私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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ギャグ「おいも戦うでごわす」
シリアス「いや、帰ってくれ」切実

アオハル「我輩も戦うで候う」
シリアス「本当に帰って、お願い」切実


んどらぁー!っすぞこらー!っでんじゃねーぞ!!ザッケンナコラー!!ん?なに?えっ、今の何だったのかって?ヤクザ語の練習中。の巻き

時刻8時30分丁度、けたたましい轟音が響いた。

ヤクザの奇襲によって門の残骸と警官隊が吹き飛び、幸先悪すぎる八斎會突入作戦は始まった。

 

「あっ?なんじゃてめぇ━━━━」

「何処の餓鬼だ。勝手に━━━━」

 

門の前で始まった馬鹿騒ぎを横目に、忍んでいた茂みからやっほーした私は━━━━。

 

「ニコちゃん108の必殺技ァーーーーー」

 

━━━━構えた両の拳と近くでたむろっていた男達の顔面に引き寄せる個性をフルスロットルで発動。対象の男達と支えのない私の体が、弾かれるように宙を舞い急速に接近。そのまま態勢の整わず慌てる男達の首もとへ、渾身の力を込めて二の腕で叩きつけてやった。

 

「「━━━━ぶっへえ!?」」

 

ラリアットの一撃で男達は三回転半宙を回り、白目を剥いて地面へと落ちる。起き上がる気配がない事を確認して、私は玄関に向けて歩みを戻した。

 

「ちわーす!エリちゃんのお友だちのニコでーす!今日は遊ぶ約束してたんですけどぉー、なんかぁー待ち合わせ場所にこなくてぇー、だから迎えにきちゃいましたぁーー!案内お願いしまーすぅ♡!」

 

可愛らしさ満点で挨拶すると、まだまだ元気満々な厳つい顔した組員連中は少しの間ポカンとした後、眉を吊り上げて怒号を吐いてきた。

 

「てめぇ!!餓鬼がぁ!!」

「ザッケンナコラァーー!!」

「何処の鉄砲玉だごらぁぁっ!!カチコミ決めて無事で帰れると思うなぁ!!あああ!?」

 

武器を手にしたり個性を発動し始めたりと、無抵抗を決め込むやつはいない。臨戦態勢バリバリ。

なので、こちらも腰元のホルダーに手を掛けた。

 

「上等じゃぁ!!掛かってこんかい!!こらぁ!!こちとら桜田門がバックじゃいごらぁ!!」

 

桜田門の言葉にほぼ全員の体が硬直する。

私はその隙にホルダーの留め具を解放。ベビースターを引き寄せる個性でフルスロットル射出。近場のヤクザの顔面にぶち当て意識を刈り取る。命中したベビースターには直ぐ様別の標的へとフルスロットルで引き寄せ。淡々とそれを繰り返す。何度も。

そこにいる連中が、ただ一人も立ち上がらなくなるまで。

 

 

ニコちゃん108の必殺技━━━Extra。

 

『ニコニコ・メテオール』。

 

 

ベビースターの生み出す銀の軌跡が吹き荒れて十秒程。それはそこにいた連中から意識を根こそぎ刈り取った。ぐったりと地面に伏せる連中の姿に、反撃する余力のあるやつは見えない。中にはやり過ぎた感のいなめないボロボロ過ぎるやつもいたけど・・・・。

 

「てへぺろ!━━━ったぁ!?」

「てへぺろで済むか」

 

スッパァンと頭を叩かれた。

こんな時なのに割と強めだった。

痛い、知能値数が6は下がった。

 

痛みをこらえながら視線をそこへと向ければ、布で縛りあげたおヤクザを引き摺る包帯先生。私が対応出来なかったおヤクザを処してくれたらしい。ありがとうしたいけど、なんか見るからにお説教モードなのでお口チャックしとく。

 

「やり過ぎだ。その上、勧告もなしに攻撃するな」

「あぁ、まぁ、ですけどぉ・・・」

「言い訳はいい注意しろ。焦る気持ちは分かるが、抵抗の意思を示す連中だけ相手しろ。出来ないとは言わせないぞ、ニコ」

「・・・・りょでーす」

「返事はキビキビしろ。はい、だ」

「はい!!」

 

そうこうしてると玄関突入組がやってきた。

七三や黒豆パイセン達を始め、かっちゃん達や切島達もいた。けど、お茶子達の姿が見えない。合流してきたかっちゃんに軽く聞いたら門の所で暴れてるヴィランを相手してるらしい。無事だと良いけど・・・あっ、警察の方々こっちでーす!警察の人ーー!犯罪者一杯でーす!回収お願いしまーす!はい、なんか、いきなり襲ってきました!せーとーぼーえーですぅ!

