私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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これ、今年中には終わらんなぁ(;・ω・)


決戦前夜だからといって何かあると思うなよ!人生って割と味気ない感じだからね!そんなもんよ!宴とか、死亡フラグ立てまくりのお話合いとかな━━━えっ、もしかして、あれが死亡フラグ?いやいや、え?の巻き

「爆豪、放課後職員室にこい」

 

帰りのHRが終わると同時、包帯先生はいつもの何考えてるか分からない表情でそれを言った。かっちゃんは「あっ?」とドスの利いた声で動きを止め━━━━何故か私を見てくる。なにその目。何かしたろ的な。意味わかんないだけどー。

 

「何したんだ、てめぇ」

「はい、意味わかんなーい。特に理由もなく疑わないで貰えますぅー?ねー包帯先生ぇー?かっちゃんですよね?かっちゃんの事お呼びなんですよね?かっちゃんがやらかしたんですよね?!」

「てめぇと一緒にすんな、馬鹿。第一、俺だけじゃねぇーからな」

 

そう言ってかっちゃんは教室を軽く見渡す。

何を見てるのか釣られて見てみれば、ほぼ全員が私の事を見つめていた。またかと呆れたような視線、残念な子に向けられる慈悲に満ちた視線、悲しげな視線、馬鹿にした視線━━━━兎に角皆が見てた。

さっと、体をその場から移動しても視線は私に付いてくる。近くのカーテンに身を隠し、数秒置いてからまた顔を出して見てもまだ視線がこっちに向いていた。何だってんだ、こりゃぁ。

 

「えぇっ、おかしいおかしい!私じゃないから!そっ、えっ!かっちゃんだよ!?呼ばれたのかっちゃんだけでしょ!?それでなんで私!?」

 

思わずそんな言葉が口から漏れると、眼鏡が眼鏡を指でクイクイしながら口を開いた。

 

「・・・いや、そうは言ってもな。爆豪くんは、まぁ、なんだ、殆ど君の保護者というか」

「かっちゃんが私の保護者!?私が保護者じゃなくて!?」

「それは図々しいにも程があると思うぞ。緑谷くん」

「図々しいにも程がある!?」

 

さっとお茶子を見ると頷かれた。

近くの梅雨ちゃんを見ても頷かれる。

望みを掛けて女子ーズの面々を見て回ったけど、例外なく全力で頷き返された。なんでなん!?

 

「いやさ、そりゃぁね?流石に幼馴染というか・・・ニコが爆豪の手綱握ってる時もあると思うよ?割とさ」

「ふざけたこと抜かしてんじゃねぇぞ、黒目」

 

「でもねぇ、その分ニコやんは普段から爆豪にリードに繋がれてる感あるからなぁ。なんていうのかな、自分を猫と勘違いしてる虎と、そんな虎を嬉々として甘やかす飼い主的な」

「目ん玉腐ってんのか、透明」

 

「まぁ、リード云々は兎も角さ、実際呼び出されんのは大概緑谷でしょ?で、その後とばっちりくって説教くらうのは爆豪。━━━━で、これもさ、同じような事が起きすぎて、もうお家芸みたいな所あるじゃん」

「誰がお家芸だ。耳たぶ、コラ」

 

「これまでの事を鑑みるに、緑谷さんが保護者というのは無理がありますわ。納得いかないと言うのであれば、反省し改める事をオススメします。━━━まぁ、正直、爆豪さんも普段の態度がそれなりなので、実際比べると大差はないとは思いますが」

「一緒にしてんじゃねぇ、痴女」

「痴女ではありません!あれは、私の個性を活かす上でベストを目指した結果であり!趣味嗜好を理由に好き好んでそうした訳ではありませんわ!!訂正してください!爆豪さん!聞いていらっしゃいますか!?」

 

かっちゃんに言い募る百を横目に包帯先生を見れば、疲れたような溜息を吐かれた。止めて、そういうの地味に傷つくやつ。

 

