私のヒーローアカデミア~わんほぉー、わんほぉーなんだってけかをお断りし続ける私の楽しい英雄物語~   作:はくびしん

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ああああぁぁぁぁぁ!!エリちゃんにニッコニコで笑って欲しいのぉぉぉ!!


バトル漫画的には奥の手を先に使った方が負けるけど、そもそも奥の手ってここぞで使う技なんだから使われた時点で必殺じゃない?怖っ。の巻き

「いたたたたっ!!に、ニコっ!応急措置は、ありがたいんだけど、もうちっと優しく━━━━あたぁっ!?」

 

ぐるぐるヤクザと糸目ヤクザを蹴散らして少し。

切島と太っちょマンと合流出来た私は、先の戦闘で負傷した切島の応急措置をしていた。

本来なら合流した時点でトンズラこくつもりだったのだが、切島も死にかけで私もそこそこ疲れてたので最低限の治療をする為に小休憩を挟む事になった。

都合よく近場に休憩出来そうな部屋があった事。別メンバーと連絡をとった太っちょマンから、幹部の半数を捕らえたって話を聞いた事とかも、休む事を決めた理由の一つである。

 

「優しくして欲しかったらサービス料金払えー。私は看護師でも医者でもないんだから。━━━て言うかこんな超絶美少女に治療されてるんだから、そこは泣きながら感謝する所でしょ。あっ、その包帯とって」

「あっ?・・・・・・これか、おらよ。おい、根性ねぇこと言ってんじゃねぇぞ、烈怒頼雄斗。さっさと怪我治療して俺と再死合しろ。今度こそ、絶対に殴り殺してやっからよ」

 

「自分で美少女とかいうなよ。いや、まぁ、本当のことかもしんねぇけどさ・・・・・つーか、ニコ。隣の人の殺気がハンパじゃねぇのは止めようとか思わねぇ?ぶっちゃけ怖ぇんだけど」

 

言われて隣を見るとぐるぐるヤクザが鼻息荒く肩を回してる。右腕は相変わらずピクリともしない。反対の左腕は拳が負傷してる以外、一見すると元気そうに見えない事もないけど・・・・実際は切島に見えない足を生まれたての小鹿並みにガックガクさせてる。包帯取らせた時も明らかに体がふらついてたし、あんなに分かりやすい所にある包帯を認識するのに時間が掛かったから意識は朦朧としてる筈。戦闘中に把握したこいつの性格を考えれば、これが演技の可能性もないと思う。

だからまぁ、言動は兎も角、今のこいつは見た目怖いだけの安全施設解説ヤクザだ。太っちょマンに捕まえさせずフリーにしてるのはそれが理由。どうせ逃げられんしぃ。

 

「OK丸、OK丸。最悪は私がボコるし」

「おう?なんだ、女。てめぇが相手か?良いぜ、炎だろうがあの妙な力だろうが、真正面から捩じ伏せてやるよ」

「はいはい、そういうの良いから。それよりそこのウォーターサーバーって大丈夫なやつ?大丈夫なら切し・・・・あーーーーレッドライオットに飲ませたいんだけど」

「あっ?知らん、大丈夫だろ。俺は腹壊したことねぇ」

「じゃぁ一杯ちょーだい」

「ほらよ」

 

「・・・・猛獣が、猛獣操ってる」

 

誰が猛獣か。

喉笛噛み千切るぞ、こら。

 

切島に水をくれてやった後、一息ついてたら太っちょマンに預けておいたエリちゃんがこっちにきて、ひしっとしがみついてくる。可愛いので頭を撫で撫でして、頬っぺたをむにむにして、ぎゅっと抱き締めとく。可愛い。えっ、絆創膏貼ってくれんの?ありがとー。自分だと何処怪我してんのか見えないから助かったよー。

 

僅かに心が和んだ所で、突然目の前に紙コップが差し出された。エリちゃんがびくりと肩を跳ねさせ、そそくさと私の後ろへと隠れる。見ればぐるぐるヤクザが水を持ってきてくれてた。

 

「てめぇの分だ。小娘」

「さんきゅー、エリちゃんの分は?」

「エリちゃん?このガキか、ちっ、面倒だな。待ってろ」

 

やってくれるんかい。

 

そう心の中で静かにツッコんでると、太っちょマンが「やってくれんのんかい!」と綺麗にツッコミしてくれた。代弁ありやとですぅ。

 

「水はええわ。エリちゃんには俺のスポドリあげといたさかい・・・・ちゅーかやな。乱波くん、君は、あれや、なんなん?どーいう立場の人間やねん。敵ちゃうんかいな?」

「ああん?何訳分かんねぇこと言ってんだデブ。俺はオバホに命令されてここにいんだぞ、敵に決まってんだろ。だからこうして、態々治療してやってんだ。早く治して再死合する為にもよぉ」

「ずれとる、ずれとるで色々と・・・・まぁ、ええか。しかし、君みたいなんが何でヤクザの使いっパシリみたいなんしとるん。こないな所に収まるタマやないやろ、君は」

 