 

 

 

「ノックしてもしもーし!!」

 

 

 

心を入れ換えた私は合流した皆の先頭を駆け、懇切丁寧を心掛けながら━━━━飛び蹴りで屋敷へダイナミック突入。私達の来訪を歓迎するように虎の剥製がお出迎え。なにこれ可愛い。

 

土足でお邪魔する事に申し訳なく思いつつ、お出迎えしてくれた虎の剥製とツーショットを自撮りし、時折出てくるおヤクザさんと拳で楽しいOHANASIAI。包帯先生のありがたいお言葉通り、抵抗しようとする連中のみ相手していく。ザッケンナコラー!だよ!

 

しかし相手の抵抗が激しい。

負ける気はしないけど、息つく暇もない。

いちいち相手してる私が悪いけどさ。

 

予定より後ろの位置で息を整えながら走ってると怒号が前から聞こえてくる。

 

「怪しい素振りどころやなかったな!!」

「俺ァだいぶ不安になってきたぜオイ!始まったら進むしかねえがよ!!」

 

太っちょマンとファンキーモンキーの言葉に天ちゃんパイセンがなんか言ってるけど、声ちっちゃくて聞こえてこない。ボソボソ聞こえる。それに応えて警察の人も何か言ってるけど、全然聞こえてこない。何だってぇ!?え、スイーツが、糖質で、何だってぇ?!あっ、なんか切島吼えてない!?なに!?なんなの!?交ぜて!私を交ぜろぉ!!

 

「かっちゃん!前で、何言ってるの!?聞こえる!?気になるんだけど!!いいお店の話!?私知ってる!?」

「少なくともスイーツの話はしてねぇわ!!馬鹿!!抵抗すんなゴラァァ!!」

 

抵抗の意思を示すおヤクザに爆裂パンチをかまし、かっちゃんは隣に駆け込んできた。

 

「そろそろ俺は抜けるからな!!てめぇ、無茶だけはすんじゃねぇぞ!!全員叩き潰して直ぐ行く!!良いなぁ!!」

「あいあい!かっちゃんこそ油断して掘られたりしないようにね!流石に私も慰め方が分からないから!!」

「何の心配してんだ!!この特級馬鹿が!!」

 

そんな話をしてると分かれ道が視界に映る。

かっちゃんはそれを見て忌々しげに舌打ちすると、ずいっと拳を突き出してきた。

 

「先に行って待ってる。援護よろ」

「秒だ、ボケ」

 

私達は軽く拳をぶつけ合わせ別方向へと駆けた。

私は七三達と一緒に地下室を目指して。

かっちゃん達は本邸の更に内部を目指して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かっちゃん達と別れてから少し。

七三の制止を求める声を受けて、ある掛け軸の前で全員の足が止まる。手早くそこに置いてあった花瓶を横へずらし、七三は板敷きに手を押し当てる。

 

「この下に隠し通路を開く仕掛けがある。板敷きを決まった順番に押さえれば━━━━」

 

ガチリという音が聞こえると同時。

掛け軸の掛けてある壁が音を立てて横へとずれていく。

ちょっとだけ忍者屋敷のようでワクワクした。悪の秘密基地感たまらないんですけど。

 

ていうか、なんでこんな事知ってん?ん?

 

黒豆パイセンに教えて欲しそうな視線を向ければ、私達が待機してる間に偶然エリちゃんをお世話してるお間抜けな組員を捕まえ、予知の力で地下室の入り方やら構造やらをある程度知ることが出来たそうだ。そう言われると朝渡された資料の地図に追加事項が書かれてた気がする。あれか、なるなる。

 

しかし、この時期にそんな情報漏らすとか・・・本当間抜けじゃのう、嘴まつげ。

 

 

「━━━━━バブルガール!!」

 

 

隠し扉が開ききろうとした時。

ムカデさんが強い口調でバブっちの名前を呼ぶ。

すかさず構えたバブっちの前におヤクザが怒鳴り声をあげながら突っ込んできた。

 

「一人頼む!」

 

スーツから覗くムカデさんのムカデ手足が伸びる。

二人のおヤクザは抵抗する間もなく、ムカデな腕に巻き付きつかれ拘束された。特別虫嫌いでもないけど、流石に見てるとゾクゾクする。

残った一人はバブっちに泡で目潰しされた後、関節を綺麗に極められて仕留められた。

流石にプロ。一瞬だった。

 

まぁ、私でも出来ますけどね!天才でごめんね!

 

「追ってこないよう大人しくさせます!先行って下さいすぐ合流します!」

 

バブっちの声に止まっていた足が再び駆け出す。

七三を追い掛ける形で地下室へと続く階段を降りていって直ぐ、予定ルートが壁で防がれていた。騒ぐ連中をスルーしてゴーグルを装着。発信器の場所を探せば、やはり壁の向こうから反応がある。地図上でも通路は存在してる。何より目の前壁の至るところに、模様のような不自然なひびが見える。コンクリ先生が個性を使った時、創造物に出来るものと似たようなひびだ。

 

「サー!俺が━━━━」

 

黒豆パイセンを追い越し、七三達を追い越し。

誰よりも前へ、ブーツに仕込んだスパイクを起動させながら力一杯踏み込む。

 