「話の内容を教えるつもりはないが・・・取り敢えずだ。緑谷、お前が思ってる類いの話じゃない。人の不幸を喜ぶな、馬鹿者」

「ソンナワケ、ナイジャナイデスカー」

「白々しい。今すぐ止めないと、お前も職員室に来て貰うぞ」

「すみませんでした」

 

連行されるかっちゃんを見送り、私は翌日の準備の一環としてお茶子達と発目の元に向かった。装備のメンテナンスを頼んであるのでその確認、問題があれば再調整して貰う為である。

 

いつもの部屋に辿り着くと、相変わらずの元気過ぎる爆発音が響いていた。自重というものを何時になったら覚えるのか。あいつは。ね、お茶子・・・・なに、その目は?なんなの?何が言いたいの?なによ!もう!

 

お茶子のジト目から逃げるように部屋に入れば、漫画みたいに黒焦げになってるアホの姿が目に入った。声を掛けながら指で頬をつついてみれば目がカッと見開く。

 

「誰かと思えば緑谷さんではないですか!!今日はモニターの依頼はしていないと思いますが!!あっ、新しい装備の発注ですか!?良いですとも、是非聞かせてください!!」

「早い早い、まだ何も言ってないでしょーが。そうじゃなくてメンテナンス頼んでた装備受け取りにきたの。終わってるんでしょ?」

「あぁ、そちらでしたか。はい、勿論です。既に先生より許可も受けましたので、いつでも受け取りOKですよ。今お持ちします」

 

テキパキと動き出した発目をよそに、梅雨ちゃんが不思議そうに首を傾げる。

 

「装備のメンテナンスって、企業がやってるんじゃないの?」

「最初はそうだったけど、発目と知り合ってからはずっと発目に任せてるよ。私は。なんやかんや融通利くし」

「けろっ、ヒーローアイテムって作るのにも資格が必要でしょ?発目ちゃんって私達と同級生なのだから、その資格もないんじゃないのかしら。実践で使用して大丈夫なの?」

 

梅雨ちゃんが不安気にそう言うと「問題ありません」と言いながら発目がアイテム一式を持って帰ってきた。

アイテムは見た感じピカピカの新品同様。メンテナンスというより改修したんじゃないかぐらいに仕上がってる。

 

「おっしゃる通り、私は資格を持ってません。なので、正式に校外で使用する場合は先生を通して、公的機関から使用許可を受ける事になってます。私が緑谷さんの為に作ったアイテムは全部申請が通ってるので問題ありません。メンテナンスに関しても、資格を持ってる先生に確認して貰っていますし」

「けろっ、そうだったのね。何も知らないで失礼な言い方してごめんなさい。勉強になったわ。ありがとう発目ちゃん」

「いえいえ、お気になさらず!全然気にしてませんし、なにより覚えていられるとも思えませんし!」

「それはどうなのかしら・・・・」

 

梅雨ちゃん達の話を聞きながらピカピカになったアイテムを手にとって見てみた。流石に発明狂いの発目作だけな事もあって隅々まで行き届いてる。装着して試してみても問題らしい問題が見当たらない。ゴーグルに関して言えば、バッテリーが前回より小さくなってるまである。

 

「ゴーグル軽くて良いんだけど、バッテリー容量は変わってるの?」

「バッテリー容量は前回と殆んど変わりません。機能を限定して使って頂ければ連続使用二時間。各種センサーをフルに使うと三十分ですね。ただ、バッテリーを交換式にしましたので、補助バッテリーと切り替えて貰えれば倍の時間はいけます。今回は長丁場の仕事になる可能性があると聞いてますので、どうぞこちらも」

 

そう言って手渡されたのは発目印とメリッサ印が刻まれた小型のバッテリー。試しにゴーグルに付け替えてみれば、さっとワンタッチで換えられた。戦闘中でもこれは使えそう。

 

「いやぁー!ですが!メリッサさんは凄いですね!バッテリーの改修案がこんな奇抜な方法とは思いませんでした!Iアイランドで研究してるだけあります!私は目から鱗が止まりませんでしたよ!良いですか、緑谷さん!このバッテリーの機構なんですが以前のバッテリーと違い━━━━━」