太っちょマンの言葉に私も同意。

このぐるぐるヤクザ、こういう組織にいるタイプの奴じゃない。良い意味でも、悪い意味でも、だ。

 

太っちょマンの言葉を受けたぐるぐるヤクザは手にしてた紙コップで一杯水を飲み干すと、ロープで縛って転がしておいた糸目の上に腰を下ろした。「ぐぇっ」と悲鳴があがる。

ぐるぐるヤクザはゆっくり息を吐くと、言葉を続けた。

 

「━━━仕方ねぇ、俺ぁあいつに負けたからな」

「負けたって・・・誰にや」

「誰にって、そりゃオバホ以外いねぇだろが」

 

その名前にエリちゃんが体をビクつかせる。

 

「元々地下格闘場の闘士やっててな、相手探して毎日殺し合いよ。つまらねぇ死合いが多かったが、まぁ、そこそこに人生楽しんでたんだが・・・・・野郎いきなり現れて俺に手下になれだなんだと、ふざけた事抜かしやがった。だから言ってやったんだよ。俺に勝てたら好きにしろってな━━━それで、俺は殺された。笑っちまうくらいあっさりな」

「殺されたて・・・そらあり得んやろ。君は生きとるやないか。比喩的な意味なんか?」

「比喩じゃねぇよ。あーーなんだ、正確に言えば分解されて再生されたんだよ。オバホの個性でな。オバホが言うには一瞬なら綺麗さっぱりバラしても元通り治せるらしい。ぞっとしねぇ体験だったぜ、てめぇの体がバラバラになって吹き飛ぶ瞬間を見るのはよ」

「君のアレを捌けるんか、オーバーホールは」

「あ?だからそう言ってんだろ。組に入ってからも5回挑んで5敗。全敗だ。あの男に勝つ為に俺はここにい続けてる」

 

太っちょマンが話を聞いて渋い顔をした。

理由は私にも分かる。ぐるぐるヤクザは単純な近接戦闘能力だけみたら相当レベルが高いやつだ。射程こそ短いがその攻撃速度や攻撃の回転力は、距離をとって戦えない奴等にとってかなり厄介といえる。近接主体でどちらかと言えば防御面を強みにしてる太っちょマンや切島なんか特にカモだったに違いない。

 

そんなやつが格闘場というリングの上で負けた。

格闘場がどれくらいの広さなのか分からないが、決められたリングという範囲が近接主体のぐるぐるヤクザにとって不利に働くことはないだろう。例外は勿論あるだろうけど、戦いの傾向は近接戦闘に寄る筈だ。加えてぐるぐるヤクザの言動を考えれば、搦め手があったように思えないから、嘴まつげはガチンコして勝った可能性が高い。渋い顔になるのも頷ける。

 

まぁ、もっとも、だ。

現在、嘴まつげが戦ってる黒豆パイセンは、こと近接戦闘において"例外的"な強さを発揮する化け物だから、特別心配とかはしないんだけどね。応援?いかないよ。倒すでしょ。多分。

 

そんな話をしてると気絶してた糸目が目を覚ました。

自分の上に乗ったぐるぐるヤクザを見て激オコプンプン丸。なんか色々と喚いてたけど、ぐるぐるヤクザが鬱陶しそうに体重をかけてそれを黙らせた。

 

聞いてよ、こいつら仲間なんだぜ。

これでも。

 

「━━━で、そろそろ治ったか。烈怒頼雄斗」

「治るわけないやろ。静かに休ませぇや。・・・・なぁ、乱波くん。物のついでに聞くんやが、オーバーホールは何したいねん。君みたいなん集めて、こんな子供つこうて」

 

「!!誰が貴様らに教えるものか!!オーバーホール様の崇高な計画━━━━ぐへぇっ!?らっ、乱波貴様!どっ、ぐぇ!?」

 

割り込んできた糸目を黙らせ、ぐるぐるヤクザは「ヤクザの復権だとよ」と教えてくれた。

その後も割とペラペラなんでも教えてくれたが、基本人の話を碌に聞かないタイプなのか、嘴まつげの計画とやらついてあまり詳しく知らなかった。かなりおおざっぱに、金集めて、なんかばら撒いて、計画実行するんだとよ━━━らしい。

 

「まぁ、俺が知ってるのはそんな所だ。おい、烈怒頼雄斗、治らねぇなら俺は行くぞ。死合いはまた今度だ」

「いや、今度はあらへんからな。君はここで逮捕。君の敗けで終わりや」

「喧しいぞデブ!!どっちも死んでねぇだろ!ならドローだ!!」

「何ルールにのっとんてんねん。その判定は」

 

立ち去ろうとするぐるぐるヤクザを太っちょマンが止めた時、腹に響くような轟音と共に部屋が大きく揺れた。太っちょマンのパンチとも、私の爆撃とも違う━━━それこそ地震でも起きたかのような特大の衝撃。

 

「なんや、今のは・・・!」

 

太っちょマンの声が静かな部屋に響く。

けれど返ってくる言葉はない。

全員が無言のまま警戒した様子で固まる。

 

