私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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シリアス「賽は投げられたァ!」

ギャグ「イキイキしとるなぁ」
シリアル「いつまで持つかなぁ」


キラキラハートが真っ赤に燃える!畜生倒せと震えて唸る!赤い血潮と青い血潮に義理と人情捩じ込んで!魅せてくれるわ、爆裂道!!私の幼馴染を誰だと思って━━━えっ、YOUベンチなの!?まじで!?の巻き

「バーニング!」

「いえす、バーニング!」

 

時刻は朝8時00分。場所、警察署の駐車場。

かっちゃんの背中に装備された私の前に現れたのは、髪の毛を炎のように揺らす一人の女性ヒーロー。

 

「元気そうだね、緑谷双虎!いや、今はニコって言った方が良いわね!今日はよろしく!」

 

そう言ってハツラツとした笑顔を浮かべたのは、エンデヴァー事務所のサイドキックの一人。カラオケ大会でデュオった事もある、やたらハイテンション女性ヒーロー。バーニンこと、ウサ姐さんであった。

 

「おはよう、緑谷。遅刻しなかったな」

「嫌みかッッッ!!貴様ッッッ!」

「?・・・・いや?そんな事ねぇぞ。良かったな、爆豪が気づいて」

 

 

あと、ナチュラルに煽りよる天然紅白饅頭であった。

この野郎ぅぅ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遡る事小一時間前、八斎會への突入作戦決行日。

前日いつもより早く寝て、目覚ましも沢山かけ、枕元に着替えを用意して、尚且つ十秒チャージで二時間キープ出来る朝食も添えて━━━━出来る努力に努力を重ねた私が寝起きに見たのは、鬼の形相をするかっちゃんと起床予定時刻より遅れた時間をさす時計であった。

世の中はまったくもって無慈悲である。

 

遅刻する訳にはいかないので直ぐ様着替え、先にいったお茶子達を追い掛けて出発。自慢の健脚で走りきり、何とか時間に間に合う電車に乗り込んだ。それからは突如迫ってきた睡魔に負け、何度目になるか分からない一生のお願いで愛馬かっちゃんに乗馬。目的地につくまでの間、いつもの背中で惰眠を貪りながら集合場所へと辿り着いたのである。

 

で、集合場所である警察署には会議に出てたヒーローと警官隊がゾロゾロいた訳なんだけど・・・見つけた轟の側に何故だか目立つことこの上なしなファイヤーおハゲがおらず、おハゲの事務所でサイドキックしてるウサ姐さんがいた。相変わらず景気よく燃えてる。色々と。

取り敢えず元気よく挨拶されたから、かっちゃんの背中から降りて全力で返事を返したけど、なんでこの人いるんだろ?はて?

 

「あははは!相変わらず威勢は最高だね!!皆から元気にしてるか様子見てきてくれって頼まれてたけど・・・・その様子だと聞くまでもないか!わははっ!」

「ウサ姐も元気そーだねぇー」

「ったり前よぉ!しかし、そのウサ姐ってなんなの?前は聞きそびれたけどさ」

「バーニィーだから」

 

名前がそれっぽいんだよね。

気風と見掛けは燃えてるライオンそのものだけど。女子に向かってライオンはないし、バー姐もババァ扱いしてるみたいだし・・・間をとった結果だよね。

不思議そうな顔をするウサ姐に見えるよう、自分の頭に両手をつけてうさうさアピールしてみれば、ウサ姐も気づいたみたいでハッとする。

 

「あぁ、成る程。バーニィーね・・・・てか、あたしはバーニンよ。バーニン!━━━まっ、別に良いけどね!好きに呼びねぇい!ニコ吉!」

 

ニコ吉・・・!?ま、良いけど。

好きに呼んだらんかぁい!ニコ吉です、いぇぃい!!

