったんだよな。いるよな、緑谷。わりぃ、邪魔して」

「気にするな切島。いちいち気にしてたら話す機会はないぞ。最近は一緒にいない時を探す方が難しいからな」

「えっ、そうなの?マジで?もう、そんな感じなの?」

 

「おい、馬鹿共。その話今すぐやめねぇと口縫い合わせんぞ」

 

二人の糞失礼な話を遮るように、二つのコップがテーブルへ乱暴に置かれた。慣れっこなのか特に気にせず、二人はコップへ各々が買ってきた飲み物を注ぐ。本当に慣れた手つきだ。私がいない間もこうやって流されたり、部屋を占領されてたのかも知れない・・・ああ、なんて可哀想なかっちゃん。少し来る頻度下げてあげようかな。最近ゲームしに来っぱなしだし。

 

かっちゃんを憐れんでいると切島がしんみり話し始めた。

 

「━━━まぁ、それでよ、いよいよ明日か明後日だろ?突入。実際どうなるかわかんねぇけど、あんなやべーことしてる連中の本拠地なら戦いになる可能性はたけぇ・・・・ぶるってる訳じゃねぇけど、少しな」

 

そう言って鼻の頭を擦る切島にはいつにもまして不安が見てとれた。かっちゃんもそれに気づいたみたい。何か言いたい事はあるみたいだけど、まだ口を開く気はないらしい。

 

「実際よ、俺はお前らと違ってすげぇ技とかある訳じゃねぇし、緑谷みてぇに個性をすげぇ使い方出来る訳でもねぇ。だからっていって梅雨ちゃんみてぇに頭が回る訳でもねぇ。この間はさ、ファットガムには褒められたけど・・・あれは相性が良かっただけなんだよ。しかもファットガムがいなかったら、きっとヴィランは取り逃がしてた。だから、そんな俺なんかいて役に立つのかなってさ」

「切島・・・・」

「あっ、ちげぇぞ。轟。止めたいって訳じゃねぇんだ。それは違う。俺だってあんな話聞いて知らねぇフリも、何もしねぇなんてのも選べねぇし選ぶつもりもねぇ。エリちゃんの事は助けてやりてぇし、やべー薬作ってるヴィランは許せねぇんだ。だから、そういうんじゃねぇんだ・・・・ねぇんだけどさ━━━━」

 

顔が下がった切島の様子に、かっちゃんが鼻をつまらなさげに鳴らした。弾かれるように顔をあげた切島とかっちゃんの目がしっかり合う。

 

「っだらねぇ事言ってる暇あったら、一秒でも多く個性鍛えてろや。猪馬鹿が。そのすげぇ技とやら何度も止めておいて今更何ほざいてんだ」

「そ、そりゃ、訓練だったしよ・・・・」

「訓練もクソもあるか、止めた事に変わりはねぇだろ。んで、てめぇが小細工出来ねぇクソ雑魚なのは、今に始まった事じゃねぇだろうが。うだうだすんじゃねぇ、うざってぇ。硬くなって突っ込むのがてめぇの役目だ。敵の前だろうが、仲間の前だろうがな」

 

そう言われて切島はっとした顔になる。

 

「何度も言わすなや。倒れねぇってのは、それだけでクソ強ぇんだよ。USJでのオールマイトの戦う姿、もう忘れたンか。てめぇは」

「忘れてねぇ、忘れられっかよ」

「だったら、それをやれや。てめぇは俺の本気をぶちこんで、それでも倒れねぇクソ壁だろうが」

 

言いたい事は言ったとばかりに話を打ち切る。

そのまま切島がせっせと用意してたお茶を飲み干し、私のスマホでイベクエ回しを再開した。軽快な指捌きに思う。体力が無くなるまで、あと十分。多分。

 

「・・・・クソ壁、な・・・ちっとは言い方ってあんだろ。まったく」

 

そう言いながら切島は何処か照れ臭そうに頭を掻く。

言ったかっちゃんも多分照れ臭いのか、スマホを覗き込む表情は何とも言えないもの。若干悪戯心がウズウズしたけど、たまには良い格好させてあげようと放置することにした。優しさが他の追随を許さないレベルだよね。さすわた。

 