僅かな間をおいて、また振動と轟音が部屋の中を響き渡る。それも今度は短い感覚で断続的にだ。しかも地鳴りのような音も引き連れて、段々とこちらに近づいてくる。まるで切島達が乗り込んできた時のように。

 

「何か来るで!!全員警戒や!!ニコはエリちゃん頼むで!!烈怒頼雄斗、自分で立てるか!場合によっちゃ、自分で逃げてもらわなあかん!!」

「っつ、うっ、うっす!!俺は大丈夫です!!それくらい自分で出来ますよ!」

「さよか!!ほんなら任せるで!!無理だけはしたらあかんからな!」

 

 

 

「駄弁ってねぇで構えろ。来るぞ、デブ・・・!」

「おう!!━━いや、おうちゃうわ!!自分!!」

 

 

 

太っちょマンの華麗なツッコミが決まった瞬間、壁が粉々になって吹き飛んでいった。砂埃に紛れて壁の向こうからやってきた何かが、私達のいる部屋を通過し反対側の壁も突き破っていく。立ち上る砂埃のせいでそれが何んなのか分からない。

ただ、アホみたいに大きい物である事だけは分かる。

 

「あかん!!全員伏せぇや!!」

 

太っちょマンの声が響くと同時。

大きい何かが砂埃を巻き起こしながらこちらに迫ってきた。エリちゃんを抱えて地面へ伏せれば、その何かが頭の上を通り過ぎていき、進行方向にあった壁を壊して、更にその向こうへと進む。そこにあった何もかもを押し壊しながら。

 

「い、今のなんすか!!」

「分からん、ただエライ固かったわ。通り過ぎ様殴り飛ばしてやったが、拳がじんじんしとる。━━━乱波くん、なんか心当たりあらへんか。うちの仲間にこないな事出来るやつおらんねん。教えてくれたら牢にぶちこんだ後、たまーーに差し入れしたるわ」

 

そう太っちょマン聞かれ、ぐるぐるヤクザは一言「知らん」とだけ答える。清々しいほどに嘘を感じない。

 

「ただ、こういう事が出来るのは一人しかいねぇよ・・・!はははっ!野郎、隠してやがったな!取って置きをよ!!」

 

ぐるぐるヤクザはさっきまでフラフラしていたのが嘘のように嬉々として走り出す。

向かう先は"何か"が最初に姿を見せた壁の向こう。

 

太っちょマンが止めあぐねてる様子を横目に、ぐるぐるヤクザに止め刺しておこうかとそこへ視線を向けると━━━━それが見えた。

 

砂埃が漂う先、壁の向こうのずっと先。

マントをはためかせる黒豆パイセンが見えた。天井が落ちて光が射し込んでるせいか、パイセンの姿は特別に目立つ。そんなパイセンの服には汚れが見えるけど、怪我らしき怪我はない。心配するまでもないと思ってた私の予想は当たってたらしい。

そしてどうやら壁を壊した"何か"は黒豆パイセンがいる階から一直線にこちらをぶち抜いてきたのが分かった。

 

「!!」

 

眺めていたら視界の中にあるモノに気づいた。

黒豆パイセンがこちらを一瞥もせず、向かい合い続けるその巨大な影に、だ。

 

鳥のような嘴をもつ瞳の頭。

動く度に崩れる岩のような固い肌。

鋭利な鉤爪がついた太く長い六本の腕。

そしてその異形とも呼べるそれは、あまりに大きかった。地下室を軽く突き破る程の巨躯。上半身だけで四メートル近くあるように見える。

 

 

「オーバーホール!!」

 

 

野太い男の声で怒号が響く。

崩れた瓦礫を足場に駆けあがったぐるぐるヤクザが拳を構えて異形へと飛び掛かる。黒豆パイセンがそれに気づいて止めようと手を伸ばしたけど、少し遅かった。

 

異形から伸びた腕の一本が振られた。

その巨躯に見合わない速度で、異形の腕は轟音を立てながらそこにある全てを巻き込み壊していく。黒豆パイセンは透化でかわしたように見えたけど、ぐるぐるヤクザは真っ向から立ち向っていって━━━━直ぐに巨大な腕の影や瓦礫の波に飲まれて姿を消した。

 

払うように振られた腕はそこにある全てを凪ぎ払って進む。耳をつんざくような轟音を鳴らしながら、地面を揺るがす衝撃と共に壁へ深くめり込む。

ゆっくりと腕が引き抜かれたそこには、赤い汚れのついた瓦礫の山だけが残っていた。

 

自然と肌が粟立ち、背筋に悪寒が走り、エリちゃんを抱き締める腕に力が籠る。

 

 

「乱波くん!!・・・なんやっ、ねん。なんやねん、おんどれぇっ!!」

 

 

太っちょマンの怒号が響くと、それに応えるよう異形が咆哮をあげた。

 

異形は生物とは到底思えない、耳を塞ぎたくなるような甲高い声をその大きな口から響かせていく。

身震いするような殺意と怒りを、その身に漂わせながら。

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