 

軽い挨拶をかわし改めてウサ姐に話を聞くと、どうやらあのおハゲ遅刻してくるらしい。あれだけ格好つけておいて遅刻してくるらしい。まぁ、別事件に引っ張られて到着が遅れるだけで、何処かでやんちゃしてるとかではないみたいだけど。やんちゃしてたらもいでる所だった。何がとは言わない。

しかし、最近忙しいのは聞いてたけど、ここまでとは。

 

それでおハゲ来るまでの代理、及びインターン生の監督役としてサイドキックの中で手の空いてたウサ姐がやってきたそうだ。当然ウサ姐とおハゲとでは実力差は大きく離れてて、本来おハゲに与えられた役割をこなせる筈もない。なのでウサ姐をリーダーとしたかっちゃんと轟チームは地下突入組から急遽変更。地上制圧組になるそうだ。

私としては納得したけど、かっちゃんと轟は納得してないみたいで顔をしかめてる。

 

「・・・・・っち」

「どうにかなりませんか、バーニン」

 

「いやぁー、気持ちは分かる!けど、こればっかりはどうにもね!所長なら兎も角、あたしじゃ室内での戦闘能力は随分落ちるし、何より仲間の邪魔をしかねない。人手に多少余裕がある以上、無理な配置で動くより得意を活かして仕事した方が効率的にも良いし・・・まぁ、何も見学しろって訳じゃないから、出来る事ちゃんとやれば良いのよ!」

 

そうテンション高めにウサ姐が言うけど、二人の表情は変わらない。全然納得してない顔だ。

 

「んなもん、何とでも出来るわ。過保護してんじゃねぇ、地下いかせろや。どう考えても敵の主力はそっちだろうが」

「炎熱に関しては指摘された通りです。けど、氷結に限定すればかなり細かくコントロール利きます。何か出来る筈です。本来のチームでいかせて貰えませんか」

 

「いや、だからね?もう決まった事な訳よ!そりゃ今回みたいな大きな仕事は早々ないし、張り切る気持ちは分かるわよ!でも自分の役割をきちんと果たすってのもヒーローとして・・・・ちょっ、いや、だからもう決まった事で・・・だかっ、駄目だ・・・・ちょ、近い!迫ってくんな!話聞け!青春ボーイズ!!ええぃ、だからぁ━━━━━━━」

 

諦めの悪い血気盛んな二人がウサ姐に迫る姿を横目に、周囲を改めて確認すればジェット爺ちゃんの姿もない。今作戦の指揮をとっている警察と七三が特に慌ててる様子もないから、それなりに事情あっていないんだろうとは思う。戦力低下が著しいぃなー、もう。仕方ないけど。

 

その後はかっちゃん達を捨て置いて黒豆パイセン達と合流。改めて自分達の役割を確認し、警察の人から渡された八斎會の構成員リストをチェック。仕事の事で包帯先生と最後の打ち合わせもした。

その後は警察のありがたいお話があったけど・・・・まぁ、そこはね。うん。ね。あれだよ、仕方ないね。全部妖怪のせいだから━━━━違うんです、包帯先生!違うんですよ!本当に!!これはっ、あれが、それで、あれだっただけで、そうじゃないんです!寝てないです!瞑想してたんです!本当に!えっ、妖怪!?よ、妖怪とか関係ないです!やだなぁ、あははは!いっつぁ、ニコジョーク!いぇーい!

 

よっしゃぁ、頑張るぞぉぉぉ!!

皆ぁぁぁぁ!!

うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!

 

 

すんまんせしたぁ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

公衆の面前でお説教を受けてから暫く。

時刻は8時25分。

場所は━━━━おヤクザ様の本邸。

 

他の面子より僅かに早くこっそり侵入した私と包帯先生は建物の陰で今作戦において最初の仕事をしていた。

包帯先生はその場所につくと「これだけの監視がある中、一人でよくここにくる気になったな。ニコ」と、褒めてそうで褒めてない寧ろ怒ってるお小言を頂いた。さーせん。

 

包帯先生に警戒を任せゴーグルの機能を使い彼女の持つ通信機にアクセスすれば、掠れた音がイヤホンを通して響いてくる。通信機の周囲から特別音はない。

 

なので「にゃーん」と何度か合図を口にしてみる。

すると、ガタガタと慌ただしく何かが音を立てて、荒い息づかいと共にそれが聞こえてきた。

 

『━━━ふたこ、さん?』

 