「レッドなんとかッッッッ!!!全力硬化ァッッ!!」

「はっ、れっ、えっ・・・・お、おう!!」

 

一番力の籠る腕と切島を対象に、引き寄せる個性をフルスロットルで発動。気合いと根性と腕力と、天下無双の乙女力で一気に引っこ抜く。

 

ニコちゃん108の必殺技、special。

『吃驚仰天人間カタパルト━━━切島Ver』。

 

硬化した切島が空気を切り裂き飛ぶ。

狙ってる壁と切島にも引き寄せる個性を使う。

更に加速した切島弾丸に鋭さが宿る。

 

激しい衝突音が響く。

思ったよりずっと脆かったらしく、壁は切島のたった一撃であっさりと砕け散った。

そして壁の先にはエリちゃんの情報通り通路が見える。

 

「━━━━よし!ストライクッッ!」

「よし!ではねぇーよ!?びっくりしたぁぁぁぁ!いきなり人を投げ飛ばすなよ!?人を何だと思ってるの!?」

「人は人、切島は切島じゃん。ははは、うける」

「ははは・・・うけないわ!!てか、俺ってなんなの!?何扱い!?何枠!?」

 

切島が抗議の声をあげた瞬間、通路が粘土みたいに歪んだ。個性による妨害なのは間違いないけど、覚えてる限り資料の中にそんな事を出来るやつはいなかった。

 

「道がうねって変わってく!!これは、治崎じゃねぇ・・・逸脱してる!考えられるとしたら、本部長『入中』!」

 

警察の人が口にしたそれに覚えはある。

自らが入り込んだ物を自在に操る個性。

確か"擬態"だとか。実際の力を見ると、擬態とは違う何かに見えるけど。

 

個性の効果範囲は出力を考えれば、別の人間である気がしないでもないけど━━━私はその可能性を限りなく0だと思う。何故なら、そんな便利な奴がいたら入口をそもそも塞いでるし、こうして通路も地下室も残しておかない。最初からそんなもの無かったことに出来るなら、リスクを犯して警察やヒーロー相手をするより、目を欺いた方がずっと効率的で理に叶ってる。狡猾な嘴まつげなら、それを思い付かない筈がない。

 

だからこれは、それが()()()()()()人間の仕業。

 

 

 

 

 

 

 

「包帯先生、先行きます━━━━━」

 

 

 

 

 

 

 

声を掛けると同時、思い切り体を前へと引っこ抜く。

包帯先生の呼び止める声が聞こえたが、今は止まってる時間がない。幸い歪みの速度はそこまで速くないが、少しでも遅れれば通路が塞がってしまう。

迫ってくる瓦礫をかわし、壁の隙間をぬって奥へ奥へ体を引っこ抜いて行けば、何とか歪みのない通路に滑り込めた。私が通りきった所で通路が完全に塞がる。

 

予想通り個性の効果範囲はそこまで広くなかったらしい。あの手のタイプは支配してる範囲内ではアホみたいに強いが、そこから一歩でも出てしまえば大抵がゾウリムシくらい雑魚だ。怖くない。

 

恐らく切島が話していたブースト薬とかいうので一時的に個性を強化していたのだろうと思う。ブースト薬とは違うけど、同じ様な事して見事に個性に振り回された元テロリストを知ってる。自在に操るという触れ込みと違ってかなり大雑把に壁が流動していたように見えたし、多少の違いはあれ出力の大きさに慣れてないのは間違いないと思う。

 

 

 

そうじゃなければ、流石に私の特攻くらい止められていただろうし。

 

 

 

息を整えてから通路の奥に向けて歩き出すと、背後から「ニコ!」と大きな声を掛けられた。振り向かなくても分かるけど、一応そこを見てみれば黒豆パイセンが壁をすり抜けてきていた。フル装備だと教えてくれた衣装から早速バイザーが行方不明になってる。これは全裸になるのも時間の問題か。

 

「━━━━俺がきた!なんてね!一人で行くなんて水臭いじゃないか!俺も行くよ!」

「他の皆は大丈夫そうでした?」

「はははは!心配いらないさ!サーもいれば、サンイーターもいる!他のプロヒーローだって心配されるほど弱くないよ!━━━それより先を急ごう。相手がブーストなんて無茶な物を使ってまで時間を稼ぎにきてる以上、この先に必ずいる筈だ。それもそう遠くない距離に、だ。だから強行したんだろ、ニコ」

 

この人も大概頭がよく回る。

 

「文句とか言ってませんでした?」

「ははは!サーもイレイザーもカンカンさ!帰ったら怖いね!!まぁ、一緒に怒られてあげるからそんなに落ち込まないでよ!それにね、イレイザーはこうも言ってたよ━━━━━お前が正しいと思う事をしてこい、ってね!」

 

 

 

ぐっと、サムズアップした姿に包帯先生の姿が過った。

 

 

 

「━━━っし!!行きましょうか、ルミルミパイセン!!」

「あぁ、ニコ!!今度こそ助け出そう!!」

 


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