「爆豪、どうかしたのかそのか━━━━」

「おっと、轟ング。可愛い過ぎる妹と謎々しようか。パンはパンでも食べられなくて気持ちよくなれる重いパンはなーんだ?」

「食べられなくて、重い・・・・フランスパンか」

「ぶぶーー!残念!てか、普通に間違えてきたかぁー、あんちゅわんマジかー。正解はガチムチの腹パンだぉー」

「・・・・?パンじゃないのか?」

「?だから腹パンでしょ?」

「それはパンなのか?」

「???」

 

微妙に噛み合わずお互い首を傾げあってると、私のスマホが元気よく鳴り響いた。

それもまた、あの必殺しそうな曲。

 

けれど、今度は少し違った。

殆ど同時に他のスマホも鳴り響いたのだ。

かっちゃんのも、轟のも、切島のも。

 

「かっちゃん」

 

声を掛けると直ぐにスマホが手渡された。

アプリを閉じてメールを確認すると、七三から決行日と私達の事務所の受け持つ仕事について事細かく記載されている。パッと見、それは事務的な内容。けれど何となくだけど、その味気ない文章に七三の意気込みみたいな物を感じた。

 

「例の件の決行日と仕事内容について、クソ親父・・・エンデヴァーから送られてきた。お前らもか?」

「俺も来たぜ、轟。ファットガムさんからだけど。爆豪のやつもそうか?」

「けっ、状況考えたらそうだろうが。いちいち確認すんじゃねぇよ」

 

この三人も同じ様な内容がきたらしい。

それならお茶子達も今頃メールなりメッセージなり受け取ってる頃かも知れない。

 

「明後日・・・・」

 

作戦決行日は明後日。

近隣の通勤時間に目処が立つ頃合いを見計らっての突入になるらしい。私の役目は邸内への案内。可能なら突入前にエリちゃんと連絡し、位置を特定する事も仕事の内だ。事前にエリちゃんから地下通路の事は聞いて地図も作成してるから、場所さえ聞ければ一直線に行ける。

まぁ、エリちゃんの記憶に間違いなく、あのウンコまつげ嘴が対策してなければ━━━の話でもあるけど。

ただこれは言い出すとキリがない話でもある。どれだけ集めても情報は過去の物。参考にするのは兎も角、信用を置きすぎて良いものじゃない。結局は出たとこ勝負なのだ。こういうものは。

 

 

 

それから少しして、私を含めたヤクザの屋敷突撃部隊が寮のエントランスに集合していた。その中に戸惑いを顔に浮かべる者はいない。全員が全員、覚悟の決まった良い顔をしている。

 

私は握り拳を掲げた。

 

「━━━━ふぅ、よし。皆、明日は準備出来る最終日!けれど、今更慌てることはない!対人訓練をし、装備を新調し、連携の訓練を重ねた!出来る準備は全てやったのだから!あとは本番気合いを入れてやるだけ!」

 

私の言葉にお茶子達が頷く。

かっちゃんは半目で見てくる。

 

「恐れることなかれ!怯えることなかれ!我々は研鑽を重ねた!最早我が軍に勝るものなし!故に━━━━━明日は装備を整えたら街に繰り出して!!男共の奢りで美味しいもの食べて戦勝祝いしちゃうぞぉー!!!」

 

「おおーーー!って、なるか!奢りの部分とか、大仕事前日にはっちゃけようとする部分とか、賛成出来るか!マジで前日くらい大人しくしとけ!相澤先生に見つかったらお前締められるぞ!?」

「緑谷ちゃん。前日くらいゆっくり休みましょう?また朝起きられないわよ」

「せやねぇー」

「緑谷、祝いは帰ったらやれば良いだろ。その時は俺が好きな物奢ってやる」

 

 

「━━━ですって、かっちゃん参謀!思った以上に反対されました!!それでも私は美味しい物は食べたい!人の金で食べたい!何か包帯先生を回避出来て、轟と切島の財布を開かせ、お茶子達が納得して付いてきてくれる良い案はない!?せい!!」

 

「準備したら直ぐ寝ろ。どうせ起きられねぇんだ」

 

あっさり裏切りおったわ、こやつぅぅぅぅ!

 

 

 

 

 

 

 

こうして明日はゆっくりする事が決まったのであったとさ。くそぅ・・・・。かなしみ。


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