「あっ、そうだ。ねぇ、発目。前に頼んだベビースターのカートリッジって作れた?」

「━━━━はい!そちらもですね、もう用意してあります。ノウハウは元からありましたし、中身を変えるだけだったので難しくはありませんでした。箱に入ってるそれが簡易充填器で、こちらカートリッジです。爆豪さんの手榴弾の充填器とも互換性があるので、側にいるならそちらを活用して頂いた方が効率的ですよ。あと、カートリッジは爆発に耐える為に強度あげた関係で重くなってます」

「そっか、さんきゅ」

 

爆発属性ゲットだぜぇ。

これであの嘴まつげを銀河の彼方まで吹き飛ばせる。

試しにベビースターに装着して宙を飛ばしてみると、話に聞いてた通り少し重い。問題になる程でもないけど。

 

「爆豪ちゃんありきの専用の装備、ね。━━━ねぇ、お茶子ちゃん。これ何処まで本気なのかしら」

「何処までも本気なんやろなぁ・・・そういう意味では。爆豪くんの苦労が目に浮かぶわ」

「時間の問題かしらね」

「せやろねぇ」

 

何か後ろから聞こえる。何が時間の問題なのか。

コソコソ何話してんの、あの二人?

気になるぅ。

 

えっ、ブーツについて?はいはい、何か仕様変えたの?はぁ、材料を?ふぅん、まぁ、取り敢えず履いてみるからそれからでも良い?はいはい、聞いてるよー。

 

 

 

 

 

 

 

「明日は仕事だと聞きました。気をつけていってきて下さい」

 

装備を一通り確認した後、発目とお茶休憩してると妙に真剣な顔でそんな事を言われた。基本的に人道から二三歩外れてる発目が心配を口にするのは珍しく、一緒に聞いてたお茶子と梅雨ちゃんは信じられないものを見る目で発目を見た。気持ちは分かる。

 

「どういう風の吹き回し?」

「どういう?特別何もありませんが。ただ、メンテナンスするに当たって『今回のメンテナンスは念入りに』と先生から聞いてましたので。それで何かあるのではないかと・・・おっと、これは極秘扱いでした。すみません」

「あーいや、大丈夫。ここにいるのはそれに参加する人だけだし」

 

そう教えると発目は「成る程!」と納得し、栄養ドリンクとスポドリ・それと各種ドリンクをちゃんぽんさせた謎の液体で喉を潤した。

 

「あっ、爆豪さんは参加されないんですか?装備のメンテナンス依頼は入ってましたけど」

「目敏いなぁ・・・・いや、かっちゃんも一緒に行くよ。今日あんたの所にも来ると思う」

「汗の吸収効率をあげる改修案がありましたので丁度良かった。メリッサさんと協議した結果ですね、面白い素材が提案されまして。今回は間に合いませんでしたが、次の改修では試してみたいと思ってたんですよ。早く来ませんかね━━━━あっ、話が逸れましたね。そういう事で、明日はお気をつけて」

「うん、まぁ、ありがと?」

「いえいえ。無事に帰って頂けたらそれだけで」

 

なんだろ、大した事言われてないのにムズムズする。

どうも座りが悪い気分を味わってると、発目が申し訳なさそうに少し眉を下げた。

 

「何か変でしたか・・・?」

「ん?いや、変というか・・・変じゃない事が変というか。ほら、普段変なやつが変なのは普通だけど、変なやつが普通な事したら変でしょ?そんな感じ」

 

「・・・いや、そのまんまやん」

「けろっ、嘘偽りなしのドストレートね」

 

二人の華麗なツッコミを聞き、発目は不思議そうに首を捻った。自覚なしか、こいつ。

 

「よく分かりませんが、私の気持ちが伝わってるなら、それで構いません。昔から人の気持ちというものは共感し難い所がありますし。教えられてもよく分からないんですよ。そもそもあんまり興味ありませんから、聞かされてもあれなんですが」