小さな声はあの時と変わりなく。

私の鼓膜を揺らした。

これで最後の憂いは消えた。

 

 

彼女はまだ、そこにいる。

 

 

包帯先生に視線で合図を送りながら、マイクへ口を近づけた。伝えたかったそれを、あの子にちゃんと伝わるように。

 

 

「お待たせ、エリちゃん。待ってて、今迎えにいく」

 

 

返事は直ぐに返ってこなかった。

響いてくるのはエリちゃんの泣きじゃくる声。

屋敷の入口が騒がしくなり始めた頃、か細い震えの混じった声で一言だけ返ってきた。

 

『・・・・う"ん"っ』って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よし、エリちゃん迎えにいくついでに、フルぼっこしにいこうか。覚悟しとけ、嘴まつげ。無駄にプラプラしてるそれもぎ取って、明日から楽しい楽しい女の子生活始めさせてやるからなぁー。あはは。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

八斎會本部、時刻AM8:30。

一つの報せを聞いた俺は身支度を整え、いつもの湿り気の混じる薄暗がりの地下廊下を歩いていた。

 

バタバタと騒がしい地上の屋敷と違って、ここに響いてくるのは俺の足音と静かな空調音だけ。静寂は好みではあるが、漂うそれはやはり不快極まりなかった。マスク越しにも鼻をつくカビ臭さ。掃除も換気もそれなりにしてるつもりだが、老朽化した水道パイプが天井に通っているせいかここは湿気が高い。そうなるのは必然ではある、それにいつもここは何かが腐ったような臭いが混じる。恐らくは下水道からだろうが・・・・まぁ、原因はどうあれ最悪といえる。

 

だが、こんな場所でないと出来ない事がある。名を捨て、姿を隠し、こんな所に沈まなければ出来ない事が━━━━━━。

 

 

 

 

 

「━━━━親父」

 

辿り着いたその部屋には、一人の老人が横たわっていた。八斎會の組長にして、俺の親父であるその人だ。

部屋には心拍を測る計器や呼吸器を始め、人間の生命を維持する機械が集められている。どれ一つにも不備はなく、あの日から今日まで何一つ変わらず、正確に適切に正常に作動している。親父の体に取り付けられた夥しい管に異常がないか確認し、俺はそれらに触れないようシワだらけになった手に触れた。

 

「悪い。少し、騒がしくなる・・・・」

 

俺の声に返事は返ってこない。

耳に響くのは親父の心臓が動いている事を知らせる電子音と、指に伝わる弱々しい脈動のみ。

けれどそれで十分だった。

 

生きてさえいてくれれば良い。

いずれ俺がこの手で直せば良いのだから。

 

「もう少しだけ、待っていてくれ。俺が━━━━━」

 

この人はこんな所で終わって良い人じゃない。

この人はそうあるべき人間なのだ。

俺とは違う。

 

 

「━━━━あんたに相応しい椅子を、用意するまで」

 

 

親父の様子を窺っていると、ポケットにしまっていた携帯が震えた。コール画面をタッチし耳に当てれば、クロノスの声が響いてくる。

 

『オーバーホール聞こえてやすか?確認が取れました。ヒーロー共、数分もしない内に乗り込んできやす。機材の搬出はやはり難しいかと』

「例のサンプルと資料だけ持ち運べ。機材は一ヶ所にまとめておけ、俺が処分する」

『勿体ない話でやすね。了解、分かりやした。それとエリはどうしやすか?』

「そのまま置いておけ。包囲の穴が分かり次第、俺が連れていく」

『分かりやした。引き続き監視から報告させやす。後は合流してから話しやしょう』

 

通話の切れたスマホをしまい、親父を一目確認してから部屋を出た。

 

 

 

 

 

「病人共・・・・・」

 

 

 

 

 

足音が、空調の音が耳に響く。

いつもより大きく、はっきりと。

耳障りな程に。

 

 

 

 

 

「大局を見ようともしない、サル共・・・・・」

 

 

 

 

 

腹が立つ。虫酸が走る。

 

 

 

 

 

 

「どいつも、こいつも・・・・!」

 

 

 

 

 

 

怒りで頭がおかしくなる程に。


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