「あんたねぇ・・・はぁ、でもメリッサとは上手くやってそうで良かったよ。メリッサもアイテム馬鹿な所あるからもしかしてとも思ってたけど」

「メリッサさんは素晴らしいですよ!私とは違いプログラミングに長けた方で、ゴーグルの制御コンピューターのプログラミングは本当に素晴らしかったです!しかもそのコンピューターは極限まで無駄を削ぎ落とした超軽量タイプのもの!それでいて機能は従来の多機能ゴーグルを凌ぐ作りになってるのです!解析した所、バグすら利用して作業効率をあげている部分もありまして!いや、凄いです!私は用途に応じた特化型がメインですが、メリッサさんは多機能に着目し万能性のある━━━━━」

 

それから発目先生によるありがたいアイテム製作講義に付き合わされた。なんやかんや用事を終えたかっちゃんと合流する時間まで付き合わされて、太陽はすっかり地平線の彼方へどっぷり。出掛ける時間を失ってしまった。せめてお茶子達と喫茶店とかでケーキと紅茶お供にのんびり過ごしたかったんだけど・・・まぁ、仕方ないか。今度エリちゃんも交ぜてやるさ。

 

そのままかっちゃんの調整に付き合って、発目に見送られて四人で寮へと帰った。「気をつけて下さいねー」と口にしながら見送る発目に、隣にいたかっちゃんが目を見開いたのは言うまでもない。似合わないもんね。分かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、明日の作戦に参加する一年ズ皆からメッセがあった。明日頑張りましょうとか、エリちゃん助けようぜとか、無茶し過ぎないようになとか、一人で突っ走らんようにねとかとか。

ビッグ3のパイセン達からも同じ様なメッセがきて、その中でも黒豆パイセンのは一際熱量の籠ってた。見てるだけでムワァってする。寝る前なのに暑苦しくしないでほしぃ。

 

━━━それと、珍しくかっちゃんからも。

 

『俺がいる事を忘れんな』

 

だってさ。

 

「もう少し、何かないもんかね・・・ふふ」

 

素直に頼れって言ってくれても良いのに。

言われたら言われたらで、ぞっとするとは思うけど。だってねぇ、気持ちは嬉しいけど、やっぱり柄じゃないからさ。

 

メッセの表示されたスマホを胸に、相変わらずのぺちゃんこな布団へ倒れ込んだ。見上げた先に電灯から伸びるネコキャラのついた電源ヒモと、面白みのない白い天井が目に映る。空いた右手でヒモにネコパンチしながら、私は明日を思った。忙しくなるであろう、明日を。

 

ぼんやりしてると、電話が掛かってきた。

かっちゃんかなと思えば、ガチムチからだった。

 

「はいはい、こんな時間にどうしたんですか?」

『あっ、出てくれた。ごめんね、こんな時間に。本当は昼間の内に話しにいくつもりだったんだけど、ちょっと忙しくて・・・・明日、いよいよだろ?それでね』

「あぁ、ガチムチもですか?」

『HAHAHA、その様子だと、もう色々と声を掛けられた後かな?』

「皆して大袈裟なんですよ。普通にインターン行ってくるだけなのに」

 

発目も、ガチムチも、メッセをくれた皆も。

私はいつもと何も変わらない。

やりたい事をやりにいくだけ、それだけなのだ。

 

『緑谷少女、色々と伝えたい事はあるが・・・あまりくどく言っても意味はないだろうから、私からも一言だけ言わせて欲しい』

「ん、なんですか?」

『頑張れ、応援している!』

 

飾り気のないその言葉に、思わず笑みが溢れた。

言葉が頭の中に浸透してくとおかしくなってきて、耐えきれなくて声をあげて笑ってしまう。

そうしたら電話の向こうからも釣られたのか笑い声が聞こえてくるようになって、二人で暫く笑い声をあげた。

 

「ふっ、ふふっ、あっ、ありがとうございます。なんか元気でました」

『そうか、それなら良かった。明日は早いんだろう?もう寝なさい。おやすみ緑谷少女』

「はーい、おやすみなさーい」

 

電話を切った後、皆にメッセを返してから枕を抱いてさっさと目を瞑った。明日の為に。今も待ってくれている、あの子の為に。


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